【札幌地判令和7年8月29日】
市の上下水道工事の入札に関する利益供与が
贈賄罪に当たるとされた事例
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- この記事のまとめ
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札幌地裁令和7年8月29日判決では、水道設備工事請負等を業とするC社の代表取締役Aと取締役Bが共謀し、美唄市の職員であるDに対して、上下水道工事の入札について便宜を図ってもらうために賄賂を供与した事案が問題になりました。
AとBは贈賄を認めたため、本件では主に量刑が争点となりました。
札幌地裁は、Aに対して「懲役1年・執行猶予3年」、Bに対して「懲役10カ月・執行猶予3年」の刑を言い渡しました。贈賄行為の悪質性を指摘する一方で、反省などの酌むべき事情があることを踏まえ、執行猶予付きの懲役刑が選択されました。
AとBの量刑の違いは、Aの方が主導的な役割を果たしたことを反映したものです。本件は典型的な贈賄事案であり、判断の中に目新しい要素は見られないので、贈賄に関する実務に及ぼす影響は特にないものと思われます。
贈賄は公共工事の入札に関わる企業において発生しがちなので、該当する企業は、役員や従業員が贈賄に関与しないように教育や監視を徹底することが求められます。
※この記事は、2025年11月26日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
事案の概要
水道設備工事請負等を業とするC社の代表取締役Aと取締役Bが共謀し、美唄市の職員であるDに対して、上下水道工事の入札について便宜を図ってもらうために賄賂を供与した事案です。
Dは、美唄市が発注する上下水道工事について、工事価格の積算や最低制限価格の算出等の事務を担当する課に所属していました。Dは課長補佐として、これらの事務を掌理して所属職員を指揮監督する課長を補佐する立場にありました。
Dは、美唄市が入札を執行した以下の工事につき、AとBに一般競争入札等の最低制限価格を教示するなど、C社にとって有利な取り計らいをしました。
AとBは共謀のうえ、上記の取り計らいに対する謝礼と、今後も同様の取り計らいを受けたいとの趣旨の下に、Dとその交際相手であったEに対して賄賂を供与しました。具体的には、合計85万3955円相当の沖縄旅行代金と飲食代金等相当額を支払いました。
上記の行為につき、AとBは贈賄罪で起訴されました。同時にDも収賄罪などで起訴されましたが、Dについての弁論は分離されたため、本件はAとBに関する公判手続き(刑事裁判)の判決です。












