【大阪高判令和6年9月12日】
インクカートリッジ互換品の製造販売に
影響を与える純正品の仕様変更等が
独占禁止法違反に当たらないとされた事例

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この記事のまとめ

大阪高裁令和6年9月12日判決の事案では、純正品インクカートリッジの仕様変更によって互換品にインクエンドサイン等の機能を搭載できなくなったことなどを理由に、互換品メーカーが純正品メーカーを提訴しました。

大阪高裁は、互換品メーカーの請求を全面的に棄却しました。インクエンドサイン等の機能の重要性を認めつつ、その機能を搭載した互換品の製造販売を純正品メーカーが制限していたとは認められないことなどを理由に挙げています。

「本体価格を安く抑えて消耗品の売上で稼ぐ」というビジネスモデルを採用する純正品メーカーは、本判決を参考にして、互換品メーカーへの対応戦略を慎重に検討すべきでしょう。

裁判例情報
大阪高裁令和6年9月12日判決(判例集未登載)

※この記事は、2025年8月25日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • ・一般指定…不公正な取引方法(昭和57年6月18日公正取引委員会告示第15号)

事案の概要

プリンター用インクカートリッジの互換品を販売するA社が、大手プリンターメーカーで同インクカートリッジの純正品を販売するB社に対し、独占禁止法違反による差止請求と損害賠償請求を行った事案です。

A社は、B社が販売する純正品インクカートリッジの使用済み品を回収して、インクを充填したうえでインク残量データを初期化し、自社ブランドの互換品(再生品)として販売していました。

ところがB社は、平成29年9月から純正品の仕様を変更し、ICチップに記録されるインク残量データを初期化することができないようにしました。
その結果、A社が採用していた上記の生産方法では、互換品において以下の機能が利用できなくなりました(以下、これらの機能を「インクエンドサイン等」と総称します)。

インク残量表示
インクがどのくらい残っているかを表示する機能

インクエンドサイン
インク残量が無くなったときに、そのインクが無くなったことを表示する機能

インクエンドストップ
印刷中にインク残量が無くなったときは、プリンターがその印刷を自動で停止する機能

B社は、A社による純正品インクカートリッジの販売が「抱き合わせ販売等」、上記仕様変更が「競争者に対する取引妨害」に当たり独占禁止法違反であると主張し、仕様変更後のインク残量データを管理する方法の使用差止めと、3000万円の損害賠償を請求しました。

しかし第一審の大阪地裁は、A社の請求を全面的に棄却しました。A社は一審判決を不服として、大阪高裁に控訴を提起しました。

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