【最判令和7年9月2日】
部下に対する不適切な言動等を理由とする、
消防職員に対する懲戒免職処分が
適法とされた事例

おすすめ資料を無料でダウンロードできます
ハラスメント研修資料
この記事のまとめ

最高裁令和7年9月2日判決では、糸島市消防本部に勤務していた元消防職員Xが、部下に対する不適切な指導・暴言等を理由として懲戒免職処分を受けた事案が問題になりました。

最高裁は、糸島市による懲戒免職処分は裁量権の逸脱または濫用に当たらないと判断しました。その理由として最高裁は、Xの部下に対する長期間かつ多数回にわたる不適切な言動が甚だしく職場環境を害し、消防組織の秩序や規律を著しく乱すものであることなどを挙げています。

民間企業においても、懲戒処分等については使用者側に比較的広い裁量が認められると考えられますが、労働契約法によって濫用的な懲戒処分は無効となることに注意が必要です。
非違行為の内容や重大性、非違行為によって事業に生じる影響などを踏まえて、懲戒処分等の適否を慎重に判断することが求められます。

裁判例情報
最高裁令和7年9月2日判決(裁判所ウェブサイト)

※この記事は、2025年11月26日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

事案の概要

糸島市消防本部に勤務していた元消防職員Xが、部下に対する不適切な指導・暴言等を理由として懲戒免職処分を受けた事案です。Xは、懲戒免職処分の取消しと損害賠償を求め、糸島市を相手として訴訟を提起しました。

Xは平成5年4月に消防職員として採用された後、平成14年4月には消防士長に昇任、平成22年4月には消防司令補に昇任して消防隊の小隊長を務めるなど、長年にわたり指導的立場にありました。
その間、Xは平成15年頃から平成28年11月までにかけて、少なくとも10名の部下に対し暴言・人格否定・家族の侮辱・過酷な訓練強要などの行為を繰り返したことが認定されました。
Xの行為の中には、例えばロープで身体を縛った状態で懸垂させ、力尽きた後も宙吊り状態で継続を強要する行為や、熱中症で失神および失禁をするまで訓練を繰り返させる行為、さらには「殺すぞ」「死ね」といった暴言などが含まれていました。

糸島市長に対しては、平成28年7月頃に、消防職員有志一同名義の文書が提出されました。その文書には、消防本部でのいじめやしごき等が原因で複数の職員や退職や休職をしていること、Xが訓練の名を借りていじめやしごきをしており、暴言も度を越していることなどが記載されていました。

その後、糸島市長が消防職員に対する事情聴取などを行ったうえで、消防長がXに対する懲戒免職処分を行いました。Xはこれを不服として、懲戒免職処分の取消しと損害賠償を請求する訴訟を裁判所に提起しました。

一審判決原審(控訴審)判決は、いずれも糸島市による懲戒免職処分は重すぎ、裁量権の逸脱または濫用として違法であるとし、Xの請求を一部認容しました。
糸島市は原審判決を不服として、最高裁に上告しました。

有料コンテンツ

続きをご覧になるには契約ウォッチConnect会員登録が必要です。

契約ウォッチConnect会員の方はこちら
ログインして閲覧する