シフト制とは?
メリット・デメリットや
注意したいポイントなどを分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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シフト制とは、働く曜日や時間帯が勤務シフト表によって決まる勤務形態のことです。
・シフト制には「自由シフト制」「固定シフト制」「完全シフト制」があります。
・シフト制は営業時間を延ばせるなどのメリットがありますが、労働者のマネジメントに苦労する面もあります。
・シフト制を導入する際は、労働条件や有給休暇、割増賃金などに留意が必要です。
本記事では、シフト制の概要やメリット・デメリット、注意したいポイントを解説します。
※この記事は、2025年8月12日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
シフト制とは
シフト制とは、働く曜日や時間帯が勤務シフト表によって決まる勤務形態です。労働者ごとに働く日にちや時間が異なるのが特徴です。
シフト制は、主に以下の3種類に分かれます。
- 自由シフト制
- 固定シフト制
- 完全シフト制
それぞれのタイプについて解説します。
自由シフト制
自由シフト制は従業員の希望を優先的に考慮するシフト制で、ワークライフバランスを重視する企業に最適な勤務形態です。従業員が希望する曜日や時間帯を申告し、それをもとに管理者がシフト表を作成します。
飲食店やアパレル、コンビニなど、学生のアルバイトや主婦のパート、副業者が多い職場に適したスタイルです。ただし、導入時は特定の時間帯や曜日に希望が偏りやすくなるため、公平な調整ルールの策定が重要です。
固定シフト制
固定シフト制は、計画的に人員配置ができ、労働者も安定した収入を得られる勤務形態です。
毎週月曜・水曜・金曜の午前9時から午後3時といったように勤務パターンが固定されているため、シフト作成の手間が大幅に軽減されます。従業員も決まった時間に働けるため、収入が安定しやすいです。
オフィス清掃、受付業務、工場の製造ライン、介護施設などで活用されており、ローテーションが組みやすくなるのが特徴です。週休二日制と組みあわせることで、より働きやすい環境を構築できます。
完全シフト制
完全シフト制は24時間稼働や高度な専門性が必要な職場で、企業主導による効率的な人員配置を実現する勤務形態です。早番・遅番の2交代制や、朝昼晩の3交代制といったあらかじめ用意された複数の勤務パターンから、どのシフトに入るかを選択します。企業が業務量や必要スキル、営業時間に応じてシフトを作成するため、最適な人員配置が可能になります。
24時間稼働の工場、病院、コールセンター、ホテルなど、業務の継続性と専門性が重要な職場で導入されている傾向にあります。
従業員の体調管理とモチベーション維持が難しくなるため、深夜手当・休日手当の充実や定期的な健康チェック、希望休の一定日数保証などの労働環境整備が重要です。
シフト制のメリット
シフト制のメリットは、以下の4点です。
- 営業時間を延ばせる
- 人材不足の解消につなげやすい
- 労働者が公私を充実させやすい
- 労働者1人当たりにかかるコストを抑えられる
シフト制は、営業時間の延長ができ十分な売上が見込めるほか、労働者1人当たりへのコストが抑えられるため、経営の負担を抑えられる可能性があります。メリットをおさえて、シフト制の導入を検討しましょう。
営業時間を延ばせる
シフト制を導入すれば、従来の固定勤務時間では実現困難だった営業時間の延長や24時間稼働が可能となり、売上向上と顧客満足度の改善につながります。
複数の勤務時間帯を組み合わせることで、早朝から深夜までの営業や24時間営業を実現でき、顧客の多様な利用時間帯に対応できるため、売上機会の損失を防げます。
ただし、営業時間延長時は、深夜手当や時間外手当といった割増賃金が発生したり、交代勤務手当の設定や適切な休憩時間の確保をしたりする必要があります。労働基準法に基づいた労働条件の整備と延長時間帯の収益分析が必要です。
人材不足の解消につなげやすい
シフト制は多様な働き方ニーズに対応できるため、さまざまな人材の確保ができ、慢性的な人材不足の解消につながります。学生のアルバイトや主婦のパート、副業希望者、シニア層など、働ける時間が限られる人材も有効活用が可能です。
効果的な人材確保のためには、ターゲット層に応じた求人媒体の選定と、希望する勤務条件を明確に示した求人票の作成、シフト調整の柔軟性をアピールポイントとして活用することが重要です。
従業員が公私を充実させやすい
シフト制により働きやすい職場環境を実現できると、従業員のワークライフバランスが向上し、公私を充実させやすくなります。
従業員は自分の生活リズムや家庭事情、趣味や副業にあわせて勤務時間を選択できるため、仕事とプライベートの両立が図りやすくなり、ストレスの軽減とモチベーションの向上、長期的な雇用継続につながります。
例えば、子育て中の主婦(主夫)は子どもの保育園や学校の時間に合わせた勤務、学生は授業やサークル活動との両立、副業者は本業に支障のない時間帯での勤務が可能となります。
希望休を取りやすくしたり、シフト希望の提出方法を複数用意したりすれば、さらに働きやすい環境の整備を期待できます。
労働者1人当たりにかかるコストを抑えられる
シフト制の導入により、労働者1人当たりにかかるコストを抑制できます。
労働者は自由な働き方をできる一方で、企業は必要な時間帯に必要な人数だけパートやアルバイト、契約社員を活用することで、正社員と比較して社会保険料や福利厚生費などの費用を抑制できます。
コストを意識するのであれば、過去のデータをもとに時間帯別・曜日別の業務量を詳細に分析し、最適な人員配置計画を策定することも重要です。労働契約の内容も業務内容に応じて適切に使い分けることで、さらなるコスト削減効果が期待できます。
シフト制のデメリット
シフト制のデメリットは、以下の3点です。
- シフト表作成の手間がかかる
- 労働者のマネジメントに苦労する
- 一時的に人材不足に陥る可能性がある
シフト制は、手間や労働者のマネジメントなど、運用面で苦労する点があります。また、一時的な人材不足になるリスクもあります。シフト制のデメリットについて解説します。
シフト表作成の手間がかかる
シフト制を導入すると、シフト表作成に手間がかかり、労務担当者の業務負担が重くなります。
シフト調整は、従業員それぞれの希望休や勤務可能時間帯、スキルレベルを考慮しながら、必要な人員数を確保しなければなりません。特に自由シフト制では、アルバイトやパートの希望が土日祝日や夕方の時間帯に集中することが多く、公平性を保ちながら調整するのは困難になります。
労働基準法に基づく労働時間の上限管理や休憩時間の確保、割増賃金の計算なども同時に行う必要があり、労務担当者の業務が急激に増える可能性もあります。
効率化のためには、シフト管理システムやアプリの導入検討と希望提出ルールの明確化が重要な対策となります。
労働者のマネジメントに苦労する
シフト制では勤務時間や出勤曜日が従業員ごとに異なるため、管理者のマネジメント能力が問われます。
全従業員が同じ時間に揃うことがないため、チーム会議や研修の実施は難しいです。また、早番と遅番、日勤と夜勤といった勤務時間帯の違いにより、従業員間のコミュニケーション不足が発生しやすく、業務引き継ぎのミスや情報共有の漏れが生じる可能性があります。
さらに、勤務時間数に違いがあれば従業員間で収入格差や不公平感が生じ、モチベーション管理が複雑になってしまいます。
定期的な全体会議の開催や業務マニュアルの詳細化、引き継ぎノートの活用による情報共有の強化をして、行き届いたマネジメントができるよう努めましょう。
一時的に人材不足に陥る可能性がある
シフト制では急な欠勤やシフト変更の依頼により、一時的な人材不足が発生しやすく、業務運営に支障をきたすリスクが存在します。固定勤務制と異なり、シフト制では代替要員の確保が困難な場合が多く、1人の欠勤が全体の業務に大きな影響を与えてしまいます。
また、学生のアルバイトが多い職場では試験期間、主婦(主夫)のパートが多い職場では学校行事や子どもの病気など、特定の時期や状況で希望する従業員を十分に確保できない場合があります。
リスクを軽減するには、代替要員リストの作成や緊急時手当の設定による代替勤務への協力促進などが重要です。
シフト制労働契約時の留意事項
シフト制で労働契約を締結する際は、以下の点に注意が必要です。
- 労働条件の明示
- 労働時間・休憩時間の取り扱い
- 有給休暇の付与
- 割増賃金の取り扱い
- シフト表の作成・変更に関するルールの制定
- シフト制労働者の解雇・雇い止め
適切な内容・取り扱いで労働契約を締結しないと、トラブルになる可能性があります。労働者を雇う際は、十分注意して手続きを進めてください。
労働条件の明示
シフト制導入時は労働基準法15条に基づき、労働契約の締結時に勤務形態や労働条件を明確に示す義務があります。
労働契約書には勤務時間帯の例示、週・月の勤務日数の目安、シフト決定の方法と時期、変更時の手続きを明記します。
「シフト制により決定する」といった曖昧な記載は労働条件が具体的に明示されておらず、後でトラブルになる可能性があります。「週3日程度、1日6時間程度、午前9時から午後10時の間でシフトにより決定」のように具体的に記載しましょう。
就業規則にはシフト制に関する詳細なルールを定め、労働契約書との整合性を保つことが重要です。
労働時間・休憩時間の取り扱い
シフト制においても、労働基準法で定められた労働時間の上限規制と休憩時間の付与義務を遵守する必要があります。
この上限規制や休憩時間については、正社員、契約社員、パート、アルバイトの全ての労働者に適用されるものです。しかしシフト制では従業員の勤務時間が多様化するため、法定労働時間である1日8時間・週40時間の管理が複雑になる傾向にあります。
例えば、24時間営業のコンビニで深夜シフト(22時から7時)として勤務時間9時間で働く場合、1時間の休憩を取らせることと、22時から5時までは賃金に深夜割増が必要です。勤怠管理システムを導入し、リアルタイムでの労働時間監視と法定労働時間超過の自動アラート機能を設置して、適切な労働時間管理に努めるとよいでしょう。
有給休暇の付与
シフト制労働者であっても、雇入れから6カ月経過し、出勤率が8割以上であれば、有給休暇付与義務が発生します。
シフト制では勤務日が不規則になりがちですが、有給休暇の取得希望に対しては時季変更権の行使が認められる場合を除き、原則として労働者の指定日に付与しなければなりません。
なお、週の所定労働時間が30時間未満、かつ週所定労働日数4日以下の労働者については、所定労働日数に応じて有給休暇が付与されます。例えば週3日勤務のパート労働者には年間5日、週5日勤務の場合は年間10日となります。
有給休暇管理簿を作成して各労働者の付与日数・取得状況・残日数を正確に把握することが大切です。また、シフト作成時に有給希望も同時に受け付けて、計画的な取得を促進する仕組みを作ると、マネジメントにも有効です。
割増賃金の取り扱い
シフト制では、深夜労働、時間外労働、休日労働の割増賃金計算が複雑になるため、正確な賃金計算が求められます。
割増賃金の割増率は、以下のとおりです。
- 深夜時間帯(22時から5時):25%以上
- 時間外労働:25%以上 ※月60時間超の部分は50%以上
- 法定休日労働:35%以上
シフト制ではさまざまな時間帯での勤務があるため、各労働者の基本賃金と割増賃金を正確に計算し、適切に支給する仕組みが重要です。深夜時間帯の時間外労働は割増率が合計で50%になるなど、時間帯に応じて適切な割増率で計算をしなければなりません。
給与計算ソフトを活用して勤務時間帯と労働時間に応じた自動計算機能を導入し、支給額に間違いが発生しないよう努めましょう。
シフト表の作成・変更に関するルールの制定
シフト制の円滑な運用のためには、シフト希望の提出方法、決定の仕方、変更時の手続きなどをルールとして制定し、従業員へ周知する必要があります。
シフト制では労働者の希望と企業の業務ニーズを調整する必要があり、明確なルールがないとトラブルが発生しやすくなります。急なシフト変更や欠勤時の対応方法が不明確だと、業務に支障をきたすリスクも発生します。
「シフト希望は毎月20日までに提出、25日に確定通知、変更は3日前まで」といったルールを制定し、従業員に説明することで、トラブルの防止や適切な運用ができます。シフト管理システムやアプリを活用して希望提出から決定までの流れを効率化するのも効果的です。
シフト制労働者の解雇・雇い止め
シフト制労働者の解雇や契約期間満了時の雇い止めは、通常の労働者と同様に労働契約法の規制を受けるため、客観的合理的理由と社会通念上の相当性が必要です。
シフト制であっても労働契約法16条の解雇権濫用法理が適用されるため、単にシフトの希望が合わないことや、勤務日数が少ないことだけでは解雇の正当事由とはなりません。
また、有期契約労働者の雇い止めについても、反復更新により無期契約と同視できる場合や、更新への合理的期待がある場合は、解雇と同様の規制が適用されます。
解雇や雇い止めを検討する前に、まず労働者との十分な話し合いと改善指導を実施し、やむを得ず解雇等を行う場合は30日前の解雇予告または解雇予告手当の支給など、法定手続きを確実に行うことが重要です。
シフト制の導入方法
シフト制を導入する際は、以下の手順で進めていきます。
- 労働条件の決定
- 就業規則の改定
- 労働者へのヒアリング
- 労働基準監督署への書類届出
- 社内への周知
手順をおさえて、スムーズにシフト制の導入を進めましょう。
1|労働条件の決定
シフト制を導入するには、法的要件を満たした明確な労働条件の設定が必要です。
シフト制の労働条件は従来の固定勤務制よりも複雑になるため、勤務時間帯、休日設定、賃金体系、シフト決定方法などを事前に詳細に検討する必要があります。曖昧な条件設定は後々のトラブルの原因となり、労働基準法違反のリスクも高まります。
労働条件の例は以下のとおりです。
- 飲食店:週3日から5日勤務、1日4時間から8時間、営業時間内でのシフト制、深夜手当25%加算
- 病院の看護師:4週8休制、3交代勤務(日勤・準夜勤・深夜勤)、夜勤手当1回5,000円支給
- 工場:週5日勤務、早番・遅番・夜勤の交代制、休日出勤は35%割増
労働条件決定時は、労働基準法の上限規制、深夜・休日手当の計算、有給休暇付与条件を必ず確認し、実情に即した条件設定を行うことが重要です。必要に応じて、社会保険労務士などの専門家への相談もしておくと安心です。
2|就業規則の改定
シフト制導入時には就業規則の改定が必須です。シフト運用の詳細ルールを明文化することで法的根拠を確保し、労使トラブルを未然に防げます。
10人以上の従業員を使用する事業場では、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が法的義務となっており、シフト制に関する事項も就業規則に記載する必要があります。
就業規則には、以下のような内容を記載しましょう。
- シフト希望の提出方法
- 決定プロセス
- 変更ルール
- 欠勤時の取り扱い
あわせて「シフト希望は毎月20日までに提出し、25日に確定通知を行う。やむを得ない事情による変更は3日前までに届出を要する」のようなシフト希望の具体的な規定を設けておくとよいです。
就業規則改定時は既存の規定との整合性を確認し、シフト制特有の事項を漏れなく記載してください。
3|労働者へのヒアリング
シフト制導入前の従業員へのヒアリングは、制度設計の改善とシフト制への円滑な移行のために必要です。
シフト制は従業員の働き方に大きな影響を与えるため、一方的な導入ではなく事前の十分な説明と意見聴取が必要です。従業員のニーズや懸念点を把握することで、より受け入れられやすい制度になります。
就業規則の作成や改定には、従業員代表の意見聴取が必要です。労働基準監督署への届出で必要となるため、聴取した意見は書面に残しておきましょう。
4|労働基準監督署への書類届出
改定した就業規則は、労働基準監督署へ届出をしなければなりません。
常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の作成・変更時に労働基準監督署への届出が労働基準法89条で義務付けられています。手続きを怠ると労働基準法違反となり、行政指導や罰則の対象となる可能性があります。
届出書類は、以下のとおりです。
- 就業規則変更届
- 就業規則意見書(従業員代表の意見書)
- 変更後の就業規則
届出書類の作成には労働基準法の専門知識が求められます。必要に応じて社会保険労務士への依頼を検討しましょう。
5|社内への周知
労働基準監督署への就業規則提出後には、従業員にシフト制の導入について周知する必要があります。詳細に説明することで、制度の理解不足によるトラブルを防げます。改定後の就業規則は、周知しなければ効力を生じないため、各作業所の見やすい場所への掲示、備え付け、書面の交付などにより必ず周知してください。
説明資料やマニュアルなどを完備しておくと、日々働いている最中に確認したいことがあった場合にも適切な対応が取れます。また、運用開始後も定期的な説明会や調査を実施し、制度の改善を続けることが重要です。
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参考文献
厚生労働省「いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」
監修者












