契約書管理のペーパーレス化とは?
エクセルやクラウドを用いた 具体的な方法や作例などを解説!

この記事のまとめ

契約書の管理は多くの企業で依然として「紙」で書棚に保管する形態が一般的です。 コロナウイルス感染症の拡大を受け、電子化に踏み切る企業も増えてきましたが、 実施方法が体系的にまとまっているものはありません。

本記事では、多くの企業で既に導入している 一般的なソフトウェアを用いて、契約書管理をペーパーレスで行う方法をご紹介します。 また併せて、契約書管理システムを導入した場合の利点についても解説します。

(※この記事は、2021年6月8日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。)

契約書管理の動向: 紙のみで管理している企業は3割以上

この記事は、① 契約書を紙で管理している方、② 一応電子化したが、「何か違う」とお感じの方、 に向けて書かれたものです。契約書の管理を電子化し、万事うまくいっている!という方はそもそもこの記事をクリックしていないと思います。
うまく行っていないときは「この問題は自分たちだけのものなのか」が気になります。 最初にこれを数字で確認してみましょう。下図は2020年4月に実施したアンケートの結果です。

契約書を「書面のみ」または「pdf化」により管理している企業は回答企業の70%に及びます。 なお「書面のみ」の企業は3社に1社、「pdf化」まではやっている企業のほうが多いです。

ただし、本調査は(リーガルテック企業である)株式会社LegalOn Technologiesが接点を有する企業を対象に実施したため、 日本全体では「書面のみ」の割合はより高い可能性があります。
たとえば読者のお勤め先が東京に本社を有する上場企業である場合、同様の企業の中で「書面のみ」 で管理している企業は3社中1社である、と捉えていただくと実態に近いかと思います。

契約書管理をペーパーレス化すべき理由

契約書の電子化(pdf化、さらに進んで契約管理システムの導入など)を進めている企業は意外と多いこと、この中でも 「pdf化」までの実施が大多数であることが確認できました。
しかし、そもそもなぜ契約書をペーパーレス化するのでしょうか。
実は、契約書をペーパーレス化することのメリットはその実施形態と企業内での各人の立ち位置によって大きく異なります。
これは全てのシステム導入、電子化に共通する論点です。人事管理システムを導入することで人事部の負担は軽減するが 現場の入力が増えた、といったケースはよくあります。
システムの導入にせよ、プロセスの変更にせよ、関係するステークホルダーはそれぞれ異なるアジェンダを抱えています。
本節ではこれを確認していきましょう。

契約書管理における各部署の課題

契約書管理に関係するステークホルダー

大きく分けて「依頼部門」「法務部門」「経営陣」の3つのステークホルダーがあります。 (このメディアの読者は法務担当者が多いので、法務の言葉遣いに合わせています。)

実際には、法務部門とは別に、印章管理等を含めて実施する「契約管理部門」などがある場合もあると思います。 読者が営業部門に属しており、部門内で契約を管理している場合もあるでしょう。この場合、法務部門は契約管理には 一切関係ないことになりますが、読者が契約の管理に責任を負っているのであれば、「法務部門の課題」の記載内容は参考になると思います。

また、経営陣は「契約管理」に全く興味がない、という場合も多いでしょう。だから「経営陣は契約管理のステークホルダーではない」 というのは早計です。後半で見ますが、契約管理は予算を組めるかどうかで実施する人員の負担が大きく変わります。 契約管理を全社的な課題として位置づけることができれば、読者はより効果的な施策を、より短期間で、 より小さい工数で実施することができます(さもなければキャビネット内の1,000件の契約書を自分で複合機でスキャンする羽目に陥る可能性があります。)。

それでは、各部門の課題を確認していきましょう。

依頼部門の課題

依頼部門は、各契約におけるビジネスオーナーと言い換えることができます。契約管理において最も重要なのは、この依頼部門にとっての利便性を、どのように上げるか、です。
依頼部門は、契約書の管理形態にもよりますが、契約書が紙で保管されている場合、下記のような課題を抱えています。

– 契約書を社外から確認できない。
例:商談時に顧客や取引先と、契約書を既に結んでいるか確認できない。
– 契約内容の違いを指摘された時に、すぐに契約書を確認することが難しい。
例: 請求時に「契約条件と違うのでは?」と顧客から指摘される。
– 契約の担当者以外は、自社・自部署にどういう契約が存在するのか実は知らない。
例:別部門で締結していることに気づかずに、同じ契約書を再度締結してしまう。

共通しているのは、契約書に「アクセスできない」「探しづらい」ということです。キャビネットが物理的に部署ごとで分かれているケースもあります。

法務部門の課題

法務部門は、契約のリスクを統制する立場にあります。法務部門が一元的に契約書を管理している、という企業も多くあります。 いずれにせよ、契約書が紙で管理されていた場合、下記のような問題が発生します。

– 契約書の出納工数が膨大。
例:「xxの契約書はないですか?」という依頼部門からの問い合わせが多数。
– 契約書の参照関係を簡単に追いかけることができない。
例: レビュー中の契約書の「甲乙間2019年12月1日付秘密保持契約」が見つからない。
– 過去の契約書を審査・作成の参考にできない(ナレッジマネジメントの欠如)。
例: 業務提携契約、M&Aの契約書といった非典型契約について過去例が見つからない。

特に2点目、3点目の問題は法務部門「内」の問題ですが、1点目は、依頼部門へのサービスレベルにも関わる点です。 このため、依頼部門も巻き込む必要があるときにはこの論点をフックに提案することで話が進めやすくなるでしょう。

経営陣の課題

最初に断っておくと、経営陣は契約管理について課題を抱えていることは滅多にありません。経営陣が考えているのは、全社の事業に関する問題、そして時事問題、の二つです。その意味で契約管理の問題を経営陣のアジェンダに紐づけて理解可能にする必要があります。

– 在宅勤務移行など「ニューノーマル」「withコロナ」への適応のハードル。
– 契約書が紙ベースで「DX」ができていない。

当り前の話ですが、契約書が紙で保管されている限りにおいて「契約書を確認するための出社」は必要になります。 2021年1月現在、新型コロナウイルス感染症の拡大は収束の目途が立っていません。こうした中で、 「契約が紙であることが、コロナ禍の中での事業継続リスクである」といった指摘は、経営陣の納得を得やすいものと考えられます。

契約書をペーパーレス化する方法と課題

契約書管理のペーパーレス化の3段階

それでは、実際にどうやって契約書管理をペーパーレス化していくか、を考えていきましょう。
ペーパーレス化へのステップは、ステップ0「紙のみ」、ステップ1「(紙+)PDF」、ステップ2「(紙+)台帳+PDF」といった3段階に分けることができます。

ステップ1 「(紙+)PDF」以降、それぞれの管理方法におけるメリットやデメリットを理解し、 ペーパーレス化を進めていく必要があります。ここからは、それぞれのステップのおける管理手法と、その課題について解説します。

pdf化すると、何が変わるか

契約書を「PDF」化して保存する「ステップ1」では、顧客や年次ごとなどにフォルダを分け、社内共有のファイルサーバーや共有ストレージで保管をします。

「共有の場所」で管理をすることで、ファイル名での検索ができます。フォルダを分けて管理することで探している契約書を見つけやすく することもできます。しかし、デメリットとしては、管理が属人化してしまい、配置した担当者以外のアクセスが困難なケースが発生する点、 また、ファイルの内容までは検索ができないので結局契約書を開いて内容を確認しなければならない点、などが挙げられます。

pdfと台帳を繋げることで、契約書を自在に検索できるようになる

この問題を解決するために「ステップ2」の、台帳とPDFの組み合わせ、が多くの企業では取られています。 この台帳は、契約書管理システムのような専用ツールの場合もあれば、 Excel、Google Spreadsheetのようなものである場合もあります。

下記は、具体的な実施例です。

紙のまま管理台帳を作ってもうまくいかない

なお「紙のまま管理台帳を作る」やり方では、前節で見たような課題は解決できません。これは、 「紙のまま管理台帳を作る」ことが無意味だと言っているのではなく、前節で掲げた課題を解決しない、といっているだけです。 実際には、紙のまま管理台帳を作ることにもメリットはあると思いますが、契約書を見なければならないときには、 原本を確認しなければならない場合が殆どです。

たとえば営業部門が顧客から「請求条件が契約と違う」と言われたときに、契約台帳の「請求条件」の項目を見て、 回答できるでしょうか?台帳への入力も人間がやっている以上、間違えている可能性は否定できません。 トラブルの際には原本の内容を確認せざるを得ないのです。そして、原本の内容を確認するには原本 (又はそのスキャンデータ)を見る以外の選択肢はありません。契約書の「有無」を確認するためであれば、 台帳の作成は有効です。その後、契約書をスキャンし、そのデータを台帳に紐づけることを考えると、 先にスキャンして、それを台帳に記入し、紐づけるほうが段取りは楽でしょう。

スキャンしたら契約書の原本は捨てても良いのか?

よくある質問に「スキャンしたら契約書の原本は捨ててよいのか?」というものがあります。

これについて電子帳簿保存法(電帳法)の観点から、同法上の保存要件を満たしていれば原本を廃棄してよい、 という主張がしばしばなされます。電帳法は、税務上の証憑書類の保存要件を定めたものであり、 民事訴訟等、契約書に関するトラブルが発生した場合の証拠能力については、別途検討が必要です。

なお、電子帳簿保存法を用いた国税関係帳簿書類を電子データで保存・スキャン保存に関する解説は、 こちらをご覧ください。

実際にどの程度の予算が必要?

契約書管理のペーパーレス化のイメージが付いたところで、実際にどの程度の予算が必要となるのかについて検討しましょう。 契約書の電子化、契約書データの入力等の作業を、自分自身で実施するのは契約書の件数が100件未満で あればできるかもしれませんが、それを超えるとかなり難しいです。BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング) 事業者を利用する、専任のスタッフを臨時要員として確保する、等の措置を行う必要があります。

大きなプロセスは「契約書のスキャン」「台帳の作成」ですが、それぞれについて作業見積もりの目安となる数値を下記に掲載しました。

ざっくり、1,000件の契約書であれば、BPO業者に依頼すれば20万円程度でPDF化できます。予算を確保して、外注することも一つのオプションでしょう。

(参考)契約書管理ソフトを導入すると何が楽か?

クラウド契約書管理ソフトウェアは(製品によって機能には差はあるものの)、台帳入力を自動化できる点、 自動更新の契約書について更新期日の計算等を自動で実施し、台帳の内容を最新に保てる点、契約書の全文検索ができる点、などが挙げられます。 特に全文検索機能は、台帳に項目として記載がない内容についても検索を実現する点で魅力的なオプションになると考えられます。

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