著作権侵害をされたときの対処法
手続きの種類・流れや注意点などを解説!
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- この記事のまとめ
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著作権をもつ者(著作権者)に無断で
・著作物のコピーを配る
・インターネット上へアップロードする
・商品化して販売する
・パロディを制作する
などの行為は著作権侵害に当たる可能性があります。自社の著作権を侵害された場合は、
・差止請求
・損害賠償請求
・刑事告訴
によって対応しましょう。その際には、著作権侵害の証拠を確保することや、消滅時効・公訴時効に注意することが大切です。今回は、自社の著作権を侵害された場合の対処法について、手続きの種類・流れや注意点などを解説します。
※この記事は、2023年3月27日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
著作権侵害の要件
まず、著作権侵害が成立するには、以下の4つの要件を満たす必要があります。
①著作物性(創作性)がある
②オリジナルに依拠している
③同一性または類似性が認められる
④利用行為がなされ、またはみなし侵害が成立している
以下、各要件の詳細を解説します。
①著作物性(創作性)がある
大前提として、オリジナルの創作物が著作物であることが必要です。
著作物として認められるには、以下の要件を満たす必要があります(著作権法2条1項1号)。
①思想または感情を含むこと
②創作したものであること
③表現したものであること
④文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものであること
この要件を「著作物性」または「創作性」といいます。
多くの創作物には著作物性(創作性)が認められますが、
- 単なる事実やデータ(「東京タワーの高さは333m」など)
- 短文で自由度の低すぎる表現(「今でしょ」のようなキャッチフレーズなど)
- ありふれた表現(「いつもお世話になっております」といったあいさつなど)
などには著作物性(創作性)が認められないことがあります。
②オリジナルに依拠している
著作権侵害の成立には、侵害が疑われる著作物が他人の著作物に依拠していることが必要です。例えば、オリジナルの著作物をコピーしたようなケースや、オリジナルに依拠してパロディを制作したケースなどでは依拠性が認められます。
これに対して、オリジナルに依拠することなく、たまたま似たような著作物を生み出してしまったような場合には、著作権侵害は成立しません。
③同一性または類似性が認められる
著作権侵害が成立するのは、侵害が疑われる創作物が以下いずれかに該当すると判断できる場合に限られます。
- オリジナルの完全な複製物である(同一性)
- 一定以上に類似した翻案である(類似性)
なお、翻案が著作権侵害を構成するのは、その表現物を見た際に、オリジナルの表現上の本質的な特徴を直接感得できる場合です(最高裁平成13年6月28日判決)。
④利用行為がなされ、またはみなし侵害が成立している
著作権には以下の種類があり、著作権者はこれらの権利を専有しています。したがって、著作権者に無断で各権利により保護された行為をすると、著作権侵害が成立します。
①複製権(著作権法21条)
②上演権、演奏権(同法22条)
③上映権(同法22条の2)
④公衆送信権・公衆伝達権(同法23条)
⑤口述権(同法24条)
⑥展示権(同法25条)
⑦頒布権(同法26条)
⑧譲渡権(同法26条の2)
⑨貸与権(同法26条の3)
⑩翻訳権、翻案権等(同法27条)
⑪二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(同法28条)
また、直接的な著作物の利用行為ではないものの、以下の行為も著作権侵害とみなされます(著作権法113条)。
①国内で行われたとすれば著作権侵害に当たる行為により作成された物を、国内において頒布する目的で輸入する行為
②著作権侵害行為により作成された物につき、著作権侵害であると知りながらする以下の行為
・頒布
・頒布目的所持
・頒布申出
・業としての輸出
・業としての輸出目的所持
③リーチサイト・リーチアプリに対し、侵害コンテンツのリンクを提供する行為
④リーチサイト・リーチアプリを提供する行為
⑤著作権侵害であると知りながら海賊版プログラムのライセンスを取得し、業務の一環としてコンピュータにインストール・使用する行為
⑥コピーガードを不正に解除する行為
⑦コピーガードを解除するパスワードを、公衆に対して譲渡・貸与等する行為
⑧著作物の権利管理情報を改ざんする行為
⑨権利管理情報が改ざんされた著作物またはそのコピーを、情を知って頒布等する行為
⑩国内盤CDが発行されてから4年以内に、国外盤CDを輸入・国内頒布し、または頒布目的で所持することにより、著作権者・著作隣接権者の利益を不当に害する行為
⑪著作者の名誉・声望を害する方法によって著作物を利用する行為
著作権侵害の具体例
著作権侵害の典型的なパターンとしては、以下の例が挙げられます。
- 勝手にコピーして配る|複製権侵害
- 勝手にインターネット上へアップロードする|公衆送信権侵害
- 勝手に商品化して販売する|譲渡権侵害
- 勝手にパロディを制作する|翻案権侵害
- 侵害コンテンツを違法ダウンロードする|複製権侵害
勝手にコピーして配る|複製権侵害
著作物をコピーすることは「複製」に当たります。複製権は著作権者が専有しているので、著作権者の許諾なく複製を行うと、複製権侵害になります(著作権法21条)。
なお、例外として、私的使用目的での複製であれば、著作権者の許諾は不要とされています(同法30条1項)。
勝手にインターネット上へアップロードする|公衆送信権侵害
著作物(またはそのコピー)を、第三者がアクセスできるかたちで、インターネット上にアップロードすることは「公衆送信」に当たります。公衆送信権は著作権者が専有しているので、著作権者の許諾なく公衆送信を行うと、公衆送信権侵害になります(著作権法23条1項)。
なお、自分しかアクセスできないクラウドサーバーなどにアップロードすることは可能です(同法30条1項)。
勝手に商品化して販売する|譲渡権侵害
著作物の原作品または複製物を販売する行為は「譲渡」に当たります。譲渡権は著作権者が専有していまるので、著作権者に無断で著作物を商品化して販売することは譲渡権侵害に当たります(著作権法26条の2)。
なお、映画の著作物について複製物(DVD、BDなど)を販売することは「頒布」に当たり、頒布権によって保護されています(同法26条)。
勝手にパロディを制作する|翻案権侵害
オリジナルの著作物に依拠してパロディを制作する行為は「翻案」に当たります。翻案権は著作権者が専有しているので、著作権者に無断でパロディを制作することは翻案権侵害に当たります(著作権法27条。ただし私的使用目的の場合などを除く)。
なお前述のとおり、パロディが翻案権侵害に当たるかどうかは、オリジナルの表現上の本質的な特徴を直接感得できるか否かによって判断されます。
侵害コンテンツを違法ダウンロードする|複製権侵害
自動公衆送信されたコンテンツ(インターネット上のアップロードコンテンツなど)をPCやスマートフォンなどで受信(ダウンロード)する際には、データの複製が行われます。
私的使用目的の複製は著作権者の許諾を要しないのが原則ですが、著作権侵害コンテンツであると知りながら自動公衆送信の受信によって複製した場合は、例外として対象から除かれています(著作権法30条1項3号)。
したがって、このような「違法ダウンロード」と呼ばれる侵害コンテンツの受信行為は、複製権侵害に当たります。
著作権侵害に該当しないケース
著作権の適正な利用を妨げることがないように、以下の場合には著作権が制限されます。これらのいずれかに該当する場合には、著作権者の許諾を得ずに著作物を利用することが可能です。
①私的使用目的の複製(著作権法30条)
②付随対象著作物(「写り込み」部分など)の利用(同法30条の2)
③図書館等における複製・記録・提供(同法31条)
④引用(同法32条)
⑤教科用図書等への掲載等(同法33条~33条の3)
⑥学校教育番組の放送・教材掲載(同法34条)
⑦学校などの教育機関における複製・公衆送信(同法35条)
⑧試験問題としての複製・公衆送信(同法36条)
⑨視覚障害者・聴覚障害者等のための複製等(同法37条、37条の2)
⑩営利を目的としない上演等(同法38条)
など
著作権侵害を受けた場合の対処法
自社の著作権を侵害された場合には、以下の方法によって損害の拡大阻止と回復、さらに加害者の責任追及を図りましょう。
- 差止請求
- 損害賠償請求・不当利得返還請求
- 名誉回復措置請求
- 刑事告訴
差止請求
著作権を侵害され、または侵害されるおそれがある場合には、その侵害の停止または予防を請求できます(著作権法112条1項)。これを「差止請求」といいます。
さらに、侵害行為を構成した物、侵害行為によって作成された物、専ら侵害の行為に使用された機械・器具の廃棄など、侵害の停止・予防に必要な措置も併せて請求可能です(同条2項)。
損害賠償請求・不当利得返還請求
侵害行為によって著作権者が受けた損害については、加害者に対して不法行為に基づく損害賠償を請求できます(民法709条)。損害額については、著作権法114条で推定規定が設けられており、立証負担が緩和されています。
なお、加害者に対する不当利得返還請求(民法703条、704条)も可能ですが、不法行為に基づく損害賠償請求と競合するため、二重取りはできません。
名誉回復措置請求
著作権とは別に、著作者には以下の「著作者人格権」が認められています。
①公表権(著作権法18条)
未公表の著作物を公衆に提供・提示する権利
②氏名表示権(同法19条)
著作物の公衆への提供・提示に際して、実名・変名を著作者名として表示し、または著作者名を表示しないこととする権利
③同一性保持権(同法20条)
意に反して著作物を改変されない権利
著作者人格権を侵害された場合、著作者は加害者に対して、名誉・声望を回復するための措置(謝罪・訂正広告など)を請求できます(同法115条)。
刑事告訴
著作権侵害は犯罪であるため、被害者である著作権者は、加害者を刑事告訴できます(刑事訴訟法230条)。
著作権侵害に科される刑事罰(法定刑)
著作権侵害の法定刑は、最大で「10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金」です(著作権法119条1項)。
さらに、著作権侵害を行った者が法人の代表者・代理人・使用人その他の従業者である場合には、当該法人にも最大で「3億円以下の罰金」が科されます(同法124条1項1号)。
著作権侵害に対する民事上の請求手続き
著作権侵害に関する差止請求・損害賠償請求などの民事上の請求は、主に以下の手続きによって行います。
①内容証明郵便の送付
②仮処分の申立て
③訴訟の提起
④あっせんの申請
⑤強制執行
①内容証明郵便の送付
著作権侵害の加害者にアプローチする際の第一段階としては、侵害行為の停止や損害賠償を請求する内容証明郵便の送付が一般的です。
内容証明郵便を送付することで、著作権侵害の責任を追及する強い意思を加害者に伝えられます。また、損害賠償請求権の消滅時効(「消滅時効・公訴時効に注意」にて後述)の完成を、6か月間猶予する効果もあります(民法150条1項)。
②仮処分の申し立て
侵害行為の差止請求については緊急性を要するため、裁判所に対して仮処分を申し立てるケースが多いです。
著作権者に生じる著しい損害または急迫の危険を避けるために必要と判断すれば、訴訟の結果を待つことなく、裁判所は侵害行為の停止などを命ずる仮処分命令を発します(民事保全法23条2項)。
仮処分命令が確定すれば、強制執行の債務名義として用いることが可能です(執行証書。民事執行法22条3号)。
- 債務名義の例
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・確定判決
・仮執行宣言付判決
・和解調書
・調停調書
・仮執行宣言付支払督促
・強制執行認諾文言付公正証書(執行証書)
など
③訴訟の提起
著作権侵害によるトラブルの最終的な解決は、裁判所に訴訟を提起して争います。訴訟は、裁判所で行われる公開の手続きです。
著作権者は、法廷で加害者の侵害行為や損害などを立証し、裁判所に差し止めや損害賠償を命じる判決を求めます。
法的な観点から説得力のある主張を行うこと、および侵害行為や損害の十分な証拠を揃えることが、訴訟で勝利するための重要なポイントです。
訴訟で著作権者勝訴の判決が確定すれば、強制執行の債務名義として用いることができます(民事執行法22条1号)。
④あっせんの申請
著作権に関する紛争については、文化庁長官に対して「あっせん」を申請することも認められています(著作権法106条)。
あっせん手続きでは、最大3人の委員の仲介によって、著作権者と加害者が和解を目指して話し合います。平均的な審理期間は約6か月で、和解が成立すれば、訴訟よりも早期に解決できる点がメリットです。
和解契約を公正証書で締結し、加害者の強制執行認諾文言を記載すれば、強制執行の債務名義として利用できます(民事執行法22条5号)。
⑤強制執行
加害者が侵害行為の予防・停止や損害賠償を拒否している場合、著作権者は債務名義(執行証書・確定仮処分命令・確定判決など)を得た後、裁判所に強制執行を申し立てることができます。
侵害行為の予防・停止についての強制執行は「間接強制」、損害賠償の強制執行は「直接強制」によります。
①間接強制
加害者が義務を履行するまでの間、継続的に発生する間接強制金の支払いを義務付けます。
②直接強制
加害者の財産を差し押さえ、強制的に債権の弁済に充当します。間接強制金についても、直接強制による弁済充当が可能です。
著作権侵害に対する刑事告訴の手続き
著作権侵害の刑事告訴は、書面または口頭により、検察官または司法警察員(警察官)に対して行います(刑事訴訟法241条1項)。会社が被害者の場合は、事業場の近くにある警察署へ告訴状を提出するのが一般的です。
なお、著作権侵害に関する犯罪の多くは親告罪とされており、起訴・処罰には著作権者などの刑事告訴が必要となります(著作権法123条1項)。
著作権侵害に対処する際の注意点
著作権侵害について対処する際には、特に以下の各点に十分留意ください。
- 著作権侵害の証拠を確保する
- 消滅時効・公訴時効に注意
著作権侵害の証拠を確保する
加害者に対する差止請求や損害賠償請求などを成功させるためには、著作権侵害の有力な証拠を確保することが重要です。
(例)
・侵害コンテンツの販売状況を撮影した画像
・侵害コンテンツがアップロードされた画面のスクリーンショット
・加害者とやり取りしたメッセージのデータ
・加害者との通話や会話の録音
など
収集・利用できる証拠について多角的な検討を行い、著作権侵害の盤石な立証を目指しましょう。
消滅時効・公訴時効に注意
著作権侵害の損害賠償請求権は、以下のいずれかの期間が経過すると時効消滅します(民法724条)。
①損害および加害者を知った時から3年
②侵害行為の時から20年
また、著作権侵害に係る犯罪について、検察官が加害者を起訴できるのは、公訴時効期間が経過するまでです。
公訴時効期間は法定刑に応じて決まっており、最長10年の懲役刑が設けられている侵害行為については、行為時から7年で公訴時効が完成します(刑事訴訟法250条2項4号)。法定刑が軽い侵害行為については、3年または5年で公訴時効が完成するため、早めに刑事告訴を行いましょう。
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