【2024年公布】
情報流通プラットフォーム対処法とは?
プロバイダ責任制限法からの
改正内容を分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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2024年の通常国会において、プロバイダ責任制限法を「情報流通プラットフォーム対処法」へと改正する法律案が可決、公布されました。
情報流通プラットフォーム対処法には、インターネット上における誹謗中傷等の相談件数が高止まりする状況を踏まえた新規制が盛り込まれました。
具体的には、大規模プラットフォーム事業者(=大規模特定電気通信役務提供者)に対して、一定期間内の削除申出への対応や削除基準の策定・公表を義務付けるなどの規制が新たに設けられています。この記事では情報流通プラットフォーム対処法について、プロバイダ責任制限法からの改正が行われた背景や、具体的な変更内容などを解説します。
※この記事は、2024年5月17日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- 改正法…「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律」
- プロバイダ責任制限法…改正法による改正前の「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」
- 情報流通プラットフォーム対処法…改正法による改正後の「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」(「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」から題名変更)
目次
【2024年公布】情報流通プラットフォーム対処法とは
2024年の通常国会において、プロバイダ責任制限法を「情報流通プラットフォーム対処法」へと改正する法律案が可決、公布されました。
情報流通プラットフォーム対処法には、インターネット上における誹謗中傷等の相談件数が高止まりする状況を踏まえて、大規模プラットフォーム事業者に対する新たな規制が盛り込まれています。
「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律」が成立
プロバイダ責任制限法(情報流通プラットフォーム対処法)に関する今回の改正は、2024年の通常国会において成立した「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律」(令和6年法律第25号)に基づいて行われます。
「プロバイダ責任制限法」から「情報流通プラットフォーム対処法」へ改正
改正法により、従来のプロバイダ責任制限法が「情報流通プラットフォーム対処法」へと改正されます。
法令名称の変更は、大規模プラットフォーム事業者を対象とした新規制が盛り込まれることに対応したものです。
改正法の公布日・施行日
改正法の公布日と施行日は、以下のとおりです。
公布日|2024(令和6)年5月17日
施行日|公布日から1年以内の政令で定める日
情報流通プラットフォーム対処法の目的・背景
情報流通プラットフォーム対処法の目的は、誹謗中傷被害を防止することです。
インターネット上では、誹謗中傷による被害が多数発生しています。
誹謗中傷はSNSや匿名掲示板などの大規模プラットフォームを中心に行われています。そのため、誹謗中傷被害を防止するには、大規模プラットフォームに対して迅速かつ十分な対応を義務付けることが最も効果的です。
そこで改正法により、従来のプロバイダ責任制限法に大規模プラットフォームを対象とする規制が追加され、新たに情報流通プラットフォーム対処法として再編されました。
情報流通プラットフォーム対処法で新たに定められた規制の概要
情報流通プラットフォーム対処法では、新たに大規模プラットフォーム事業者(=大規模特定電気通信役務提供者)の義務が定められました。
詳しくは後述しますが、誹謗中傷など人の権利を侵害する情報(=侵害情報)の送信防止措置(=情報の削除)につき、実施手続きの迅速化および実施状況の透明化を図ることを目的とした義務が、大規模プラットフォーム事業者に対して新たに課されています。
大規模特定電気通信役務提供者(大規模プラットフォーム事業者)とは
情報流通プラットフォーム対処法による新規制の対象となるのは、「大規模特定電気通信役務提供者」です。
「大規模特定電気通信役務提供者」とは、大規模特定電気通信役務を提供する者として、総務大臣に指定された事業者をいいます(情報流通プラットフォーム対処法2条14号・20条1項)。
「大規模特定電気通信役務」とは、一定規模以上の特定電気通信役務であって、侵害情報送信防止措置の実施手続きの迅速化および送信防止措置の実施状況の透明化を図る必要性が特に高いと認められるものです(同法20条1項)。
「特定電気通信役務」とは、不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信(=特定電気通信)の送信に供される設備を用いて提供する電気通信役務です。
したがって、大規模特定電気通信役務提供者として情報流通プラットフォーム対処法による新規制が適用されるのは、主に大規模なSNSや匿名掲示板の運営事業者になると考えられます。
大規模特定電気通信役務提供者として指定される事業者の要件
大規模特定電気通信役務提供者として指定できる事業者の規模に関する基準は、今後総務省令によって定められる予定です。
そのため、現時点では具体的な基準は不明ですが、法律の条文上は「平均月間発信者数」または「平均月間延べ発信者数」によって判定するものとされています(情報流通プラットフォーム対処法20条1項1号)。
また、発信者数の要件を満たす事業者でも、一律に大規模特定電気通信役務提供者の指定対象となるわけではありません。
指定対象になるのは、侵害情報の送信防止措置(=削除)を講ずることが技術的に可能であり、かつ権利侵害発生のおそれが類型的に少ないサービスに該当しないことも要件とされています(同項2号・3号)。
大規模特定電気通信役務提供者の義務
情報流通プラットフォーム対処法によって大規模特定電気通信役務提供者に課されるのは、以下の義務です。
① 総務大臣に対する届出
② 被侵害者からの申出を受け付ける方法の公表
③ 侵害情報に係る調査の実施
④ 侵害情報調査専門員の選任・届出
⑤ 送信防止措置の申出者に対する通知
⑥ 送信防止措置の実施に関する基準等の公表
⑦ 送信防止措置を講じた場合の発信者に対する通知等
⑧ 送信防止措置の実施状況等の公表
総務大臣に対する届出
大規模特定電気通信役務提供者は、総務大臣による指定を受けた日から3カ月以内に、所定の事項を総務大臣に届け出なければなりません(情報流通プラットフォーム対処法21条1項)。
届け出るべき事項の詳細は、今後制定される総務省令によって定められる予定です。
また、大規模特定電気通信役務提供者としての届出事項に変更があった場合には、遅滞なくその旨を総務大臣に届け出る義務を負います。
被侵害者からの申出を受け付ける方法の公表
大規模特定電気通信役務提供者は、自らが提供する大規模特定電気通信役務を通じて流通する侵害情報につき、送信防止措置を講ずる申出を行う方法を定め、これを公表しなければなりません(情報流通プラットフォーム対処法22条1項)。
侵害情報送信防止措置の申出方法は、以下の要件が付されています(同条2項)。
✅ 電子的な方法(ウェブ上での申出など)を可能とすること
✅ 申出者に過重な負担を課するものでないこと
✅ 申出を受けた日時が申出者に明らかとなること
侵害情報に係る調査の実施
大規模特定電気通信役務提供者は、侵害を受けた者(被侵害者)から侵害情報送信防止措置を講ずるよう申出があったときは、不当な権利侵害の有無について、遅滞なく必要な調査を行わなければなりません(情報流通プラットフォーム対処法23条)。
侵害情報調査専門員の選任・届出
大規模特定電気通信役務提供者は、侵害情報送信防止措置の申出を受けて行う調査のうち、専門的な知識経験を必要とするものを適正に行わせるため、侵害情報調査専門員を選任しなければなりません(情報流通プラットフォーム対処法24条1項)。
侵害情報調査専門員は、SNSや匿名掲示板などを通じて発生する誹謗中傷などの権利侵害への対処に関して、十分な知識経験を有する者から選任する必要があります(同項)。
また、大規模特定電気通信役務提供者が運営するプラットフォームサービスにおける発信者数などに応じて、選任すべき侵害情報調査専門員の最低人数が総務省令によって定められる予定です(同条2項)。
大規模特定電気通信役務提供者が侵害情報調査専門員を選任したときは、遅滞なく総務大臣に届け出なければなりません。侵害情報調査専門員を変更した場合も、同様に届出が必要です(同条3項)。
送信防止措置の申出者に対する通知
大規模特定電気通信役務提供者は、侵害情報送信防止措置の申出を受けて行った調査の結果に基づき、当該措置を講ずるかどうかを判断し、原則として申出を受けた日から14日以内の総務省令で定める期間内に、所定の事項を申出者に通知しなければなりません(情報流通プラットフォーム対処法25条1項)。
送信防止措置の申出者に対する通知が義務付けられたのは、大規模特定電気通信役務提供者に誹謗中傷などの被害への迅速な対応を促すためです。
送信防止措置の実施に関する基準等の公表
大規模特定電気通信役務提供者が情報の送信防止措置を講ずることができるのは、原則として事前に公表している削除基準などに従う場合に限られます(情報流通プラットフォーム対処法26条1項)。
当該基準は、どのような情報が送信防止措置の対象になるかを具体的に定めるなど、一定の基準に適合させるよう努めなければなりません(同条2項)。
上記の規制には、大規模特定電気通信役務提供者による恣意的な送信防止措置を防ぎ、SNSや匿名掲示板などにおける表現の自由を保護する目的があります。
その一方で、法令上の義務に基づく場合や、予測不能な侵害情報を緊急に削除する必要がある場合などについては、削除基準などの対象外であっても送信防止措置を認めるものとされています(同条1項)。
送信防止措置を講じた場合の発信者に対する通知等
大規模特定電気通信役務提供者が運営するプラットフォーム上において送信防止措置を講じたときは、原則として遅滞なく、その旨およびその理由を当該情報の発信者に通知し、または発信者が容易に知り得る状態に置く措置を講じなければなりません(情報流通プラットフォーム対処法27条前段)。
削除基準などに基づいて送信防止措置を講じた場合には、当該基準におけるどの規定に基づいて送信防止措置を講じたのかを明らかにする必要があります(同条後段)。
送信防止措置の実施状況等の公表
大規模特定電気通信役務提供者は、自ら運営するプラットフォームに関して、毎年1回以下の事項を公表しなければなりません(情報流通プラットフォーム対処法28条)。
- 侵害情報送信防止措置の申出の受付の状況
- 侵害情報送信防止措置を講ずるかどうかに関する、申出者への通知の実施状況
- 送信防止措置を講じた場合における、発信者に対する通知等の措置の実施状況
- そのほか、総務省令で定める事項
事業者の注意点
情報流通プラットフォーム対処法に関しては、特にSNSや匿名掲示板など、インターネット上で発信できるサービスを運営している事業者において対応の検討を要します。
自社が大規模特定電気通信役務提供者に指定され得るかを確認した上で、指定される可能性を念頭に対応の準備を整えましょう。
自社が「大規模特定電気通信役務提供者」に指定され得るか
大規模特定電気通信役務提供者として指定される可能性があるのは、SNSや匿名掲示板など、インターネット上で発信できるサービスのうち、一定規模以上のものを運営する事業者です。
ユーザー数が多数に及ぶSNSや匿名掲示板などの運営事業者は、大規模特定電気通信役務提供者として指定される可能性が高いと考えられます。具体的な基準は今後総務省令によって示される予定なので、総務省令の制定状況を注視しましょう。
対応のポイント
大規模特定電気通信役務提供者として指定された事業者は、情報流通プラットフォーム対処法に基づき、「大規模特定電気通信役務提供者の義務」で解説した以下の対応を行わなければなりません。
① 総務大臣に対する届出
② 被侵害者からの申出を受け付ける方法の公表
③ 侵害情報に係る調査の実施
④ 侵害情報調査専門員の選任・届出
⑤ 送信防止措置の申出者に対する通知
⑥ 送信防止措置の実施に関する基準等の公表
⑦ 送信防止措置を講じた場合の発信者に対する通知等
⑧ 送信防止措置の実施状況等の公表
具体的な対応の内容を検討するに当たっては、削除の申出を分かりやすい操作によってできるようにすることや、合理的な削除基準を策定・適用して削除の要否を判断することなどが大切です。
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