毀損とは?
具体例・「棄損」「破損」との違い・
民事上/刑事上の責任などを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

毀損(きそん)」とは、壊すことや傷つけることを意味します。のほか、名誉信用など無形のものを損なう行為も毀損に当たります。

他人のを毀損した者は、被害者に対して損害賠償責任を負うほか、器物損壊罪によって処罰されることがあります。
また、他人の名誉信用を毀損した者は、同じく被害者に対して損害賠償責任を負うほか、裁判所によって謝罪広告を命じられることがあります。さらに名誉毀損罪信用毀損罪による処罰の対象となります。

この記事では「毀損」について、具体例や民事上・刑事上の責任などを分かりやすく解説します。

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「名誉毀損」はよく聞きますが、「毀損」とはどういう意味でしょうか?

ムートン

意味はシンプルに「傷つけること」ですが、物以外にも使用できるのがポイントです。「破損」や「損壊」などとの使い分けも確認しておきましょう。

※この記事は、2024年2月27日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

毀損とは

毀損(きそん)」とは、壊すことや傷つけることを意味します。のほか、名誉信用など無形のものを損なう行為も毀損に当たります。

毀損と棄損・破損の違い

「毀損」と同じく、物などが壊れることに関連する用語として「棄損(きそん)」や「破損(はそん)」があります。

棄損」の意味は、「毀損」と同じです。「毀」という文字が表外字とされていた時代には、「毀損」の代用表記として「棄損」が用いられることがありました。

破損」は、物が壊れたり傷ついたりすること、または物を壊すことや傷つけることを意味します。

「毀損」と同じく、「破損」も物を壊し傷つける行為について用いることがありますが(例:~を破損する)、物が壊れ、または傷ついた状態を表すケースも多いです(例:~が破損している)。
「毀損」を用いて物が壊れ、または傷ついた状態を表す際には、受動態となります(例:~が毀損された)。

また、「破損」は物の破壊・損傷についてのみ用いる用語です。「毀損」とは異なり、名誉や信用など無形のものを損なう行為については用いません。

毀損の具体例

法律上の「毀損」行為としては、以下の例が挙げられます。

① 物の毀損
② 名誉毀損
③ 信用毀損

物の毀損

物を壊す行為は「毀損に当たります。なお、法律上は動物も「物」と位置付けられているため、動物を傷害する行為も「毀損」といえます。

なお、法文上は「毀損」ではなく、「損壊」や「毀棄」などの用語が用いられていることがあります。いずれも毀損とほぼ同じ意味です。

一例として、文書等の毀棄や物の損壊が処罰の対象とされています。

刑法
(公用文書等毀棄)
第258条 公務所の用に供する文書又は電磁的記録を毀棄した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。

(私用文書等毀棄)
第259条 権利又は義務に関する他人の文書又は電磁的記録を毀棄した者は、5年以下の懲役に処する。

(建造物等損壊及び同致死傷)
第260条 他人の建造物又は艦船を損壊した者は、5年以下の懲役に処する。よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

(器物損壊等)
第261条 前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。

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名誉毀損

公然と事実を摘示し、人の社会的評価を下げるような言動をする行為は「名誉毀損」と呼ばれています。

名誉毀損については、刑法民法の両方に規定があります。

刑法
(名誉毀損)
第230条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

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民法
(名誉毀損における原状回復)
第723条 他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。

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名誉毀損と侮辱の違い

公然と他人の社会的評価を下げるような言動をした者には、名誉毀損罪以外に「侮辱罪」が成立することもあります。

名誉毀損罪と侮辱罪の違いは、事実の摘示の有無です。何らかの事実を摘示した場合は名誉毀損罪、事実の摘示がなかった場合は侮辱罪の対象となります。

刑法
(侮辱)
第231条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

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信用毀損

営業活動などに関する経済的な信用を害する行為は「信用毀損」と呼ばれています。

刑法では、信用毀損が処罰の対象とされています。

刑法
(信用毀損及び業務妨害)
第233条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

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毀損行為をした者が負う法的責任

毀損行為をした者は、民事・刑事上の法的責任を負うことがあります。

民事上の責任|損害賠償・謝罪広告

他人の物や名誉・信用などを毀損した者は、被害者に対して不法行為に基づく損害賠償責任を負います(民法709条)。損害賠償の対象は、原則として被害者が受けた損害の実額です。

なお、自ら毀損行為をしていなくても、以下の法的責任が発生することがあります。

① 責任無能力者の監督義務者の責任(民法714条1項)
→自らが監督義務を負う、責任能力がない子どもなどが毀損行為をした場合

② 使用者責任(民法715条1項)
→雇用する従業員が、事業の執行に関して毀損行為をした場合

③ 工作物責任(民法717条1項)
→自ら占有または所有する土地の工作物に関する設置・保存の瑕疵が原因で、他人の物が毀損された場合

④ 動物占有者の責任(民法718条1項)
→自ら占有する動物が他人の物を毀損した場合

また、名誉毀損の加害者に対しては、被害者の請求に応じて、裁判所が名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができるとされています(民法723条)。名誉回復措置の典型例は、新聞やウェブサイトにおける謝罪広告の掲載などです。

刑事上の責任|刑事罰

他人の物や名誉・信用を毀損する行為は、刑法によって処罰の対象とされています。

毀損行為について成立する主な犯罪と法定刑は、以下のとおりです。

罪名法定刑
外国国章損壊等罪(刑法92条)2年以下の懲役または20万円以下の罰金
封印等破棄罪(刑法96条)3年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金、または併科
強制執行妨害目的財産損壊等罪(刑法96条の2)3年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金、または併科
加重逃走罪(刑法98条)3カ月以上5年以下の懲役
消火妨害罪(刑法114条)1年以上10年以下の懲役
激発物破裂罪(刑法117条)放火の例による
水防妨害罪(刑法121条)1年以上10年以下の懲役
往路妨害罪・同致死傷罪(刑法124条)2年以下の懲役または20万円以下の罰金
※人を死傷させた場合は、傷害の罪と比較して重い刑により処断する
往来危険罪(刑法125条)2年以上の有期懲役
水道損壊罪(刑法147条)1年以上10年以下の懲役
死体損壊罪(刑法190条)3年以下の懲役
墳墓発掘死体損壊罪(刑法191条)3カ月以上5年以下の懲役
名誉毀損罪(刑法230条)3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金
信用毀損罪(刑法233条)3年以下の懲役または50万円以下の罰金
電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法234条の2)5年以下の懲役または100万円以下の罰金
公用文書等毀棄罪(刑法258条)3カ月以上7年以下の懲役
私用文書等毀棄罪(刑法259条)5年以下の懲役
建造物等損壊罪・同致死傷罪(刑法260条)5年以下の懲役
※人を死傷させた場合は、傷害の罪と比較して重い刑により処断する
器物損壊等罪(刑法261条)3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料
境界損壊罪(刑法262条の2)5年以下の懲役または50万円以下の罰金
ムートン

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