廃棄物処理法(廃掃法)とは?
マニフェスト制度・罰則などを分かりやすく解説!
- この記事のまとめ
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産業廃棄物の処理については、廃棄物処理法(廃掃法)で詳細にルールが定められています。
産業廃棄物を排出する事業者は、その処理・保管・運搬・処分について、廃掃法に基づく各種基準を遵守しなければなりません。
また、事業場外で産業廃棄物を保管する場合の届出義務、運搬・処分を外部委託する際のルール、多量排出事業者の義務などにも注意が必要です。この記事では、廃棄物処理法(廃掃法)に基づく産業廃棄物の処理ルールについて、概要・罰則・企業の注意点などを解説します。
※この記事は、2023年1月27日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
・廃掃法…廃棄物の処理及び清掃に関する法律
・廃掃法施行令…廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令
・廃掃法施行規則…廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則
目次
廃棄物処理法(廃掃法)とは
廃棄物処理法(廃掃法)とは、廃棄物の処理・保管・運搬・処分などに関するルールを定めた法律です。
廃棄物を排出する事業者は、その処理・保管・運搬・処分について、廃掃法に基づくルールを遵守しなければなりません。特に産業廃棄物については、その取り扱いについて厳格なルールが定められているので注意が必要です。
廃掃法の目的
廃掃法の目的は、廃棄物の排出を抑制し、適正な分別等の処理を行い、生活環境を清潔にすることによって、生活環境の保全と公衆衛生の向上を図ることです(廃掃法1条)。そのために、廃棄物の処理・保管・運搬・処分に関してさまざまなルールが定められています。
廃掃法のルールに共通しているのは、「汚染者負担の原則(PPP:Polluter-Pays Principle)」という考え方です。廃棄物を排出する者は、自らのコスト負担によって廃掃法の規定を遵守し、適切に廃棄物の処理等を行うことが求められます。
- 汚染者負担の原則(PPP:Polluter-Pays Principle)
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環境対策費用は、汚染の原因を作った者が負担すべきであるという原則です。
1972年にOECD(経済協力開発機構)によって採択された「環境政策の国際経済面に関する指導原理」の中で提唱されています。
廃棄物とは|一般廃棄物と産業廃棄物
廃掃法における「廃棄物」とは、汚物または不要物であって、固形状または液状のもの(放射性物質およびこれによって汚染された物を除く)と定義されています(廃掃法2条1項)。
- 廃棄物の例
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・ごみ
・粗大ごみ
・燃え殻
・汚泥
・ふん尿
・廃油
・廃酸
・廃アルカリ
・動物の死体
など
廃棄物は、さらに「一般廃棄物」と「産業廃棄物」に分類されます。
① 一般廃棄物(廃掃法2条2項)
産業廃棄物以外の廃棄物です。
一般廃棄物のうち、爆発性、毒性、感染性その他の有害物として政令で定めるものは「特別管理一般廃棄物」とされています(同条3項、廃掃法施行令1条)。
② 産業廃棄物(廃掃法2条4項)
以下の廃棄物です。
(a) 事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令(廃掃法施行令2条)で定める廃棄物
(b) 輸入された廃棄物((a)の廃棄物、航行廃棄物、携帯廃棄物を除く)
産業廃棄物のうち、爆発性、毒性、感染性その他の有害物として政令で定めるものは「特別管理産業廃棄物」とされています(廃掃法2条5項、廃掃法施行令2条の4)。
事業者が排出するごみなどの多くは、産業廃棄物に該当します。
産業廃棄物の処理等に関するルール
産業廃棄物の処理・保管・運搬・処分等に関して、廃掃法で定められているルールの概要を解説します。
事業者は自ら産業廃棄物を処理する義務を負う
事業者は、排出した産業廃棄物を自ら処理しなければなりません(廃掃法11条1項)。
家庭から出る一般ごみ(一般廃棄物)のように、公共のごみ収集場に出すことは認められず、事業者自ら費用を負担して産業廃棄物を処理する必要があります。これは「汚染者負担の原則」を反映したルールです。
産業廃棄物処理基準・産業廃棄物保管基準
事業者が自ら産業廃棄物の運搬・処分を行う場合は、「産業廃棄物処理基準」に従わなければなりません(廃掃法12条1項)。産業廃棄物処理基準は、廃掃法施行令6条に定められています。
さらに、産業廃棄物が運搬されるまでの間、事業者は「産業廃棄物保管基準」に従って、生活環境の保全上支障のないように保管しなければなりません(廃掃法12条2項)。産業廃棄物保管基準は、廃掃法施行規則8条に定められています。
産業廃棄物の中でも、特別管理産業廃棄物については、さらに厳しい「特別管理産業廃棄物処理基準」と「特別管理産業廃棄物保管基準」が設けられており、事業者はそれぞれを遵守しなければなりません(廃掃法12条の2第1項・第2項)。
特別管理産業廃棄物処理基準は廃掃法施行令6条の5、特別管理産業廃棄物保管基準は廃掃法施行規則8条の13にそれぞれ規定されています。
事業場外で産業廃棄物を保管する場合の届出義務
事業場外で産業廃棄物を自ら保管する場合(300㎡以上の場所における保管に限ります。さらに一部例外あり)、原則としてその旨を都道府県知事に届け出なければなりません。届出事項を変更しようとするときも同様です(廃掃法12条3項、廃掃法施行規則8条の2の4)。
また、特別管理産業廃棄物については、通常の産業廃棄物とは別途の保管届出義務が定められています(廃掃法12条の2第3項、廃掃法施行規則8条の13の5)。
ただし、事業場外における産業廃棄物の保管が非常災害のために必要な応急措置である場合には、保管開始日から起算して14日以内に届け出を行えば足ります(廃掃法12条4項・12条の2第4項)。
産業廃棄物の運搬・処分を委託する場合のルール
産業廃棄物の運搬・処分は、専門業者に委託するのが一般的です。その際には、以下のルールを遵守する必要があります。
委託先業者の選定について
産業廃棄物の運搬は、産業廃棄物収集運搬業者など、処分は産業廃棄物処分業者などに委託しなければなりません(廃掃法12条5項、廃掃法施行規則8条の3)。産業廃棄物収集運搬業・産業廃棄物処分業を行うには、対応する都道府県知事の許可が必要です(廃掃法14条1項・6項)。
特別管理産業廃棄物については、運搬・処分の委託先がさらに限定されています(廃掃法12条の2第5項、廃掃法施行規則8条の14・8条の15)。
運搬・処分の委託時に遵守すべき基準
事業者が産業廃棄物の運搬・処分を委託する場合には、委託に関する基準に従わなければなりません(廃掃法12条6項、廃掃法施行令6条の2)。
特別管理産業廃棄物については、運搬・処分の委託時に遵守すべき特別の基準が定められています(廃掃法12条の2第6項、廃掃法施行令6条の6)。
処理状況等を確認する努力義務
事業者が産業廃棄物の運搬・処分を委託する場合、処理状況に関する確認を行い、一連の処理工程における処理が適正に行われるため、必要な措置を講ずるように努めなければなりません(廃掃法12条7項・12条の2第7項)。
産業廃棄物管理票(マニフェスト)の交付義務等
事業者が排出した産業廃棄物の運搬・処分を他人に委託する場合、産業廃棄物の引き渡しと同時に、受託者に対して所定の事項を記載した「産業廃棄物管理票(マニフェスト)」を交付しなければなりません(廃掃法12条の3)。
ただし、市町村または都道府県に委託する場合などには、産業廃棄物管理票の交付は不要とされています(廃掃法施行規則8条の19)。
事業者は、交付した産業廃棄物管理票の写しを5年間保管しなければなりません(廃掃法施行規則8条の21の2)。また、4月1日から翌年3月31日までに交付した管理票の交付等の状況につき、事業場の所在地を管轄する都道府県知事に報告する義務を負います(廃掃法施行規則8条の27)。
電子マニフェスト使用義務の対象事業者
前々事業年度において、特別管理産業廃棄物を50トン以上排出した事業者は、特別管理産業廃棄物の運搬・処分を他人に委託する際、委託先に対する紙のマニフェストの交付に代えて、電子マニフェストへの情報登録が義務付けられます(廃掃法12条の5、廃掃法施行規則8条の31の2・8条の31の3)。
電子マニフェストでは、廃棄物の処理状況をリアルタイムに管理され、排出事業者・収集運搬業者・処分業者が相互に閲覧できるようになっています。
多量排出事業者の産業廃棄物処理計画の提出・報告義務
前年度の産業廃棄物の発生量が1,000トン以上である事業場を設置している事業者(多量排出事業者)は、産業廃棄物処理計画を作成した上で、当該年度の6月30日までに都道府県知事に提出しなければなりません(廃掃法12条9項、廃掃法施行令6条の3、廃掃法施行規則8条の4の5)。
さらに、産業廃棄物処理計画の実施状況について、翌年度の6月30日までに、都道府県知事へ報告書を提出する必要があります(廃掃法12条10項、廃掃法施行規則8条の4の6)。
また、前年度の特別管理産業廃棄物の発生量が50トン以上である事業場を設置している事業者は、特別管理産業廃棄物処理計画を作成した上で、当該年度の6月30日までに都道府県知事に提出しなければなりません(廃掃法12条の2第10項、廃掃法施行令6条の7、廃掃法施行規則8条の17の2)。
さらに、特別管理産業廃棄物処理計画の実施状況について、翌年度の6月30日までに、都道府県知事へ報告書を提出する必要があります(廃掃法12条の2第11項、廃掃法施行規則8条の17の3)。
各計画およびその実施状況は、各都道府県のウェブサイトを通じて公表されます(廃掃法12条11項・12条の2第12項、廃掃法施行規則8条の4の7・8条の17の4)。
産業廃棄物の輸入・輸出について
廃棄物(航行廃棄物および携帯廃棄物を除く)を輸入しようとする者は、環境大臣の許可を受けなければなりません(廃掃法15条の4の5第1項)。
産業廃棄物を輸出しようとする者は、処理基準への適合性などについて、環境大臣の確認を受けることが義務付けられます(廃掃法15条の4の7・10条)。
産業廃棄物の取り扱いルールを遵守しない場合の罰則(ペナルティ)
事業者が産業廃棄物の取り扱いルールを遵守しない場合、都道府県知事による勧告・公表・命令の対象となるほか(廃掃法12条の6・19条の3第2号・19条の5)、刑事罰が科される可能性もあります。
主な廃掃法違反に対する刑事罰 | |
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・措置命令違反 ・省令の委託基準違反 ・廃棄物の無確認輸出 ・廃棄物の不法投棄、不法焼却 ・指定有害廃棄物の保管、収集、運搬、処分違反 | 5年以下の懲役または1000万円以下の罰金(廃掃法25条、併科あり) |
・政令の委託基準違反 ・改善命令違反 ・廃棄物の無許可輸入 ・廃棄物の不法投棄、不法焼却を目的とする収集、運搬 | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金(廃掃法26条、併科あり) |
・廃棄物の無確認輸出の予備行為 | 2年以下の懲役または200万円以下の罰金(廃掃法27条、併科あり) |
・マニフェストの交付義務違反、記載義務違反、虚偽記載、保存義務違反 ・電子マニフェストの虚偽登録・報告義務違反・虚偽報告 ・マニフェストに関する措置命令違反 | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金(廃掃法27条の2) |
廃掃法に関する事業者の注意点
事業者は多かれ少なかれ、事業の過程で産業廃棄物を排出することになるでしょう。そのため、廃掃法に関して以下のポイントに注意が必要です。
① 通常の産業廃棄物と特別管理産業廃棄物を区別する
② 廃掃法に基づく各種基準を確認する
③ 運搬・処分の委託先は慎重に選定する
④ 多量排出事業者の義務に注意する
①通常の産業廃棄物と特別管理産業廃棄物を区別する
通常の産業廃棄物と特別管理産業廃棄物では、事業者が遵守すべきルールや基準が異なります。そのため事業者は、両者を明確に区別して取り扱うことが大切です。
特別管理産業廃棄物に当たるものは、廃掃法施行令2条の4に定められていますので、自社の事業において排出され得る特別管理産業廃棄物の種類・数量や、その処理方法などを確認しておきましょう。
②廃掃法に基づく各種基準を確認する
廃掃法では、産業廃棄物の処理・保管・運搬・処分に関して、さまざまな基準が設けられています。各基準につき、内容をよく把握した上で遵守に努めましょう。
- 廃掃法・関連法令に基づく主な基準
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<通常の産業廃棄物>
✅ 産業廃棄物処理基準
→廃掃法施行令6条✅ 産業廃棄物保管基準
→廃掃法施行規則8条✅ 運搬、処分の委託に関する基準
→廃掃法施行令6条の2<特別管理産業廃棄物>
✅ 特別管理産業廃棄物処理基準
→廃掃法施行令6条の5✅ 特別管理産業廃棄物保管基準
→廃掃法施行規則8条の13✅ 運搬、処分の委託に関する基準
→廃掃法施行令6条の6
③運搬・処分の委託先は慎重に選定する
産業廃棄物の運搬・処分は、都道府県知事の許可を受けた専門業者などに委託することが義務付けられています(廃掃法12条5項・12条の2第5項)。
無許可業者に委託することがないように、委託先の選定は慎重に行いましょう。
④多量排出事業者の義務に注意する
産業廃棄物の排出量が多い事業者には、廃掃法に基づき特別の義務が課されます。自社が多量排出事業者に該当するか否かを確認した上で、該当する場合はきちんと義務を履行しましょう。
- 多量排出事業者の義務
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✅ 前々事業年度における特別管理産業廃棄物の排出量が50トン以上
→電子マニフェストの使用義務(廃掃法12条の5)✅ 前年度における産業廃棄物の発生量が1,000トン以上である事業場を設置
→産業廃棄物処理計画の提出義務、実施状況の報告義務(同法12条9項・10項)✅ 前年度における特別管理産業廃棄物の発生量が50トン以上である事業場を設置
→特別管理産業廃棄物処理計画の提出義務、実施状況の報告義務(同法12条の2第10項・11項)
この記事のまとめ
廃棄物処理法の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!