下請法3条書面とは?
基本を解説!

この記事のまとめ

下請法の3条書面について分かりやすく解説!

いわゆる「3条書面」とは、下請法3条に定められている親事業者が、下請事業者に交付しなければならない書面のことです。親事業者としては、3条書面のルールを守らなければ、下請法違反として社会的にも法令上も制裁をうけることになりますので、しっかり理解しなければなりません。 この記事では、下請法の初学者の方にむけて、次の事項を分かりやすく解説します。

・どのような取引で3条書面を作成しなければならないのか?
・3条書面とは何か?
・3条書面には、何を記載すべきか?

ヒー

コンペに提出するためのデザインの作成を他社に委託したのですが、下請法の適用はありますか?この場合、3条書面を作成しなければならないのでしょうか?

ムートン

まず、下請法の適用があるかどうかは、
①何を委託するのか、
②取引相手の資本金はどのくらいか
によって判断します。このケースでは、ヒツジさんの会社と委託先の会社の資本金の額によっては下請法の適用がある可能性がありますね。下請法の考え方の基本から一緒に学んでいきましょう!

※この記事は、2020年8月24日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

下請法の対象となる取引(何を委託するのか?)

下請法の適用があるかどうかを判断するうえでは、まず、何を委託するのかといった点が重要です。下請法は、あらゆる取引に適用されるわけではありません。下請法が適用される取引は、製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託の4種類があります。そのため、下請法の適用があるかどうかを判断するためには、まず、これらの4種類のうちいずれかの類型に該当しないかを確認していきます。以下、それぞれの類型について解説します。

下請法の対象となる取引

①製造委託
②修理委託
③情報成果物作成委託
④役務提供委託

製造委託

下請法は、「製造委託」について次のように定義しています(下請法2条1項)。

第2条 この法律で「製造委託」とは、事業者が業として行う販売若しくは業として請け負う製造(加工を含む。以下同じ。)の目的物たる物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料若しくはこれらの製造に用いる金型又は業として行う物品の修理に必要な部品若しくは原材料の製造を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用し又は消費する物品の製造を業として行う場合にその物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料又はこれらの製造に用いる金型の製造を他の事業者に委託することをいう。

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よく読むと、製造委託は、 販売目的物品等の製造委託、物品等の製造再委託、修理用部品等の製造委託、自家使用物品等の製造委託 の4つの取引類型に分けることができます。以下、それぞれの類型について具体例と合わせて解説します。

販売目的物品等の製造委託

販売目的物品等の製造委託とは、 業として物品を販売している事業者が、その販売する物品それ自体又はその物品の半製品、部品等の製造及びその物品や部品等の製造に用いられる金型の製造を他の事業者に委託する取引 をいいます。

【具体例】
・自動車製造業者が、販売する自動車の部品の製造を部品製造業者に委託する場合。
・百貨店、スーパー、コンビニエンスストア本部等の大規模小売業者が自社のプライベートブランド商品の製造を食品加工業者に委託する場合。
・出版社が、販売する書籍の印刷を印刷業者に委託する場合。
・電気器具製造業者が、販売する電気器具を構成する部品の製造に用いる金型の製造を金型製造業者に委託する場合。

物品等の製造再委託

物品等の製造再委託とは、 物品の製造を請け負っている事業者が、当該物品の製造を他の事業者に委託する取引をいます。 「販売目的物品等の製造委託」とほとんど同じ構成ですが、製造委託する物品が 「業として請け負う製造の目的物」 であるという点が異なります。

【具体例】
・食品メーカーから食品生産用機械の製造を請け負った機械メーカーが、その機械の部品の製造を部品製造業者に委託する場合。

修理用部品等の製造委託

修理用部品等の製造委託とは、 業として物品の修理を行っている事業者が、その修理に必要な部品又は原材料の製造を他の事業者に委託する取引 をいいます。

【具体例】
・販売した家電製品の修理を業としている家電製品製造業者が、修理用部品の製造を部品製造業者に委託する場合。
・工作機械製造業者が、自社で修理している自社工場内の工作機械の修理に用いる部品の製造を部品製造業者に委託する場合(※社内の物品の修理を行う場合も本類型に含まれます。)。

自家使用物品等の製造委託

自家使用物品等の製造委託とは、 自社で使用し又は消費する物品の製造を業として行っている事業者が、その物品等又は物品等の製造に用いる金型の製造を他の事業者に委託する取引 をいいます。

【具体例】
・機械メーカーが自社で使う工具類を自社で製造している場合に、工具の一部の製造を他の製造業者に委託する場合。

修理委託

修理委託は、委託する修理の受益者によって、 ①物品の修理を請け負う場合、②自ら使用する物品の修理を行う場合の2つの取引類型に分けられます。

第2条(略)
2. この法律で「修理委託」とは、事業者が業として請け負う物品の修理の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用する物品の修理を業として行う場合にその修理の行為の一部を他の事業者に委託することをいう。

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以下、それぞれの類型について具体例と合わせてご説明します。

物品の修理再委託

物品の修理再委託とは、 業として修理を請け負っている事業者が、請け負った修理物品の修理の行為の全部又は一部を他の事業者に委託する取引 をいいます。

【具体例】
・自動車ディーラーが顧客から請け負った自動車修理を修理業者に委託する場合。

自家使用物品の修理委託

自家使用物品の修理委託とは、 事業者自身が使用する物品の修理を業として行う場合に、その修理の行為の一部を他の事業者に委託する取引 をいいます。事業者は顧客から修理を依頼されていないことが特徴です。

 【具体例】
・自社の工場内で使用している機械類などの修理を社内で行っている場合に、その修理の一部を他の修理業者に委託する場合。

情報成果物作成委託

情報成果物作成委託は、 提供目的情報成果物の作成委託、情報成果物の作成再委託、自家使用情報成果物の作成委託、 という3つの取引類型に分けることができます。 なお、「情報成果物」の定義について、下請法2条6項4号には、「前3号に掲げるもののほか、これらに類するもので政令で定めるもの」と定められていますが、現状、4号に基づく政令は定められていません。

第2条(略)
3. この法律で「情報成果物作成委託」とは、事業者が業として行う提供若しくは業として請け負う作成の目的たる情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用する情報成果物の作成を業として行う場合にその情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託することをいう。
4~5.(略)
6. この法律で「情報成果物」とは、次に掲げるものをいう。
(1) プログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。)
(2) 映画、放送番組その他影像又は音声その他の音響により構成されるもの
(3) 文字、図形若しくは記号若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合により構成されるもの
(4) 前3号に掲げるもののほか、これらに類するもので政令で定めるもの

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以下、それぞれの類型について具体例と合わせてご説明します。

提供目的情報成果物の作成委託

提供目的情報成果物の作成委託とは、 業として情報成果物を提供している事業者が、その情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託する取引 です。

【具体例】
・プログラム開発業者が消費者に販売するゲームソフトのプログラムの開発を他の開発業者に委託する場合。
・放送事業者が放送するテレビ番組の制作を番組制作業者に委託する場合。
・飲料メーカーが新商品のパッケージデザインをデザイン会社に委託する場合。
・情報通信事業者が、インターネット上で利用者に有料で提供するコンテンツの作成をコンテンツ作成業者に委託する場合(※無料の場合はこの類型には該当しない。)。

情報成果物の作成再委託

情報成果物の作成再委託とは、 業として情報成果物の作成を請け負っている事業者が、その情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託する取引 です。提供目的情報成果物の作成委託との違いは、 「業として情報成果物の作成を請け負っている」という点となります。

【具体例】
・ソフトウェア開発業者が、ユーザーから開発を請け負うソフトウェアの設計書の作成を他の開発業者に委託する場合。
・テレビ番組制作業者が、制作を請け負うテレビ番組の脚本を脚本家に委託する場合。
・広告会社が作成を請け負うポスターデザインのデザインをデザイン業者に委託する場合。
・コンテンツ作成業者が顧客から請け負うホームページの作成を他の事業者に委託する場合。

自家使用情報成果物の作成委託

自家使用情報成果物の作成委託とは、 自社で使用する情報成果物の作成を業として行っている事業者が、その情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託する取引 です。

【具体例】
・ソフトウェア開発業者が、自社で使用する会計用ソフトウェアの一部の開発を他のソフトウェア開発業者に委託する場合。
・自らデザインを作成している広告制作会社が、新製品のデザインコンペに提出するデザインを他のデザイン業者に委託する場合。

役務提供委託

役務提供委託の定義について、下請法には次にように定められています。 取引類型は、 事業者が、他者に対し役務を有償で提供しようとする場合に、その役務の全部又は一部を他の事業者に委託する場合のみです。

第2条(略)
4. この法律で「役務提供委託」とは、事業者が業として行う提供の目的たる役務の提供の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること(建設業(建設業法(昭和24年法律第100号)第2条第2項に規定する建設業をいう。以下この項において同じ。)を営む者が業として請け負う建設工事(同条第1項に規定する建設工事をいう。)の全部又は一部を他の建設業を営む者に請け負わせることを除く。)をいう。

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【具体例】
 ・ビルメンテナンス業者が、請け負うメンテナンス業務の一部である清掃を清掃業者に委託する場合。
 ・ソフトウェアの販売業者が、販売しているソフトウェアの顧客サポートを他の事業者に委託する場合。

親事業者・下請事業者とは(取引相手の資本金はどのくらいか?)

製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託の4種類のうち、いずれかの類型に該当する場合は、次に、取引相手の資本金がどのくらいかを確認します。下請法は、「親事業者」と「下請事業者」に対して適用される法令です。この「親事業者」と「下請事業者」は、いくら資本金をもっているのかによって決まります。そのため、下請法の適用があるかを判断するためには、自社と相手方が「親事業者」と「下請事業者」に該当するかどうか、すなわち自社はもちろん、相手方の資本金も確認する必要があるのです。

親事業者と下請事業者の資本金の関係は、取引内容によって2つの組み合わせに分けられます(親事業者につき下請法2条7項、下請事業者につき同8項。)。いずれの取引であっても個人事業者は下請業者に該当します。

物品の製造・修理委託と一部の情報成果物・役務提供委託

物品の製造・修理委託と一部の情報成果物・役務提供委託は、親事業者と下請事業者の資本金が次のいずれかの組み合わせに該当するときに下請法の適用があります。一部の情報成果物・役務提供委託とは、政令で定められており、プログラム作成、運送、物品の倉庫保管、情報処理に係るものです。

【親事業者】…………【下請事業者】

・資本金3億円超…………資本金3億円以下(個人を含む)
・資本金1万円超3億円以下………資本金1千万円以下(個人を含む)

情報成果物作成・役務提供委託を行う場合(上記の情報成果物・役務提供委託を除く。)

情報成果物作成・役務提供委託は、親事業者と下請事業者の資本金が次のいずれかの組み合わせに該当するときに下請法の適用があります。 なお、この情報成果物作成・役務提供委託には、プログラム作成、運送、物品の倉庫保管、情報処理に係るものは含まれません。

【親事業者】…………【下請事業者】

・資本金5千万円超…………資本金5千万円以下(個人を含む)
・資本金1千万円超5千万円以下………資本金1千万円以下(個人を含む)

親事業者の義務

親事業者には次の4つの義務が定められています。

親事業者の義務義務の概要
書面の交付義務(3条)発注の際は、直ちに3条書面を交付すること。
支払期日を定める義務(2条の2)下請代金の支払期日を給付の受領後60日以内に定めること。
書類の作成・保存義務(5条)下請取引の内容を記載した書類を作成し、2年間保存すること。
遅延利息の支払義務(4条の2)支払が遅延した場合は遅延利息を支払うこと。

以下、それぞれの義務について解説します。

書面交付義務(3条)

親事業者は、発注に際して同条に規定されている具体的記載事項をすべて記載している書面(3条書面)を直ちに下請事業者に交付する義務があります。具体的記載事項について、後ほど詳しく解説します。

支払期日を定める義務(2条の2)

事業者は、下請事業者との合意の下に、親事業者が下請事業者の給付の内容について検査するかどうかを問わず、下請代金の支払期日を物品等を受領した日(役務提供委託の場合は、下請事業者が役務の提供をした日)から起算して60日以内でできる限り短い期間内で定める義務があります。

書類の作成・保存義務(5条)

親事業者は、下請事業者に対し製造委託、修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託をした場合は給付の内容、下請代金の額等について記載した書類(5条書類)を作成し2年間保存する義務があります。5条書類に記載すべき具体的事項は、「下請代金支払遅延等防止法第5条の書類又は電磁的記録の作成及び保存に関する規則」(平成15年公正取引委員会規則第8号)に定められています。なお、実務上は、3条書面の控えをとっておいて、これに必要事項を追加するということも問題ありません。

【5条書類に記載すべき具体的事項】

① 下請事業者の名称(番号、記号等による記載も可)
② 製造委託、修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
③ 下請事業者の給付の内容(役務提供委託の場合は役務の提供の内容)
④  下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は、下請事業者が役務の提供をする期日・期間)
⑤ 下請事業者から受領した給付の内容及び給付を受領した日(役務提供委託の場合は、下請事業者から役務が提供された日・期間)
⑥ 下請事業者の給付の内容について検査をした場合は、検査を完了した日、検査の結果及び 検査に合格しなかった給付の取扱い
⑦ 下請事業者の給付の内容について、変更又はやり直しをさせた場合は、内容及び理由
⑧ 下請代金の額(算定方法による記載も可)
⑨ 下請代金の支払期日
⑩ 下請代金の額に変更があった場合は、増減額及び理由
⑪ 支払った下請代金の額、支払った日及び支払手段
⑫ 下請代金の支払につき手形を交付した場合は、手形の金額、手形を交付した日及び手形の満期
⑬  一括決済方式で支払うこととした場合は、金融機関から貸付け又は支払を受けることができることとした額及び期間の始期並びに親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払った日
⑭ 電子記録債権で支払うこととした場合は、電子記録債権の額、下請事業者が下請代金の支払を受けることができることとした期間の始期及び電子記録債権の満期日
⑮ 原材料等を有償支給した場合は、品名、数量、対価、引渡しの日、決済をした日及び決済方法
⑯ 下請代金の一部を支払い又は原材料等の対価を控除した場合は、その後の下請代金の残額
⑰ 遅延利息を支払った場合は、遅延利息の額及び遅延利息を支払った日

遅延利息の支払義務(4条の2)

親事業者は、下請代金をその支払期日までに支払わなかったときは、下請事業者に対し、物品等を受領した日(役務提供委託の場合は、下請事業者が役務の提供をした日)から起算して60日を経過した日から実際に支払をする日までの期間について、その日数に応じ当該未払金額に年率14.6%を乗じた額の遅延利息を支払う義務があります。

親事業者の禁止事項

下請法4条において、親事業者には、次の11の禁止事項が定められています。これらの行為を行うと、下請事業者の了解を得ていたとしても、また、親事業者に違法性の認識がなかったとしても、下請法に違反することになります。

親事業者の禁止事項禁止事項の概要
受領拒否(4条1項第1号)注文した物品等の受領を拒むこと。
下請代金の支払遅延(4条1項第2号)下請代金を受領後60日以内に定められた支払期日までに支払わないこと。
下請代金の減額(4条1項第3号)下請代金の減額(4条1項第3号)
返品(4条1項第4号)受け取った物を返品すること。
買いたたき(4条1項第5号)類似品等の価格又は市価に比べて著しく低い下請代金を不当に定めること。
購入・利用強制(4条1項第6号)親事業者が指定する物・役務を強制的に購入・利用させること。
報復措置(4条1項第7号)下請事業者が親事業者の不公正な行為を公正取引委員会又は中小企業庁に知らせたことを理由としてその下請事業者に対して、取引数量の削減・取引停止等の不利益な取扱いをすること。
有償支給原材料等の対価の早期決済(4条2項第1号)有償で支給した原材料等の対価を、当該原材料等を用いた給付に係る下請代金の支払期日より早い時期に相殺したり支払わせたりすること。
割引困難な手形の交付(4条2項第2号)一般の金融機関で割引を受けることが困難であると認められる手形を交付すること。
不当な経済上の利益の提供要請(4条2項第3号)下請事業者から金銭、労務の提供等をさせること。
不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(4条2項第4号)費用を負担せずに注文内容を変更し、又は受領後にやり直しをさせること。

以下、それぞれ解説します。

受領拒否の禁止(1項1号)

親事業者が下請事業者に対して委託した給付の目的物について、下請事業者が納入してきた場合、親事業者は下請事業者に責任がないのに受領を拒むことはできません。

下請代金の支払遅延の禁止(1項2号)

親事業者は物品等を受領した日(役務提供委託の場合は、役務が提供された日)から起算して60日以内に定めた支払期日までに下請代金を全額支払わなければなりません。

下請代金の減額(1項3号)

親事業者は発注時に決定した下請代金を「下請事業者の責に帰すべき理由」がないにもかかわらず発注後に減額してはいけません。

返品の禁止(1項4号)

親事業者は下請事業者から納入された物品等を受領した後に、その物品等に瑕疵があるなど明らかに下請事業者に責任がある場合において、受領後速やかに不良品を返品するのは問題ありませんが、それ以外の場合に受領後に返品することはできません。

買いたたきの禁止(1項5号)

親事業者が発注に際して下請代金の額を決定するときに、発注した内容と同種又は類似の給付の内容(又は役務の提供)に対して通常支払われる対価に比べて著しく低い額を不当に定めることは「買いたたき」とされ、禁止されています。

購入・利用強制の禁止(1項6号)

親事業者が、下請事業者に注文した給付の内容を維持するためなどの正当な理由がないのに、親事業者の指定する製品(自社製品を含む)・原材料等を強制的に下請事業者に購入させたり、サービス等を強制的に下請事業者に利用させて対価を支払わせたりすると購入・利用強制となり、禁止されています。

報復措置の禁止(1項7号)

親事業者が、下請事業者が親事業者の下請法違反行為を公正取引委員会又は中小企業庁に知らせたことを理由として、その下請事業者に対して取引数量を減じたり、取引を停止したり、その他不利益な取扱いをすることはできません。

有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止(2項1号)

親事業者が下請事業者の給付に必要な半製品、部品、付属品又は原材料を有償で支給している場合に、下請事業者の責任に帰すべき理由がないのにこの有償支給原材料等を用いて製造又は修理した物品の下請代金の支払期日より早い時期に当該原材料等の対価を下請事業者に支払わせたり下請代金から控除(相殺)したりすることはできません。

割引困難な手形の交付の禁止(2項2号)

親事業者は下請事業者に対し下請代金を手形で支払う場合、支払期日までに一般の金融機関で割り引くことが困難な手形を交付することはできません。

不当な経済上の利益の提供要請の禁止(2項3号)

親事業者が、下請事業者に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させることにより、下請事業者の利益を不当に害することはできません。

不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止(2項4号)

親事業者が下請事業者に責任がないのに、発注の取消若しくは発注内容の変更を行い、又は受領後にやり直しをさせることにより、下請事業者の利益を不当に害することはできません。

3条書面とは?

親事業者は、発注に際して、下請事業者に交付しなければならない書面をいいます。このような親事業者の書面の交付義務が下請法3条に定められていることから、一般的に「3条書面」と呼ばれています。

3条書面の記載事項

親事業者は、発注に際して下記の具体的記載事項を すべて記載している書面(3条書面)を直ちに下請事業者に交付する義務があります。 3条書面に記載すべき具体的事項は、 「下請代金支払遅延等防止法第3条の書類又は電磁的記録の作成及び保存に関する規則」 (平成15年公正取引委員会規則第7号。以下「3条規則」と言います。)に定められています。

必要記載事項のうち、正当な理由によりその内容が定められず記載できない事項がある場合は、ひとまずそれ以外の必要記載事項を記載した書面を直ちに交付します。その上で、内容が定まり次第、直ちに、記載できなかった事項につき記載した書面を交付することも可能です。

【3条書面に記載すべき具体的事項】

①親事業者及び下請事業者の名称(番号、記号等による記載も可)
②製造委託、修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
③下請事業者の給付の内容(委託の内容が分かるよう、明確に記載する。)
④下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は、役務が提供される期日又は期間)
⑤下請事業者の給付を受領する場所
⑥下請事業者の給付の内容について検査をする場合は、検査を完了する期日
⑦下請代金の額(具体的な金額を記載する必要があるが、算定方法による記載も可)
⑧下請代金の支払期日
⑨手形を交付する場合は、手形の金額(支払比率でも可)及び手形の満期
⑩一括決済方式で支払う場合は、金融機関名、貸付け又は支払可能額、親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払う期日
⑪電子記録債権で支払う場合は、電子記録債権の額及び電子記録債権の満期日
⑫原材料等を有償支給する場合は、品名、数量、対価、引渡しの期日、決済期日、決済方法

サンプル

3条書面については特に様式の制約はありません。個々の取引の実情に即して作成して問題ありません(上記の必要記載事項は明確にされている必要があります。)。公正取引委員会が発行する「下請取引適正化推進講習会テキスト」に書式例が掲載されています。

製造委託等を同一の下請け業者に繰り返し行う場合、毎回同じ内容の事項についてまで、記載を繰り返すのは面倒です。そこで、必要記載事項のうち、一定期間共通である事項(支払方法、検査期間等)については、あらかじめこれらの事項を明確に記載した書面で下請事業者に通知しておけば、都度、交付する個々の3条書面にこれらの事項を具体的に記載する必要はありません(3条、規則4条1項。)。

 たとえば、
 [支払方法等は〇年〇月〇日付け「支払方法等について」による]
 といった記載が許されます。

記載しなかった場合の効果

親事業者が3条書面を交付しなかった場合は、 50万円以下の罰金が科せられます(下請法10条1項)。

まとめ

下請法3条書面の解説は以上です。契約書を3条書面に代用することもできます。その場合は、契約レビューでは3条書面の記載事項が定められているかを確認しましょう。

参考文献

公正取引委員会ホームページ

鎌田明編著『下請法の実務』第4版、公益財団法人公正取引協会発行、2017年

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