【最判令和7年4月17日】バス運転手の
公金着服と勤務中の電子たばこ使用を
理由とする退職手当の全額不支給処分が
適法とされた事例

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この記事のまとめ

最高裁判所令和7年4月17日判決では、バス運転手が勤務中に運賃を着服したことおよび電子たばこを使用したことを理由に、懲戒免職処分退職手当の全部支給制限処分(全額不支給処分)を受けた事案が問題になりました。

原審判決では、懲戒免職処分が適法とされた一方で、退職手当の全部支給制限処分は酷に過ぎるとして違法とされました。
これに対して最高裁は、原審判決を破棄し、退職手当の全部支給制限処分についても適法と判断しました。最高裁は、退職手当の支給制限処分について管理者(京都市)の広範な裁量権を認めたうえで、公金着服行為の悪質性などを重視し、京都市の判断を尊重する結論を示しました。

民間企業においても、公的機関と同様に、懲戒処分等については使用者に比較的広い裁量権が認められると考えられます。
ただし労働契約法により、濫用的な懲戒処分は無効となる点に注意しなければなりません。懲戒処分等の理由とする事情については、できる限り多くの客観的な証拠を確保するなど、労働者からの反論に備えることが求められます。

裁判例情報
最高裁令和7年4月17日判決(裁判所ウェブサイト)

※この記事は、2025年10月24日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

事案の概要

京都市交通局に勤務していたバス運転手が、勤務中に運賃を着服したことおよび電子たばこを使用したこと(非違行為)を理由に、懲戒免職処分退職手当1211万4214円の全額を不支給とする処分(=全部支給制限処分)を受けた事案です。バス運転手はこれらの処分の取消しを求め、裁判所に訴訟を提起しました。

問題となったバス運転手の行為は、乗客から受け取った運賃のうち1000円を着服したことと、禁止されていたにもかかわらず、バス車内で電子たばこを1週間のうちに計5回使用したことです。

バス運転手は、懲戒免職処分を受けた時点で約29年間勤続しており、複数の表彰歴がありました。過去に乗務中の事故により4回の戒告と2回の注意を受けていましたが、一般服務や公金の取扱いに関する非違行為は、本件以外に見られませんでした。
また、バス運転手は着服した1000円について、被害弁償を行いました。

第一審(京都地裁)は懲戒免職処分・全部支給制限処分をいずれも適法としました。
これに対して原審(大阪高裁)は、懲戒免職処分を適法とする一方で、全部支給制限処分は「非違行為の程度及び内容に比して酷に過ぎるものといわざるを得ず、社会観念上著しく妥当性を欠いて裁量権の範囲を逸脱したものとして違法である」と判断し、バス運転手の取消請求を認めました。

京都市は原審判決を不服として、最高裁に上告を行いました。

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