サバティカル休暇とは?
導入するメリット・デメリットや運用法を
分かりやすく解説!
- この記事のまとめ
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サバティカル休暇とは、自己成長や心身リフレッシュのために付与する長期休暇制度で、企業が独自に定められるものです。
・サバティカル休暇は、キャリアの見つめ直しや離職防止などの観点から、注目を集めています。
・サバティカル休暇のメリットは従業員のスキルアップによる業績向上や企業のイメージアップ、デメリットは離職リスクや現場の負担増などが挙げられます。
・サバティカル休暇の運用時には、従業員から取得目的を聞いたり、休暇中をどう過ごしたか報告会をしたりすると、より充実した制度になります。本記事では、サバティカル休暇の定義やメリット・デメリット、運用時のポイントを解説します。
※この記事は、2025年10月20日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
サバティカル休暇とは
まずは「サバティカル休暇」の概要や、近年注目されている背景、リフレッシュ休暇との違いを解説します。
サバティカル休暇の定義
サバティカル休暇とは、企業が従業員に対し、自己成長や心身のリフレッシュを目的として付与する長期休暇制度です。法律で定められた休暇ではなく、企業が任意で設ける福利厚生の一環です。そのため、取得期間を1年間など長期にしたり、休暇中は無給としたりするなど、企業が自由にルールを定められます。
サバティカル休暇を定めれば、従業員のニーズやキャリアプランに応じた休暇制度として、さまざまな従業員に利用してもらえる可能性があります。
注目される背景
サバティカル休暇制度が注目される背景には、社会や企業においてキャリアの見つめ直しや離職の防止といった観点が重視されていることが挙げられます。
平均寿命が延び、働く年数も増えつつあるなかで、キャリアに関する悩みは尽きません。キャリアを見つめ直し、新しいスキルを学んだりさまざまな経験を積んだりする時間が求められているのです。
一方、企業側にとっては優秀な人材の定着を見込めるメリットがあります。従業員が新たな知見や広い視野を身につけて復帰すれば、組織の活性化や生産性向上にもつながります。
リフレッシュ休暇との違い
サバティカル休暇とリフレッシュ休暇では、期間や目的が異なります。リフレッシュ休暇は、主に日々の業務の疲労を癒すための短期的な休息です。勤続年数に応じて数日程度付与されるのが一般的です。
一方、サバティカル休暇は1カ月や1年など、長期的に付与する休暇で、リフレッシュだけでなく、リスキリングやスキルアップも休暇の目的になります。従業員にキャリアを見つめ直す時間を与える「人材への投資」の一環と考えておくのが望ましいです。
サバティカル休暇を導入するメリット
サバティカル休暇を導入するメリットは、以下の4つです。
- 従業員のスキルアップが期待できる
- 採用の強化や離職防止につながる
- 企業イメージが向上する
- 従業員が心身をリフレッシュできる
制度の導入は、従業員自身のスキルアップはもちろん、企業のイメージアップなどにもつながります。
従業員のスキルアップが期待できる
サバティカル休暇は、従業員が日常業務から完全に離れ、集中的に自己投資を行う機会を提供できます。従業員の自己成長を目的としてサバティカル休暇を設計すれば、従業員は通常の勤務と並行してでは習得が難しい、以下のような高度なスキルアップもできるようになります。
- 大学院での学び直し
- 海外留学
- 専門資格や国家資格の取得
こうした経験は、従来の業務ではできないものであり、新しい価値観やアイデアを組織にもたらしてくれる可能性があります。
例えば、休暇中にデータサイエンスを学んだ社員が復帰後に社内のDXを推進したり、海外でのボランティア活動で得た知見から新規事業を提案したりするケースが期待できます。
採用の強化や離職防止につながる
サバティカル休暇制度は、福利厚生制度のひとつとして、企業のアピールポイントになります。働き方の多様性を重視する現代において、経験豊富な人材ほど、キャリアの節目で長期的な自己投資やリフレッシュができる環境を求める傾向があります。サバティカル休暇があれば、転職検討者が制度を好意的に受け取り、福利厚生の充実によって採用競争を有利にできる可能性があります。
また、既存の従業員にとっても、長期休暇があることで「キャリア形成を支援してくれている」と感じやすく、会社への愛着や仕事への熱意を生み出しやすくなります。結果的に、優秀な人材の離職防止にも期待できます。
企業イメージが向上する
サバティカル休暇制度の導入や発信により、企業のイメージアップを期待できます。休暇制度の制定は「従業員のキャリアと人生を尊重する先進的な企業」としてポジティブに捉えられます。従業員の成長と心身の健康を支援する休暇制度であれば、企業が人を大切にしている文化を持つことの証明にもなります。
先進的な制度を導入している企業として、社会的評価の向上につながる可能性があります。
従業員が心身をリフレッシュできる
サバティカル休暇の導入により、従業員に心身をリフレッシュする時間を与えられます。サバティカル休暇は長期休暇のため、週末の休みや数日間の有給休暇では解消しきれないストレスをリセットしたり、悩みを解決できたりする可能性があります。
心身の健康を取り戻せれば、仕事に対するモチベーションや集中力が回復し、良好なパフォーマンスに期待できます。また、休暇中のアイデアや思考が仕事のヒントになることもあり、組織全体の活性化も期待できます。
サバティカル休暇導入時のデメリット
サバティカル休暇を導入する際に生じるデメリットは、以下の4つです。
- 従業員が復職後に仕事についていけない可能性がある
- 休暇中の従業員の収入が保障されない
- 現場の業務負担や人員調整の機会が増える
- 休暇後に退職してしまう可能性がある
サバティカル休暇を導入する際は、復職支援や現場の業務調整が負担になります。また、従業員によっては退職を検討するきっかけにもなるため、対策を講じることが求められます。
従業員が復職後に仕事についていけない可能性がある
サバティカル休暇による長期間の離脱は、復職時に社内の変化についていけず、スムーズな職場復帰が困難になる可能性があります。
復職を支援するためには、復帰前に面談をしたり、休暇を邪魔しない範囲で情報提供をしたりするなどの工夫が必要です。休暇だけでなく復職支援の制度まで制定できれば、より充実した休暇制度となります。
休暇中の従業員の収入が保障されない
サバティカル休暇を取得した場合、休暇中の従業員の収入は不安定になる可能性があります。サバティカル休暇は会社独自の休暇であり、休暇中は無給とすることもできるためです。
さらに、例え休暇期間中に従業員への給料の支払いがなくても、社会保険料や住民税は前年の所得に対して課されるため、従業員の納付義務は継続します。休暇分の税金・社会保険料を事前に徴収するよう定めていれば、従業員の家計にも影響を及ぼします。休暇中で収入がない影響で、従業員の生活が困難になる可能性が考えられます。
サバティカル休暇に入る前の従業員に資金の不安がないか確認したり、サバティカル休暇取得による簡易的な一時金制度を設けたりして、従業員の生活を守るのが望ましいです。
現場の業務負担や人員調整の機会が増える
現場の負担が増える点もデメリットです。従業員が長期間不在になることで、残されたメンバーが分担して業務対応に当たらなければならず、現場は業務負担が増えます。
特定の担当者にしか詳細がわからない業務がある場合、業務自体が停滞し、生産性の低下を招く可能性もあります。このほか、休暇を取得しない従業員が不公平さを感じる要因にもなります。
現場の負担を緩和するには、制度の運用を工夫する必要があります。例えば、繁忙期の取得を制限するルールを設ける、日頃から業務のマニュアル化や標準化をして長期不在者が出ても対応できる体制を整えるなどの工夫です。代わりの人員を臨時で採用するなど、現場が混乱しないよう対策しておくことも重要です。
休暇後に退職してしまう可能性がある
休暇を取得した従業員が復職せずに退職や転職を選ぶ可能性も考えられます。従業員は、自己投資やリフレッシュを目的とした休暇中にさまざまな経験をします。そのため、自身のキャリアに対する価値観が変わることがあります。従業員が会社に戻る以外の選択肢を選べば、企業としては休暇を与えて人材を流出させたことになってしまうのです。
職業選択は個人の自由であり、休暇取得後の離職を制限することはできません。退職リスクを減らすには、復職支援を丁寧にしたり、新たな役割やポジションを用意したりするなど、復帰が魅力的に思えるような措置を講じます。
サバティカル休暇導入に必要な対応・手続き
サバティカル休暇を導入するには、以下の手順で手続きを進めます。
- 目的や方針を明確にする
- 休暇の対象となる人や取得条件を設定する
- 就業規則の規定を作成する
- 社内で周知する
それぞれのステップですべきことをおさえ、スムーズに休暇制定をしてください。
1.目的や方針を明確にする
サバティカル休暇の導入を始める際は、目的や方針を明確にするのが重要です。目的を考えずに導入すると、制度内容が曖昧になり、従業員に使われないものになってしまいます。
「心身をリフレッシュしてもらうこと」「スキルアップを応援するもの」といった、休暇を取る目的をいくつか挙げ、それに沿った内容を組み立てていくのが望ましいです。
なかなかよい目的が見つからない場合は「離職率の高さ」「イノベーション不足」といった自社の課題から逆算して目的を設計するという方法もあります。
2.休暇の対象となる人や取得条件を設定する
制度の目的が固まったら、休暇の取得対象となる人や条件を設定します。従業員間で不公平感が生まれたり、取得者が相次ぎ業務に支障をきたしたりすることのないように設定するのがポイントです。例えば、取得条件を満たせる人が限られたり、部署の繁忙期を狙って取得を申請する従業員がいたりといったことになると、制度の利用が難しくなります。
この段階で検討すべき点として、以下のようなものが挙げられます。
- 休暇の対象者:正社員全員・管理職以外・パートも含むなど
- 取得の条件:勤続年数や年齢など
- 休暇期間:1カ月・6カ月・1年・1年以上など
- 取得目的:心身リフレッシュ・スキルアップ・ボランティア従事など
- 申請手続き:勤怠管理システムの活用・帳簿管理など
3.就業規則の規定を作成する
設計したルールは、就業規則に明記する必要があります。休暇制度を運用する際は、就業規則の内容が根拠となるためです。
就業規則には、休暇の内容だけでなく、以下のような内容を記載します。
- 休暇中の給与の扱い:有給・無給
- 休暇中の社会保険料の扱い:事前に休暇日数分をまとめて徴収、休暇終了後にまとめて徴収など
- 休暇中の住民税の支払方法:従業員に会社の口座宛に振り込んでもらうなど
- 休暇期間を退職金算定の勤続年数に含めるか:勤続年数として含める・含めない
- 休暇中のルール:上司に連絡するペース・副業・兼業の可否
- 復職時の扱い:元の部署に復帰する・取得したスキルに応じて希望を聞く、など
就業規則に記載する内容は、解釈が人によって分かれることのないよう具体化する必要があります。社会保険労務士などの専門家に相談しながら作成していくのが望ましいです。
就業規則への記載が終了したら、変更した就業規則案を労働者の代表に提示して意見を聴取し、意見書を作成します。その後、労働者10人以上を雇用する会社であれば、必ず労働基準監督署に就業規則の変更を届け出てください。
4.社内で周知する
制度が完成したら従業員へ周知します。とくに、部下からの取得申請を受ける管理職には、制度内容を十分に理解してもらう必要があります。
社内全体での説明会や管理職向けの研修、社内ポータルサイトや掲示板への掲載などを定期的に行い、休暇制度が存在することを知ってもらうのが重要です。
もし最初の取得者が出た際には、その体験談を社内報などで共有し、ほかの従業員の利用を後押しするのもよい試みです。
サバティカル休暇の運用方法
サバティカル休暇を上手に運用するには、ルールや仕組みが重要です。従業員の不公平感や現場に穴を開ける状況を生まないよう、以下の3点を意識します。
- 取得目的に幅を持たせる
- 休暇中をどのように過ごしたか報告してもらう
- 業務の引き継ぎ体制を確認する
取得目的に幅を持たせる
従業員が利用しやすいよう、サバティカル休暇の取得目的に幅を持たせるのが望ましいです。サバティカル休暇を従業員が取得する際は、以下のようにさまざまな理由が想定されます。
- 資格を取得して業務に活かしたい
- 海外に行って知見を広めて多くの経験を積みたい
取得目的を極端に狭めないように設定しておけば、取得率が高まる可能性もあります。
休暇中をどのように過ごしたか報告してもらう
スキルアップやボランティアなどの経験のために休暇を取得した従業員には、休暇終了後に、レポート提出や報告会といった形で休暇をどのように過ごしたか報告してもらうと、個人の経験を自社に還元してもらえる可能性が高まります。従業員が何を経験し、何を学んだのかを組織として把握し、知見を共有する場を設けます。
特に報告会は、従業員自身も経験を客観的に振り返れるうえ、ほかの従業員と交流する機会となるため、職場復帰がスムーズになるという利点があります。
こうした報告はほかの従業員のロールモデルにもなり、制度の利用を促す効果も期待できます。報告会が難しければ、社内広報で簡単なインタビューをして掲載するといった取り組みも効果的です。
業務の引き継ぎ体制を確認する
制度利用の希望者が現れた場合には、業務の引き継ぎ体制を確認します。上司や人事部が積極的に関与し、計画的な引き継ぎ体制を構築するのがポイントです。
就業規則等で休暇開始の前に引継計画書の作成を義務付けておけば、後で業務に支障が出る可能性が低くなります。引継計画は上司が内容を確認し、部署全体で共有します。
サバティカル休暇の活用が、業務のマニュアル化を推進し、より効率よく働ける機会になる可能性もあるのです。
参考文献
内閣府「男女共同参画白書 令和5年版コラム 6 休み方考察~サバティカル休暇」
監修者












