電気通信事業法とは?
法律の概要や改正法の位置付けなどを
分かりやすく解説!
- この記事のまとめ
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電気通信事業法とは、「電気通信の健全な発達及び国民の利便の確保を図り、公共の福祉を増進すること」(法1条)を目的とした法律です。
電気通信事業法の全体イメージを捉える上では、
・電気通信役務
・電気通信事業
・電気通信事業者
の定義を正しく理解し、現在検討している条文で問題になっているのがどの部分の話なのかを切り分けて理解することが重要です。この記事では「電気通信事業法」について、基本から分かりやすく解説します。
※この記事は、2023年5月23日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名等を次のように記載することがあります。
- 電気通信事業法…法
- 電気通信事業法施行規則…規則
- 電気通信事業参入マニュアル[追補版]令和4年6月28日改定版…マニュアル
- 電気通信事業参入マニュアル[追補版]ガイドブック…ガイドブック
- 同意取得の在り方に関する参照文書…参照文書
- 外部送信規律に係る電気通信事業における個人情報保護に関するガイドラインの解説案について…解説案
- 電気通信事業法逐条解説改訂版…逐条解説
- 総務省 学術雑誌『情報通信政策研究』第6巻第1号 電気通信事業法の一部を改正する法律 立案担当者解説…立案担当者解説
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目次
電気通信事業法とは
電気通信事業法とは、「電気通信の健全な発達及び国民の利便の確保を図り、公共の福祉を増進すること」(法1条)を目的とした法律です。
いわゆる業法でありながら、「業」の対象が電気通信(Telecommunications)であることから、インターネットの普及した現代社会において非常に広範な事業を対象とする法律です。
- 電気通信事業に当たり得る事業の例
-
・携帯電話会社
・インターネットサービスプロバイダ
・電話転送
・フリーメール
・メーリングリスト
・決済代行
・マンションインターネット
・クローズド・チャット
・MVNO
・ポータルサイト運営
・SNS
など
電気通信事業法の難しさ
電気通信事業法は上述のとおり非常に広範な事業を対象とする法律であり、結果として多くの企業を対象とする法律であるため、とても難しい法律でもあります。
その理由を3つの観点から説明します。
古さ
電気通信事業法は、
- 成立 1984年12月20日
- 公布 1984年12月25日
- 施行 1985年4月1日
という非常に古い法律です。
総務省はインターネットの普及を「1995年から2000年頃」として説明していますが(総務省ウェブサイト「インターネットの登場・普及とコミュニケーションの変化」)、そのインターネットの普及よりも前に施行されたのがこの法律です。
今日までに改正法も施行されてはいますが、基本構造部分が出来上がった時期が古いため、
- 法律全体の構造や、継ぎ足された部分の適用関係がややこしい
- 前提とする背景事情の補正が必要となる
点で難しい法律です。
新しさ
インターネットが普及した結果、個人は誰もが簡単に「電気通信役務を提供する者」(詳細は後述)に該当するようになりました。また、企業は今日のビジネスにおいて一般的に求められる企業活動を行うと、結果としてその多くの部分が「電気通信事業」(詳細は後述)に該当するようになりました。
このように多くのプレイヤーが参加するインターネットにおいては、日進月歩で新しい技術が導入され、個人・企業がその活動において工夫を重ね、その結果として日々新たな問題が生じます。
上述のとおり古い法律であるにもかかわらず、適用対象は新しいため、
- 最新の技術用語を法律用語で読み替えて理解する必要がある
- 改正法の施行後もアップデートされ続ける、今日の技術に適用する必要がある
点においてまた、電気通信事業法は難しい法律です。
厳格さ
電気通信事業法自体にはあまり馴染みのない方も、「通信の秘密」(法4条1項)はご存知かもしれません。電気通信事業法の最重要部分の1つであるこの通信の秘密は、憲法の要請に基づくものです(憲法21条2項後段)。
そのため、電気通信事業法における通信の秘密の解釈・運用においても憲法と同様の厳格さが求められることがあります。例えば、同意取得に際しても他の法律とは質的に異なった対応が求められる場面があります(詳細は後述)。
このように、憲法の要請を背景として厳格さを求められる場面がある点において難しい法律です。
電気通信事業法の全体イメージ
電気通信事業法を構造的に捉える上では、
- 電気通信役務
- 電気通信事業
- 電気通信事業者
の定義を正しく理解し、現在検討している条文で問題になっているのがどの部分の話なのかを切り分けて理解することが重要です。
これは、個人情報保護法において、
- 個人情報
- 個人データ
- 保有個人データ
の定義を正しく理解し、現在検討している条文で問題になっているのがどの部分の話なのかを切り分けて理解することが非常に重要なこととその重要性において似ています。
以下は、総務省の発行するマニュアルに、「全体イメージ」として記載されている図です。電気通信事業法を読み慣れた人にとっては、情報が1つの絵に整理された非常にわかりやすい図ですが、電気通信事業法を読み慣れていない人にとっては、似たような言葉が並び、混乱してしまいがちです。まずはこの図を読み解けるようになりましょう。
マニュアル
電気通信役務(サービス)を提供する者(緑枠)
上記の全体イメージに示されている緑枠・紫枠・橙枠について、その基本的な内容を解説します。まずは緑枠 の「電気通信役務(サービス)を提供する者」についてです。
電気通信役務とは
電気通信役務とは、「電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し、その他電気通信設備を他人の通信の用に供すること」(法2条3号)をいいます。
「電気通信設備」にはサーバ(クラウドコンピューティング等の技術を利用するなど、サーバ等の物理的な設備を設置しなくても、実質的に物理的な設備を設置した場合と同等の機能を有する場合を含む)を含み、「他人の通信」には自己と他人との間の通信も含まれることから(マニュアル)、インターネットの普及した現代社会においては、インターネットを介して行われる多くの活動がこの電気通信役務に該当します。
もっとも、緑枠の下部に注目してください。「電気通信事業法の規律の対象外」と書かれています。電気通信事業を営む者(紫枠 )に該当しない範囲での、電気通信役務(サービス)を提供する者(緑枠)の活動は、電気通信事業法の規律の対象外です。
法律の適用有無を画する概念であることから、「電気通信役務(サービス)を提供する者」(緑枠 )を理解するためには、「電気通信事業」(2条4号)(紫枠)を理解することが重要です。
(定義)
「電気通信事業法」e-gov法令検索 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
⑴~⑶ (略)
⑷ 電気通信事業 電気通信役務を他人の需要に応ずるために提供する事業(中略)をいう。
そこで以下、電気通信事業(紫枠)の定義の構成要素である
①事業
②他人の需要
を順番に解説します。
ポイント①:事業
紫枠の「電気通信事業を営む者」には、電気通信役務を他人の需要に応ずるために提供する事業を営む者が該当します。よって、電気通信役務の提供が事業によるものではない場合には、緑枠の「電気通信役務(サービス)を提供する者」であるにとどまります。
ここで事業とは、「主体的・積極的意思、目的をもって行う同種の行為の反復継続的遂行(反復継続的遂行となり得るものを含む)」(逐条解説)をいいます。
なお、「事業」性については、「営利目的があることは、事業性があることの判断要素にはなり得るが、営利性がないからといってそれが「事業」性がないことの根拠にはならない」(逐条解説)との記載もあり、企業が行う活動について「事業」への該当性を検討することは、次の「他人の需要」の要件と比較して多くありません。
ポイント②:他人の需要
紫枠の「電気通信事業を営む者」には、電気通信役務を他人の需要に応ずるために提供する事業を営む者が該当します。よって、仮に電気通信役務の提供が事業性を有する場合でも、それが他人の需要に応ずるためのものではない場合(自己の需要に応ずるためのものである場合)には、緑枠の「電気通信役務(サービス)を提供する者」に該当します。
ここで他人の需要に応ずるためとは、「電気通信役務の提供について他人の需要に応ずることを目的とする場合」(逐条解説)と定義されていますが、定義自体が同語反復的であり、判断の難しい概念です。そこで、「他人の需要とは何か」ではなく「他人の需要に該当しないもの(自己の需要)とは何か」という観点から説明します。
自己の需要については、「ある者が自らの業務の遂行に当たって又はそれに付随して電気通信設備を業務上の関係を有する他人との通信の用に供することは、自己の需要に応ずるものと判断され」ると説明されます(マニュアル)。
自己の需要に応じるものの具体例として
- 自己の情報発信のためのホームページの運営
(コーポレートサイト、ブランドサイト) - 社内システム
などが挙げられることがあります。
しかし、今日においてはコーポレートサイトにオウンドメディアの機能を持たせ、情報発信を行うことや、社内システムに委託先・仕入先などのパートナー企業が社外からアクセスすることも少なくありません。そのため限界線について一般的な基準を定めるのは難しく、個別の事例ごとの判断が必要になります。
電気通信事業を営む者(紫枠)
電気通信事業とは
電気通信事業とは、「電気通信役務を他人の需要に応ずるために提供する事業」(法2条4号)をいいます。「事業」「他人の需要」の解釈が重要になるのは上述のとおりです。
そして、ここでもまた「電気通信事業を営む者」(紫枠)の理解においては、「電気通信事業者」(橙枠)との切り分けがポイントになります。
(定義)
「電気通信事業法」e-gov法令検索 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
⑴~⑷ (略)
⑸ 電気通信事業者 電気通信事業を営むことについて、第九条の登録を受けた者及び第十六条第一項(中略)の規定による届出をした者をいう。
そこで以下、電気通信事業者(橙枠)の定義の構成要素である
①登録
②届出
の解釈を示しながら「電気通信役務(サービス)を提供する者」(緑枠)への該当性を検討します。
登録
電気通信事業者のうち登録が必要になるのは、以下のとおり、一定の「電気通信回線設備」を設置する場合です。
条文構造的には、本文で全ての電気通信事業事業者に対して登録を義務付けた上で、ただし書きで除外事由を定めています。しかし、今日の電気通信の状況を踏まえると、自ら電気通信設備を設置する(=結果として登録が必要になる)電気通信事業者は少数派です。
(電気通信事業の登録)
「電気通信事業法」e-gov法令検索 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
第9条 電気通信事業を営もうとする者は、総務大臣の登録を受けなければならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
⑴ その者の設置する電気通信回線設備(送信の場所と受信の場所との間を接続する伝送路設備及びこれと一体として設置される交換設備並びにこれらの附属設備をいう。以下同じ。)の規模及び当該電気通信回線設備を設置する区域の範囲が総務省令で定める基準を超えない場合
⑵ その者の設置する電気通信回線設備が電波法(昭和25年法律第131号)第7条第2項第6号に規定する基幹放送に加えて基幹放送以外の無線通信の送信をする無線局の無線設備である場合(前号に掲げる場合を除く。)
届出
続いて電気通信事業者のうち届出が必要になるのは、主として「他人の通信を媒介する」(法164条)場合です。ここで、「他人の通信を媒介する」とは、他人の依頼を受けて、情報をその内容を変更することなく、伝送・交換し、隔地者間の通信を取次、または仲介してそれを完成させることをいいます(マニュアル)。
条文構造的には、「登録」(法9条)をしない全ての電気通信事業者に対して届出を義務付けた上で、法164条で適用除外を定めています。「主として」と述べたとおり、法164条では他人の通信を媒介する場合以外についても適用除外を定めており、さらに例外の例外として適用除外が適用されない類型(法164条1項3号イ〜ハ)を定めており、非常に複雑です。
まずは、適用除外の主たる内容として「他人の通信を媒介」という概念を理解するのが重要です。
(電気通信事業の届出)
「電気通信事業法」e-gov法令検索 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
第16条 電気通信事業を営もうとする者(第9条の登録を受けるべき者を除く。)は、総務省令で定めるところにより、次の事項を記載した書類を添えて、その旨を総務大臣に届け出なければならない。
(適用除外等)
「電気通信事業法」e-gov法令検索 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
第164条 この法律の規定は、次に掲げる電気通信事業については、適用しない。
⑴~⑵ (略)
⑶ 電気通信設備を用いて他人の通信を媒介する電気通信役務以外の電気通信役務(次に掲げる電気通信役務(ロ及びハに掲げる電気通信役務にあつては、当該電気通信役務を提供する者として総務大臣が総務省令で定めるところにより指定する者により提供されるものに限る。)を除く。)を電気通信回線設備を設置することなく提供する電気通信事業
イ ドメイン名電気通信役務
ロ 検索情報電気通信役務
ハ 媒介相当電気通信役務
第三号事業
上記の164条1項3号が適用される結果、「登録」「届出」が不要な電気通信事業を第三号事業といいます。
なお、
- 登録または届出が必要な電気通信事業
- 登録および届出が不要な電気通信事業(第三号事業)
の区別はマニュアルで解説されています。
マニュアル
第三号事業を営む者の義務
第三号事業を営む者に対しては、「この法律の規定は、次に掲げる電気通信事業については、適用しない」(法164条1項柱書)とされているものの、同条3項で「第1項の規定にかかわらず、(中略)の規定は第三号事業を営む者について、それぞれ適用する」とされ、一部の規定は適用されます。
この第三号事業を営む者に適用される義務は、令和4(2022)年改正法までは通信の秘密や検閲の禁止(法3条、4条)等が中心でしたが、令和4(2022)年改正法で外部送信規律(法27条の12)等が加わりました。
今までは消極的義務(「検閲してはならない。」「通信の秘密は、侵してはならない。」)が中心だったところ、積極的義務(「当該利用者に通知し、又は当該利用者が容易に知り得る状態に置かなければならない。」)が加わったと表現することもできます。
その結果、今まであまり電気通信事業法に意識を向けていなかった企業が対応に追われることになりました。
電気通信事業者(橙枠)
電気通信事業者とは
電気通信事業者とは、「電気通信事業を営むことについて、第9条の登録を受けた者及び第16条第1項(同条第2項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定による届出をした者」(法2条4号)をいいます。
ここでいう登録・届出については上述したとおりです。
企業が提供するアプリケーションが「クローズド・チャット/オンライン会議」機能を有する場合には、登録または届出が必要な電気通信事業に該当します。この点についての認識が足りず、登録または届出を怠っている事業者は一定数存在するものと考えられ、注意が必要です。
マニュアル
コラム |
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個人情報保護法では、金融・医療・情報通信関連分野に対して個別にガイドラインが作成されています。 そして、情報通信関連分野のガイドラインは、「個人情報の適正な取扱いに関し、電気通信事業者の遵守すべき基本的事項を定めることにより、電気通信役務の利便性の向上を図るとともに、利用者の権利利益を保護することを目的」(電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン第1条)としています。 そして、同ガイドラインでいう電気通信事業者は、「電気通信事業(電気通信事業法第2条第4号に定める電気通信事業をいう。)を行う者をいう」(同ガイドライン第3条1号)と定められています。この気持ち悪さが伝わるでしょうか? 引用元│マニュアル 上記の図で説明すると、 ・電気通信事業法 ー橙枠を指して「電気通信事業者」という ・電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン ー紫枠を指して「電気通信事業者」という(電気通信事業法では、紫枠は電気通信事業を営む者であり、電気通信事業者ではない) この点からも、電気通信事業法は非常に難しい法律だといえます。 |
電気通信事業法でおさえておきたい用語1|通信の秘密
続いて、第三号事業を営む者を含めて広く規制の対象になる、通信の秘密と外部送信規律について取り上げて解説します。まずは通信の秘密です。
「通信の秘密は、侵してはならない」旨が法4条において定められています。
この規制は、電気通信事業者の取扱中に係る通信は、「いったん当事者の手から離れ電気通信事業者に託されたものであり、通信当事者が秘密を保護するための自衛措置を講じる余地がなく、また、秘密が侵害される危険にさらされやすい」(逐条解説)ことに基づいています。
電気通信事業者の取扱中とは
電気通信事業者の取扱中とは、「発信者が通信を発した時点から受信者がその通知を受ける時点までの間」(逐条解説)をいいます。
通信の秘密を侵すとは
通信の秘密を侵すとは、「通信当事者以外の第三者が積極的意思を持って知得しようとすることのほか、第三者にとどまっている秘密をその者が漏えいすること及び窃用すること」(逐条解説)をいいます。
知得、漏えい、窃用の定義は以下のとおりです。
- 知得:積極的に通信の秘密を知ろうとする意思の下で知ること
- 漏えい:他人が知り得る状態に置くこと
- 窃用:発信者または受信者の意思に反して利用すること
適法化根拠
知得、漏えい、窃用に該当する場合でも
- 利用者の有効な同意がある場合
- 違法性阻却事由がある場合
には、通信の秘密の侵害には当たらないとされています。
ここでいう「利用者の有効な同意」については、総務省から「同意取得の在り方に関する参照文書」が出されており、電気通信事業法における通信の秘密に対する同意取得について解説がなされています。
電気通信事業法でおさえておきたい用語2|外部送信規律(Cookie規制)
続いて外部送信規律(Cookie規制)についてです。令和4(2022)年改正において追加された規制ですが、非常に読みづらく、難解な規制です。
(情報送信指令通信に係る通知等)
「電気通信事業法」e-gov法令検索 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
第27条の12 電気通信事業者又は第三号事業を営む者(内容、利用者の範囲及び利用状況を勘案して利用者の利益に及ぼす影響が少なくないものとして総務省令で定める電気通信役務を提供する者に限る。)は、その利用者に対し電気通信役務を提供する際に、当該利用者の電気通信設備を送信先とする情報送信指令通信(利用者の電気通信設備が有する情報送信機能(利用者の電気通信設備に記録された当該利用者に関する情報を当該利用者以外の者の電気通信設備に送信する機能をいう。以下この条において同じ。)を起動する指令を与える電気通信の送信をいう。以下この条において同じ。)を行おうとするときは、総務省令で定めるところにより、あらかじめ、当該情報送信指令通信が起動させる情報送信機能により送信されることとなる当該利用者に関する情報の内容、当該情報の送信先となる電気通信設備その他の総務省令で定める事項を当該利用者に通知し、又は当該利用者が容易に知り得る状態に置かなければならない。ただし、当該情報が次に掲げるものである場合は、この限りでない。
背景
本改正の背景事情として、立案担当者解説ではケンブリッジ・アナリティカ事件やsmooz事件など、「利用者のスマートフォンやタブレットなど端末に記録された情報が、利用者の意思によらずにウェブサイト運営者やアプリ提供者などに送信される状況が生じている」ことを挙げています。
上記のとおり法27条の12は非常に難解な条文です。そこで以下、同条による規制を
- 主体
- 要件
- 効果
に分解して説明します。
主体
規制の対象となる主体は、「電気通信事業者又は第三号事業を営む者(内容、利用者の範囲及び利用状況を勘案して利用者の利益に及ぼす影響が少なくないものとして総務省令で定める電気通信役務を提供する者に限る。)」です。
そして、「内容、利用者の範囲及び利用状況を勘案して利用者の利益に及ぼす影響が少なくないものとして総務省令で定める電気通信役務を提供する者」として、総務省令では、4つの類型を定めています。
(1) 他人の通信を媒介する電気通信役務
(2) その記録媒体に情報を記録し、又はその送信装置に情報を入力する電気通信を利用者から受信し、これにより当該記録媒体に記録され、又は当該送信装置に入力され た情報を不特定の利用者の求めに応じて送信する機能を有する電気通信設備を他人 の通信の用に供する電気通信役務
(3) 入力された検索情報(検索により求める情報をいう。以下この号において同じ。) に対応して、当該検索情報が記録された全てのウェブページ(通常の方法により閲覧 ができるものに限る。第 4 項において同じ。)のドメイン名その他の所在に関する情 報を出力する機能を有する電気通信設備を他人の通信の用に供する電気通信役務
(4) 前号に掲げるもののほか、不特定の利用者の求めに応じて情報を送信する機能を 有する電気通信設備を他人の通信の用に供する電気通信役務であって、不特定の利 用者による情報の閲覧に供することを目的とするもの
こちらも非常に難解な条文ですが、総務省が発行するパンフレット「外部送信規律について」において、これらの4類型を単純化しながら分かりやすく紹介しています。
総務省「外部送信規律について」
要件
続いて規制の対象となる要件は、「その利用者に対し電気通信役務を提供する際に、当該利用者の電気通信設備を送信先とする情報送信指令通信(利用者の電気通信設備が有する情報送信機能(利用者の電気通信設備に記録された当該利用者に関する情報を当該利用者以外の者の電気通信設備に送信する機能をいう。以下この条において同じ。)を起動する指令を与える電気通信の送信をいう。以下この条において同じ。)を行おうとするとき」です。
こちらについても、総務省の「外部送信規律について」に分かりやすく紹介されています。
総務省「外部送信規律について」
効果
最後に規制の対象となった場合の効果です。上記の要件に該当する場合、利用者に対し、
- 通知または公表(法27条の12本文)
- 同意(法27条の12第3号)
- オプトアウト(法27条の12第4号)
いずれかの対応が必要になります。
事業者にとっては同意、オプトアウト、通知に比べて負担が軽いことから、多くの事業者は公表により対応をしようとしています。同様に、総務省の「外部送信規律について」が公表に際して必要になる対応を分かりやすく紹介してくれています。