パワハラ行為の録音は違法?
録音時の注意点や確保すべき証拠の例などを
分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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職場でパワハラを受けた場合、相手の言動を録音することは、損害賠償請求などに備える観点から有力な方法です。
秘密で録音しても直ちに違法となるわけではありませんが、録音の方法によっては違法となることがあります。録音が違法である場合は、訴訟において証拠能力を否定されるリスクや、不法行為に基づく損害賠償責任を負うリスクを伴うので注意が必要です。
パワハラの証拠として録音をしようとする際には、違法な方法での録音を避ける必要があります。自分が参加していない会話の盗聴や、録音データをインターネット上で公開することは避けましょう。
また、録音の証拠としての価値を高めることも大切です。音質に配慮する、日時や状況を記録する、会話全体を録音するといったポイントに注意してください。企業が従業員からパワハラの録音を提示されたときは、録音方法の違法性や不当な会話の切り取りなどを主張することが考えられます。ただし、パワハラが実際に行われたと認められるときは、合理的な条件で早期に和解することを目指しましょう。
この記事では、パワハラを録音するのは違法かどうか、録音しようとする際の注意点、録音以外に確保したい証拠などを解説します。
※この記事は、2026年6月24日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
パワハラを録音するのは違法?証拠にできる?
職場でパワハラを受けた場合、相手の言動を録音することは、損害賠償請求などに備える観点から有力な方法です。
相手に対して伝えることなく録音をしても、直ちに違法となるわけではありません。ただし、録音の方法によっては違法となることがあるので注意が必要です。
録音は必ずしも違法ではない
パワハラの証拠とするために、加害者との会話を録音することは、原則として違法ではありません。
最高裁平成12年7月12日決定では、詐欺の被害に関する証拠とするために相手方との会話を録音したことにつき、たとえ相手方の同意を得ていなくても違法ではないと判示されています。同決定は刑事事件の事案で、録音テープの証拠能力が認められました。
パワハラについても同様に、加害者の同意を得ずに録音をしても、原則として違法ではなく、録音データの証拠能力も認められると考えられます。
相手方の同意を得ることなく行う、いわゆる「秘密録音」が違法でないと解されるのは、自分が参加している会話の内容を記録したものに過ぎないためです。相手方が自分に対して自ら発した言葉を録音しても、直ちに相手方のプライバシーが侵害されるわけではありません。
また、録音データを利用する目的や方法が正当であれば、相手方のプライバシーが一定程度制限されてもやむを得ず、違法ではないと解されます。
録音が違法となるケース
相手方の同意を得ることなく会話を録音しても、原則として違法ではありませんが、次に挙げるケースなどでは違法となる可能性があるので注意を要します。
- 違法となる可能性がある具体例
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・自分が参加していない会話を盗聴した場合
・相手方の住居に侵入するなど、違法な方法で録音を行った場合
・インターネット上で無断公開するなど、録音データの利用方法が不当である場合
など
録音が違法である場合の法的問題|証拠能力の否定・不法行為
録音が違法である場合は、民事訴訟において証拠能力を否定される可能性があります。
証拠能力が否定されると、たとえ録音データの中にパワハラに当たる言動が記録されていても、事実認定に当たってその内容が考慮されません。別の証拠によってパワハラの事実を立証できなければ、被害者は敗訴してしまいます。
また、違法に録音をしたことが不法行為に該当し、相手方に対して損害賠償責任を負うこともあり得るので注意が必要です(民法709条)。
パワハラを録音しようとする際の注意点
パワハラの証拠を確保するため、加害者の発言を録音しようとする際には、特に次のポイントに注意してください。
① 自分が参加していない会話の盗聴は避ける
② 録音データをインターネット上で公開してはならない
③ できる限りクリアな音質で録音する
④ 日時と状況を記録する
⑤ 会話全体を録音する
自分が参加していない会話の盗聴は避ける
パワハラの証拠を集める目的であっても、自分が参加していない会話を無断で録音することは避けるべきです。
例えば、上司同士の会話を隠れて録音したり、他人のデスクや会議室に録音機器を設置したりしてはなりません。これらの行為は、プライバシー侵害などとして違法と判断されるおそれがあります。録音を行うのは、自分が参加している会話に限定してください。
録音データをインターネット上で公開してはならない
録音データをSNSや動画投稿サイトなどで公開することは、相手方に対する名誉毀損等に該当する可能性があります。パワハラの事実を世間に知らしめて、加害者に対して報復することは、法的に認められる行為ではありません。
パワハラの加害者に対する責任追及は、あくまでも和解交渉や訴訟などの裁判手続きを通じて行う必要があります。録音データは、これらの正当な手続きにおける証拠としてのみ利用しましょう。
できる限りクリアな音質で録音する
録音データは、音声が不明瞭だと証拠としての価値が認められにくいです。できる限りクリアな音質で録音することが大切になります。
周囲の雑音が大きい場所では音声が不明瞭になりやすいため、スマートフォンやICレコーダーの位置を工夫しましょう。事前にテスト録音をして、マイクの指向性に問題がないかなどを確認しておくのが安心です。
日時と状況を記録する
相手方の発言がパワハラに当たるかどうかは、会話の時系列や状況なども踏まえて総合的に判断されます。そのため録音データについても、録音された会話の日時や状況などを記録しておくことが大切です。
会話全体を録音する
会話の一部分だけを切り取った録音では、発言の文脈や背景が分からず、パワハラに当たるかどうか判断できない場合があります。「恣意的に切り取られた」などと、相手方にも反論の余地を与えてしまいます。
パワハラの証拠として認められやすくなるように、可能な限り会話の冒頭から終了まで録音し、発言の流れが分かる状態にすることが望ましいです。
録音以外に確保したいパワハラの証拠
パワハラに関する証拠としては、録音のほかに次の例が挙げられます。パワハラの事実や損害を立証できるように、これらの証拠をできる限り確保しておきましょう。
① 業務に関するメールやチャットの記録
② 業務日誌・メモ
③ 同僚などの証言
④ 通院記録・診断書
業務に関するメールやチャットの記録
業務に関するメールやチャットには、パワハラに当たる不当な業務命令や過度な叱責などが記録されていることがあります。発言内容が文字として客観的に表れているため、有力な証拠になり得ます。該当する部分のデータを保存するか、またはスクリーンショットを撮っておきましょう。
業務日誌・メモ
パワハラを受けた日時・場所・状況・発言内容などを記録した業務日誌やメモも、証拠として活用できることがあります。客観的な証拠とは言えませんが、録音やメール・チャットなどの内容と整合していれば、その内容を補強するものとして認められる可能性が高いです。
特に、長期間にわたって継続的に記録された業務日誌やメモは、単発的なものよりも高い証拠価値が認められる傾向にあります。パワハラの被害を受けたら、できる限り具体的に日誌やメモを書いておきましょう。
同僚などの証言
パワハラの場面を目撃した同僚などの証言は、被害者の主張を裏付ける証拠として役立ちます。協力してもらえそうな同僚などに対して、証言をお願いしてみましょう。
ただし会社に在職中の人は、職場における立場の悪化をおそれて証言をためらうケースも多いです。その場合は無理強いをせず、客観的な証拠の収集に注力しましょう。
通院記録・診断書
パワハラによって不眠や抑うつ症状などの心身の不調が生じた場合には、医療機関の通院記録や診断書がその証拠となります。
パワハラの被害を受けて体調に異変を感じた場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。心身の早期回復とともに、会社に対する損害賠償の証拠を確保することにも繋がります。
企業が従業員からパワハラの録音を提示された場合の対処法
企業が従業員からパワハラの被害を訴えられたら、次のポイントに留意しつつ対応してください。
① 従業員の話をよく聞いて、録音データの内容を検証する
② 従業員に対して誠実に向き合い、必要に応じてケアを行う
③ 合理的な条件での和解を目指す
④ 録音方法の違法性を主張する
⑤ 会話が不当に切り取られていることを主張する
従業員の話をよく聞いて、録音データの内容を検証する
まずはパワハラの被害を訴える従業員の話を丁寧に聞くことが大切です。そのうえで録音データを聞き、誰が発言をしているのか、どのような発言が問題になっているのかなどを確認しましょう。
なお、従業員の話と録音データの内容だけでは、ハラスメントが実際に行われたかどうかは判断できません。メールやチャットなどの客観的資料の確認、関係者や加害者とされている人に対するヒアリングなどを経て、総合的な観点から客観的事実の把握に努めることが大切です。
従業員に対して誠実に向き合い、必要に応じてケアを行う
パワハラ被害を訴える従業員は、大きな精神的ショックを感じていることが少なくありません。会社としては、相談内容を軽視したり、安易に否定したりするのではなく、誠実な態度で対応する必要があります。
本人の希望を確認して配置転換によって当事者同士を引き離すほか、必要に応じて産業医との面談なども検討しましょう。またヒアリングの際にも、過度に問い詰めるなどして、従業員にプレッシャーを与えることは避けるべきです。
合理的な条件での和解を目指す
調査の結果、パワハラが認められる可能性が高い場合には、合理的な条件で和解して解決することを目指しましょう。従業員との和解が成立すれば、労働審判や訴訟への発展を防ぎ、コストや人的負担を軽減することができます。
和解を目指すに当たっては、従業員に対して謝罪などによって誠意を示すとともに、適正額の和解金を提示して交渉することが大切です。
録音方法の違法性を主張する
従業員から録音データを提示された際には、どのような方法で録音したのかを確認しましょう。方法が不適切である場合は、録音行為が違法となり、パワハラの証拠として認められない可能性があります。
職場における会話の録音が不適切と判断されやすいのは、次に挙げるケースなどです。
- 従業員自身が参加していない会話(上司同士の会話など)を、会議室などに仕掛けた機器によって録音した場合
- 普段は立ち入りが認められていない場所に、従業員が忍び込んで録音機器を仕掛けた場合など
従業員との間で訴訟に発展し、これらの方法によって録音されたデータが裁判所へ提出された際には、その証拠能力を否定して争うことを検討しましょう。
ただし、録音データの証拠能力が否定されるとしても、別の証拠によってパワハラの事実が認定されることはあり得ます。企業としては、従業員側の立証が成功するか否かの見通しを総合的な観点から検討することが大切です。
会話が不当に切り取られていることを主張する
録音データが会話の一部分のみを切り取ったものである場合は、その内容がパワハラに当たるかどうかは慎重な判断を要します。部分的にはパワハラに当たるように思える場合でも、全体的な文脈を考慮するとパワハラに当たらないケースもあるためです。
従業員に対しては、提出されたものの前後の会話も録音しているかどうかを確認しましょう。もし従業員側が提出を拒否するようなら、企業としては録音データの会話が恣意的に切り取られたものであると主張することも考えられます。
ただし、録音以外の証拠によってパワハラの事実が認定されることもある点に注意が必要です。メールやチャットなどの客観的資料の確認、関係者や加害者とされている人へのヒアリングを経たうえで、録音データをどのように取り扱うかを適切に判断してください。
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