特許を出願(申請)する方法を解説!
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- この記事のまとめ
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特許を出願(申請)する方法を解説!!
どんなに画期的な発明でも、特許庁へ出願して、審査を通過しないと特許権は取得できません。
この記事では、発明を特許権として権利化したいとき、特許を出願(申請)する方法を解説します。
(※この記事は、2021年3月22日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。)
目次
そもそも特許とは何か?
特許とは、発明を公開する代わりに、その発明の使用など(特許法では「実施」といいます)を独占することができる制度です。
発明を特許として登録するためには、特許庁へ特許出願を行う必要があります(特許法36条)。
特許庁へ特許出願を行い、特許庁での審査の結果特許として認められて登録されると、その発明は特許となります(特許法66条)。
そして、出願した人は、「特許権」を取得することになり、「特許権者」となります。
特許権者は、特許の使用などを独占することができ、他の人が特許を無断で使用していた場合は、その使用の差止めを請求したり、損害賠償を請求することができます(特許法100条、民法709条)。
- 特許とは?
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✅発明を公開する代わりに、発明の使用を独占することができる。
✅発明を特許として登録するために、特許庁へ出願を行う必要がある。
✅特許庁で審査をして、特許として認められると、特許権として登録できる。
✅特許を所有している人(特許権者)は、無断で特許を使用した人に対して、使用の差し止め、損害賠償などをすることができる。
特許出願の手続きや、特許権の権利の内容について定めた「特許法」は、法律の目的を以下のように定めています。
第1条
この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。
特許法– e-Gov法令検索 –電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
つまり、発明をした人が特許として登録することによって、その発明を独占することができることとして、発明のインセンティブを与える(発明を奨励する)とともに、その発明を公開することによって、産業の発達に寄与することを目指します。
特許権を取得するメリットとは
特許権を取得すると、特許発明を業として独占的に実施(使用・譲渡など)できます(特許法68条)。例えば、特許発明を商品化することによって、他社にはない強みを備えた商品を売り出し、大きな利益を得られる可能性があります。
また、特許発明の実施を他社に許諾してライセンス収入を得ることも、特許権の有力な活用方法の一つです。特許発明が利便性の高い商品の開発に役立つ場合や、幅広い商品について汎用的に利用可能な場合には、ライセンス収入によって巨額の収益を得ることができます。
このように、価値の高い発明に係る特許権をうまく活用すれば、会社の業績を大幅に向上させることができる可能性を秘めているのです。
特許権者による特許発明の独占的な実施は、差止請求権(特許法100条)や損害賠償請求権(民法709条、特許法102条)によって担保されています。
もし他社が無許可で特許発明を業として実施している場合には、裁判所に侵害行為の停止又は予防を請求できます。また、特許権侵害によって特許権者が損害を被った場合には、侵害者に対して損害の賠償を請求できるのです。
特に、汎用性の高い特許発明については、特許権侵害による損害賠償が莫大な金額に上るケースが多いため、侵害行為に対する抑止効果も期待されます。
特許として登録されるための要件
特許庁では、特許として登録されるための要件を満たしているのか、審査が行われています。
特許として登録されるためには、以下の要件を満たす必要があります。
新規性とは、すでに世間に知られている発明と同じものではないこと、つまり新しい発明であること、です(特許法29条1項)。
進歩性とは、すでに世間に知られている発明から、容易に考えつく(発明をすることができる)ものではないこと、です(特許法29条2項)。
特許出願は弁理士に依頼するべきなのか
特許出願の業務は、弁理士が専門的に取り扱っています。結論から言えば、特許出願を行う際には、弁理士に依頼するのが賢明です。
特許出願に当たっては、出願書類を作成する必要があります。具体的には、特許発明の内容が記載された明細書・図面・要約書などを作成しなければなりません。
これらの出願書類は、いずれも技術的・専門的な内容であり、作成に関するルールも特許法等で詳細に定められています。そのため、特許に関する知識に乏しい方が、出願書類を自力で作成することはまず不可能です。
また後述するように、特許出願から特許権の取得(設定登録)までには、平均して1年以上の期間を要します。もし出願書類に不備があったり、必要な手続きに漏れが生じたりすると、ただでさえ長い所要期間がさらに延びてしまう事態になりかねません。
加えて、特許権には「先願主義」が採用されており、出願が早かった者が優先的に特許権を取得できます。出願の準備に時間がかかっていると、他社に先を越されてしまい、特許権が取得できなくなってしまう可能性があります。
以上の事情を考慮すると、ミスなく迅速に特許出願を行うため、弁理士に出願業務を依頼することをお勧めいたします。
特許出願の費用はいくらかかるのか
特許出願を行う際には、以下の費用負担が発生します。
(1)特許印紙代
1つの出願につき1万4,000円
※特許出願を弁理士に依頼する場合の費用は30万円~50万円程度
(2)出願審査請求料
13万8,000円+請求項の数×4,000円
※出願から3年以内に行う。出願審査請求を弁理士に依頼する場合の費用は2万円程度
(3)特許登録料
(4,300円+請求項の数×300円)×3
※第1年から第3年(3年分)の特許料相当額を一括納付
※特許登録の手続きを弁理士に依頼する場合の費用は15万円程度
(4)特許年金
(a)第4年から第6年まで
毎年10,300円+請求項の数×800円
(b)第7年から第9年まで
毎年24,800円+請求項の数×1,900円
(c)第10年から第25年まで
毎年59,400円+請求項の数×4,600円
その他、意見書の提出や手続補正書の作成を弁理士に依頼する場合には、別途依頼費用が発生します(各10万円程度)。
特許出願(申請)方法とは
- 「特許出願~特許として登録」までの流れ
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1 先行技術調査
2 特許出願(出願書類の作成・提出)
3 方式審査
4 出願審査請求(出願審査請求書を作成・提出)
5 実体審査
6 特許査定
7 特許権の設定の登録=特許権が発生
5の実体審査の結果、「特許としては認められない」として、拒絶査定が出ることもあります(特許法49条)。
この場合は、特許として登録することはできません。
拒絶査定が出て、それに納得がいかない場合は、特許庁へ「拒絶査定不服審判」を起こして、特許庁の審判部において、拒絶査定が妥当なものかについて、判断してもらうことができます(特許法121条)。
特許出願をすると、特許庁で審査が行われますが、審査の流れは以下のようになります。
特許出願から特許査定までの期間
以下、「先行技術調査~特許として登録」までの流れを具体的に解説します。
先行技術調査
特許を出願する前に、先行技術調査を行うのが望ましいです。
先行技術調査を行う際は、独立行政法人 工業所有権情報・研修館(INPIT)が提供する、「J-PlatPat」というウェブサイトで、特許公報を検索・閲覧することによって、現在どんな特許が出願・登録されているかを調査することができます。
その他、欧州特許庁(EPO)が提供する「Espacenet」、世界知的所有権機関(WIPO)が提供する「PATENTSCOPE」、Googleが提供する「Google Patents」などを利用して検索することが考えられます。
特許庁のウェブサイトに、「J-PlatPat」を利用した特許公報の検索方法が説明されています。
ちなみに、特許公報とは、特許出願した発明や、設定登録された特許の内容が記載された公報です。
特許公報には、「公開特許公報」と「特許公報」があります。
特許出願(出願書類の作成・提出)
特許出願の出願書類の様式や、作成の方法については、特許庁のウェブサイトに詳細な説明があります。
INPIT独立行政法人工業所有権情報・研修館 知的財産相談・支援ポータルサイト 「各種申請書類一覧(紙手続の様式)」 INPIT独立行政法人工業所有権情報・研修館 「特許出願書類の書き方ガイド」 特許庁「出願の手続き」 |
特許出願には、書面で出願する方法と、インターネットで出願する方法、があります。
- 書面で出願する方法
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1 出願書類を作成
2 郵便局や特許庁で特許印紙14,000円(出願手数料)を購入して貼り付け
*収入印紙ではなく、特許印紙なので注意。
3 特許庁に提出
・直接提出 特許庁1階の出願受付窓口へ提出する。
受付時間は平日の9時~17時
・郵送で提出 「〒100-8915 東京都千代田区霞が関3丁目4番3号 特許庁長官 宛」に郵送する。
*宛名面の余白に「特許願 在中」と記載して、書留・簡易書留郵便・特定記録郵便で提出する。
4 電子手数料を納付
出願日から数週間後に送付される払込用紙を用いて、電子化手数料として1,200円+(700円×書面のページ数)を納付する。
- インターネットで出願する方法
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インターネットを利用して、電子証明書と専用のソフトウェア(インターネット出願ソフト)を用いて、オンラインで特許出願を行う。
*具体的な方法については、特許庁の「電子出願ソフトサポートサイト」で確認できます。
方式審査
特許出願をすると、特許庁で、出願が法令で定める形式的な要件を満たしているかの審査(方式審査)を行います。
方式審査の運用基準については、特許庁の「方式審査便覧」「出願等の手続の方式審査に関するQ&A」で詳しく説明されています。
方式審査で、特許出願について形式面に不備があると判断されると、「補正指令」などが出されます。
これに対して、出願をした者は、補正指令において要件を満たしていないと指摘された箇所について、「手続補正書」などで補正を行う必要があります。
補正指令に対して、適切な補正を行わないと出願手続が却下されます(特許法18条)
出願審査請求(出願審査請求書を作成・提出)
方式審査後、実体審査の手続きに入るためには、出願人は、出願日から3年以内に出願審査請求を行う必要があります(特許法48条の3)。
特許庁へ、出願審査請求書を提出することになります(特許法48条の4)。
出願審査請求をする際も、手数料を支払う必要があります。
- 出願審査請求手数料
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138,000円+(4,000×請求項の数)
*2019年4月1日以降の出願
実体審査
実体審査では、特許出願された内容が、新規性、進歩性などの特許要件を満たすか、が審査されます。
特許要件は、出願時において満たしているかが判断されることになります。
このときの審査の判断基準については、特許庁が公表している「審査基準 」で解説されています。
審査において、拒絶の理由がある、つまり新規性がないなどと判断されると、特許庁から出願人へその旨の「拒絶理由通知」が出されます(特許法50条)。
これを受けて、出願人は「意見書」を提出して、新規性があることを説明する、「手続補正書」を提出して、出願書類を一部修正する、といった対応をすることになります(特許法50条、17条の2)。
特許査定
実体審査の結果、拒絶の理由がない(特許要件を満たす)と判断された場合、又は拒絶理由通知を受けての意見書や手続補正書で拒絶の理由が解消された場合は、特許査定が出されます(特許法51条)。
特許要件を満たさないなど、拒絶の理由があると判断された場合は、拒絶査定が出されます(特許法49条)。
特許権の設定の登録(特許権が発生)
出願人は、特許査定の謄本が特許出願人に送達された日から30日以内に、1年目~3年目までの特許料を納付する必要があります(特許法108条)。
特許料が納付されないと、特許出願の却下がされてしまいます(特許法18条)。
特許料が納付されると、特許原簿に「特許権の設定の登録」がされ、この登録によって特許権が発生します(特許法66条)。
特許料 | |
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1年目~3年目の特許料(特許権の設定登録の費用) | 毎年2,100円+請求項の数×200円 |
4年目以降の特許料 | 4~6年 毎年6,400円+請求項の数×500円 7~9年 毎年19,300円+請求項の数×1,500円 10年~20年 毎年55,400円+請求項の数×4,300円 |
特許を出願(申請)する際の注意点
特許権に関しては、2020年に改正された特許法が施行されています。
特許出願ではなく実用新案登録出願をするメリット
特許出願の審査には長期間を要するため、発明について簡易的に権利を確保したい場合は、実用新案登録出願を行うことも検討しましょう。
実用新案権とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作」について登録を受けた場合に認められる権利です(実用新案法2条1項、2項)。
特許権が高度な発明に限って認められるのに対して、実用新案権は特許発明に至らない程度の発明についても認められます。
特許権者と実用新案権者は、いずれも登録された発明(創作)を実施する権利を専有します(特許法68条、実用新案法16条)。ただし特許権とは異なり、侵害者に対して実用新案権を行使するためには、事前に「実用新案技術評価書」を提示して警告することが必要です(実用新案法29条の2)。
特許出願では、特許要件についての実体審査が行われるのに対して、実用新案出願では実体審査が行われません。形式審査のみで登録が行われるため、短期間で権利を取得できる点が実用新案出願の大きな特徴です。
具体的には、特許権は出願から権利取得までの期間が1年を超えるケースが多いのに対して、実用新案権は出願から権利取得まで2~4か月と短期間で権利を取得できます。
このように、実用新案権は特許権に比べて、要件や手続き期間の観点から、権利取得のハードルが低いメリットがあります。簡易的な発明等について権利を取得したい場合、早期に権利を取得したい場合などには、特許出願ではなく実用新案登録出願を行うことも有力な選択肢となるでしょう。
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参考文献
特許庁ウェブサイト「初めてだったらここを読む~特許出願のいろは~」
INPIT(独立行政法人 工業所有権情報・研修館)「特許出願書類の書き方ガイド」
特許庁ウェブサイト「2020年度 知的財産権制度入門テキスト」
特許庁ウェブサイト「令和元年度知的財産権制度説明会(実務者向け)テキスト」