休暇とは?
休日との違い・種類・与えるメリット・賃金の取り扱いなどを分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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「休暇」とは、本来であれば労働義務があるものの、会社によって労働義務を免除された日をいいます。これに対して、「休日」はもともと労働義務がない日であり、休暇とは異なります。
休暇には、法律によって付与が義務付けられた休暇(=法定休暇)と、それ以外の休暇(=法定外休暇)があります。
法定休暇の代表例は、年次有給休暇・子の看護休暇・介護休暇・生理休暇などです。法定外休暇としては、慶弔休暇・夏季休暇・年末年始休暇・私傷病休暇などを設けている会社がよく見られます。
労働者に対して休暇を与えることには、心身のリフレッシュにつながる点や、労働環境の改善により人材の定着につながりやすい点などのメリットがあります。法定休暇だけでなく、法定外休暇も適度に付与して、労働者のモチベーション維持を図りましょう。
休暇中の賃金は無給が原則ですが、年次有給休暇および有給とする特別の定めがある休暇については有給となります。
この記事では休暇について、基本から分かりやすく解説します。
※この記事は、2023年10月25日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- 育児介護休業法…育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
- 育児介護休業法施行規則…育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則
目次
休暇とは
「休暇」とは、本来であれば労働義務があるものの、会社によって労働義務を免除された日をいいます。労働基準法などの法律で付与が義務付けられた「法定休暇」と、会社が独自の制度に基づいて付与する「法定外休暇」の2つに大別されます。
休暇と休日・休業の違い
休暇と同じく、労働者が働かずに休む日であるのが「休日」や「休業」です。
「休日」とは、もともと労働義務がない日をいいます。例えば週休2日制(土日休み)の会社の場合、土曜と日曜が休日です。
休暇が会社によって労働義務を免除された日であるのに対して、休日は最初から労働義務がありません。
「休業」は休暇と同じく、会社によって労働義務を免除された日をいいます。比較的長期間に及ぶ場合は休業、単日または短期間で終わる場合は休暇と使い分けるケースが多いですが、法律上明確に区別されてはいません。
休暇の種類|法定休暇と法定外休暇
休暇は、「法定休暇」と「法定外休暇」の2つに大別されます。
①法定休暇
法律によって付与が義務付けられた休暇です。
②法定外休暇
会社が独自の制度に基づいて付与する休暇です。
法定休暇は付与することが必須ですが、法定外休暇を付与するかどうかは会社によります。近年では、ワークライフバランスの充実化や労働者のリフレッシュなどを図るため、積極的に法定外休暇を付与する会社が増えています。
法定休暇の主な種類
法律によって付与が義務付けられている法定休暇(休業)の代表例は、以下のとおりです。
①年次有給休暇
②産前産後休業
③育児休業
④子の看護休暇
⑤介護休業・介護休暇
⑥生理休暇
法定休暇1|年次有給休暇
年次有給休暇とは、勤続年数などに応じて労働者に付与される有給の休暇です。年次有給休暇は、雇入れから6カ月が経過した時点と、その後1年ごとに付与されます。
年次有給休暇の対象となるのは、基準期間※における全労働日の8割以上出勤した労働者です(労働基準法39条1項、2項)。なお、業務上の負傷・疾病による休業、育児休業、介護休業および産前産後休業の期間については、出勤したものとみなされます(同条10項)。
基準期間:雇入れから6カ月が経過した時点で付与される年次有給休暇については、雇入れから6カ月間。その後は、付与日の直前1年間。
以下のいずれかに該当する労働者(フルタイム労働者)については、継続勤務期間に応じて10日から20日の年次有給休暇が付与されます(労働基準法39条2項)。
(a)1週間の所定労働日数が5日以上
(b)1年間の所定労働日数が217日以上
(c)1週間の所定労働時間が30時間以上
フルタイム労働者の継続勤務期間 | 付与される有給休暇の日数 |
---|---|
6か月 | 10日 |
1年6か月 | 11日 |
2年6か月 | 12日 |
3年6か月 | 14日 |
4年6か月 | 16日 |
5年6か月 | 18日 |
6年6か月以上 | 20日 |
これに対して、フルタイム労働者に当たらない労働者(パートタイム労働者)については、1週間または1年間の所定労働日数と継続勤務期間に応じて、1日から15日の年次有給休暇が付与されます(労働基準法39条3項)。
年次有給休暇に関するルール
年次有給休暇については、労働基準法において以下のルールが設けられています。
①時間単位の有給休暇
労使協定を締結すれば、1年間につき最大5日間に限り、1時間単位で有給休暇を付与することができます(労働基準法39条4項)。
②有給休暇を付与する時季・使用者の時季変更権
使用者は原則として、労働者の請求する時季に有給休暇を与えなければなりません。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季に与えることができます(同条5項)。
③有給休暇の計画的付与
労使協定を締結すれば、1年間につき最大5日間に限り、労使協定の定めに基づいて有給休暇を付与することができます(同条6項)。
④有給休暇を取得させる義務
1年間につき10日以上の有給休暇が付与される労働者には、そのうち5日間の有給休暇につき、1年以内に時季を定めて与えなければなりません(同条7項)。ただし、労働者の請求または労使協定に基づいて有給休暇を付与した場合には、その日数が有給休暇を取得させる義務から控除されます(同条8項)。
法定休暇2|産前産後休業
6週間以内(多胎妊娠の場合は14週間以内)に出産する予定の女性労働者が休業を請求した場合には、その者を就業させてはなりません(労働基準法65条1項)。
また、産後8週間を経過しない女性労働者についても、原則として就業させてはなりません。ただし、産後6週間を経過した女性が就業を請求した場合において、医師が支障がないと認めた業務に就かせることは可能です(同条2項)。
法定休暇3|育児休業
1歳未満の子を養育する労働者は、事業主に申し出て育児休業を取得できます(育児介護休業法5条1項)。育児休業は、2回まで分割して取得可能です。
父母の両方が育児休業を取得する場合は、子が1歳2か月に達するまで育児休業を延長できます(同法9条の6)。保育所に入れない場合などには、子が2歳に達するまで育児休業を延長できることがあります(同法5条3項~5項)。
また、通常の育児休業とは別に、子の出生後8週間以内において最長4週間取得できる「出生時育児休業(産後パパ育休)」も認められています(同法9条の2)。
法定休暇4|子の看護休暇
未就学児の子を養育する労働者は、1年間につき5日以内に限り、事業主に申し出て子の世話をするための休暇(=子の看護休暇)を取得できます。
子の看護休暇の対象となるのは、以下の子の世話です(育児介護休業法16条の2、育児介護休業法施行規則32条)。
- 負傷し、または疾病にかかった子の世話
- 予防接種を受けさせること
- 健康診断を受けさせること
子の看護休暇は、時間単位での取得も可能です。その場合は、始業時刻から連続して取得するか、または終業時刻まで連続して取得する必要があります(育児介護休業法施行規則34条)。
法定休暇5|介護休業・介護休暇
一部の有期雇用労働者を除く労働者は、事業主に申し出て介護休業を取得できます(育児介護休業法11条1項)。介護休業の期間は最長93日間で、最大3回まで分割して取得可能です。
介護休業の対象となるのは、常時介護を必要とする以下の者(=対象家族)を介護する場合です(同法2条2号~4号、育児介護休業法施行規則3条)。
- 配偶者(内縁者を含む)
- 父母
- 子
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 孫
- 配偶者の父母
また、常時介護を必要とする対象家族の介護や、通院等の付添い・介護サービスを受けるための手続きの代行などの世話を行う労働者は、事業主に申し出て1年につき最大5日間の介護休暇を取得できます(育児介護休業法16条の5第1項)。
介護休業が長期にわたる休業であるのに対して、介護休暇は短期間の休暇です。介護休暇は、時間単位で取得することもできます(同条2項)。
法定休暇6|生理休暇
生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはなりません(労働基準法68条)。
法定外休暇の主な種類
法定外休暇の有無・種類・条件などは会社によって異なりますが、一例として以下のような法定外休暇を与える例がよく見られます。
①慶弔休暇
②夏季休暇
③年末年始休暇
④私傷病休暇
法定外休暇1|慶弔休暇
労働者本人や近親者の慶事(結婚・出産など)や弔事(葬儀など)の際には、慶弔休暇が付与される場合があります。
慶弔休暇の期間は、慶事・弔事の内容や労働者と当人の続柄などにより、1日から10日程度までの幅が設けられていることが多いです。
法律上、慶弔休暇について賃金を支払う必要はありませんが、福利厚生の一環として有給としている会社もあります。
法定外休暇2|夏季休暇
主にお盆の時期(8月13日から15日ごろ)を中心に、夏季休暇を付与する企業がよく見られます。また、労働者ごとに時期をずらして夏季休暇を付与する企業もあります。
夏季休暇は無給でも構いませんが、福利厚生の一環として有給とする会社が比較的多数です。
法定外休暇3|年末年始休暇
年末年始の時期は取引先があまり稼働しなくなることなどを考慮して、年末年始休暇を付与する企業がかなり多く見られます。
年末年始休暇の時期は会社によって異なりますが、12月29日または30日から1月3日ごろまでを休暇とする企業が多いようです。
年末年始休暇も無給とすることができますが、福利厚生の一環として有給とする会社が比較的多数となっています。
法定外休暇4|私傷病休暇
業務外の原因によるケガまたは病気の治療・療養が必要となった場合には、私傷病休暇が認められることがあります。私傷病休暇については、上限日数が設けられていることが多いです。
私傷病休暇は無給とされるケースが多いですが、福利厚生の一環として有給とする会社もあります。
なお、ケガや病気が業務上の原因により発生した場合には、私傷病休暇ではなく災害補償の対象となります(労働基準法75条以下)。
この場合、療養のための休業期間およびその後30日間については、使用者による被災労働者の解雇が原則として禁止されます(同法19条1項)。
労働者に休暇を与えるメリット
労働者に対して休暇を与えることには、主に以下のメリットがあります。生産性向上などの観点から、法定休暇だけでなく法定外休暇も積極的に付与することが望ましいでしょう。
①心身のリフレッシュにつながる
②労働環境の改善|人材の定着につながる
心身のリフレッシュにつながる
労働者が働き詰めになると、心身の疲労が溜まって生産性が低下してしまいます。また、労働現場での事故や脳・心臓疾患や精神疾患など、労災のリスクが高まってしまう点にも注意が必要です。
労働者に対して適切に休暇を与えれば、心身のリフレッシュにより、生産性の低下や労災のリスクを抑えることができます。
労働環境の改善|人材の定着につながる
休暇を適切に与えることは、労働環境の改善に大きく寄与します。労働者は仕事に対する満足度を高め、結果として人材の定着につながるでしょう。
また、良好な労働環境が評判となれば、新規採用にも好影響が生じます。優秀な人材を確保しやすくなり、企業の飛躍的な成長に向けた土台が整います。
休暇中の賃金の取り扱い
休暇(休業)を取得した日については、原則として無給となります。
ただし、年次有給休暇は有給の休暇です。
有給休暇を取得した日については、原則として所定労働時間働いた場合の賃金を支払わなければなりません。ただし労使協定により、健康保険法の標準報酬月額の日割額を基準に算定する旨を定めたときは、その定めに従います(同条9項)。
また、就業規則等により有給と定められた休暇についても有給となります。
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