【最判令和6年3月12日】
情報商材詐欺に関して、
共通義務確認訴訟の「支配性」の要件が
柔軟に解釈された事例
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- この記事のまとめ
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最高裁令和6年3月12日判決では、特定適格消費者団体であるX法人が、Y社に対して共通義務確認訴訟を提起しました。Y社は、詐欺的な方法で消費者に対し、仮想通貨の運用に関連する情報商材などを販売していました。
本件では、共通義務確認訴訟の要件の一つである「支配性」を満たしているか否かが問題となりました。「支配性」とは、共通義務確認訴訟に続く簡易確定手続において、被害者の損害賠償請求権などの存否・内容を適切かつ迅速に判断できることを意味します。
原審の東京高裁は、支配性の要件を満たさないとしてX法人の訴えを却下しました。これに対して最高裁は、東京高裁の判断を否定し、原審判決を破棄して第一審に差し戻しました。
その理由として最高裁は、過失相殺や因果関係に関する事情がおおむね共通しており、消費者ごとに相当程度の審理を要するとはいえないことを挙げています。本判決により、共通義務確認訴訟の支配性の要件について、比較的柔軟な解釈が確立されました。その結果、大規模な詐欺被害等に関して積極的に共通義務確認訴訟が活用され、幅広い被害者が救済を受けられるようになることが期待されます。
※この記事は、2025年7月23日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- ・消費者裁判手続特例法…消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律
目次
事案の概要
特定適格消費者団体であるX法人が、Y社に対して共通義務確認訴訟を提起した事案です。
「共通義務確認訴訟」とは、事業者との契約によって相当多数の消費者に財産的被害等が生じた場合に、特定適格消費者団体が裁判所に対して提起する訴訟です。消費者裁判手続特例法によって認められています。
共通義務確認訴訟において事業者の責任が認められれば、その後は個々の被害者が簡易な手続き(=簡易確定手続)によって損害賠償などを受けることができます。
Y社は、仮想通貨の運用に関連する情報商材などの商品を販売していました。販売にあたっては「3カ月で16億円稼いだ」「誰でも確実に億万長者になれる」などといった誇大かつ虚偽の宣伝を行っていました。
Y社が販売する詐欺的な商品やサービスを購入した人は、数千人規模に上りました。
X法人は、Y社による上記の行為の責任を追及するため、裁判所に対して共通義務確認訴訟を提起しました。
しかし原審の東京高裁は、共通義務確認訴訟の「支配性」の要件を満たしていないとして、X法人の訴えを却下しました。
「支配性」とは、共通義務確認訴訟に続く簡易確定手続において、被害者の損害賠償請求権などの存否・内容を適切かつ迅速に判断できることを意味します。本件について東京高裁は、以下の理由を挙げて支配性の要件を満たしていないと判断しました。
- 投資の知識や経験の有無や程度、購入に至る経緯等の事情が様々であるため、消費者ごとに過失の有無や割合が異なる
- 購入に至った動機も個々に異なるため、消費者ごとに因果関係の存否に関する事情も様々である
X法人は東京高裁の判断を不服として、最高裁に上告しました。












