介護保険法とは?
改正の沿革・介護保険制度・介護サービス・介護保険施設に関する規制などを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

介護保険法」とは、要介護者に対して適切に保健医療サービス・福祉サービスを提供するため、介護保険制度や介護サービス・介護保険施設に関する規制などを定めた法律です。2000年に介護保険法が施行されて以降、3年ごとに改正が行われています。

介護保険法に基づく介護保険制度は、40歳以上の全ての人を対象としています。40歳になると自動的に被保険者となり、介護保険料の負担が発生します。要介護認定を受けた方は、一定の範囲で介護支援サービスを利用できます。

介護サービス(介護事業)および介護保険施設については、適切なサービスを提供するために必要な質を確保するため、介護保険法によって規制が定められています。介護事業者や介護保険施設の運営者は、事業や施設の種類に応じた規制を遵守しなければなりません。

この記事では、などを解説します。

ヒー

介護保険法ですか。まだ私には関係なさそうな法律ですね。

ムートン

そんなことありませんよ。介護保険制度は40歳以上の全ての人が対象です。40歳になると自動的に被保険者になり、介護保険料が発生します。どんな法律なのか勉強しましょう。

※この記事は、2023年7月26日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

介護保険法とは|目的を踏まえ分かりやすく解説!

介護保険法」とは、要介護者に対して適切に保健医療サービス・福祉サービスを提供するため、介護保険制度や介護サービス・介護保険施設に関する規制などを定めた法律です。

高齢になると身体が弱くなり、介護を必要とする方が増えてきます。特に日本では高齢化が進行し、65歳以上の高齢者の割合は3割に迫っている状況です。

このような状況では、国内全体で介護サービスを充実させる必要性が高いといえます。介護保険法は、高齢化が進む日本において介護サービスの充実化を図るため、2000年4月に施行されました。

介護保険法と老人福祉法の違い

介護保険法と並んで、高齢者の福祉を図るための法律が「老人福祉法」です。

老人福祉法は、老人の福祉に関する原理を明らかにするとともに、その心身の健康の保持および生活の安定のために必要な措置を講じ、老人の福祉を図ることを目的としています。

老人保健法では、主に以下の事項が定められています。

① 福祉の措置
身体上または精神上の障害があるため、日常生活を営むのに支障がある65歳以上の方などを対象に、市町村が行うべき体制整備や措置などを定めています。

② 事業・施設
民間事業者による老人居宅生活支援事業に適用される規制や、老人のための施設(老人福祉施設・老人デイサービスセンター・老人短期入所施設・老人介護支援センター・養護老人ホーム・特別養護老人ホーム・軽費老人ホーム・老人福祉センター)の設置および運営について定めています。

③ 有料老人ホーム
有料老人ホームの設置・運営に関するルールを定めています。

上記のように老人保健法では、老人を対象とした措置や施設についての規定が置かれています。
これに対して介護保険法では、介護に焦点を当てた制度や施設についての規定が置かれています。実際には、介護を必要とする方は老人であることが多いですが、老人保健法と介護保険法の規定内容は棲み分けられています。

介護保険法の特徴|3年ごとに改正される

介護保険法は、高齢化率や平均寿命などの変化に対応するため、施行から現在に至るまでおおむね3年ごとに改正されています。

介護保険法改正の沿革

介護保険法については、施行から現在に至るまで、以下の流れで改正が行われました。

2000年介護保険法施行
2006年要支援者に対する予防給付の創設
地域包括支援センターの領域の拡大
2009年不正をした事業者に対する処分逃れ対策
不正事業の再発防止
2012年医療と介護の連携の強化
介護人材の確保とサービスの質の向上
高齢者の住まいの整備等
認知症対策の推進
保険者による主体的な取り組みの推進
保険料の上昇の緩和
2015年予防給付(訪問介護・通所介護)を地域支援事業に移行して多様化
特別養護老人ホームを、在宅での生活が困難な中重度の要介護者を支える機能に重点化
低所得者の保険料軽減を拡充
一定以上の所得のある利用者の自己負担を2割へ引き上げ
低所得の施設利用者の食費・居住費を補填する「補足給付」の要件に資産などを追加
2018年介護保険事業(支援)計画の策定
都道府県による市町村に対する支援事業の創設
財政的インセンティブの付与の規定の整備
介護医療院の新設
2021年地域住民の複雑化・複合化した支援ニーズに対応する市町村の包括的な支援体制の構築の支援
地域の特性に応じた認知症施策や介護サービス提供体制の整備等の推進
医療・介護のデータ基盤の整備の推進
介護人材確保および業務効率化の取組の強化

2024年の介護保険法改正

厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会は、2022年12月20日に「介護保険制度の見直しに関する意見」を公表しました。

同資料においては、2024年以降に行われる介護保険制度の見直しについて、以下の2つの柱が掲げられています。

① 地域包括ケアシステムの深化・推進
生活を支える介護サービス等の基盤の整備、様々な生活上の困難を支え合う地域共生社会の実現、保険者機能の強化が挙げられています。

② 介護現場の生産性向上の推進、制度の持続可能性の確保
介護人材不足の状況を踏まえた総合的な人材確保対策や、生産性の向上による働きやすい介護現場の実現が挙げられています。
また、介護給付と負担のバランスを図りつつ、保険料・公費・利用者負担の適切な組み合わせにより、制度の持続可能性を高めていくことが重要な課題であると指摘されています。具体的には、高齢者の負担能力に応じた負担の見直し、制度間の公平性や均衡等を踏まえた給付内容の見直し、被保険者および受給者範囲の見直しなどが挙げられています。

介護保険法に基づく主な制度・規制|①介護保険制度

介護保険法における大きな柱の一つが「介護保険制度」です。
介護保険法では、介護保険制度の対象者・介護保険料・要介護認定・保険給付の内容などを定めています。

介護保険制度とは|いつから始まったかも含め解説!

介護保険制度」とは、介護が必要な方に対して必要な介護サービスを提供するための公的制度です。2000年4月の介護保険法施行に合わせて開始されました。

介護保険制度では、経済状況にかかわらず適切に介護サービスを利用できるように、介護保険料と公費によって介護サービスの利用料金を補助する仕組みが整備されています。
介護保険制度に基づく介護サービスを利用するには、要介護認定を受けることが必要です。

介護保険制度の対象者

介護保険制度の対象者は、第1号被保険者と第2号被保険者に分類されます。

① 第1号被保険者
65歳以上の方です。要介護状態または要支援状態の認定を受ければ、介護保険給付を受けられます。
第1号被保険者の介護保険料は、市区町村が年金からの天引きなどにより徴収します。

② 第2号被保険者
40歳以上65歳未満の医療保険加入者です(健保組合・全国健康保険協会・国民健康保険など)。要介護状態または要支援状態が老化に起因する疾病(=特定疾病)による場合に限り、介護保険給付を受けられます。
第2号被保険者の介護保険料は、医療保険料と一体的に徴収されます。

介護保険料

介護保険料の金額は、被保険者が居住する自治体や加入している保険の種類によって異なりますが、基本的には所得に応じて負担する形になっています

例えば、東京都港区では、第1号被保険者の基準月額保険料(第8期、令和3年度~令和5年度)は6,245円です。

基準月額保険料に所得段階に応じた負担率を乗じることにより、年間の介護保険料額が決まります。
東京都港区(第8期)の第1号被保険者の介護保険料は、もっとも所得水準の低い第1段階で1万8735円、もっとも所得水準の高い第17段階で38万2194円となっています。

第2号被保険者の介護保険料は、加入している健康保険の種類によって異なります。
例えば、全国健康保険協会では、東京都の介護保険料率を標準報酬の1.82%と定め、事業主と被保険者が折半で支払うものとしています。

要介護認定

介護保険制度に基づく介護サービスを利用するには、要介護度の認定を受ける必要があります。要介護度には、要支援1・要支援2・要介護1~5の7段階があります。

要介護度要介護認定等基準時間(1日当たり)
要支援125分以上32分未満
要支援232分以上50分未満
※要介護1との区別は、具体的な症状によって判断
要介護132分以上50分未満
※要支援2との区別は、具体的な症状によって判断
要介護250分以上70分未満
要介護370分以上90分未満
要介護490分以上110分未満
要介護5110分以上
※要介護認定等基準時間:直接生活介助・間接生活介助・問題行動関連介助・機能訓練関連行為・医療関連行為に要する時間の合計

保険給付の内容

要介護度の認定を受けた方は、以下の利用限度額まで介護保険サービスを利用できます。自己負担率は、所得等に応じて1割・2割・3割の3段階です。

要介護度利用限度額(1か月当たり)
要支援150,320円
要支援2105,310円
要介護1167,650円
要介護2197,050円
要介護3270,480円
要介護4309,380円
要介護5362,170円

なお要支援の方は、要介護の方が利用できるサービスの一部が利用できません。

介護保険法に基づく主な制度・規制|②介護サービス・介護保険施設

介護保険法においては、介護保険制度と並んで、介護サービスや介護保険施設に関する規制も重要です。
介護保険法では、さまざまな種類の介護サービス(介護事業)・介護保険施設が認められており、それぞれについて必要な規制が設けられています。

介護支援専門員とは

介護支援専門員」とは、要介護者に対するケアマネジメントを実施することのできる公的資格です。

介護保険法では、介護支援専門員の登録や遵守すべき義務などを定めています。

介護サービス(介護事業)の指定制度|居宅型・施設型・地域密着型

介護保険法では、介護サービス(介護事業)の指定制度を定めています。各事業を行おうとする者は、該当する事業の申請を行い、都道府県知事または市町村長の指定を受けなければなりません

介護サービス(介護事業)の指定制度は、以下の事業者について設けられています。

① 指定居宅サービス事業者
在宅の利用者に対して、ケアプランに沿った居宅サービスを提供する事業者です。

② 指定地域密着型サービス事業者
利用者が住み慣れた地域で生活を継続できるように、きめ細かいケアサービスを提供する事業者です。

③ 指定居宅介護支援事業者
在宅で介護などを受ける利用者のために、ケアプランの作成を主に担当する事業者です。

④ 指定介護予防サービス事業者
高齢者の健康状態の悪化を防ぎ、要介護状態に陥らないようにするため、生活機能の維持向上や改善を目的としたサービスを提供する事業者です。

⑤ 指定地域密着型介護予防サービス事業者
高齢者の健康状態の悪化を防ぎ、要介護状態に陥らないようにして、住み慣れた地域で生活を継続できるように、きめ細かいケアサービスを提供する事業者です。

⑥ 指定介護予防支援事業者
介護予防サービスの利用者のために、ケアプランの作成を主に担当する事業者です。

介護保険施設の種類

介護保険法では、以下の3種類の介護保険施設が定められています。各施設は、介護保険法に基づく規制を遵守しなければなりません。

① 指定介護老人福祉施設
特別養護老人ホームのうち、入所定員30人以上(都道府県の条例でそれを上回る人数が定められた場合は、その人数以上)であり、開設者の申請があったものをいいます。
原則として要介護3以上で、家庭での生活が困難な方の介護を担当しています。

② 介護老人保健施設
介護を要する高齢者の自立を支援し、心身の機能の維持回復を図り、家庭への復帰を目指すためのサービスを提供する施設です。

③ 介護医療院
要介護者であって、主として長期にわたり療養が必要である方を対象とした施設です。日常的な医学管理やターミナルケアなどの医療機能と、生活施設としての機能を併せ持っています。

ムートン

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