賞与とは?
平均や支給時期・支給のルールや注意点、
税金や社会保険料の取り扱いなどを
分かりやすく解説!
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※この記事は、2025年5月23日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
賞与(ボーナス)とは
「賞与」とは、毎月の給与とは別に支給される特別の給与です。「ボーナス」と呼ばれることもあります。
たとえば月給制の場合、企業は従業員に対して毎月決められた基本給を支払います。また、残業代や各種手当なども基本給と併せて支払われます。
これに対して賞与は、毎月の基本給・残業代・各種手当とは別に支払われるものです。多くの企業では、年1回または2回、基本給の1カ月分~数カ月分程度に相当する賞与が支払われています。
賞与の性格|さまざまな意味合いがある
賞与にはさまざまな性格があり、支給の目的はどの企業でも同じではありません。各企業では、賞与の支給目的を適宜重みづけしたうえで、従業員に対して支払う額の査定を行っています。
具体的には、賞与には以下のような性格があると考えられます。
① 賃金の後払い的性格|すでに行われた労働の対価
② 功労報償的性格|貢献や能力に対する評価
③ 収益分配的性格|企業の業績を金額に反映
④ 勤労奨励的性格|長期継続勤務への期待
賃金の後払い的性格|すでに行われた労働の対価
賞与には、すでに行われた労働の対価(=賃金の後払い)としての側面があります。
たとえば月給が40万円で、1年間勤務した場合に120万円賞与を受け取れるとします。この場合の年収は600万円です。
賞与をなくして毎月50万円ずつ給与を支払っても、年収は同額の600万円になります。上記の例では、あえて賃金の後払いとして賞与を設けているという見方ができます。
賞与を活用して賃金の後払いをする場合、企業にとっては退職者に支払う賃金の額を抑えられる、支給額についての裁量を確保できるなどのメリットがあります。
功労報償的性格|貢献や能力に対する評価
賞与の額は、従業員の貢献や能力を査定したうえで決まるケースが多いです。すなわち、賞与には功労報償的な側面があるといえます。
賞与の額に占める貢献や能力の比重を増やすと、より多くの賞与が欲しいと考える従業員は、会社に貢献したり能力を高めたりするモチベーションが高まります。その結果、会社の成長を早めることにつながるでしょう。
ただし、貢献や能力による賞与額の変動が大きいと、従業員の年収は不安定になりがちです。安定を求める従業員が転職するなど、長期継続雇用の観点からはマイナスに働く可能性があるのでご注意ください。
収益分配的性格|企業の業績を金額に反映
個々の従業員の貢献度や能力とは別に、企業としての業績が賞与の額へ反映されるケースもあります。
企業が得た収益は通常、その多くが株主に分配されます。しかし、従業員も企業の重要なステークホルダー(利害関係者)なので、従業員に対しても適切に収益を分配することが望ましいです。
企業の業績が上向けば賞与の額が増えると分かれば、従業員の企業へ貢献しようとするモチベーションが高まります。
勤労奨励的性格|長期継続勤務への期待
賞与には、従業員に対して末永く企業に貢献してほしいという期待を込めるという意味合いもあります。
たとえば、勤続年数に応じて賞与の額を徐々に増やす場合や、5年勤続・10年勤続などの節目に特別賞与を支給する場合には、賞与の勤労奨励的性格が表れているといえます。このように、長期間にわたって継続勤務している従業員を賞与によって優遇すれば、離職率の低下やノウハウの蓄積につながります。
会社に賞与を支給する義務はあるのか
労働基準法などの法律では、賞与の支給は義務付けられていません。ただし、労働契約や就業規則に定めがある場合には、会社は従業員に対して賞与を支給する義務があります。
法律上は、賞与の支給は任意
企業は従業員に対して、労働時間に応じた賃金を支払わなければなりません(労働基準法27条、28条、最低賃金法など)。たとえば所定労働時間に対応する基本給や、時間外手当・休日手当・深夜手当などは支払いが必須です。
これに対して、賞与の支給を義務付ける法律上の規定は存在しません。したがって法律上は、賞与の支給は任意ということになります。
労働契約や就業規則に定めがある場合は、賞与を支給する義務がある
法律上は任意であっても、労働契約(雇用契約)や就業規則において賞与の支給に関する定めがあれば、企業は従業員に対して賞与を支払う義務を負います。
企業が支払うべき賞与の金額がどのように決まるのかについては、次の項目で解説します。
賞与の金額はどのように決める?
賞与の金額は、労働契約や就業規則に定められた基準に従って計算します。実際には、賞与の金額については会社の広い裁量が認められることが多いです。
労働契約や就業規則に定めがあれば、それに従う
賞与の金額や計算方法については、労働契約や就業規則に定められているケースが多いです。
たとえば「賞与は年1回、12月10日に100万円を支払う」と定められていれば、企業は従業員に対して、規定どおりに100万円を支払わなければなりません。
実際には、上記のように具体的な定めがなされているケースは稀です。
たとえば厚生労働省が公表している「モデル就業規則」では、賞与に関する以下の規定が置かれています。賞与の額については「会社の業績等を勘案して」とだけ記載されており、支給の延期や不支給もあり得る旨が定められています。
(賞与)
第50条 賞与は、原則として、下記の算定対象期間に在籍した労働者に対し、会社の業績等を勘案して下記の支給日に支給する。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由により、支給時期を延期し、又は支給しないことがある。
算定対象期間 支給日 _月_日から_月_日まで _月_日 _月_日から_月_日まで _月_日 2 前項の賞与の額は、会社の業績及び労働者の勤務成績などを考慮して各人ごとに決定する。
引用元|厚生労働省「モデル就業規則」
賞与の金額については、会社の広い裁量が認められやすい
前述のとおり、賞与にはさまざまな性格(側面)が存在します。そのため、賞与の支給額は企業の実態に応じて個別に判断すべきであり、会社の広い裁量が認められるケースが多いです。
たとえばモデル就業規則のように、賞与の支給について会社の広範な裁量を認めるケースが多く見られますが、必ずしも不合理ではないと考えられます。
ただし、査定者の個人的な好き嫌いで賞与を減らすなど、明らかに不合理な査定を行っている場合には、適正額との差額を支払うよう求められるおそれがあるので注意が必要です。
賞与の金額を決める際の主な考慮要素
賞与の金額は、労働契約や就業規則に定められた基準によって決まります。算定基準の詳細が定められていない場合は、企業側の裁量によって査定を行い、賞与の金額を決定します。
賞与の金額を決めるに当たり、考慮されることが多い主な要素としては、以下の例が挙げられます。
・勤怠の状況
・目標の達成度
・企業への貢献度
・保有している資格
・企業の業績
・勤続年数
など
賞与の平均額は?
厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、2024年(令和6年)の夏季賞与の平均額は41万4515円(給与の1.05か月分)、年末賞与の平均額は41万3277円(給与の1.07か月分でした。
合計すると、1年間で給与の2カ月分をやや上回る程度の賞与が支給されていれば、平均的といえます。
賞与は誰に対し、いつ支給するのか
賞与の支給時期は、夏季(6月下旬~7月)と年末(12月)の2回と設定している例がよく見られます。
各回の賞与については、対応する基準日において在籍している従業員に対して支給するのが一般的です。ただし、勤怠や在籍期間の要件を設けるケースもあります。
退職が決まっている従業員に対しては賞与を支給しない例も見られますが、トラブルの原因になり得るので注意が必要です。
賞与支給の基準日を決めるのが一般的
多くの企業では、基準日において在籍している従業員に対して賞与を支給しています。
基準日を設けることにより、賞与を支給すべき従業員とそうでない従業員を明確に分けることができます。また、退職済みの従業員に対して賞与を支払う必要もなくなります。
勤怠や在籍期間の要件を設けるケースもある
基準日を設けるだけでは、賞与を支給すべき従業員を適切に絞り込めない場合があります。たとえば、1年間ほとんど出勤していない従業員や、基準日の当日に入社した従業員にも賞与の支給が必要になりかねません。
こうした事態を防ぐため、賞与の支給について勤怠や在籍期間の要件を設けるケースもあります。たとえば「1年間の8割以上出勤したこと」「年度の最初から基準日まで在籍し続けていること」などの要件を設けることが考えられます。
退職が決まっている従業員の賞与の取り扱い
すでに退職することが決まっている従業員に対して賞与を支払うかどうかも、基本的には労働契約や就業規則の定めに従います。
ただし、退職することが決まっている従業員に賞与を一切支給しないと、従業員側の反発を招くおそれがあるので注意が必要です。
たしかに、賞与の支給については会社の広い裁量が認められていますが、不合理な決定は公序良俗違反等により無効になり得ます。
賞与にはさまざまな側面があるところ、特に賃金の後払い的性格があることを踏まえると、退職が決まっていることを理由に一切支給しないのは不適切と判断されるかもしれません。
退職予定者に対して賞与を支給するかどうか、支給するとして金額をどうするかなどについては、トラブル予防の観点も考慮したうえで慎重に判断しましょう。
賞与にかかる税金と社会保険料
賞与には税金と社会保険料がかかります。従業員に対して賞与を支給する際には、源泉所得税と社会保険料の額を控除しましょう。
賞与にかかる所得税と住民税
企業が従業員に対して賞与を支給する際には、源泉所得税を控除する必要があります。
賞与から控除する源泉所得税の額は、原則として「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」によって計算します。
「給与所得者の扶養控除等申告書」の提出を受けている従業員については甲欄、提出していない従業員については乙欄を参照します。源泉所得税額の計算式は以下のとおりです。
源泉所得税額=(賞与の支給額-社会保険料等の額)×賞与の金額に乗ずべき率
たとえば、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している従業員に対して支給する賞与から社会保険料等を控除した額が100万円で、扶養親族は0人だとします。
この場合、賞与の金額に乗ずべき率は32.672%であるため、源泉所得税額は32万6720円です。したがって、従業員の手取りは67万3280円となります。
住民税については、賞与からの源泉徴収は行いません。ただし、賞与の金額は所得に含まれるため、翌年6月以降に特別徴収する住民税の額に反映されます。
賞与にかかる社会保険料
従業員に対して支給する賞与からは、健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料を控除する必要があります。
各保険料額の計算式は以下のとおりです。賞与からは従業員負担分のみを控除します。
① 健康保険料の額=標準賞与額×保険料率
※標準賞与額は、賞与の税引前支給額から1000円未満を切り捨てた額
※健康保険の保険料率は都道府県ごとに異なります。
※従業員負担分は保険料額の2分の1
参考:全国健康保険協会ウェブサイト「都道府県毎の保険料率」
② 厚生年金保険料の額=標準賞与額×保険料率
※標準賞与額は、賞与の税引前支給額から1000円未満を切り捨てた額
※厚生年金保険の保険料率は18.300%(令和7年度)
※従業員負担分は保険料額の2分の1
参考:日本年金機構ウェブサイト「保険料額表(令和2年9月分~)(厚生年金保険と協会けんぽ管掌の健康保険)」
③ 雇用保険料の額=賞与の税引前支給額×保険料率
※雇用保険の保険料率および従業員負担分は、事業の種類によって異なります。
参考:厚生労働省ウェブサイト「雇用保険料率について」
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