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【2022年4月施行】商標法・意匠法改正 のポイントを解説! ―商標法・意匠法における「輸入」概念の見直し―(新旧対照表つき)

若竹宏諭弁護士

若竹宏諭弁護士

2021/11/01 (公開:2021/10/28)

この記事を書いた人

若竹 宏諭

御池総合法律事務所

慶應義塾大学大学院法務研究科修了。2013年弁護士登録。企業法務(会社法・労働法・知的財産法関係)、訴訟・紛争解決、債権保全・執行(金融機関)を中心として、家事事件など幅広い分野を取り扱う。

この記事のまとめ

電子商取引の発展により、それまでは日本国内の事業者を通じて日本国内に流入していた模倣品が、海外事業者から日本国内の個人へ直接販売されるケースが増加しています。

模倣品が海外事業者から直接日本国内の個人へ販売される場合、輸入の主体が個人であることから「業として」したものとはいえず、商標権・意匠権侵害に問うことが難しい状況でした。

しかし、2021年の商標法・意匠法改正により、海外事業者が模倣品を郵送等により国内に持ち込む行為が「輸入」に該当することになり、商標権・意匠権侵害を問いやすくなりました。

本記事では、商標法・意匠法改正のポイントをわかりやすく解説します。

商標法・意匠法改正(2022年4月施行)の概要

経済がグローバル化したことにより、海外で自社製品を製造販売する日本企業が多くなりました。しかし、品質が高いとされる日本企業の製品が模倣され、グローバルなサプライチェーンを通じて、中国や東南アジアで販売されるだけでなく、安価な形で日本に流入することが後を絶ちません。

2019年には、税関における知的財産侵害物品に係る輸入差止件数が、2004年と比較して、大きく増加(約1万件から約2万件に増加)しているのに対し、差止点数は同程度(約100万点)になっており、輸入差止め1件当たりに含まれる侵害物品の数量が少なくなっているという侵害貨物の小口化の傾向が示されているといわれています。

その要因は、近年の電子商取引の発展により、海外事業者が直接日本国内の個人へ模倣品を販売することが増加したことにあると考えられました(「ウィズコロナ/ポストコロナ時代における商標制度の在り方について」2021年2月産業構造審議会知的財産分科会商標制度小委員会)。

一方で、個人使用目的による模倣品輸入は、輸入の主体が個人であり、特許権、商標権、意匠権などの産業財産権侵害に直ちに当たらないと考えられてきたため、模倣品による被害の防止や回復が困難でした。

以上をバックグラウンドとして、知的財産推進計画2020では、「越境電子取引の進展に伴う模倣品・海賊版の流入増加へ対応するため」「特に増加が顕著な模倣品の個人使用目的の輸入については、権利者等の被害状況等及び諸外国における制度整備を含めた運用状況を踏まえ、具体的な対応の方向性について引き続き検討する」こととされていました。

そして、2021年の商標法及び意匠法の改正により、増大する個人使用目的の模倣品輸入に対応して、海外事業者が模倣品を郵送等により国内に持ち込む行為が商標法・意匠法上の「輸入」行為に該当することになり、商標権及び意匠権侵害を問いやすくなりました。

公布日・施行日

改正の根拠となる法令名は、「特許法等の一部を改正する法律(2021年法律第42号)」です。 公布日と施行日は、次のとおりです。

公布日・施行日

公布日|2021年5月21日
施行日|2022年4月1日

改正のポイント

そもそも商標権侵害・意匠権侵害とは何か?

商標権侵害

商標権は、特許庁に商標登録を出願し、審査の結果、登録が認められると発生する権利です(商標法18条1項)。
商標権者は、指定商品等について登録「商標」を独占的に「使用」することができ(商標法25条)、第三者が商標権者に無断で指定商品等に登録「商標」又は類似の商標を「使用」することは、商標権侵害となります。

「商標」の定義は、商標法2条1項各号に規定されており、「業として」商品を生産等する者がその商品について使用する標章をいうため(商標法2条1項各号)、商標権侵害となるのは、第三者が、「業として」登録商標等を「使用」(商標法2条3項各号)した場合です。

意匠権侵害

意匠権は、特許庁に意匠登録を出願し、審査の結果、登録が認められると発生する権利です(意匠法20条1項)。
意匠権者は、「業として」登録意匠及びこれに類似する意匠を独占的に実施することができます(意匠法23条)。
そのため、第三者が意匠権者に無断で登録意匠を「業として」実施した場合、意匠権侵害となります。ここでいう「実施」は、意匠法2条2項各号に定義される行為をいいます。

個人による模倣品輸入は「業として」した行為に当たらない?

海外事業者が模倣品を日本国内に持ち込む行為が商標権又は意匠権侵害に当たれば、差止請求などの民事的措置や税関における輸入差止めが可能となります。商標権や意匠権の侵害が認められるのは、上記のとおり、「業として」登録商標が使用された場合や、登録意匠が「業として」実施された場合などです。

したがって、海外事業者からの模倣品の流入が「業として」行われたものでなければ、商標権侵害にも意匠権侵害にも問うことができません。
そして、「業として」という概念は、反復継続して行うことを想定しているため、海外事業者からの模倣品流入でも、個人宛の輸入であれば、「業として」した輸入に当たらないと考えられてきました。
そのため、海外事業者から個人が模倣品を輸入する場合、商標権侵害や意匠権侵害に当たることの立証は困難であり、この点を奇貨としてか、本来は「業として」の輸入であるにもかかわらず、個人使用目的での輸入と仮装して模倣品が流入することさえありました。

改正:「輸入」概念の見直し

このような状況を背景に、2021年の商標法及び意匠法の改正では、以下のとおり、海外事業者が模倣品を郵送等により日本国内に持ち込む行為が「輸入」概念に含まれることになりました。

・商標法
商標法2条7項が新設され、商標法における「輸入」行為に、「外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為」が含まれると明示されました。

・意匠法
意匠法における「輸入」行為を定める意匠法2条2項1号において、「輸入」に「外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為」が含まれると明示されました。

この改正によって、日本国内にいる個人の輸入者が個人使用目的で模倣品を購入した場合でも、海外事業者による模倣品の持込行為は、登録商標の使用行為や登録意匠の実施行為に該当することになり、商標権侵害や意匠権侵害を問うことが可能になりました。
なお、今回の改正では、特許権や実用新案権における同様の改正は行われませんでした。これは、特許権や実用新案権については、商標権侵害や意匠権侵害と異なり、侵害の有無の判断がより困難であること等が考慮されたためです。

模倣品対策実務への影響

国内企業が、自社製品の模倣品が輸入されていることに気づいた場合に採り得る手段は、以下のとおりです。

 不正競争防止法に基づく請求や知的財産権侵害に基づく差止請求等の民事的措置

 税関当局を含む行政機関による行政摘発

 刑事告訴という刑事的措置

どの措置を講じるべきかは、模倣品が国内に既に入ってきているかどうか、目標(販売停止か、損害賠償か等)をどのように設定するか、産業財産権の取得状況、模倣品の特徴(デッドコピーか、あるいは、模倣品であることが分かるようなものに過ぎないのか等)、模倣品を放置することにより予想される影響(売上減少、レピュテーションリスク等)など、様々な事情を踏まえて判断されます。

このうち、民事的措置については、侵害者の特定・証拠収集~警告書送付~差止め等のための裁判手続まで、相当の時間を要することに加え、弁護士費用等の手続費用も必要になります。
他方、裁判所に知的財産権侵害を認めさせるための立証のハードルが相対的に高いだけでなく、仮に立証できたとしても、その損害額が必ずしも大きくなるとは限らず、時間的・経済的コストとの関係で費用倒れに終わる可能性があります。

知的財産権者は、民事的措置のほか、税関長に対し、自己の知的財産権を侵害すると認める貨物が輸入されようとする場合は認定手続(関税法69条の12)を執るべきことを申し立てることができます(関税法69条の13)。この申立ての受理後は、多くの場合、輸入者側が知的財産権侵害該当性を争わない限り侵害該当性が認定されるという簡易な手続により進められます。そのため、民事的措置と比べ、侵害認定に時間と費用がかからないため、日本国内に入ってくる模倣品に対して行う措置として有用です。

上記改正前は、個人による模倣品輸入は、「業として」に該当しないと一般に考えられていたため、輸入者側から「個人的な使用のための輸入」であるとの反論がなされれば、税関において侵害物品該当性の判断が困難でした。

しかし、今回の改正により、日本国内にいる個人輸入者が個人使用目的で模倣品を購入した場合でも、海外にある者が「業として」模倣品を持ち込ませれば、商標権侵害や意匠権の侵害品(関税法69条の11第1項9号)として輸入を差し止めることが可能となります。

今後、インターネット取引はさらに拡大していくと考えられ、税関に輸入差止めを求めていくことが模倣品対策の有力な一手になるかもしれません。
なお、今回の改正を踏まえた税関における運用においては、模倣品の持込行為が「業として」なされたものか否かの認定が問題になり得ます。特に持込者が海外にいれば、「業として」の持込行為であることの立証が困難な場合があります。

この点、関税率・関税制度の改正に関する要望として、特許庁総務課制度審議室・財務省関税局業務課より、「商標権侵害の該否を決定する税関の認定手続(関税法69条の12)において、海外から模倣品を日本国内に流入させる主体(仕出人)が事業者に該当するのか否かを税関で判別することは実務上困難であるところ、取引の当事者である輸入者に仕出人が事業者に該当しないことを証明する書類の提出を義務付けることとしたい」旨の改正の方向性が示されており(「2022年度関税率・関税制度改正要望事項調査票(新設)」)、「業として」の立証のハードルの問題への対策が採られることが予想されます。

新旧対照表

商標法

新法 旧法
第2条(略)
2~6(略)
7 この法律において、輸入する行為には、外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為が含まれるものとする。
(新設)

意匠法

新法 旧法
第2条(略)
2 この法律で意匠について「実施」とは、次に掲げる行為をいう。
一 意匠に係る物品の製造、使用、譲渡、貸渡し、輸出若しくは輸入(外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為を含む。以下同じ。)又は譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。以下同じ。)をする行為
第2条(略)
2 この法律で意匠について「実施」とは、次に掲げる行為をいう。
一 意匠に係る物品の製造、使用、譲渡、貸渡し、輸出若しくは輸入又は譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。以下同じ。)をする行為

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