厚生年金保険料率とは?
2025年度の料率・保険料額の計算方法・
必要な手続きなどを解説!
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- この記事のまとめ
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「厚生年金保険料率」とは、企業などに勤務する人の厚生年金保険料の額を計算するために適用する割合です。標準報酬月額(または標準賞与額)に厚生年金保険料率をかけると、厚生年金保険料の額を求められます。
厚生年金保険料の算定基礎となる標準報酬月額は、被保険者資格の取得時に決定された後、「定時決定」によって毎年1回変更されます。また、報酬が大幅に増減した場合などには「随時改定」が行われ、現在の報酬に見合った額に厚生年金保険料が改定されます。資格取得時の決定・定時決定・随時改定のいずれも、年金事務所に対する届出が必要です。
さらに、賞与を支給したときは「被保険者賞与支払届」の提出が義務付けられます。届け出た賞与の額に応じて、厚生年金保険料を納付しなければなりません。厚生年金保険料に関する届出や計算については、社会保険労務士などが相談を受け付けています。
この記事では厚生年金保険料率について、2025年度の料率や保険料額の計算方法、必要な手続きなどを解説します。
※この記事は、2025年9月16日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
厚生年金保険料率とは
「厚生年金保険料率」とは、企業などに勤務する人の厚生年金保険料の額を計算するために適用する割合です。
厚生年金保険とは
「厚生年金保険」とは、企業に勤めている人などが加入する公的年金です。
老化や障害などによって働けなくなることに備えるため、日本国民には公的年金への加入が義務付けられています。公的年金の加入者には、一定以上の年齢に達した場合に「老齢年金」、一定の障害状態となった場合に「障害年金」、死亡した場合に「遺族年金」が支給されます。
すべての国民には「国民年金」への加入が義務付けられていますが、企業などに勤務する人は厚生年金保険にも加入することになっています。
国民年金加入者に対して支給される「基礎年金(老齢基礎年金・障害基礎年金・遺族基礎年金)」に加えて、厚生年金保険加入者には「厚生年金(老齢厚生年金・障害厚生年金・遺族厚生年金)」が支給されます。
厚生年金保険料の計算式|厚生年金保険料率が適用される
厚生年金保険料の額は、以下の式によって計算します。
① 月々の給与に課される厚生年金保険料
厚生年金保険料=標準報酬月額×厚生年金保険料率
② 賞与に課される厚生年金保険料
厚生年金保険料=標準賞与額×厚生年金保険料率
月々の給与に課される厚生年金保険料の額は、標準報酬月額に厚生年金保険料率をかけて計算します。
「標準報酬月額」とは、月々支払われる給与などの報酬を区切りのよい数字に直した金額です。例えば報酬月額(月給)が48万5000円以上51万5000円未満の場合、標準報酬月額は50万円となります。
厚生年金保険料の標準報酬月額は32等級に区分されています。最低額は8万8000円(報酬月額9万3000円未満の場合)、最高額は65万円(報酬月額63万5000円以上の場合)です。
ただし、2027年・2028年・2029年の3回にわたり、厚生年金保険料の標準報酬月額の最高額は75万円まで引き上げられることが決まっています。
厚生年金保険料は月々の給与だけでなく、賞与に対しても課されます。賞与に課される厚生年金保険料の額は、標準賞与額に厚生年金保険料率をかけて計算します。
「標準賞与額」とは、税引き前の賞与総額から1000円未満を切り捨てた額です。例えば賞与の額が123万4500円の場合、標準賞与額は123万4000円となります。
同じ月に複数回賞与が支給される場合は、その合計額に従って標準賞与額が決まります。
例えば12月に50万1500円と70万1600円の賞与が支給される場合、合計額は120万3100円なので、12月の標準賞与額は120万3000円です。
標準賞与額の上限は150万円
厚生年金保険料の標準賞与額は、1カ月当たりの上限が150万円とされています。
例えば、12月に支給される年末賞与が300万円の場合、12月の厚生年金保険料の標準賞与額は150万円(上限)です。
同じ月に複数回賞与が支給される場合も、1カ月当たり150万円の上限が適用されます。
例えば12月に80万円と100万円の賞与が支給される場合、12月の厚生年金保険の標準賞与額は150万円(上限)です。
厚生年金保険料は労使折半で負担する|労働者負担分は翌月給与から控除(天引き)
厚生年金保険料は、事業主と労働者が折半で負担するものとされています。例えば、月々の厚生年金保険料が9万1500円の場合、事業主と労働者が4万5750円ずつ負担します。
労働者負担分は、事業主が労働者に支払う給与から控除(天引き)するか、または労働者が事業主に対して現金で支払います。多くの企業では、労働者負担分を給与から控除する方式が採用されています。
端数処理の方法
厚生年金保険料を労使で折半した際に、労働者負担分の端数が生じる場合は、以下の方法で端数処理を行います。
① 給与から労働者負担分を差し引く場合
端数が50銭以下→切り捨てる(例:1万2345円50銭→1万2345円)
端数が50銭超→切り上げて1円とする(例:1万2345円51銭→1万2346円)
② 労働者負担分を労働者が現金で支払う場合
端数が50銭未満→切り捨てる(例:1万2345円49銭→1万2345円)
端数が50銭以上→切り上げて1円とする(例:1万2345円50銭→1万2346円)
※上記にかかわらず、事業主と労働者の間で特約がある場合は、特約に基づく端数処理が認められます。
厚生年金保険料率の改定時期|政策的に適宜改定される
厚生年金保険料率は、平成16年(2004年)から段階的に引き上げられましたが、平成29年(2017年)9月を最後に引き上げが終了し、その後は現在(2025年)に至るまで固定されています。ただし、今後は年金制度の状況に応じて、政策的に適宜改定される可能性があります。
令和7年度の厚生年金保険料率|平成29年9月以降は18.3%
令和7年度(2025年度)の厚生年金保険料率は18.3%とされています。平成29年9月以降、厚生年金保険料率は変わっていません。
健康保険料率は都道府県によって異なりますが、厚生年金保険料率は全国一律です。
厚生年金保険料額の計算例
下記の計算式(再掲)を用いて、実際に厚生年金保険料の額を計算してみましょう。
① 月々の給与に課される厚生年金保険料
厚生年金保険料=標準報酬月額×厚生年金保険料率
② 賞与に課される厚生年金保険料
厚生年金保険料=標準賞与額×厚生年金保険料率
月給に対して課される厚生年金保険料額の計算例
<設例1>
・2025年9月の給与額が46万3000円
設例1では、給与額が45万5000円以上48万5000円未満のため、標準報酬月額は47万円です。また年齢や勤務地にかかわらず、厚生年金保険料率は18.3%です。
したがって、2025年9月分の厚生年金保険料額は8万6010円(=47万円×18.3%)となります。
給与から労働者負担分の厚生年金保険料を控除する場合、控除額は4万3005円です。原則として、10月分の給与から控除します。
賞与に対して課される厚生年金保険料額の計算例
<設例2>
・2025年12月の年末賞与額が122万3500円
設例2では、標準賞与額は122万3000円です(1000円未満切り捨て)。また年齢や勤務地にかかわらず、厚生年金保険料率は18.3%です。
したがって、2025年12月の年末賞与に課される厚生年金保険料額は22万3809円(=122万3000円×18.3%)となります。
賞与から労働者負担分の厚生年金保険料を控除する場合、控除額は11万1904円(労使折半・50銭以下切り捨て)です。
厚生年金保険料の決定・改定に関する手続き
月々の給与に課される厚生年金保険料の額は、「資格取得時の決定」「定時決定」「随時改定」のいずれかによって決まります。事業主は、それぞれに対応する届出が義務付けられています。
また、賞与を支給した際には「被保険者賞与支払届」を提出しなければなりません。
各手続きに関する書類は、いずれも日本年金機構の事務センターまたは年金事務所に提出します。
資格取得時の決定|契約上の報酬額に基づいて計算する
事業主が労働者を雇用したときは、雇用日から5日以内に「被保険者資格取得届」を提出しなければなりません。
被保険者資格取得届によって、就業規則や労働契約などの内容に基づくその労働者の報酬月額を届け出ます。届出が行われた報酬月額を基に、厚生労働大臣が標準報酬月額を決定します(=資格取得時の決定)。
資格取得時の決定による標準報酬月額は、以下の期間にわたって適用されます。
(a)1月1日~5月31日に資格取得した場合
資格取得の月から、その年の8月まで
(b)6月1日~12月31日に資格取得した場合
資格取得の月から、翌年の8月まで
定時決定|4~6月の平均報酬額に基づいて計算する
厚生年金保険料の標準報酬月額は、毎年1回決定し直されます。
事業主は毎年7月10日までに、すべての被保険者の3カ月間(4月・5月・6月)の報酬月額を記載した「算定基礎届」を提出することが義務付けられています。3カ月間の報酬月額の平均値に基いて、厚生労働大臣が標準報酬月額を決定します(=定時決定)。
定時決定による標準報酬月額が適用されるのは、9月から翌年8月までです。
随時改定|大幅に報酬が増減した場合などに行われる
労働者の昇給や降給などによって、標準報酬月額が2等級以上変わったときは、事業主は速やかに「月額変更届」を提出することが義務付けられます。この場合、変更後の報酬月額に基づき、厚生労働大臣が標準報酬月額を改定します(=随時改定)。
随時改定による標準報酬月額は、再び随時改定が行われない限り、以下の期間にわたって適用されます。
(a)1月~6月に随時改定がなされた場合
その月から当年の8月まで
(b)7月~12月に随時改定がなされた場合
その月から翌年の8月まで
被保険者賞与支払届|賞与を支給するたびに届け出る
厚生年金保険の被保険者である労働者に賞与を支払ったときは、賞与支払日から5日以内に「被保険者賞与支払届」を提出する必要があります。被保険者賞与支払届に記載された賞与の支給額に基づき、厚生労働大臣が標準賞与額を決定します。
なお、年4回以上支給する賞与は標準報酬月額(算定基礎届)の対象となるため、被保険者賞与支払届の提出は不要です。
また、労働の対償とみなされない結婚祝い金などは、被保険者賞与支払届の対象外とされています。
電子申請も可能
厚生年金保険料に関する各種の届出は、オンラインによる電子申請も認められています。電子申請の詳しい方法については、日本年金機構のウェブサイトをご参照ください。
厚生年金保険料の決定・改定に関する手続きを怠った場合のペナルティ
事業主が正当な理由なく、厚生年金保険料に関する届出を怠った場合には「6カ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」に処されます(厚生年金保険法102条1項1号)。
また、厚生年金保険料の納付を怠ると、日本年金機構から督促状が送られてきます。督促状に指定する期限までに厚生年金保険料を納付しないと、以下のペナルティを受けるおそれがあるのでご注意ください。
- 延滞金の発生(納付期限から3カ月間は年2.4%、3か月経過後は年8.7% ※利率は2025年時点)
- 滞納処分による財産の差押え
- 刑事罰(6カ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)
厚生年金保険料の手続きに関する相談先
厚生年金保険料に関する手続きについて不明な点があるときは、年金事務所や街角の年金相談センターに問い合わせてみましょう。必要な手続きについて案内を受けられます。
また、社会保険労務士に依頼すると、厚生年金保険料に関する手続きを代行してもらえます。自社で手続きを行うのが難しいときは、社会保険労務士に相談してみましょう。
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