国民健康保険料の
確定申告における取り扱いは?
年末調整時の事業主の対応事項も解説!
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- この記事のまとめ
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国民健康保険料を支払ったときは、確定申告時に社会保険料控除を受けることができます。本人分に加えて、同一生計の家族分の国民健康保険料も、実際に支払った場合は全額が社会保険料控除の対象となります。
国民健康保険には主に自営業者が加入しますが、パートやアルバイトで健康保険の被保険者資格を有さない人も、国民健康保険に加入します。雇用している従業員の中に国民健康保険の加入者がいる、または入社前に加入していたなどで従業員から申告があった場合は、事業主が年末調整で国民健康保険料の控除を行わなければなりません。
この記事では、国民健康保険料の確定申告における取り扱いや、年末調整時の事業主の対応事項などを解説します。
※この記事は、2025年9月30日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
国民健康保険料の確定申告における取り扱い
国民健康保険料を支払ったときは、確定申告時に社会保険料控除を受けることができます。本人分に加えて、同一生計の家族分の国民健康保険料も、実際に支払った場合は全額が社会保険料控除の対象となります。
国民健康保険料とは
「国民健康保険料」とは、国民健康保険の被保険者(加入者)が支払う保険料です。
日本では国民皆保険制度が採用されており、全ての国民は公的な医療保険への加入が義務付けられています。公的な医療保険は「国民健康保険」「健康保険」「後期高齢者医療制度」の3種類に分かれています。
国民健康保険は、自営業者や年金生活者、労働時間の短い非正規雇用者などを対象とする医療保険です。
これに対して、健康保険は企業に勤める人や公務員など、後期高齢者医療制度は75歳以上の人を対象としています。
国民健康保険は、市区町村または国民健康保険組合(国保組合)が運営しています。
自営業者などは居住する市区町村の国民健康保険に加入するのが原則ですが、職種別の国保組合が運営する国民健康保険に加入する資格があれば、そちらを選択することもできます。
国民健康保険の被保険者(加入者)は、保険者(運営者)である市区町村または国民健康保険組合に対して、国民健康保険料を支払わなければなりません。徴収のタイミングや回数は、市区町村や国民健康保険組合によって異なります。
確定申告とは
「確定申告」とは、1年間が終わった後にその年の所得を申告し、所得税の額を確定させる手続きです。納税地の税務署に対して行います。
例えば自営業者は、年間を通じて事業を行う中で、売上によって収益を得たり、経費を支出したりします。それらをまとめて、1年間にどのくらいの所得が生じたのかを計算して確定申告を行い、その結果に従って所得税を納付します。
会社員や公務員などの給与所得者については、勤務先で年末調整が行われる場合は、原則として確定申告は不要です。ただし、副業で一定以上の収入がある場合などには確定申告を要するほか、任意に確定申告を行うこともできます。
国民健康保険料を支払った場合、確定申告時に社会保険料控除を受けられる
所得税の額を計算するに当たり、国民健康保険料は「社会保険料控除」の対象とされています。
社会保険料控除は、1年間に支払った社会保険料の額を、その年の所得から差し引くことができるというものです。国民健康保険や国民年金、企業の健康保険や厚生年金保険などの保険料を支払ったときは、社会保険料控除を受けることができます。
社会保険料控除は、年末調整および確定申告の際に適用されます。自分で確定申告を行う場合は、支払った国民健康保険料等の額を集計し、社会保険料控除として申告書に記載しなければなりません。
同一生計の親族分の国民健康保険料を支払った場合も、社会保険料控除の対象となる
自分の分の国民健康保険料に加えて、自分と生計を一にする親族の国民健康保険料を支払った場合は、親族分も社会保険料控除の対象となります。
例えば、専業主婦の母親や未成年の子どもの分の国民健康保険料を、働いている父親が支払うようなケースはよく見られます。この場合は父親の分に加えて、母親と子どもの国民健康保険料の額についても、父親の所得から控除できます。
国民健康保険料以外に、社会保険料控除の対象となるもの
国民健康保険料以外に、社会保険料控除の対象となるものは以下のとおりです。
- 国民年金保険料
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
- 雇用保険料
- 後期高齢者医療保険制度の保険料
- 介護保険料
- 国民年金基金の掛金
- 船員保険の保険料
- 農業者年金の保険料
- 存続厚生年金基金の掛金
- 国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法、私立学校教職員共済法、恩給法等の規定による掛金または納金等
- 特別加入者の労災保険料
- 地方公務員の互助会の相互扶助制度のうち、税務署長の承認を受けたものの掛金
- 公庫等の復帰希望職員に関する経過措置の規定による掛金
- 健康保険法附則または船員保険法附則の規定により被保険者が承認法人等に支払う負担金
- 租税条約の規定により、当該租税条約の相手国の社会保障制度に対して支払われるもののうち一定額
国民健康保険料を確定申告すべきケース
国民健康保険料を支払った人が確定申告を行うべきケースとしては、主に以下の3つが挙げられます。
① 年末調整の対象でない場合
② 年末調整の対象であるものの、確定申告が必要な場合
③ 年末調整時に提出した保険料控除申告書の記入が漏れていた場合
年末調整の対象でない場合
勤務先において年末調整が行われず、かつ事業収入や不動産収入などの課税所得がある人は、確定申告を行う必要があります。
例えば自営業者は、事業上の所得が発生している限り、ほとんどのケースで確定申告が必要です。
年金生活者の場合、年金収入が400万円以下なら原則として確定申告は不要です(所得控除によって、課税所得がゼロになるため)。ただし年金以外の所得が20万円を超えている場合は、確定申告が必要となることもあります。
年末調整の対象であるものの、確定申告が必要な場合
勤務先において年末調整が行われる場合でも、以下のいずれかに該当するときは確定申告が必要となります。
(a) 給与の収入金額が2,000万円を超える場合
(b) 給与を1カ所から受けていて、かつその給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)の合計額が20万円を超える場合
(c) 給与を2か所以上から受けていて、かつその給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整をされなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)との合計額が20万円を超える場合
(d) 同族会社の役員やその親族などで、その同族会社からの給与のほかに、貸付金の利子、店舗・工場などの賃貸料、機械・器具の使用料などの支払を受けた場合
(e) 給与について、災害減免法により所得税等の源泉徴収税額の徴収猶予や還付を受けた場合
(f) 在日の外国公館に勤務する人や家事使用人などで、給与の支払を受ける際に所得税等を源泉徴収されないこととなっている場合
年末調整時に提出した保険料控除申告書の記入が漏れていた場合
勤務先において年末調整を受ける際には、支払った保険料の金額などを記載する「保険料控除申告書」を提出します。
例えば、自営業者である妻の国民健康保険料を自分が支払った場合は、その金額を保険料控除申告書に記載すれば、年末調整において社会保険料控除を受けることができます。
しかし、実際には国民健康保険料を支払ったのに、保険料控除申告書にその記載を忘れてしまうケースがあります。この場合、年末調整では社会保険料控除を受けられませんが、翌年に確定申告を行えば社会保険料控除を受けることができます。
国民健康保険料の確定申告の方法
確定申告を行って、国民健康保険料につき社会保険料控除を受けるまでの手続きの流れは、以下のとおりです。
① 国民健康保険料の支払額を確認する
② 確定申告書を作成する
③ 税務署に確定申告書を提出する
④ 税額を納付するor還付を受ける
① 国民健康保険料の支払額を確認する
まずは国民健康保険料の支払額を確認しましょう。確認方法としては、以下の例が挙げられます。
- 納付時に受け取った領収証書の金額を確認する
- 保険料の振替が行われた口座の通帳や取引履歴を確認する
- 保険者(市区町村または国保組合)の窓口に問い合わせる
② 確定申告書を作成する
次に、収入や所得控除などを記載した確定申告書を作成します。国民健康保険料は、社会保険料控除に関する欄に記載します。
確定申告書の作成に当たっては、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用するのが便利です。画面上の指示に従って、簡単な操作で確定申告書を作成することができます。
③ 税務署に確定申告書を提出する
作成した確定申告書は、税務署に提出します。窓口または郵送による提出のほか、e-Taxを通じた電子申告も認められています。
④ 税額を納付するor還付を受ける
確定申告書に記載した所得税額がすでに支払った税額を上回る場合には、所得税を追加で納付する必要があります。所得税の納付は、確定申告の期間内に行わなければなりません。
これに対して、確定申告書に記載した所得税額よりもすでに支払った税額の方が多い場合は、所得税が還付されます。所得税の還付は、確定申告書に記載した還付先口座へ振り込む方法によって行われます。
確定申告の際、保険料の控除証明書提出は不要
確定申告書には、国民健康保険料に関する書類を添付する必要はありません。支払った国民健康保険料の額を、正しく把握していれば足ります。
確定申告の期間
確定申告の期間は、2月16日から3月15日までです。ただし、始期と終期が土日祝日である場合は、翌平日にずれます。
また、所得税が還付される場合の申告(=還付申告)は、2月16日より前でも行うことができます。
事業主が年末調整で国民健康保険料を控除すべきケース
企業の従業員は、国民健康保険ではなく健康保険に加入していることが多いでしょう。しかし以下のようなケースでは、年末調整の際に国民健康保険料を控除する必要があります。
① 従業員自身が国民健康保険に加入している場合(勤務時間が少ない場合など)
② 従業員が同一生計者の国民健康保険料を支払った場合
③ 中途入社した従業員が、入社前は国民健康保険に加入していた場合
従業員自身が国民健康保険に加入している場合(勤務時間が少ない場合など)
企業に雇用されている従業員でも、健康保険の加入条件を満たしていなければ、国民健康保険に加入することになります。
例えば以下のような人は、家族に扶養されていない限り国民健康保険に加入します。
・週の所定労働時間が20時間未満
・残業代などを除いた賃金が月額8.8万円未満
・学生である
など
上記のような従業員から国民健康保険料の控除に関する申告があったときは、年末調整によって控除しなければなりません。
従業員が同一生計者の国民健康保険料を支払った場合
自分は健康保険に加入している従業員でも、同一生計の親族は国民健康保険に加入していて、その親族の保険料を従業員が支払っているケースがあります。
この場合、国民健康保険料は従業員の所得から控除することができます。企業としては、従業員から国民健康保険料の申告があった場合は、年末調整によって控除しなければなりません。
中途入社した従業員が、入社前は国民健康保険に加入していた場合
年度の途中で入社した従業員が、入社前は自営業者や無職だったために、国民健康保険に加入していたというケースがあります。この場合、入社した年度に国民健康保険料を払っていれば、その金額を年末調整によって控除しなければなりません。
また、国民健康保険料の未納分を支払った場合は、実際に支払った年に社会保険料控除を受けることができます。入社したのが過年度であっても、入社前の国民健康保険料が未納であって、その未納額を今年度中に支払った場合は、年末調整による控除の対象となります。
国民健康保険料に関する事業主の対応
企業は年末調整の対象となる従業員等について、保険料控除申告書などの提出を受けたうえで、年末調整を行う必要があります。保険料控除申告書に国民健康保険料が記載されていれば、社会保険料控除を適用して年末調整の計算を行いましょう。
保険料控除申告書などの提出を受ける
年末調整に当たって、従業員等から提出を受けるべき書類は以下のとおりです。国民健康保険料を含む社会保険料控除に関する事項は「保険料控除申告書」に記載されます。
| 書類の名称 | 概要 |
|---|---|
| 扶養控除等(異動)申告書 | 扶養している親族などについての情報を記載する ※原則として、年の最初に給与を支払うまでに提出を受ける |
| 基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼特定親族特別控除申告書兼所得金額調整控除申告書 ※いわゆる「基・配・特・所」(令和6年度までは「基・配・所」 | 基礎控除、配偶者控除・配偶者特別控除、特定親族特別控除、所得金額調整控除の適用に関する情報を記載する ※年末調整時に提出を受ける |
| 保険料控除申告書 | 生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除の適用に関する情報を記載する ※年末調整時に提出を受ける |
| (特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 | 住宅ローン減税に関する情報を記載する |
年度内に年末調整を完了するスケジュールであれば、11月中旬ごろまでに上記書類を回収しましょう。
保険料控除申告書を含む上記の書類は、その提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年間保存しなければなりません。
年末調整を行う
従業員が提出した書類を確認しながら、従業員から1年間で実際に徴収した源泉所得税と、確定した源泉所得税額(年調年税額)をそれぞれ計算し、その差額を精算(=追加徴収または還付)します。
追加徴収と還付はいずれも、年末調整後に支給する給与額を増減させて行うのが一般的です。
年末調整の詳しい方法については、国税庁のウェブサイトなどをご参照ください。
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