従業員の退職時に交付する書類とは?
退職後の手続きなどを分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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従業員の退職時に必ず交付する書類は、源泉徴収票と年金手帳です。
・請求に応じて離職票や退職証明書、健康保険資格喪失証明書を交付します。
・退職時には、健康保険証や社員証、名刺、貸与品の回収も必要です。
・退職後には、社会保険や雇用保険、税金関連の手続きを行います。本記事では、退職時に交付する書類について、基本から詳しく解説します。
※この記事は、2025年8月12日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
従業員の退職時に必ず交付する書類
退職手続きにおいて従業員へ必ず交付すべき書類は、以下のとおりです。
- 源泉徴収票
- 年金手帳
法的に交付が義務付けられている書類もあるため、確実な対応が求められます。送付方法や保管・返却状況の確認も含めて、実務上の注意点を押さえておくことが大切です。
源泉徴収票
源泉徴収票は、所得税法226条により退職時に必ず交付しなければならない重要な書類です。退職者の1年間の給与額や源泉徴収税額などを明記し、退職後1カ月以内に交付する義務があります。
転職先での年末調整や、未就業者の確定申告で使用されるため、ミスなく発行することが大切です。退職日が決まった時点で作成準備を進め、郵送時の宛先確認も忘れずに行います。
年金手帳(会社で預かっている場合)
年金手帳を会社で預かっている場合は、退職時に本人へ返却する必要があります。厚生年金から国民年金への切り替えや、転職先での年金加入手続きで使用されるため、早めの返却が求められます。
保管状況を確認し、最終出社日までに直接返却するか、退職後は書留などで送付し受領確認を取ると安心です。
2022年4月以降は年金手帳の新規発行が廃止され、基礎年金番号通知書が発行されています。すでに年金手帳をお持ちの方には年金手帳を引き続き保管してもらうように案内し、新規発行を受けていない方には基礎年金番号通知書について説明するなど、内容を確認したうえで対応しましょう。
従業員の退職時に必要に応じて交付する書類
退職時に従業員からの希望や特定の条件に応じて交付すべき書類は以下のとおりです。
- 離職票
- 退職証明書
- 健康保険資格喪失証明書
各書類の交付が必要な条件について詳しく解説します。
離職票(従業員からの希望があった場合、もしくは59歳以上)
離職票は、59歳以上の従業員については本人の希望に関わらず自動的に交付が義務付けられている書類です。59歳未満の従業員については、本人から希望があった場合には必ず交付する義務があります(雇用保険法76条第3項)。
離職票は退職後の生活支援や就職活動のために大切な書類となるため、退職面談時に希望の有無を確認し、記録を残すことが重要です。書類の発行にはハローワークへの届出が必要で、通常は退職後10日程度で交付されます。離職票の作成にあたっては、雇用保険の資格喪失手続きとあわせて、離職理由や賃金台帳など必要書類の準備を進めておくとスムーズです。
退職証明書
退職証明書は、労働基準法22条1項に基づき、従業員から請求があった場合には遅滞なく交付する必要があります。転職先での手続きや国民健康保険・国民年金の加入の場面で活用されます。
また、退職証明書の記載内容は、使用期間や業務の種類、退職理由など、5項目の中から本人が求めた項目に限る必要があります。記載項目を限定することで、本人が不利益を被るのを防ぐ効果もあります。
例えば、自己都合退職の場合は「一身上の都合により退職」と記載し、本人が希望しない項目は記載しないよう注意が必要です。
健康保険資格喪失証明書
健康保険資格喪失証明書は、会社の健康保険資格を喪失したことを証明する書類で、退職者が国民健康保険への加入や家族の扶養に入る手続きの際に必要となります。
会社の健康保険は退職日の翌日に失効するため、退職者は速やかに新たな保険への切り替えが必要です。そのため、健康保険資格喪失証明書がないと、健康保険への加入手続きが遅れ、一時的に医療費が退職者の全額自己負担となる可能性もあります。
書類の発行は健康保険組合や年金事務所への資格喪失届が受理された後に可能となるため、退職手続きと並行して準備を進めておくことが重要です。
退職時に従業員から回収するもの
従業員の退職時に企業側が必ず回収すべき物品は以下のとおりです。
- 健康保険証
- 社員証・セキュリティカードなど
- PC・携帯・制服などの貸与品
- 名刺・経費購入品
上記の物品は、法的に回収が必要なものや、企業の情報漏洩を防ぐために返却してもらう必要があるものなので、漏れがないようにしておきましょう。
健康保険証
健康保険証は退職の翌日から使用できなくなるため、退職時に必ず回収する必要があります。従業員が退職日の翌日以降に健康保険証を使用すると不正使用となり、後日医療費の返還請求が発生する可能性があることを伝えることも大切です。
また、扶養家族分の保険証も含めて全て回収し、漏れがないか確認を徹底しましょう。保険証が手元に残っていると、本人が誤って医療機関で提示してしまう可能性があるため、返却の案内は分かりやすく丁寧に行うことが大切です。
郵送での返却が必要な場合は封筒や宛先を案内し、負担が少ない方法を用意するとスムーズです。
社員証・セキュリティカードなど
社員証や入館証、システム用のICカードなどは、退職者の社内アクセスを遮断するためにも早めに回収を行います。特にセキュリティの重要度が高い部署では、最終出社日までに全てのカード類を回収し、権限を停止する準備を整えましょう。
物理的なカードだけでなく、システム上のアカウントや入退館記録の管理もセットで確認しておくと安心です。
PC・携帯・制服などの貸与品
パソコンやスマートフォン、制服や作業着など、業務で使用していた貸与品は、原則全て回収対象です。特にPCやスマホは個人情報や業務データが残っていることもあるため、社内でデータ消去や機器点検を実施してから保管します。
制服については洗濯済みでの返却を案内するなど、従業員への配慮も忘れずに対応しましょう。貸与リストを活用し、項目ごとにチェックしながら、無理のない形で返却を促すことが大切です。
名刺・経費購入品
業務で使用していた名刺や経費で購入した文具、資料なども、原則として会社の所有物です。特に名刺には会社情報が記載されているため、誤用や誤解を防ぐためにも確実な回収を行いましょう。
個人で保管していた取引先の名刺や書籍も、必要に応じて整理・返却してもらいます。消耗品については回収が不要なこともありますが、判断に迷う場合は担当者が個別に確認し、適切な対応を取るようにするとよいでしょう。
退職手続きの流れ
従業員が退職意思を示した場合の、退職手続きの主な流れは以下のとおりです。
- 退職意思の確認と退職届の受理
- 業務の引き継ぎ
- 返却物の受取
- 社会保険の資格喪失手続き
- 雇用保険の資格喪失手続き
- 住民税に関する手続き
- 所得税に関する手続き
- 退職者への必要書類の交付
退職手続きは書類提出期限が決められているもの含まれるため、適切な順序で進める必要があります。
退職意思の確認と退職届の受理
まずは、従業員からの退職意思の確認と、書面による退職届の受理を行います。
民法627条では、退職の申し出から2週間が経過すれば、企業側の許可がなくても退職が可能です。ただし、基本的には就業規則で定めた期間までに申告が必要であることを、丁寧に説明しましょう。
また、口頭だけで終わらせず、退職理由や最終出社日などを明記した退職届を受理することで、トラブルを防げます。届出日と退職予定日を明確に記録し、関係部署と情報を共有することも大切です。
業務の引き継ぎ
業務の引き継ぎは、退職者から後任者へスムーズに業務を移行するための必要なステップです。
担当業務、顧客対応、進行中の案件状況などを整理し、チェックリストに沿って進めると、引き継ぎ漏れを防げます。必要に応じてマニュアルを作成し、後任者との面談も行いながら、段階的に業務を引き継ぎましょう。
人事担当者や上司が、引き継ぎ状況の進捗を確認する体制を整えることがポイントです。
返却物の受取
貸与していた健康保険証、社員証、パソコン、携帯電話などは、退職時に確実に回収する必要があります。情報漏洩や不正使用の防止につながるため、最終出社日までに全ての返却を確認することが大切です。
物品の一覧リストを用意し、退職者と一緒にチェックしながら進めるとスムーズです。郵送対応が必要な場合も、具体的な返送方法を案内して丁寧にフォローしましょう。
社会保険の資格喪失手続き
退職により、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の資格喪失届を年金事務所または健康保険組合に提出する必要があります。
資格喪失届は退職の翌日から5日以内の届出が必要であり、対応が遅れると、退職者の保険加入手続きや会社側の保険料清算に支障をきたす可能性があります。扶養者がいる場合は、扶養削除手続きも同時に行いましょう。
退職から提出までの期間が5日以内と短いため、退職日が決まった段階で、提出先や必要書類を早めに確認・準備しておくことが大切です。
雇用保険の資格喪失手続き
雇用保険の資格喪失届は、退職日の翌々日から10日以内にハローワークへ提出します。
また、退職者が失業給付を受けるには、離職票が必要なため、該当する場合はあわせて離職証明書も提出しましょう。59歳以上の退職者には離職票の自動交付義務があり、59歳未満でも本人から希望があれば離職証明書を作成し、離職票を発行する必要があります。
提出書類に不備があると発行が遅れることもあるため、事前にチェックリストを活用して、正確かつ速やかに対応することが重要です。
所得税に関する手続き
退職者の所得税に関する処理では、源泉徴収票の発行と交付を行います。
源泉徴収票は退職後1カ月以内の交付が義務付けられており(所得税法226条)、転職先での年末調整や確定申告で使用される書類です。1月から退職月までの給与総額、賞与総額、源泉徴収税額、社会保険料控除額などを正確に記載する必要があります。
住民税に関する手続き
退職月によって住民税の徴収方法が変わるため、会社側で適切な手続きを行う必要があります。6月以降の退職では、残りの住民税を普通徴収に切り替え、市区町村へ給与所得者異動届を提出します。
一方、1月から5月の退職では、原則として残りの住民税を最終給与または退職金から一括徴収(特別徴収)する必要があります。ただし、給与や退職金の合計額より住民税額が大きい場合など、一括徴収できない場合は普通徴収に切り替わります。
いずれの場合も、退職者に変更内容を丁寧に説明し、納税漏れや滞納が生じないよう配慮することが大切です。
退職者への必要書類の交付
退職時には、法的に交付義務のある書類と、任意で交付する書類を整理し、退職者に確実に渡す必要があります。
例えば、源泉徴収票、年金手帳は必須の書類であり、状況に応じて離職票や健康保険資格喪失証明書、退職証明書なども用意します。
退職者の転職や失業給付、健康保険の手続きに支障が出ないよう、交付時期と方法を事前に決め、漏れのないようにチェックリストで管理しましょう。
退職後すぐに転職しない従業員に説明する項目
退職後すぐに転職予定のない従業員に対して、企業側が説明すべき手続きは以下のとおりです。
- 国民健康保険・国民年金への切り替え
- 健康保険の任意継続について
- 失業給付の受給について
国民健康保険・国民年金への切り替え
退職後すぐに転職しない場合、健康保険と年金の切り替えが必要です。
厚生年金・健康保険の資格喪失日から14日以内に、国民健康保険と国民年金へ切り替える手続きを市区町村で行います。手続きに必要な書類は、健康保険資格喪失証明書、退職証明書または離職票、年金手帳、マイナンバーカードなどです。
加入手続きが遅れると、無保険期間が発生し、医療費が一時的に全額自己負担になる可能性もあるため、事前に必要書類を整理し、確実な案内を行いましょう。
健康保険の任意継続について
退職後もこれまでの健康保険を2年間継続できる任意継続被保険者制度への切り替えも可能です。
申請は退職日の翌日から20日以内と期限が短いため、早めの案内が大切です。任意継続を選ぶと、保険料は全額自己負担となりますが、国民健康保険料より割安になるケースがあります。
退職時には、国民健康保険との保険料比較や制度の概要を分かりやすく説明し、選択肢を理解してもらえるようにしましょう。
失業給付の受給について
雇用保険の失業給付は、従業員の退職後の生活を支える大切な制度です。受給には、離職票の提出や求職活動の実施など、いくつかの条件があります。
例えば、自己都合退職では、7日間の待期期間と原則1カ月の給付制限があるのに対し(5年間で3回以上の自己都合離職の場合は3カ月、教育訓練を行った場合は解除される)、会社都合退職では7日間の待期期間のみですぐに給付が開始されます。
申請手続きは従業員自身がハローワークで行い、雇用保険被保険者証やマイナンバーカードなどが必要です。企業側としては、手続き方法や注意点を事前に説明し、退職者が安心して行動できるようサポートしましょう。
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参考文献
監修者












