【2023年6月施行】電気通信事業法改正とは?
Cookieに関する規制を含め
ポイントを分かりやすく解説!
- この記事のまとめ
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2022年6月17日に改正電気通信事業法が公布され、2023年6月16日に施行される予定となっています。
今回の電気通信事業法改正では、電気通信事業を取り巻く環境変化を踏まえ、サービスの円滑な提供・利用者保護を図るため、さまざまなルール変更が行われます。
幅広い事業者が新たな規制の対象となるため、改正法の詳細をチェックしておきましょう。
今回は、2023年6月に施行が予定されている、改正電気通信事業法による改正ポイントを詳しく解説します。
※この記事は、2022年10月26日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
・電気通信事業法…電気通信事業法の一部を改正する法律(令和4年法律第70号)による改正後の電気通信事業法
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目次
【2023年6月施行】電気通信事業法改正とは
電気通信事業法改正の目的
2022年6月17日に改正電気通信事業法が公布され、2023年6月16日に施行される予定となっています。
今回の電気通信事業法改正の目的は、インターネットなどを利用した電気通信事業を取り巻く環境の変化を踏まえ、サービスの円滑な提供・利用者の利益の保護を図るため、必要な規制や制度を追加することにあります。
総務省の資料によれば、以下の3つの目的が掲げられています。
- 情報通信インフラの提供確保
- 安心・安全で信頼できる通信サービス・ネットワークの確保
- 電気通信市場を巡る動向に応じた公正な競争環境の整備
改正電気通信事業法の公布日・施行日
改正の根拠となる法令名は、「電気通信事業法の一部を改正する法律」です。公布日と施行日は、以下のとおりです。
- 公布日・施行日
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公布日|2022年6月17日
施行日|2023年6月16日※ただし、73条の2(媒介等の業務の届け出等)関連の改正は2022年9月1日より施行
電気通信事業法の改正前後の違いについて詳しく知りたい方は、以下から「新旧対照表」をぜひダウンロードしてみてください。
電気通信事業法とは
電気通信事業法とは、公共性のある電気通信事業の運営を適正化・合理化し、公正な競争を促進するための規制や制度を定めた法律です。
インターネット・携帯電話などの電気通信サービスが円滑に提供される仕組みを整えて、利用者の利益と国民の利便性を確保することを目的としています。
電気通信事業法の適用を受ける事業者の要件
電気通信事業法の適用を受けるのは、以下の要件を全て満たす事業者です。
- 「電気通信事業」を行っていること
- 電気通信事業を「営んでいる」こと
- 適用除外に該当しないこと
各要件をそれぞれ解説します。
「電気通信事業」を行っていること
「電気通信事業」とは、電気通信役務を他人の需要に応じるために提供する事業を意味します(電気通信事業法2条4号)。関連する用語の定義は、以下のとおりです。
- 電気通信役務とは
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①電気通信設備を用いて、他人の通信を媒介すること
②その他、電気通信設備を他人の通信ために提供すること
- 電気通信事業に当たり得る事業の例
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・電話転送
・フリーメール
・メーリングリスト
・決済代行
・マンションインターネット
・クローズドチャット
・MVNO
・ポータルサイト運営
・SNS
など
一方、他人同士の電気通信を媒介する設備を自ら設置・提供するのでなければ、電気通信事業には該当しません。
ただし、サービスが電気通信事業に該当するかどうかは、具体的なサービス内容を検討した上で判断する必要があります。
- 電気通信事業に当たらないことが多い事業の例
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・ネット通販
・メールマガジンの発行
・ソフトウェアのオンライン提供
・電子ショッピングモール
・インターネットオークション
・インターネットゲーム(クローズドチャット機能を含まないもの)
・ネット証券
・検索サービス
・電子掲示板、オープンチャット
など
電気通信事業を「営んでいる」こと
電気通信事業法の適用を受ける「電気通信事業者」は、電気通信事業を「営む」者に限られます(同法2条5号)。
これに対して営利性がない場合、例えば電気通信の媒介設備を無償で設置・提供し、広告料収入も一切得ていない場合には、電気通信事業法が適用されません。
適用除外に該当しないこと
電気通信事業法は、以下の電気通信事業には原則として適用されません(同法164条1項)。
ただし、適用除外に該当しても、検閲禁止と秘密保護に関する規定は適用されます(同条3項、同法3条、4条)。
また、上記③に該当する電気通信事業(=第三号事業)については、今回の改正により規制強化が行われている点に注意が必要です(「電気通信事業法の改正ポイント①|届け出制の対象が拡大される」にて後述)。
電気通信事業者の登録制と届け出制について
電気通信事業法の適用を受ける事業者は、電気通信事業の内容に応じて、以下のいずれかを行わなければなりません。
- 総務大臣の登録を受けること
- 総務大臣へ届け出をすること
原則として登録が必要ですが(同法9条)、自ら電気通信回線設備を保有しない場合などは、届け出で足りるとされています(同条各号、同法16条)。
例えば、MNO(大手キャリア)は、自ら電気通信回線設備を保有するので、登録が必要な電気通信事業に該当します。
これに対して、MVNO(格安SIM提供事業者)は、自ら電気通信回線設備を保有しないので、登録ではなく届け出で足ります。
なお、前述の適用除外に該当する場合は、登録・届け出のいずれも不要です。
電気通信事業法の改正ポイント①|届け出制の対象が拡大される
今回の電気通信事業法改正における1つ目のポイントは、
- 検索情報電気通信役務(例:Googleなどの検索サービス)
- 媒介相当電気通信役務(例:TwitterなどのSNS)
が、新たに届け出制の対象となる点です(電気通信事業法164条1項3号ロ・ハ)。
これらの役務(サービス)は、これまで第三号事業に該当するとして、届け出不要とされていました。
しかし、検索サービスやSNSの利用者拡大に伴い、運営会社に利用者情報の適正な取り扱いを義務付ける必要が生じたため、届け出制の対象に含められました。
ただし、全ての検索サービスやSNSの運営会社が届け出制の対象となるわけではなく、総務省令によって一定規模以上の事業者に限定される予定です。
検索情報電気通信役務とは
検索情報電気通信役務とは、入力されたキーワードに対応して、そのキーワードを含むウェブページのURLなどを出力する電気通信設備を提供する電気通信役務のうち、利用者の範囲・利用状況を勘案して、利用者の利益に及ぼす影響が大きいものとして総務省令で定めるものを意味します。
具体的にはGoogleなど、利用者数の多い大規模な検索サービスが例に挙げられます。
媒介相当電気通信役務とは
媒介相当電気通信役務とは、不特定多数の者による投稿を記録・送信する電気通信役務のうち、利用者の範囲・利用状況を勘案して、利用者の利益に及ぼす影響が大きいものとして総務省令で定めるものを意味します。
具体的にはInstagramやTwitterなど、利用者数の多い大規模なSNSが例に挙げられます。
- 改正点の要約
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改正法施行後は、以下のいずれかに該当する事業を行っている(行う)場合、総務大臣へ届け出等を行う必要があり、また、「電気通信事業者」として、さまざまなルールが適用されることになる。
・検索情報電気通信役務
・媒介相当電気通信役務※対象となる事業者は、総務大臣から指定される。
電気通信事業法の改正ポイント②|特定利用者情報の取り扱いに関する義務が新設される
電気通信事業法改正における2つ目のポイントは、「特定利用者情報」という概念が新設され、「特定利用者情報」の取り扱いに関する電気通信事業者の義務が定められた点です。
特定利用者情報とは
特定利用者情報とは、電気通信役務に関して取得する利用者に関する情報のうち、以下のいずれかに該当するものを意味します(電気通信事業法27条の5)。
指定された電気通信事業者が負う義務の内容
特定利用者情報の取り扱いに関する義務を負うのは、電気通信事業者のうち、
です。
特定利用者情報の取り扱いに関する義務の具体的な内容は、以下の5つです。
1|情報取扱規程の整備・届け出をする義務(同法27条の6)
指定を受けた日から3カ月以内に、所定の事項を定めた情報取扱規程を制定し、総務大臣に届け出る必要があります。
情報取扱規程の内容が不適切な場合は、総務大臣から変更命令を受ける場合もあります(同法27条の7)。
2|情報取扱方針を策定・公表する義務(同法27条の8)
特定利用者情報の取り扱いの透明性を確保するため、指定を受けた日から3カ月以内に、所定の事項を定めた情報取扱方針を制定・公表する必要があります。
3|特定利用者情報の取り扱いに関する自己評価を実施する義務(同法27条の9)
毎事業年度、特定利用者情報の取り扱いの状況について評価を実施し、必要に応じて情報取扱規程・情報取扱方針の見直しを行う必要があります。
4|特定利用者情報統括管理者を選任し、届け出る義務(同法27条の10)
特定利用者情報の取扱業務を統括管理させるため、指定を受けた日から3カ月以内に、特定利用者情報統括管理者を選任する必要があります。
事業者は、利用者の利益の保護に関して、特定利用者情報統括管理者の意見を尊重しなければなりません(同法27条の11第2項)。
5|特定利用者情報が漏えいしたときに報告する義務(同法28条1項2号ロ)
万が一特定利用者情報が漏えいした場合には、
- 漏えいの事実
- 漏えいの理由と原因
を、遅滞なく総務大臣に報告しなければなりません。
- 改正点の要約
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「特定利用者情報」という概念が新設され、「特定利用者情報」の取り扱いに関する電気通信事業者の義務が定められた。
【具体的な義務の内容】
1|情報取扱規程の整備・届け出をする義務
2|情報取扱方針を策定・公表する義務
3|特定利用者情報の取り扱いに関する自己評価を実施する義務
4|特定利用者情報統括管理者を選任し、届け出る義務
5|特定利用者情報が漏えいしたときに報告する義務※義務を負うのは、総務大臣に指定された事業者のみ。
電気通信事業法の改正ポイント③|利用者情報の外部送信規制(Cookie規制)が新設される
電気通信事業法改正における3つ目のポイントは、利用者に関する情報の外部送信に対する規制が新設された点です(電気通信事業法27条の12)。
Cookie情報の利用を規制する側面があることから、「Cookie規制」と呼ばれることもあります。
- Cookieとは
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Cookieとは、ウェブサイトを閲覧したときに、ユーザーが訪れたウェブサイトの履歴や入力内容、利用環境などの情報が記録される情報を指します。
Cookieには、ユーザーが快適にインターネットを使えるようする役割があります。しかし、一方で、ユーザーの意図しないところで閲覧履歴や行動履歴が収集されることもあり、プライバシー保護の観点から問題視されていました。
そこで、2022年4月施行の個人情報保護法改正にて、「個人関連情報」が新設され、Cookieは個人関連情報に該当するとされました。
個人関連情報を第三者に提供し、個人情報の紐づけを行う場合には、本人の同意が必要になります。
昨今ウェブサイトを閲覧しているときに、「Cookie使用についての同意」がポップアップなどで求められるのはこの法改正によるものです。
利用者情報の外部送信規制が適用される事業者
利用者情報の外部送信規制が適用されるのは、以下の条件をいずれも満たす事業者です。
利用者情報の外部送信規制の内容
利用者情報の外部送信規制が適用される事業者は、利用者に対して情報送信指令通信を行う際、原則として以下いずれかの対応をとらなければなりません。(電気通信事業法27条の12)
- 総務省令で定める事項を利用者に通知する
- 総務省令で定める事項を利用者の知り得る状態に置く
Cookie情報は、利用者がウェブサイトを閲覧する際、事業者のサーバーと利用者のブラウザの間で自動的にやり取りされます。このとき、事業者のサーバーから行われるCookie情報送信(ブラウザ→サーバー)の指示が「情報送信指令通信」に該当します。
したがって、Cookieを利用したサイトを運営する事業者は、電気通信事業法改正によって新たに導入されるCookie規制の適用を受ける可能性があります。
具体的な対象事業者の提供するサービスと、利用者に通知・知り得る状態にすべき内容は、おおむね以下のようになります(電気通信事業法施行規則22条の2の27・22条の2の29)。
- 対象事業者が提供するサービスの例
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① 他人の通信を媒介するサービス(メール・チャット・ウェブ会議などのサービス)
② 利用者から受信した情報を不特定の利用者に送信するサービス(SNS・動画共有サービス・マッチングサービスなど)
③ 全てのウェブページを対象とする検索サービス(Google検索・Yahoo!検索など)
④ 不特定の利用者に情報を閲覧させるサービス(ニュースサイト・オウンドメディア・配信サービスなど)
- 利用者に通知・知り得る状態にすべき内容
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① 送信される利用者に関する情報の内容
② 情報の送信先となる者の氏名または名称
③ 情報の利用目的
- 改正点の要約
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利用者に関する情報の外部送信に対する規制が新設され、この規制が適用される事業者は、以下のいずれかの措置を講じる必要がある。
・総務省令で定める事項を利用者に通知する
・総務省令で定める事項を利用者の知り得る状態に置く
電気通信事業法のその他の改正点
これまで紹介したもの以外に、今回の電気通信事業法改正では、主に以下の変更が予定されています。
【解説つき】改正前と改正後の条文を新旧対照表で比較
それでは、改正点について、条文を確認しましょう。解説つきの新旧対照表をご用意しました。 以下のページからダウンロードできます。
この記事のまとめ
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