【東京地判令和6年10月17日】
韓国語の契約条項の実質的意義の検討に基づき、
写真集の既払売買代金返還請求が
棄却された事例

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この記事のまとめ

東京地裁令和6年10月17日判決では、出版物や文具類の輸出入・販売等を行うA社が、販売用写真集の仕入先であるY社に対して、売れ残り在庫分の代金相当額の返還などを請求した事案が問題になりました。

A社(後に破産管財人Xが訴訟を受継)は、A社・Y社間で締結された覚書における「在庫消尽の責任」の規定により、Y社が本写真集の在庫をすべてなくす責任を負うと主張しました。
同規定は韓国語で記載されていたところ、東京地裁は文理上売れ残り在庫のリスクをY社が負担するようにも読み得ると指摘しました。
しかし、当初の契約内容やその後の契約変更の経緯などを総合的に考慮して、売れ残り在庫のリスクはA社が負担していることを認定し、A社(X)の請求を棄却しました。

外国語で記載された契約条項の意義を、文理上の意味だけにとらわれず実質的に検討した点に特徴のある判決です。ただし企業においては、解釈に疑義が生じない契約条項を定めるよう努めるべきでしょう。

裁判例情報
東京地裁令和6年10月17日判決(判例タイムズ1536号223頁)

※この記事は、2026年8月20日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

事案の概要

出版物や文具類の輸出入・販売等を行うA社が、販売用写真集の仕入先であるY社に対して、売れ残り在庫分の代金相当額の返還などを請求した事案です。
訴訟係属中にA社が破産したため、A社の破産管財人であるXが原告として訴訟を引き継ぎました。

A社とY社は、韓国のアイドルグループの写真集(以下「本写真集」という)をA社がY社から仕入れる旨の契約(以下「本件契約」という)を韓国語で締結しました。

本件契約には、次の事項が定められていました。

① Y社はA社に対し、日本における本写真集の流通権利および独占的販売権限を与える。
② A社はY社から、本写真集5万冊を、1冊当たり4290円で購入する(総額2億1450万円)。
③ 売買代金の支払いは、次の3回に分けて行う。
 1次支払:請求書を受理した日の翌日までに総購入額の30%(6435万円)
 2次支払:本写真集の予約販売が終わった翌日までに総購入額の20%(4290万円)
 3次支払:A社が指定した場所に本写真集をY社が入庫し、3日以内に検品が終わり次第、検品の翌日までに総購入額の50%(1億725万円)
④ Y社は令和3年4月30日までに、A社が指定した場所に本写真集を納入する。
⑤ 本件契約の有効期間は、契約締結日から6カ月間とする。
⑥ Y社はA社に対し、本写真集の出版・販売の権利を有していることを保障(保証)する。
⑦ Y社は、本写真集の知的財産権を有していることを保障(保証)する。
⑧ 契約違反の是正を書面(電子メールを含む)で相手方に通知し、相手方がその通知を受領した日から7日以内に是正しなかった場合、または是正できない場合は、書面(電子メールを含む)で本件契約を解除できる。
⑨ A社が③の時期までに所定の代金を入金しない場合、本件契約は即時解除され、Y社はA社からあらかじめ入金された金額を違約罰とみなして返還しない(=違約罰条項)。

当初の契約上、売買代金の支払いは3回に分けて行うものとされていました。A社は1回目・2回目の支払いを契約どおり行ったものの、3回目の支払いについてはA社・Y社の間で令和3年5月13日付の覚書(以下「本件覚書」という)が締結され、以下の2回に分けて行われることになりました。

令和3年5月14日:5362万5000円
令和3年5月31日:5362万5000円

その後、令和3年5月14日の支払いは覚書のとおりに行われましたが、同月31日の支払は行われませんでした。その結果、売買代金のうち5362万5000円未払いとなりました。

なお本件覚書には、韓国語で「在庫消尽の責任」をY社が負う旨が記載されていました

Y社は令和3年4月28日に5000冊、同年5月8日に1万冊の本写真集をA社の倉庫に納品しましたが、残り3万5000冊は未納品となりました。

Y社はA社に対し、売買代金の一部未払いを理由に、本件契約を解除する旨の意思表示をしました。
その後にA社も、本件の訴状(訂正申立書)および準備書面により、Y社に対して本件契約を解除する旨の意思表示をしました。

A社は、本件覚書における「在庫消尽の責任」の規定により、Y社が本写真集の在庫をすべてなくす責任を負う(売れ残りの在庫リスクを負う)と主張し、Y社に対して在庫冊数分(売れ残った分)の既払売買代金9652万5000円の返還を請求しました。
これに対してY社は、A社が指摘する部分の日本語訳は「在庫がなくなるまで最善を尽くす」「在庫がなくなるよう努力する」というものであり、Y社の既払金返還義務を定めるものではないと主張し、既払金の返還を拒否しました。

またA社は予備的に、本件契約の解除に伴う未納入分の既払金9652万5000円の返還も請求しました。
これに対してY社は、本件契約に違約罰条項が定められていることを理由に、既払金の返還義務を負わないとして返還を拒否しました。

判決の要旨

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