著作者とは?
著作者の認定方法や
職務著作の基本を分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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著作者とは、著作権や著作者人格権を取得する主体となる人をいいます。
原則として、著作物を創作する人が著作者にあたりますが、例外的に、著作物を創作した人が著作者とならない場合もあります。
この記事では、著作者について、基本から分かりやすく解説します。
※この記事は、2023年3月14日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
著作者とは
著作権法上、著作者は、著作(財産)権や著作者人格権を原始的に取得する主体として規定されています(著作権法17条1項)。著作者という概念は、著作権法でもとても重要な概念です。
以下では、著作者について詳しく見ていきます。
著作者の認定|創作者主義
著作者とは「著作物を創作する者」をいいます(著作権法2条1項2号)。
小説であれば作家が著作者にあたりますし、絵画であれば画家が著作者にあたり、比較的イメージがしやすいところもあると思います。
もっとも、例えば、ある著作物の創作にあたり、多くの人が関与することも珍しくなく、そのような場合、著作者の認定に困難を伴う場合もあります。裁判例などでは、例えば、
- 単なる補助をしたに過ぎない者
- 著作物創作に係る資金の提供をしたに過ぎない者
- アイデアを提供したに過ぎない者
- 指示や命令をしたに過ぎない者
は、著作者にはあたらないと判断されています。
著作者の認定が問題となった裁判例はたくさんありますが、例えば、知財高裁では、以下のような判決がされていますので、紹介します。
「著作者とは、「著作物を創作する者をいう」のであるから(同項2号)、美術品である本件各銅像については、本件各銅像を創作した者をその著作者と認めるべきである。そして本件各銅像のようなブロンズ像は、塑像の作成、石膏取り、鋳造という3つの工程を経て制作されるものであるが、その表現が確定するのは塑像の段階であるから、塑像を制作した者、すなわち、塑像における創作的表現を行った者が当該銅像の著作者というべきである。」
知財高判平成18年2月27日(平成17年(ネ)第10100号)
「本件各銅像の塑像制作について創作的表現を行なった者は一審原告のみであって、一審被告は塑像の制作工程において一審原告の助手として準備をしたり粘土付け等に関与しただけである」
「控訴人が、本件写真集の掲載写真について作品のテーマごとにグループ分けして配列することなどを提案した点は、アイデアの提供あるいは助言にすぎないというべきであり、控訴人の行為をもって、Aらによって撮影された本件各人形の相当数の写真の中から本件写真集に掲載された写真を取捨選択し、選択した写真の配列、レイアウト等を決定し、本件各人形の写真の選択及びその配列をしたという、創作的な表現活動であると評価することはできない。」
知財高判平成19年7月25日(判時1988号95頁)
このように、著作者の認定は難しい場合もありますので、例えば、他者に委託して著作物を創作する場合や、他者と共同で著作物を創作するような場合には、誰に著作権が帰属するかについて、契約で定めておくことが重要になります。
著作者の推定
以上のように、著作者の認定は難しい場合もありますし、著作権は創作したときに自動的に発生し特許権などのようにその取得のために行政機関への登録などを必要としないため(著作権法17条2項)、自分が著作者であることを証明することが難しい場合も少なくありません。
そこで、著作権法では、誰が著作者にあたるかについて、推定規定を設けています。すなわち、著作物の原作品や、著作物の公衆への提供などの際に、その氏名などが著作者名として表示されている者は、その著作物の著作者と推定されるとされています(著作権法14条)。
著作権者との違い
著作権法では、「著作者」の他に、「著作権者」も登場します。
著作者は、前述のとおり、「著作物を創作する者」をいい(著作権法2条1項2号)、著作(財産)権や著作者人格権を原始的に取得します(著作権法17条1項)。
そして、著作者が取得する権利のうち、著作(財産)権については、財産権であるため、他の人に譲渡をすることも可能です(著作権法61条1項)。このため、著作者が著作権を譲渡すると、著作者以外の人に著作権が帰属することになります。
そこで、著作権法では、著作(財産)権の帰属主体として、「著作権者」という概念を規定しています(著作者が著作(財産)権を他の人に譲渡していなければ、著作者が著作権者でもあることになり、一方、著作者が著作(財産)権を他の人に譲渡した場合には、著作者は著作権者ではなくなり、著作(財産)権の譲渡を受けた人が著作権者になることになります。)。
なお、著作者が取得する権利のうち、著作者人格権は、一身専属権(著作権法59条)であるため、他の人に譲渡をすることはできず、常に著作者に著作者人格権が帰属することとなります(このため、著作権法上、著作者人格権の帰属主体について、著作者以外の人を規定する必要がありません)。
著作者がもつ権利
前述のとおり、著作者は、著作者人格権と著作(財産)権を取得することになります(著作権法17条1項)。
著作者人格権とは、著作者の人格的利益を保護するための権利であり、著作権法では、
- 公表権(著作権法18条)
- 氏名表示権(著作権法19条)
- 同一性保持権(著作権法20条)
が規定されています。
また、著作(財産)権とは、著作者の財産的利益を保護するための権利であり、著作権法上、
- 複製権(著作権法21条)
- 公衆送信権(著作権法23条)
- 翻案権(著作権法27条)
などが規定されています(著作権法21条~28条参照)。
共同著作物
共同著作物とは
共同著作物とは、2人以上の者が共同して創作した著作物で、その各人の寄与を分離して個別的に利用できないものをいいます(著作権法2条1項12号)。
前述のとおり、著作者とは「著作物を創作する者」をいい(著作権法2条1項2号)、特に複数の者が著作物の創作に関与する場合に誰が著作者となるかの認定に困難が伴いました。
もっとも、場合によっては、誰か1人だけが創作的寄与をしているのではなく、複数の人が創作的寄与をしている場合もあり得ます。その場合、当該著作物は、「共同著作物」となり、この創作的寄与をした複数の人は、それぞれが「著作者」となります(一方、著作物の創作に多くの人が関与している場合であっても、創作的寄与をしているのは1人だけであり、他の人は補助などをしているに過ぎない場合には、当該著作物は、通常の(単独)著作物となり、著作者も、創作的寄与をした1人だけとなります)。
例えば、2人で執筆した小説などは共同著作物に該当し、当該2人の人それぞれが当該小説(共同著作物)の著作者となります。
一方で、2人で執筆していても、例えば、前編は○○さんが執筆し、後編は××さんが執筆したというケースでは、誰がどこを書いたのか明確に分離して利用できるため、共同著作物に該当せず、○○さんが前編の著作者であり、××さんが後編の著作者となります(このような著作物は、統合著作物などと呼ばれます)。
共同著作物の権利行使
共同著作物については、著作物に係る権利が2人以上で共有されますので、著作物の利用にあたり、制限が生じます。
すなわち、共同著作物の著作者が、著作者人格権や著作(財産)権を行使しようとする場合には、著作者や共有者全員の合意が必要となります(著作権法64条1項、65条2項)。
なお、著作者や共有者は、当該合意について信義に反して合意の成立を妨げたり、正当な理由がないのに合意の成立を妨げたりすることはできません(著作権法64条2項、65条3項)。また、著作者人格権や著作(財産)権を代表して行使する者を定めることもできます(著作権法64条3項、65条4項)。
なお、著作(財産)権については、これを譲渡したり、質権の目的とすることができますが(著作権法61条1項、66条1項参照)、共同著作物の著作権を共有している者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡したり、質権の目的とすることはできません(著作権法65条1項)。
創作者主義の原則の例外
今まで見てきたように、著作者とは「著作物を創作する者」をいい(著作権法2条1項2号)、このように、創作者が著作者として認められることを創作者主義ともいいます。
一方、著作権法では、一定の場合には、著作物を創作した者を著作者として認めていない場合(創作者主義の原則の例外を認めているといえる場合)があります。以下、詳しく見ていきます。
職務著作(法人著作)
創作者主義の原則の1つ目の例外が、職務著作(法人著作)です。
職務著作とは、会社の命令に基づき、従業者が職務上作成する著作物のことです。職務著作の場合、実際に著作物を創作したのは自然人である従業者ですが、一定の要件を満たす場合には、その会社が著作者となります(著作権法15条)。
会社内では日々従業員により多くの著作物が創作されるところ、これらの著作物を会社が利用しようとする際に常に従業者の許諾を必要とすることは煩雑です。そのため、一定の要件を満たした著作物については、職務著作として会社が著作者と認められるとされています。
職務著作の要件
職務著作として、会社が著作者と認められるための要件は、以下の4つです。
① 会社の発意に基づくこと
例えば、会社の指示とは全く無関係に従業者が創作した著作物は、職務著作にはあたらず、当該従業者が著作者となります。
② 会社の業務に従事する者が職務上作成するものであること
例えば、従業員が趣味で創作した著作物については、職務著作にはあたらず、当該従業者が著作者となります。
③ 会社が自分の名義で公表すること
まだ未公表の段階であっても、会社名義での公表が予定されているものや、仮に公表されるとすれば、会社名義で公表されるべきと考えられるものについては、本要件を満たすと考えられます。
④ 契約などで別段の定めがないこと
以上の①~③の要件を満たす場合にも、契約などで、実際に著作物を創作した従業者を著作者とする旨が定められていれば、当該従業員が著作者となります。
映画の著作物の著作者
映画の著作物の著作者についても、創作者主義の例外ともいえる規定が設けられています。すなわち、映画の著作物の著作者については、「制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者」であると規定されています(著作権法16条)。
一般的に、映画を創作する際は、監督・演者・美術担当・撮影担当など、非常に多くの人がかかわり、このように多くの人がかかわる映画においては、「誰が著作者となるか」が問題となるところ、著作権法では、上記のとおり、映画の著作物の著作者となる者を規定しているわけです。
通常の著作物であれば、著作物の一部について創作的寄与をすれば、共同著作物の著作者等となり得るのに対し、映画の著作物については、その一部に創作的寄与をしても著作者とはなることができず、全体的形成に創作的な寄与をしなければ著作者となることができないという点において、著作権法16条は、創作者主義の原則の例外を定めた規定とも考えられます。
なお、映画の著作物については、別途、「映画の著作物…の著作権は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に帰属する」と規定されています(著作権法29条1項)。
このように、映画の著作物の著作権は、映画製作者に帰属することとなるため、映画の著作物の著作者は、基本的には、著作者人格権を有することになるといえます。
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