下請法とは?
適用対象の取引など基本を分かりやすく解説!
- この記事のまとめ
-
下請法を解説!!
下請法の正式名称は「下請代金支払遅延等防止法」です。下請法は、独占禁止法を補完する法律です。 独占禁止法は、公正・自由な競争の実現を目指す法律です。
下請法も、同じ趣旨に基づく法律であり、 下請事業者に対する親事業者の不当な取り扱いを規制する法律です。
この記事では、下請法の知識がない方にも基本から分かりやすく解説します。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- 下請法…下請代金支払遅延等防止法
- 独禁法…私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
(※この記事は、2021年4月21日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。)
目次
下請法(下請代金支払遅延等防止法)とは?
下請取引における下請代金の支払遅延などの行為は、独禁法の不公正な取引方法のうち優越的地位の濫用行為に該当するため、 独禁法19条に違反するおそれがある行為です。
もっとも、独禁法により規制する場合には、個別に濫用行為であることを認定する必要があり、 相当期間を要するため問題解決の時期を逸する場合があります。
また、下請取引の性格上、下請事業者が親事業者の違反行為を公正取引委員会又は中小企企業庁に申告することは、 あまり期待できません。
したがって、親事業者の下請事業者に対する取引を規制し、下請事業者の利益を確保するためには, 独禁法の処理手続とは別の簡易な手続が必要であるとの考えから、下請法が、独禁法の補完法として制定されました。
下請法の適用対象となる取引
下請法は、適用の対象となる下請取引の範囲を、①取引の内容及び②取引当事者の資本金の2つの区分に分けて定めており (下請法2条7項、8項)、この2つの条件を満たす取引に下請法が適用されます。
まず、①取引の内容については、ⅰ物品の製造委託・修理委託、情報成果物委託(プログラムの作成に限る。)、 役務提供委託(運送、物品の倉庫における保管及び情報処理に限る。)並びに、ⅱ情報成果物作成委託(プログラムの作成を除く。)及び役務提供委託(運送、物品の倉庫における保管及び情報処理を除く。)の区分に分かれます。
ⅰ ・物品の製造委託 ・修理委託 ・情報成果物委託(プログラムの作成に限る) ・役務提供委託(運送、物品の倉庫における保管及び情報処理に限る) ⅱ ・情報成果物委託(プログラムの作成を除く) ・役務提供委託(運送、物品の倉庫における保管及び情報処理を除く) |
次に、②取引当事者の資本金の区分ですが、①の取引内容の区分によって対象となる資本金額が変わってきます。
ⅰの区分においては、資本金3億円超の法人事業者が「親事業者」として、資本金3億円以下の法人事業者(又は個人事業者)が「下請事業者」とされます(下請法第2条7項1号、8 項1号)。
第2条
下請代金支払遅延防止法– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
1~6 略
7 この法律で「親事業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
(1)資本金の額又は出資の総額が3億円を超える法人たる事業者 (政府契約の支払遅延防止等に関する法律(昭和24年法律第256号)第14条に規定する者を除く。) であつて、個人又は資本金の額若しくは出資の総額が3億円以下の法人たる事業者に対し 製造委託等(情報成果物作成委託及び役務提供委託にあつては、それぞれ政令で定める情報成果物及び役務に係るものに限る。次号並びに次項第1号及び第2号において同じ。)をするもの
(2)から(4)略
8 この法律で「下請事業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
(1)個人又は資本金の額若しくは出資の総額が3億円以下の法人たる事業者であつて、前項第1号に規定する親事業者から製造委託等を受けるもの
(2)から(4)略
また、同じくⅰの区分において、資本金1000万円超3億円以下の法人事業者が「親事業者」として、資本金1000万円以下の法人事業者(又は個人事業者)が 「下請事業者」とされます(下請法第2条7項2号、8項2号)。
第2条
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1~6 略
7 この法律で「親事業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
(1)略
(2)資本金の額又は出資の総額が1000万円を超え3億円以下の法人たる 事業者(政府契約の支払遅延防止等に関する法律第14条に規定する者を除く。)であつて、 個人又は資本金の額若しくは出資の総額が1000万円以下の法人たる事業者に対し製造委託等をするもの
(3)及び(4)略
8 この法律で「下請事業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
(1)略
(2)個人又は資本金の額若しくは出資の総額が1000万円以下の法人たる事業者であつて、 前項第2号に規定する親事業者から製造委託等を受けるもの
(3)及び(4)略
ⅱの区分においては、資本金5000万円超の法人事業者が「親事業者」として、 資本金5000万円以下の法人事業者(又は個人事業者)が「下請事業者」とされます(下請法第2条7項3号、8項3号)。
第2条
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1~6 略
7 この法律で「親事業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
(1)及び(2)略
(3)資本金の額又は出資の総額が5000万円を超える法人たる事業者(政府契約の支払遅延防止等に関する法律第14条に 規定する者を除く。)であつて、個人又は資本金の額若しくは出資の総額が5000万円以下の法人たる事業者に対し 情報成果物作成委託又は役務提供委託(それぞれ第1号の政令で定める情報成果物又は役務に係るものを除く。 次号並びに次項第3号及び第4号において同じ。)をするもの
(4)略
8 この法律で「下請事業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
(1)及び(2)略
(3)個人又は資本金の額若しくは出資の総額が5000万円以下の法人たる 事業者であつて、前項第3号に規定する親事業者から情報成果物作成委託又は役務提供委託を受けるもの
(4)略
また、同じくⅱの区分において、資本金1000万円超5000万円以下の法人事業者が「親事業者」として、 資本金1000万円以下の法人事業者(又は個人事業者)が「下請事業者」とされます(下請法第2条7項4号、8項4号)。
第2条
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1~6 略
7 この法律で「親事業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
(1)から(3)略
(4)資本金の額又は出資の総額が1000万円を超え5000万円以下の法人たる 事業者(政府契約の支払遅延防止等に関する法律第14条に規定する者を除く。)であつて、 個人又は資本金の額若しくは出資の総額が1000万円以下の法人たる事業者に対し情報成果物作成委託又は役務提供委託をするもの
8 この法律で「下請事業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
(1)から(3)略
(4)個人又は資本金の額若しくは出資の総額が1000万円以下の法人たる事業者であつて、 前項第4号に規定する親事業者から情報成果物作成委託又は役務提供委託を受けるもの
これをまとめると次の図のようになります。
親事業者 | 下請事業者 | |
---|---|---|
ⅰ ・物品の製造委託 ・修理委託 ・情報成果物委託(プログラムの作成に限る) ・役務提供委託(運送、物品の倉庫における保管及び情報処理に限る) | 資本金3億円超の法人事業者 | 資本金3億円以下の法人事業者(又は個人事業者) |
資本金1000万円超3億円以下の法人事業者 | 資本金1000万円以下の法人事業者(又は個人事業者) | |
ⅱ ・情報成果物委託(プログラムの作成を除く) ・役務提供委託(運送、物品の倉庫における保管及び情報処理を除く) | 資本金5000万円超の法人事業者 | 資本金5000万円以下の法人事業者(又は個人事業者) |
資本金1000万円超5000万円以下の法人事業者 | 資本金1000万円以下の法人事業者(又は個人事業者) |
下請事業者に対する親事業者の義務
3条書面の交付義務
まず、親事業者は、下請事業者に対し、製造委託、修理委託、情報成果物作成委託及び役務提供委託 (以下「製造委託等」といいます。)をした場合は、直ちに、必要事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければなりません。 詳しくは「下請法3条書面とは?基本を解説!」で解説しているため、気になる方はぜひご参考になさってください。
5条書面の作成・保存義務
また、親事業者は、下請事業者に対し、製造委託等をした場合は、必要事項を記載した書類(いわゆる5条書類)を作成し、 これを2年間保存しなければなりません(下請法第5条)。
(書類等の作成及び保存)
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第5条
親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、公正取引委員会規則で定めるところ により、下請事業者の給付、給付の受領(役務提供委託をした場合にあつては、 下請事業者がした役務を提供する行為の実施)、下請代金の支払その他の事項について記載し 又は記録した書類又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない 方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成し、 これを保存しなければならない。
この規定が設けられた趣旨は、親事業者が、下請取引の内容について記載した書類を作成し保存することによって、 下請取引に係るトラブルを未然に防止するとともに、行政機関の検査の迅速さ、正確さを確保する点にあります。
下請法第5条の「公正取引委員会規則」とは、「下請代金支払遅延等防止法第5条の書類又は電磁的記録の作成及び 保存に関する規則(5条規則)」を指し、具体的には以下のような記載が5条書面には必要となります。
- 5条書面記載事項
-
✅下請事業者の名称(番号、記号等による記載も可)
✅製造委託、修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
✅下請事業者の給付の内容(役務提供委託の場合は、役務の提供の内容)
✅下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は、役務が提供される期日又は期間)
✅下請事業者から受領した給付の内容及び給付を受領した日(役務提供委託の場合は、役務が提供された日又は期間)
✅下請事業者の給付の内容(役務提供委託の場合は、提供される役務の内容)について、検査をした場合は、その検査を完了した日、検査の結果及び検査に合格しなかった給付の取扱い
✅下請事業者の給付の内容について、変更又はやり直しをさせた場合は、その内容及び理由
✅下請代金の額(下請代金の額として算定方法を記載した場合には、その後定まった下請代金の額を記載しなければならない。また、その算定方法に変更があった場合、変更後の算定方法、その変更後の算定方法により定まった下請代金の額及び変更した理由を記載しなければならない。)
✅下請代金の支払期日
✅下請代金の額に変更があった場合は、増減額及びその理由
✅支払った下請代金の額、支払った日及び支払手段
✅下請代金の全部又は一部の支払につき、手形を交付した場合は、その手形の金額、手形を交付した日及び手形の満期
✅下請代金の全部又は一部の支払につき、一括決済方式で支払うこととした場合は、金融機関から貸付け又は支払を受けることができることとした額及び期間の始期並びに親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払った日
✅下請代金の全部又は一部の支払につき、電子記録債権で支払うこととした場合は、電子記録債権の額、支払を受けることができることとした期間の始期及び電子記録債権の満期日
✅原材料等を有償支給した場合は、その品名、数量、対価、引渡しの日、決済をした日及び決済方法
✅下請代金の一部を支払い又は原材料等の対価の全部若しくは一部を控除した場合は、その後の下請代金の残額
✅遅延利息を支払った場合は、遅延利息の額及び遅延利息を支払った日
下請代金の支払期日を定める義務
親事業者は、親事業者が下請事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、 受領日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で、下請代金の支払期日を定める義務があります(下請法第2条の2)。
なお、受領日とは、下請事業者から物品等又は情報成果物を受領した日を指し、役務提供委託の場合は、下請事業者が役務を提供した日を指します。
(下請代金の支払期日)
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第2条の2
1 下請代金の支払期日は、親事業者が下請事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、 親事業者が下請事業者の給付を受領した日(役務提供委託の場合は、下請事業者がその委託を受けた役務の提供をした日。次項において同じ。)から 起算して、60日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。
2 下請代金の支払期日が定められなかつたときは親事業者が下請事業者の給付を受領した日が、 前項の規定に違反して下請代金の支払期日が定められたときは親事業者が下請事業者の給付を受領した日から起算して60日を経過した日 の前日が下請代金の支払期日と定められたものとみなす。
この規定が設けられた趣旨は、下請取引の性格から、親事業者が下請代金の支払期日を不当に遅く設定するおそれがあり、下請事業者の利益を保護する点にあります。
遅延利息の支払義務
また、親事業者は、下請代金をその支払期日までに支払わなかったときは、下請事業者に対し、 受領日から起算して60日を経過した日から実際に支払をする日までの期間について、 その日数に応じその未払金額に年率14.6%を乗じた額の遅延利息を支払う義務があります(下請法4条の2)。
(遅延利息)
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第4条の2
親事業者は、下請代金の支払期日までに下請代金を支払わなかつたときは、下請事業者に対し、 下請事業者の給付を受領した日(役務提供委託の場合は、下請事業者がその委託を受けた役務の提供をした日) から起算して60日を経過した日から支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該未払金額に 公正取引委員会規則で定める率を乗じて得た金額を遅延利息として支払わなければならない。
この規定が設けられた趣旨は、下請取引の性格から、親事業者と下請事業者との間で支払が遅れた場合に関し、 ペナルティーとしての遅延利息を親事業者が自主的に設定することが困難であると考えられたので、 あらかじめ法定することで下請事業者の利益を保護する点にあります。
なお、支払遅延は下請法に違反する行為であり、遅延利息を支払えば下請代金の支払を遅らせてよいということではありません。
禁止事項
下請取引の公正化及び下請事業者の利益保護のため、親事業者には以下の11項目の禁止事項が定められています。
たとえ下請事業者の了解を得ていても、また、親事業者に違法性の意識がなくても、これらの規定に触れるときには、本法に違反することになるので十分注意が必要です。
- 親事業者の禁止事項
-
✅受領拒否の禁止(4条1項1号)
✅下請代金の支払遅延の禁止(4条1項2号)
✅下請代金の減額の禁止(4条1項3号)
✅返品の禁止(4条1項4号)
✅買いたたきの禁止(4条1項5号)
✅購入・利用強制の禁止(4条1項6号)
✅報復措置の禁止(4条1項7号)
✅有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止(4条2項1号)
✅割引困難な手形の交付の禁止(4条2項2号)
✅不当な経済上の利益の提供要請の禁止(4条2項3号)
✅不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止(4条2項4号)
受領拒否の禁止
親事業者が下請事業者に対して委託した給付の目的物について、親事業者は、 下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに受領を拒むと下請法違反となります(下請法4条1項1号)。
第4条
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1 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあつては、第1号及び第4号を除く。)に掲げる行為をしてはならない。
(1)下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の受領を拒むこと。
⑵~⑺略
2 略
この規定が設けられた趣旨は、親事業者が下請事業者に対して委託するものは、親事業者が指定する仕様等に 基づいた特殊なものが多く、親事業者に受領を拒否されると他社への転売が困難であり、 下請事業者の利益が著しく損なわれるので、これを防止する点にあります。
また、「受領を拒む」とは、下請事業者の給付の全部又は一部を納期に受け取らないことであり、以下の行為も原則として含まれます。
- 受領拒否に含まれる行為
-
✅発注を取り消すこと(契約の解除)により、下請事業者の給付の全部又は一部を発注時に定められた納期に受け取らないこと
✅納期を延期することにより,下請事業者の給付の全部又は一部を発注時に定められた納期に受け取らないこと
そして、「下請事業者の責に帰すべき理由」があるとして、下請事業者の給付の受領を拒むことができるのは、以下の2つの場合に限られます。
- 下請事業者の責に帰すべき理由
-
✅下請事業者の給付の内容が3条書面に明記された委託内容と異なる場合又は下請事業者の給付に瑕疵等がある場合
✅下請事業者の給付が、3条書面に明記された納期までに行われなかったため、そのものが不要になった場合
以下が違反行為事例となります。
- 違反行為事例
-
[製造委託、修理委託における違反行為事例]
✅親事業者A社は、下請事業者に計測器等の部品の製造を委託し、これを受けて下請事業者が既に受注部品を完成させているにもかかわらず、自社の生産計画を変更したという理由で、下請事業者に納期の延期を通知し、当初の納期に受領しなかった。[情報成果物作成委託における違反行為事例]
✅親事業者B社は、下請事業者に対して設計図面の作成を委託していたが、自社製品の製造計画が変更になったとして当該設計図面を受領しなかった。
下請代金の支払遅延の禁止
親事業者は、親事業者が下請事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、受領日から起算して 60日以内に定めた支払期日までに下請代金を全額支払わないと下請法違反となります(第4条1項2号)。
第4条
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1 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあつては、第1号及び第4号を除く。)に掲げる行為をしてはならない。
(1)略
(2)下請代金をその支払期日の経過後なお支払わないこと。
⑶~⑺ 略
2 略
この規定が設けられた趣旨は、支払期日までに納入した物品等又は情報成果物の下請代金の支払いを受けなければ、 下請事業者の資金繰りがつかず、従業員への賃金の支払、材料代の支払等が困難になり、最悪の場合は倒産に追い込まれるなど 下請事業者の経営の安定が損なわれるので、これを防止する点にあります。
以下が違反行為事例となります。
- 違反行為事例
-
[製造委託、修理委託における違反行為事例]
✅親事業者A社は、電気機械器具部品及び製品の組立・加工を下請事業者に委託しているところ、毎月末日納入締切、翌月末日支払とする支払制度を採っていたが、 検査完了をもって納入があったものとみなし、 当月末日までに納入されたものであっても検査完了が翌月となった場合には翌月に納入があったものとして計上していたため、 一部の給付に対する下請代金の支払が、下請事業者の給付を受領してから 60 日を超えて支払われていた。[情報成果物作成委託における違反行為事例]
✅親事業者B社は、ソフトウェアの作成を下請事業者に委託しているところ、毎月末日検収締切、翌々月 25 日支払の支払制度を採っているため、 下請事業者の給付を受領してから60 日を経過して下請代金を支払っていた。
下請代金の減額の禁止
親事業者が、 下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、発注時に定めた下請代金の額を減ずることは禁止されています。 「歩引き」や「リベート」等の減額の名目、方法、金額の多少を問わず,発注後いつの時点で減じても下請法違反となります(下請法4条1項3号)。
第4条
下請代金支払遅延防止法– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
1 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあつては、第1号及び第4号を除く。)に掲げる行為をしてはならない。
(1)~(2)略
(3)下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずること。
⑷~⑺ 略
2 略
この規定が設けられた趣旨は、下請取引においては、下請事業者の立場が弱く、一旦決定された下請代金であっても事後に減ずるよう要請されやすいこと、 一方、下請事業者はこのような要求を拒否することが困難であり、下請代金の額が減じられると、直接、下請事業者の利益が損なわれることから、 これを防止する点にあります。
この点、「下請事業者の責に帰すべき理由」があるとして、下請代金の額を減ずることが認められるのは、以下の場合に限られるとされます。
- 下請事業者の責に帰すべき理由
-
✅下請事業者の責めに帰すべき理由(瑕疵の存在、納期遅れ等)があるとして、受領拒否又は返品することが本法違反とならない場合に 、受領拒否又は返品をして、その給付に係る下請代金の額を減ずるとき。
✅下請事業者の責めに帰すべき理由があるとして、受領拒否又は返品することが本法違反とならない場合であって、 受領拒否又は返品をせず゙に、親事業者自ら手直しをした場合に、手直しに要した費用など客観的に相当と認められる額を減ずるとき。
✅下請事業者の責めに帰すべき理由があるとして、受領拒否又は返品することが本法違反とならない場合であって、 受領拒否又は返品をせず゙に、瑕疵等の存在又は納期遅れによる商品価値の低下が明らかな場合に、客観的に相当と認められる額を減ずるとき。
以下が違反行為事例となります。
- 違反行為事例
-
[製造委託、修理委託における違反行為事例]
✅親事業者A社は、機械部品の製造を下請事業者に委託し、下請事業者から納品される部品を使って製作した製品を国内向け及び輸出向けに販売している ところ、輸出向けの製品に用いる部品については、「輸出特別処理」と称して、発注価格(国内向け製品に用いる部品の発注価格と同一)から一定額を差し引いて 下請代金を支払った。
[情報成果物作成委託における違反行為事例]
✅親事業者B社は、オンラインゲームの開発に当たり、キャラクターデザインやBGMの制作を下請事業者に委託しているところ、 業績の悪化により制作に係る予算が減少したことを理由に、下請代金の額を減じた。公正取引委員会・中小企業庁「下請取引適正化推進講習会テキスト」令和元年11月
返品の禁止
親事業者は、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請事業者から納入された物品等又は情報成果物を受領した後に、 下請事業者に当該物品等又は情報成果物を返品すると下請法違反となります(下請法4条1項4号)。
親事業者の取引先からのキャンセルや商品の入替え等の名目や数量の多寡を問わず、下請事業者の責めに帰すべき理由のない返品は下請法違反となります。
また、仮に親事業者と下請事業者との間で返品することについて合意があったとしても、下請事業者の責めに帰すべき理由なく返品することは、 下請法違反となります(下請法4条1項4号)。
第4条
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1 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあつては、第1号及び第4号を除く。)に掲げる行為をしてはならない。
(1)~(3)略
(4)下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付を受領した後、下請事業者にその給付に係る物を引き取らせること。
⑸~⑺ 略
2 略
この規定が設けられた趣旨は、 基本的には受領拒否の禁止規定と同じであり、納入した物品等又は情報成果物の返品は、下請事業者の利益を著しく損なうものですので、これを防止する点にあります。
「下請事業者の責に帰すべき理由」があるとして、返品することができるのは、以下の場合であることが前提となります。
- 下請事業者の責に帰すべき理由
-
✅下請事業者の給付の内容が3条書面に明記された委託内容と異なる場合
✅下請事業者の給付に瑕疵等がある場合
以下が違反行為事例となります。
- 違反行為事例
-
[製造委託、修理委託における違反行為事例]
✅親事業者A社は、自己のブランドを付した衣料品を下請事業者に作らせ納入させているところ、シーズン終了時点で売れ残った分を下請事業者に引き取らせた。
[情報成果物作成委託における違反行為事例]
✅親事業者B社は、放送番組の作成を下請事業者に委託しているところ、下請事業者から受領した放送番組について、毎週継続的に放送する予定であったが、視聴率が低下したことを理由として放送を打ち切り、納入された放送番組が記録されたVTRテープを下請事業者に引き取らせた。公正取引委員会・中小企業庁「下請取引適正化推進講習会テキスト」令和元年11月
買いたたきの禁止
親事業者は、発注に際して下請代金の額を決定する際に、 「発注した内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比べて著しく低い額」を不当に定めると、 下請法違反となります(下請法4条1項5号)。
第4条
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1 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあつては、第1号及び第4号を除く。)に掲げる行為をしてはならない。
(1)から(4)略
(5)下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めること。
⑹~⑺ 略
2 略
この規定が定められた趣旨は、下請代金の額を決定する際に、親事業者がその地位を利用して、通常支払われる対価に比べて著しく低い額を下請事業者に 押し付けることは、下請事業者の利益を損ない、経営を圧迫することになるのでこれを防止する点にあります。
この点、「通常支払われる対価」とは、下請事業者の給付と同種又は類似の給付について当該下請事業者の属する取引地域において 一般に支払われる対価のことを指し、市価の把握が困難な場合は、下請事業者の給付と同種又は類似の給付に係る従来の取引価格を指します。
また、買いたたきに該当するか否かは、以下のような要素を勘案して総合的に判断されるとされます。
- 買いたたきの判断要素
-
✅下請代金の額の決定に当たり、下請事業者と十分な協議が行われたかどうかなど対価の決定方法
✅差別的であるかどうかなど対価の決定内容
✅通常支払われる対価と当該給付に支払われる対価との乖離状況
✅当該給付に必要な原材料等の価格動向
以下が違反行為事例となります。
- 違反行為事例
-
[製造委託、修理委託における違反行為事例]
✅親事業者A社は、産業用機械の部品の製造を下請事業者に委託しているところ、単価の決定に当たって、 下請事業者に1個、5個及び10個製作する場合の見積書を提出させた上、10 個製作する場合の単価(この単価は1個製作する場合の通常の対価を大幅に 下回るものであった。)で1個発注した。
[情報成果物作成委託における違反行為事例]
✅親事業者B社は、自社の住宅販売部門が販売する住宅の設計図の作成を委託している下請事業者に対し、 従来の単価から一律に一定率で単価を引き下げることにより、通常の対価を大幅に下回る下請代金の額を定めた。公正取引委員会・中小企業庁「下請取引適正化推進講習会テキスト」令和元年11月
購入・利用強制の禁止
親事業者は、下請事業者の給付の内容の均一性を維持するためなどの正当な理由がないのに、親事業者の指定する製品(他社製品も含む)・ 原材料等を強制的に下請事業者に購入させたり、サービス等を強制的に下請事業者に利用させて対価を支払わせたりすると、下請法違反となります (下請法4条1項6号)。
第4条
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1 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあつては、第1号及び第4号を除く。)に掲げる行為をしてはならない。
(1)から(5)略
(6)下請事業者の給付の内容を均質にし又はその改善を図るため必要がある場合その他正当な理由がある場合を除き、自己の指定する物を強制して購入させ、又は役務を強制して利用させること。
⑺ 略
2 略
この規定の趣旨は、正当な理由がある場合を除き、親事業者が指定した物又は役務を下請事業者に強制して購入・利用させることを禁止し、親事業者が自社商品やサービス等を下請事業者に押し付け販売することを防止する点にあります。
例えば、以下のようなことが違反行為事例となります
- 違反行為事例
-
[製造委託、修理委託における違反行為事例]
✅親事業者A社は、肉製品の加工を下請事業者に委託しているところ、自社製品のセールスキャンペーンに当たり、各工場の購買・ 外注担当部門等を通じて下請事業者に対し、下請事業者ごとに目標額を定めて、自社製品の購入を要請し、購入させた。
[情報成果物作成委託における違反行為事例]
✅親事業者B社は、機器管理プログラムの作成等を委託しているところ、下請事業者が必要としていないにもかかわらず、 下請事業者に対し委託内容とは関係のない自社製品である暗号化プログラムの購入を要請し、購入させた。公正取引委員会・中小企業庁「下請取引適正化推進講習会テキスト」令和元年11月
報復措置の禁止
親事業者は、 下請事業者が親事業者の下請法違反行為を公正取引委員会又は中小企業庁に知らせたことを理由として、 その下請事業者に対して取引数量を減じたり、取引を停止したり、その他不利益な取扱いをすると下請法違反となります(下請法4条1項7号)。
第4条
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1 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあつては、第1号及び第4号を除く。)に掲げる行為をしてはならない。
(1)から(6)略
(7)親事業者が第1号若しくは第2号に掲げる行為をしている場合若しくは第3号から前号までに掲げる行為をした場合又は親事業者について次項各号の1に該当する事実があると認められる場合に下請事業者が公正取引委員会又は中小企業庁長官に対しその事実を知らせたことを理由として、取引の数量を減じ、取引を停止し、その他不利益な取扱いをすること。
2 略
この規定は、下請事業者が親事業者の報復を恐れず公正取引委員会や中小企業庁に対し、親事業者の本法違反行為を申告できるようにする点にあります。
有償支給原材料などの対価の早期決済の禁止
親事業者は、 下請事業者の給付に必要な半製品、部品、附属品又は原材料を有償で自己から購入させた場合に、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、 この有償支給原材料等を用いる給付に対する下請代金の支払期日より早い時期に、当該原材料等の全部又は一部の対価を下請事業者に支払わせたり下請代金から 控除したりすることにより、下請事業者の利益を不当に害すると下請法違反となります(下請法4条2項1号)。
第4条
下請代金支払遅延防止法– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
1 略
2 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあつては、第1号を除く。)に掲げる行為をすることによつて、下請事業者の利益を不当に害してはならない。
(1)自己に対する給付に必要な半製品、部品、附属品又は原材料(以下「原材料等」という。)を自己から購入させた場合に、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、当該原材料等を用いる給付に対する下請代金の支払期日より早い時期に、支払うべき下請代金の額から当該原材料等の対価の全部若しくは一部を控除し、又は当該原材料等の対価の全部若しくは一部を支払わせること。
⑵~⑷ 略
この規定が設けられた趣旨は、親事業者が有償で支給した原材料等の対価を早期に決済することは、下請事業者の受け取るべき下請代金の額を減少させ、 支払遅延の場合と同様、資金繰りが苦しくなるなど下請事業者が不利益を被ることになるので、これを防止する点にあります。
「下請事業者の責めに帰すべき理由」としては、以下のような場合が考えられます。
- 下請事業者の責に帰すべき理由
-
✅下請事業者が支給された原材料等を毀損し、又は損失したため、親事業者に納入すべき物品の製造が不可能となった場合
✅支給された原材料等によって不良品や注文外の物品を製造した場合
✅支給された原材料等を他に転売した場合
例えば、以下のようなことが違反行為事例となります。
- 違反行為事例
-
[製造委託、修理委託における違反行為事例]
✅親事業者A社は、ヒューム管等の製造を下請事業者に委託し、下請事業者に有償で原材料を支給しているが、 原材料を加工して納品するまでの期間を考慮せずに、当該原材料を使用した物品が納品される前に当該原材料の対価を下請代金から控除するなど、 当該原材料を使用した物品に係る下請代金の支払期日よりも早い時期に下請代金から当該原材料の対価を控除した。公正取引委員会・中小企業庁「下請取引適正化推進講習会テキスト」令和元年11月
割引困難な手形の交付の禁止
親事業者は、下請事業者に対し下請代金を手形で支払う場合、一般の金融機関で割り引くことが困難な手形を交付することにより、 下請事業者の利益を不当に害すると下請法違反となります(下請法4条2項2号)。
第4条
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1 略
2 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあつては、第1号を除く。)に掲げる行為をすることによつて、下請事業者の利益を不当に害してはならない。
(1)略
(2)下請代金の支払につき、当該下請代金の支払期日までに一般の金融機関(預金又は貯金の受入れ及び資金の融通を業とする者をいう。)による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付すること。
⑶~⑷ 略
この規定の趣旨は、下請代金が銀行等の一般の金融機関において割引を受けることが困難な手形で支払われることにより、 下請事業者の利益が不当に害されることを防止する点にあります。
以下が違反行為事例となります。
- 違反行為事例
-
[製造委託、修理委託における違反行為事例]
✅親事業者A社は、衣料品の製造を委託している下請事業者に対し、手形期間が90日(3か月)を超える手形を交付した。
[情報成果物作成委託における違反行為事例]
✅親事業者B社は、道路貨物運送を委託している下請事業者に対し、手形期間が120日(4か月)を超える手形を交付した。公正取引委員会・中小企業庁「下請取引適正化推進講習会テキスト」令和元年11月
不当な経済上の利益の提供要請の禁止
親事業者は、 下請事業者に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させることにより、 下請事業者の利益を不当に害すると下請法違反となります(下請法4条2項3号)。
第4条
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1 略
2 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあつては、第1号を除く。)に掲げる行為をすることによつて、下請事業者の利益を不当に害してはならない。
(1)~(2)略
(3)自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。
⑷ 略
この規定の趣旨は、下請事業者が親事業者のために協賛金、従業員の派遣等の経済上の利益を提供させられることにより、 下請事業者の利益が不当に害されることを防止するにあります。
以下が違反行為事例となります。
- 違反行為事例
-
[製造委託、修理委託における違反行為事例]
✅親事業者A社は、食料品の製造を委託している下請事業者に対して年度末の決算対策として、協賛金の提供を要請し、 A社の指定した銀行口座に振込みを行わせた。
[情報成果物作成委託における違反行為事例]
✅鉄道業を営む親事業者B社は、自社の住宅販売部門が販売する住宅の設計図の作成を下請事業者に委託しているところ、 広告宣伝のための費用を確保するため、下請事業者に対し、「協賛金」として、一定額を提供させた。公正取引委員会・中小企業庁「下請取引適正化推進講習会テキスト」令和元年11月
不当な給付内容の変更および不当なやり直しの禁止
親事業者は、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の受領前にその内容を変更させ、 又は受領後に(役務提供委託の場合は、役務の提供をした後に)給付のやり直しをさせることにより、 下請事業者の利益を不当に害すると下請法法違反となります(下請法4条2項4号)。
第4条
下請代金支払遅延防止法– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
1 略
2 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあつては、第1号を除く。)に 掲げる行為をすることによつて、下請事業者の利益を不当に害してはならない。
(1)~(3)略
(4)下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の内容を変更させ、又は下請事業者の給付を受領した後に (役務提供委託の場合は、下請事業者がその委託を受けた役務の提供をした後に)給付をやり直させること。
この規定が設けられた趣旨は、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、親事業者が下請事業者に対して、費用を負担せずに給付の内容の変更を行い、 又はやり直しをさせることは、下請事業者に当初委託された内容からすれば必要ない作業を行わせることとなり、それにより下請事業者の利益が損なわれるので、 これを防止するにあります。
以下が違反行為事例となります。
- 違反行為事例
-
[製造委託、修理委託における違反行為事例]
✅親事業者A社は、下請事業者に軸部品の製造を委託し、これを受けて下請事業者が既に原材料等を調達しているにもかかわらず、 輸出向け製品の売行きが悪く製品在庫が急増したという理由で、下請事業者が要した費用を支払うことなく、発注した部品の一部の発注を取り消した。
[情報成果物作成委託における違反行為事例]
✅親事業者B社は、下請事業者に対してソフトウェアの開発を委託したが、仕様についてはユーザーを交えた打合せ会で決めることとしていたところ、 決められた内容については書面で確認することをせず、下請事業者から確認を求められても明確な指示を行わなかったため、 下請事業者は自分の判断に基づいて作業を行い納入をしようとしたところ、決められた仕様と異なるとして下請事業者に対して無償でやり直しを求めた。公正取引委員会・中小企業庁「下請取引適正化推進講習会テキスト」令和元年11月
下請法に違反した場合
公正取引委員会は、親事業者の下請事業者に対する製造委託等に関する取引を公正ならしめるため必要があると認めるときは、 親事業者・下請事業者の双方に対し、下請取引に関する報告をさせ、又はその職員に親事業者の事業所等で立入検査を行わせることができます(下請法9条1項)。
また、公正取引委員会は、違反親事業者に対して違反行為の是正やその他必要な措置をとるべきことを勧告することができます(下請法7条)。 勧告した場合は原則として事業者名、違反事実の概要、勧告の概要等を公表することとされています。
そして、下請法違反に対する罰則は両罰規定であり、以下のような場合は、代表者・行為者(担当者)個人が罰せられるほか、会社 (法人)も罰せられることになります(下請法10条、11条、12条)。
- 罰則事由
-
✅書面の交付義務違反
✅書類の作成及び保存義務違反
✅報告徴収に対する報告拒否、虚偽報告
✅立入検査の拒否、妨害、忌避
下請法に関するガイドライン
下請法については、公正取引委員会および中小企業庁がガイドラインを策定・公表しています。特に親事業者は、各種ガイドラインの内容を踏まえて、下請事業者に対する搾取を無自覚に行わないようにしなければなりません。
①公正取引委員会のガイドライン
すべての親事業者・下請事業者の関係において遵守すべき事項がまとめられています。
参考:公正取引委員会ウェブサイト「法令・ガイドライン等(下請法)」
②中小企業庁のガイドライン
業種別の下請法に関するガイドラインが公表されています。
参考:中小企業庁ウェブサイト「下請適正取引等推進のためのガイドライン」
また、下請法について網羅的に詳しく知りたい場合は、公正取引委員会と中小企業庁が共同で策定している「下請取引適正化推進講習会テキスト」が参考になります。
参考:公正取引委員会・中小企業庁「下請取引適正化推進講習会テキスト(令和4年11月)」
参考文献
公正取引委員会・中小企業庁「下請取引適正化推進講習会 テキスト」令和元年11月
鎌田明「下請法の実務」公益財団法人 公正取引協会