介護保険料率とは?
2025年度の料率・保険料額の計算方法・
事業主の手続きなどを解説!
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- この記事のまとめ
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「介護保険料率」とは、企業などに勤務する40歳以上64歳以下の人(=第2号被保険者)の介護保険料の額を計算するために適用する割合です。標準報酬月額(または標準賞与額)に介護保険料率をかけると、介護保険料の額が求められます。
介護保険料の額は、被保険者資格の取得時に決定されるほか、毎年1回の「定時決定」によって改定が行われます。また、報酬が大幅に増減した場合には「随時改定」によって介護保険料の額が変わります。
さらに、介護保険料は賞与に対しても課されます。賞与を支給した事業主は「被保険者賞与支払届」を提出しなければなりません。介護保険料に関する届出や計算については、社会保険労務士などが相談を受け付けています。
この記事では介護保険料率について、2025年度の料率や保険料額の計算方法、事業主の手続きなどを解説します。
※この記事は、2025年9月30日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
介護保険料率とは
「介護保険料率」とは、企業などに勤務する40歳以上64歳以下の人(=第2号被保険者)の介護保険料の額を計算するために適用する割合です。標準報酬月額(または標準賞与額)に介護保険料率をかけると、介護保険料の額が求められます。
介護保険とは
「介護保険」とは、介護サービスを利用する際の費用負担を軽減する公的保険です。
高齢になってくると、身体が不自由になって介護が必要になるリスクが高まります。
しかし、介護サービスを利用するためには費用がかかります。経済力が不十分なために、必要な介護サービスを受けられない人が出てきてしまっては問題です。
そこで日本では、40歳以上の人に介護保険への加入が義務付けられています。介護保険の加入者の身体が不自由となったときは、要介護認定を受けた後、介護保険による補助の下で介護サービスを利用することができます。
介護保険の被保険者(対象者)|第1号と第2号
介護保険の被保険者(対象者)は、「第1号被保険者」と「第2号被保険者」の2種類に分かれています。第1号被保険者と第2号被保険者の違いは、以下のとおりです。
| 第1号被保険者 | 第2号被保険者 | |
|---|---|---|
| 対象者 | 65歳以上の者 | 40歳から64歳までの医療保険加入者 |
| 受給要件 | 要介護状態または要支援状態にあること ※要介護状態:寝たきりや認知症などにより、介護が必要な状態 ※要支援状態:日常生活の支援が必要な状態 | 要介護状態または要支援状態にあり、かつそれが末期がん・関節リウマチなどの加齢に起因する疾病(特定疾病)によること |
| 保険料の徴収方法 | 市区町村が徴収する(原則として、年金から天引き) | 医療保険者(協会けんぽや市区町村など)が、医療保険の保険料と一括して徴収する |
企業は、自社の健康保険に加入している40歳から64歳までの従業員などについて、健康保険料や厚生年金保険料と合わせて介護保険料を徴収する必要があります。
これに対して、65歳以上の従業員などの介護保険料は市区町村が徴収するので、企業が徴収する必要はありません。
介護保険料の計算方法
介護保険料の額の計算方法は、被保険者の種別や加入している医療保険の種類によって異なります。
以下のパターン別に解説します。このうち、介護保険料率が適用されるのは④のみです。
① 第1号被保険者
② 市区町村の国民健康保険に加入している第2号被保険者
③ 職種別の国民健康保険(組合)に加入している第2号被保険者
④ 職場の健康保険に加入している第2号被保険者
第1号被保険者|段階別に決まっている
第1号被保険者(65歳以上の者)の介護保険料の額は、本人の所得水準に応じた段階によって決まります。計算式は以下のとおりです。
介護保険料=基準額×段階別の保険料率
基準額・段階・保険料率は市区町村によって異なり、各々の市区町村によって3年ごとに見直されています。一例として、2025年時点における東京都中野区と神奈川県横浜市の状況を紹介します。
| 基準額 | 段階 | 保険料率 | 介護保険料(年額) | |
|---|---|---|---|---|
| 東京都中野区 | 7万5200円 | 19段階 | 0.285(第1段階)~5.00(第19段階) | 2万1400円(第1段階)~37万6400円(第19段階) |
| 神奈川県横浜市 | 7万9440円 | 19段階 | 0.20(第1段階)~3.50(第19段階) | 1万5880円(第1段階)~27万8040円(第19段階) |
出典:横浜市ウェブサイト「保険料について」
市区町村の国民健康保険に加入している第2号被保険者|世帯の所得と人数に応じて決まる
国民健康保険に加入している第2号被保険者(40歳から64歳までの者)の介護保険料の額は、世帯の所得と人数に応じて決まります。計算式は以下のとおりです。
介護保険料=第2号被保険者全員の所得金額×所得割率+第2号被保険者数×均等割額
所得割率と均等割額は、市区町村によって異なります。また、世帯当たりの介護保険料の額には上限が設けられています(例えば、東京都中野区では年額17万円まで)。
職種別の国民健康保険(組合)に加入している第2号被保険者|頭数に応じた定額制が一般的
自営業者などが職種に応じて加入できる国民健康保険組合では、介護保険料の額を所得にかかわらず、加入者の頭数に応じた定額に設定しているのが一般的です。具体的な介護保険料の額は、各国民健康保険組合の担当者にご確認ください。
職場の健康保険に加入している第2号被保険者|介護保険料率が適用される
職場の健康保険に加入している第2号被保険者(40歳から64歳までの者)の介護保険料の額は、本人が受け取る給与や賞与の額に応じて計算します。計算式は以下のとおりです。
① 月々の給与に課される介護保険料
介護保険料=標準報酬月額×介護保険料率
② 賞与に課される介護保険料
介護保険料=標準賞与額×介護保険料率
「標準報酬月額」とは、月々支払われる給与などの報酬を区切りのよい数字に直した金額です。例えば報酬月額(月給)が37万円以上39万5000円未満の場合、標準報酬月額は38万円とされています。
介護保険料の標準報酬月額は50等級に区分されており、最低額は5万8000円(報酬月額6万3000円未満の場合)、最高額は139万円(報酬月額135万5000円以上の場合)です。
介護保険料は月々の給与に加えて、賞与にも課されます。賞与に課される介護保険料の額は、標準賞与額に介護保険料率をかけて計算します。
「標準賞与額」とは、1カ月間に支給される税引き前の賞与総額から1000円未満を切り捨てた額です。
例えば12月に85万4500円の賞与が支給される場合、12月の標準賞与額は85万4000円です。なお、同じ月に複数回賞与が支給される場合は、その合計額に従って標準賞与額が決まります。
介護保険料の標準賞与額は、同一年度内では累計573万円が上限とされています。
介護保険料率は、加入している保険によって異なります。
職場の健康保険に加入する第2号被保険者の介護保険料は、労使折半で負担する
職場の健康保険に加入する第2号被保険者の介護保険料は、健康保険料との合算額を労使で折半するものとされています。
例えば、月々の介護保険料と健康保険料の合算額が4万3700円(うち介護保険料6042円)の場合、事業主と労働者が2万1850円(うち介護保険料3041円)ずつ負担します。
企業は、給与や賞与から労働者負担分を控除するか、または労働者負担分を現金で支払わせて徴収します。
なお、折半によって端数が生じる場合は、以下の方法で端数処理を行います。
① 給与から労働者負担分を差し引く場合
端数が50銭以下→切り捨てる(例:1万2345円50銭→1万2345円)
端数が50銭超→切り上げて1円とする(例:1万2345円51銭→1万2346円)
② 労働者負担分を労働者が現金で支払う場合
端数が50銭未満→切り捨てる(例:1万2345円49銭→1万2345円)
端数が50銭以上→切り上げて1円とする(例:1万2345円50銭→1万2346円)
※上記にかかわらず、事業主と労働者の間で特約がある場合は、特約に基づく端数処理が認められます。
介護保険料率の改定時期|毎年見直される
職場の健康保険に加入している第2号被保険者に適用される介護保険料率は、毎年見直されています。見直しのタイミングは保険の種類によって異なりますが、例えば協会けんぽの場合は毎年3月分(4月納付分)から改定されています。
令和7年度の介護保険料率は1.59%(協会けんぽの場合)
介護保険料率は保険者が独自に定めているため、加入している保険の種類によって異なります。
多くの企業で採用されている協会けんぽの医療保険加入者については、令和7年度(2025年度)の介護保険料率は全国一律で1.59%です。
健康保険組合の医療保険(組合健保)に加入している人の介護保険料率については、各健康保険組合のウェブサイトや窓口にてご確認ください。
職場の健康保険に加入している第2号被保険者の介護保険料額の計算例
職場の健康保険に加入している第2号被保険者について、以下の式(再掲)を用いて実際に介護保険料の額を計算してみましょう。
① 月々の給与に課される介護保険料
介護保険料=標準報酬月額×介護保険料率
② 賞与に課される介護保険料
介護保険料=標準賞与額×介護保険料率
月給に対して課される介護保険料額の計算例
<設例1>
・2025年10月の給与額が38万5000円
・協会けんぽの健康保険に加入
・50歳
設例1では、給与額が37万円以上39万5000円未満の場合のため、標準報酬月額は38万円です。また、協会けんぽの健康保険に加入しているため、介護保険料率は1.59%です。
したがって、2025年10月分の介護保険料額は6042円(=38万円×1.59%)となります。
給与から労働者負担分の介護保険料を控除する場合、控除額は3041円です。原則として、11月分の給与から控除します。
賞与に対して課される介護保険料額の計算例
<設例2>
・2025年12月の年末賞与額が85万4500円
・協会けんぽの健康保険に加入
・50歳
※2025年中の賞与の支給は、上記の1回のみ
設例2では、標準賞与額は85万4000円です(1000円未満切り捨て)。また、協会けんぽの健康保険に加入しているため、介護保険料率は1.59%です。
したがって、2025年12月の年末賞与に課される介護保険料額は1万3578円(=85万4000円×1.59%)となります。
賞与から労働者負担分の介護保険料を控除する場合、控除額は6789円です。
職場の健康保険に加入している第2号被保険者の介護保険料の決定・改定に関する手続き
職場の健康保険に加入している第2号被保険者については、「資格取得時の決定」「定時決定」「随時改定」のいずれかによって月々の給与に課される介護保険料が決まります。事業主においては、各決定・改定に関して所定の手続きを行わなければなりません。
また、賞与を支給した際には「被保険者賞与支払届」の提出が必要です。
いずれの手続きについても、書類の提出先は日本年金機構の事務センターまたは年金事務所となっています。
資格取得時の決定|契約上の報酬額に基づいて計算する
事業主が労働者を雇用したときは、雇用日から5日以内に「被保険者資格取得届」を提出します。
被保険者資格取得届には、就業規則や労働契約などに基づく報酬月額を記載します。届け出た報酬月額によって、厚生労働大臣が標準報酬月額を決定します(=資格取得時の決定)。
資格取得時の決定による標準報酬月額は、以下の期間にわたって適用されます。
(a)1月1日~5月31日に資格取得した場合
資格取得の月から、その年の8月まで
(b)6月1日~12月31日に資格取得した場合
資格取得の月から、翌年の8月まで
定時決定|4~6月の平均報酬額に基づいて計算する
介護保険料の標準報酬月額は、毎年1回決定されます。
事業主は毎年7月10日までに、すべての被保険者の3カ月間(4月・5月・6月)の報酬月額を記載した「算定基礎届」を提出する必要があります。3カ月間の報酬月額の平均値により、厚生労働大臣が標準報酬月額を決定します(=定時決定)。
定時決定による標準報酬月額は、9月から翌年8月まで適用されます。
随時改定|大幅に報酬が増減した場合などに行われる
昇給や降給などにより、標準報酬月額が2等級以上変わったときは、事業主は速やかに「月額変更届」を提出する必要があります。届出がなされた報酬月額により、厚生労働大臣が標準報酬月額を改定します(=随時改定)。
随時改定による標準報酬月額は、再び随時改定が行われない限り、以下の期間にわたって適用されます。
(a)1月~6月に随時改定がなされた場合
その月から当年の8月まで
(b)7月~12月に随時改定がなされた場合
その月から翌年の8月まで
被保険者賞与支払届|賞与を支給するたびに届け出る
介護保険の被保険者である労働者に賞与を支払った事業主は、賞与支払日から5日以内に「被保険者賞与支払届」を提出する必要があります。被保険者賞与支払届に記載された賞与の支給額に基づき、厚生労働大臣が標準賞与額を決定します。
なお、年4回以上支給する賞与は標準報酬月額(算定基礎届)の対象となるため、被保険者賞与支払届の提出は不要です。また、労働の対償とみなされない結婚祝い金などは、介護保険料に関する届出の対象外とされています。
介護保険料の決定・改定に関する手続きを怠った場合のペナルティ
事業主が介護保険料に関する届出や納付を怠ったときは、法律の規定に従いペナルティが課されることがあるのでご注意ください。
各種届出を怠った場合のペナルティ
事業主が正当な理由なく、介護保険料に関する届出を怠った場合には「6カ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」に処される可能性があります(健康保険法208条1号)。
介護保険料の納付を怠った場合のペナルティ
介護保険料の納付を怠ると、保険者(協会けんぽなど)から督促状が送られてきます。
督促状に記載された期限までに健康保険料を納付しないと、以下のペナルティを受けるおそれがあるので注意が必要です。
- 延滞金の発生(納付期限から3カ月間は年2.4%、3か月経過後は年8.7%(利率は2025年時点))
- 滞納処分による財産の差押え
- 刑事罰(6カ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)
介護保険料の手続きに関する相談先
介護保険料に関する手続きについて不明な点があるときは、保険者(協会けんぽなど)の窓口に相談してみましょう。必要な手続きの案内を受けられます。
また、介護保険料に関する手続きを代行してもらいたいときは、社会保険労務士に相談してみましょう。
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