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2021年の企業法務に関係する 「ルールメイキング」(法改正)まとめ ―2021年国会で成立した法案を中心に―

金山藍子弁護士

金山藍子弁護士

2021/11/10 (公開:2021/11/09)

この記事を書いた人

カリフォルニア大学バークレー校ロースクール(LL.M.)修了。2005年弁護士登録。森・濱田松本法律事務所、国土交通省、Google合同会社を経験し、2019年1月から三浦法律事務所所属。ルールメイキング、ガバナンス、不動産取引等の一般企業法務など幅広い分野を取り扱う。

この記事のまとめ

今回は、2021年の「ルールメイキング」(※)に関連するトピックについて、第204回通常国会で審議された法案を中心に、概要をご紹介します。成立した法律等の詳細をここでご紹介することはできませんので、個別の法案等の詳細については記事末の資料をご参照いただけたら幸いです。

なお、ルールメイキングの「ルール」には、法律以外の政省令等に定められたルールもありますが、まずは法律について第204回通常国会で審議された法律案のうち企業法務や暮らしに関係する法律を中心にご紹介し、その後に政省令や通達等におけるルール変更の議論をご紹介します。

(※)「ルールメイキング」という用語や「パブリック・アフェアーズ」等の用語がありますが、本記事では「ルールメイキング」という用語を使用します。なお、法律ができるまでのプロセスについては、内閣法制局や参議院法制局のホームページに解説があります。特に、参議院法制局の若手有志が執筆している「法律の『窓』」はいろいろなトピックをわかりやすく説明しています。


第204回通常国会で審議された法律案の概要

第204回通常国会は、2021年1月18日から6月16日を会期として、政府が新規に提出した法案63本が提出され、入管法改正と放送法改正を除く61本が成立しました。議員立法は、82本の法案が提出されましたが、成立したのは21本の法律に留まりました。

(1)新型インフルエンザへの対応

2020年に続き、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえ、今国会でも引き続き課題となっていましたが、新型インフルエンザ等対策特別措置法が改正され、「緊急事態宣言」に加えて「まん延防止等重点措置」が導入されました。これにより、営業時間の変更の要請、要請に応じない場合の命令、命令に違反した場合の過料(20万円)、また、宿泊療養や自宅療養の要請について法律上の根拠を設ける等の改正が行われ、2021年2月13日から施行されました。

2021年3月には、飲食事業を手掛けるグローバルダイニングが、東京都を相手に、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく命令が憲法等違反であるとして国家賠償請求訴訟を起こしたことはご存じの方も多いと思います。クラウドファンディングで2,500万円を超える訴訟費用を集めていることや、損害賠償請求としては104円であるということ等も耳目を集めていますが、裁判を通じた立法政策の変更というルールメイキングの伝統的な手法の事例でもあります。

今回の衆議院議員選挙では、「都市封鎖」を法制化することも争点として取り上げられており、来年も憲法の保障する移動の自由、財産権等と感染症への対応を両立させるルールの模索が続きそうです。

(2)デジタル改革関連

菅政権の肝入り政策のデジタル改革は、今国会に提出された法律案としては、以下の6本でした(「デジタル改革関連法案」と総称) 。

① デジタル社会形成基本法案
② デジタル庁設置法案
③ デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案(「整備法」)
④ 公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律案(「公金受取口座登録法」)
⑤ 預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案(「預貯金口座管理法」)
⑥ 地方公共団体情報システムの標準化に関する法律案

①デジタル社会形成基本法案

デジタル社会形成基本法では、2000年に制定された高度情報通信ネットワーク社会形成基本法を廃止し、デジタル社会の形成に関し、基本理念、基本方針、国、地方公共団体及び事業者の責務、デジタル庁の設置等について定めました。

②デジタル庁設置法案

①を受けて、デジタル庁設置法では、デジタル庁の組織等について定めを置き、2021年9月1日からデジタル庁が発足しています。デジタル庁は、消費者庁や観光庁等の各府省庁の外局とは異なり、内閣に設置された行政機関となります。このような内閣に設置された組織としては、復興庁が存在しますが、時限的に設けられている復興庁とは異なり、デジタル庁は期限のない組織として誕生しました。首相の強いリーダーシップの下で、省庁横断のデジタル行政改革を進めるためにこのような位置づけとしたとされています。

③デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案(「整備法」)

また、整備法の中で重要な法改正が行われています。

まず、個人情報の保護に関する法律(「個人情報保護法」)について、2020年6月に改正個人情報保護法が成立し、2022年4月1日に施行予定となっていますが、整備法において、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(「行政機関個人情報保護法」)と独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(「独立行政法人等個人情報保護法」)が、民間企業等に適用される個人情報保護法に統合されました。

これまでは、個人情報保護法は民間部門にのみ適用されており、国の行政機関、独立行政法人や国立大学法人等、地方自治体には個人情報保護法は適用されず、別途、行政機関個人情報保護法、独立行政法人等個人情報保護法、また各地方自治体が定める個人情報保護条例がそれぞれ適用されていました。

このように異なる法律が規律を定めていたため、「個人情報」等の定義も異なるなどルールが食い違っており、いわゆる「個人情報保護法制2000個問題」と呼ばれるように、個人データの利活用の妨げになっていると指摘されてきました。

今回の改正により、個人情報保護委員会が行政機関等についても一元的に所管することとなり、個人情報等の定義が統一され、全国で適用される共通のルールが個人情報保護法に定められました。国の行政機関に関する改正は公布の日(2021年5月19日)から1年以内、地方公共団体等に関する改正は2年以内に施行されることになっています。

さらに、整備法では48の法律が改正され、押印を求めていた各種手続について押印が不要とされ、書面の交付等を求める手続についても電磁的方法により行うことが可能となりました。企業法務で関係するものとしては、監査報告書、中間監査報告書、四半期レビュー報告書への監査法人による押印が不要となりました。

また、身近なところでは、婚姻届等の押印が不要となったほか、不動産の賃貸や売買時における重要事項説明、書面交付等も同様に電磁的記録の提供が認められました。

施行は、準備期間が必要な法律を除き2021年9月1日に施行されていますが、不動産取引における重要事項説明等については、施行は公布の日(2021年5月19日)から1年以内とされています。

なお、かかる押印廃止は、行政関係の書面についてで、司法分野の裁判所に提出する訴状等については引き続き押印が必要です。民事裁判手続き全般のIT化が議論されており、来年の法案提出を目指して進めるとの報道もありますので、早く措置されることを期待したいところです。

さらに、整備法では民法第486条第2項が新設され、領収書について、電磁的記録の提供による方法が認められました。実務上は、すでにPDF等による領収書の提供をしているケースも多く存在すると思いますが、このような取り扱いが、民法上も明確に認められました。

④公金受取口座登録法

公金受取口座登録法では、本人が同意する場合、マイナンバーと本人の指定する預貯金口座が紐づけられ、児童手当等の公的給付の迅速な受け取りが可能となるよう措置され、公布の日(2021年5月19日)から2年以内に施行されます。

⑤預貯金口座管理法

預貯金口座管理法は、金融機関に対して、口座開設等の重要な取引を行う場合、預貯金者に口座がマイナンバーにより管理されることを希望するか否かを確認することを義務付けました。預貯金者が希望しない場合にはマイナンバーによる管理は行われません。本法による紐づけを行った場合には、災害時又は相続時における預貯金口座に関する情報の提供を受けることができるようになり、公布の日(2021年5月19日)から3年以内に施行されます。

(3)取引デジタルプラットフォームへの規制強化

2020年の通常国会では、GAFA規制として話題となっていたオンラインモールやアプリストアを念頭においた特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律(「取引透明化法」)が成立し、2021年2月1日から施行されています。

日々の生活で頻繁に利用するデジタルプラットフォームですが、政令で指定されたオンラインモールとアプリストアを運営する事業者は、外国の企業も含めて、取引透明化法に基づき、取引条件の開示等や公正さを確保するための手続き・体制の整備等が義務付けられたところです。2021年は、これに続いて、消費者相手の取引を対象とした取引デジタルプラットフォームに関する新法(「取引DPF新法」)が成立しました。

取引透明化法の規律対象は、一定の売上げのある規模の大きなプラットフォームのみが対象となっていますが(2021年10月現在は、単年度の売上高が、オンラインモールの場合3千億円以上、アプリの場合は2千億円以上)、取引DPF新法では、オンラインモール等の取引デジタルプラットフォーム(取引DPF)を利用して行われる通信販売取引の全てが対象となります。

取引DPF新法は、消費者を相手とする通信販売取引について、

①販売業者と消費者との間の円滑な連絡を可能とする措置
②販売条件等の表示に関し苦情の申出を受けた場合の調査等の実施
③販売業者に対し身元確認のための情報提供を求める措置の実施及びその概要等の開示

についての努力義務が定められました(具体的内容については指針を策定するものとされています)。

上記措置の実施等は努力義務に留まりますが、内閣総理大臣(消費者庁長官に権限は委任)は、重要事項(商品の安全性の判断に資する事項等)の表示に著しい虚偽・誤認表示がある商品等が出品され、かつ、販売業者が特定不能などの場合には、取引DPF提供者に出品削除等を要請することができ、取引DPF提供者がかかる要請に従って出品削除等をした場合には、取引DPF提供者は販売者等に対して損害賠償義務を負わないこととされました。本法の施行は、公布の日(2021年6月16日)から1年以内とされています。

(4)バーチャルオンリー株主総会の解禁等

産業競争力強化法の改正により、株主総会に関して、上場企業に限り、バーチャルオンリー株主総会の実現に向けた制度が創設されました。会社法上は、バーチャルオンリーの株主総会は認められていませんが、本改正では、バーチャルオンリーの株主総会に関する定めを定款に盛り込むことが要件とされました。

ただし、新型コロナウイルスの感染状況を踏まえ、施行から2年間は、定款の変更を行うことなく、バーチャルオンリーの株主総会を開催することが認められています。

これを受け、少数ではありますが、2021年の株主総会でバーチャルオンリーの株主総会を開催した会社、また、2022年の株主総会に向けて、バーチャルオンリー株主総会の実施を可能とする定款変更を2021年の株主総会において行った会社もありました。一部の投資家等からは株主の権利確保の観点から問題があると反対も示されていますが、今後の動向が注目されます。

(5)共有に関する民法の改正

2020年4月1日に大改正が施行されたばかりですが、2021年も所有者不明土地問題への対応の一環として、民法の共有に関する規律が改正されました。所有者不明土地問題をきっかけとする改正ですが、土地以外の建物や動産についても今回の共有に関する規律の改正が適用されます。

現行法では、

①共有物の処分・変更
②共有物の管理
③共有物の保存行為

の3類型について、①は共有者全員の同意、②は共有者の持分の過半数の同意、③は各共有者単独でそれぞれできることとされていましたが、
・問題となる行為が①か②のいずれに該当するかが必ずしも明確ではない
・慎重を期して共有者全員の同意をとらざるを得ない
・共有者の一部に所在等が不明な者がいるなど全員の同意を得ることができない場合、当該行為を断念せざるを得ない
といった事態が生じているとされていました(「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案の補足説明」3頁)。

今回の改正により、①②のいずれに該当するのか疑義のあった軽微な変更、管理者の選任や短期使用権の設定等については②として持分の過半数で実施できることが明確に定められました。

また、不動産については、所在不明の共有者がいる場合には、簡易な裁判手続き(非訟事件)で当該所在不明の共有者に係る共有持分を他の共有者が取得し、また、当該所在不明の共有者の同意なく第三者に売却できるようになりました。これらの改正は、公布の日(2021年4月28日)から2年以内とされています。

(6)プロバイダ責任制限法改正

特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律案により、インターネット上の誹謗中傷などによる権利侵害についてより円滑に被害者救済を図るため、発信者情報開示について新たに簡易な裁判手続(非訟手続 )を創設するなどの改正が行われ、公布の日(2021年4月28日)から1年半以内に施行されます。

(7)詐欺的な定期購入商法や預託販売の規制強化

通信販売における詐欺的な定期購入商法への対策として、特定商取引に関する法律等が改正され、定期購入でないと誤認させる表示によって申し込みをした場合に申し込みの取消しを認める制度、通信販売の契約解除の妨害に当たる行為の禁止等が定められました。

また、これまでは行政処分を行い、それにも従わない場合に罰則が科される制度でしたが、行政処分を経ることなく、違反行為に対して直ちに罰則を科せられるようになりました。また、商品の送り付け商法の対策として、売買契約等に基づかずに商品を送り付けられた消費者は、これまでは14日間の保管後に処分ができましたが、本改正により直ちに当該商品を処分することも認められるようになりました。

また、過去にも巨額の消費者被害を出した預託商法についても、昨今の事件を踏まえ、販売を伴う預託等取引を原則禁止とし、また、原則禁止の対象となる契約を民事的に無効とする制度が創設されました。違反に対しては、5年以下の懲役等の重い罰則が定められました。これらの改正は、公布の日(2021年6月16日)から1年以内の施行となります。

(8)公立義務教育学校のクラスの定員の削減等

公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部を改正する法律により、公立の小学校については、1クラス40人の定員でしたが、本改正により35人に引き下げられ、2021年4月1日から施行されています(経過措置あり)。

また、国立大学法人法の一部を改正する法律により、国立大学法人のガバナンス向上のため、学長選考・監察会議を設置すること、監事の増員、1名を常勤とすること等のほか、帯広商科大学、帯広畜産大学と北見工業大学を設置する各国立大学法人の統合等の改正が行われ、2022年4月1日に施行されます。少子高齢化の進展のなか、私立大学、国公立大学を問わず、大学の経営統合が進んでいます。

(9)著作権法の改正

図書館等で書籍等の写しを取得する場合、これまではコピーしか受け取ることができませんでしたが、著作権法の改正により、一定の条件において、調査研究目的で、著作物の一部分をメールなどで送信できるようになりました。施行は公布の日(2021年6月 2日)から2年以内となります。

(10)カーボンニュートラル・プラスチック対応

昨年の「2050年カーボンニュートラル」宣言やパリ協定に定める目標などを踏まえ、2050年までのカーボンニュートラルの実現が地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律で明記されました。また、既に一定以上の温室効果ガスを排出する事業者に対し排出量を報告させ、国がとりまとめて公表をする制度が導入されていますが、かかる報告が原則デジタル化されることになりました。公布の日(2021年6月 2日)から1年以内の施行となっています。

また、プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律では、製品の設計からプラスチック廃棄物の処理までに関わる全ての主体によるプラスチック資源のリサイクルの取組みを促進するため、プラ製品の環境配慮設計に関する指針に即した環境配慮製品の認定制度、ワンウェイ(使い捨て)プラスチックの提供事業者(小売・サービス事業者など)が取り組むべき判断基準の策定、主務大臣の指導・助言、勧告・公表・処分、市町村による分別回収の推進等が盛り込まれ、公布の日(2021年6月11日)から1年以内に施行されます。

(11)成立しなかった法律案

政府提出法案のうち、入管法改正案と放送法改正案については、野党の反対も強く、強行採決には踏み切らずに成立しませんでした。入管法改正案では、難民認定申請が却下された外国人の長期収容が問題となる中、外国人の本国送還を容易にし、入管当局の権限を強化する内容でしたが、世論、国際社会からの批判を踏まえ、継続審議になりました。

放送法改正案では、NHKの受信料不払いの世帯への割増金の導入や、受信料引き下げの原資確保のための積立金制度の創設等が盛り込まれていましたが、こちらも総務省の官僚の接待問題もあり、継続審議となりました。

(12)議員立法(国民投票法改正等)

いわゆる「議員立法」には、議員が一定数以上で発議をするものと(国会法第56条第1項)(※)、委員会が所管事項について提出するものとがありますが(国会法第60条)、第204回国会では、前者では、2018年に提出された日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律が、後者では、文教科学委員会が提出したわいせつ教員を排除する教育職員等児童生徒性暴力等防止法が成立しました。

(※)衆議院では議員20人以上、参議院では議員10人以上の賛成が必要(但し、予算を伴う法律案を発議するには、衆議院では議員50人以上、参議院では議員20人以上の賛成が必要)。

国会トリビア ~改め文、束ね法~

立法に関連する「お作法」には様々なものがありますが、「改め文(かいめぶん)」と俗称される文書をご存じでしょうか。

国会に提出された法律案のうち、新しい法律案ではなく、既存の法律を改正する法律案をみると、「法律案・理由」と「新旧対照表」等が各省庁のホームページにでています。

この中の「法律案・理由」をみていただくと、「第○条中「●●●」を「×××」に改める。」と規定されており、これを「改め文(かいめぶん)」と呼んでいますが、実務上実際にこれを読むことはないと思います。河野太郎衆議院議員もブログで取り上げるなど、廃止すべきという議論も長らくありますが、いまだに廃止されていません。

 また、法律の「本数」についても、今国会では政府提出法案が63本と数えますが、法律が1本とはどういうことか疑問に思われたかもしれません。1つの法律案に複数の法律の改正が一緒になっているものを「束ね法」と言います。例えば、今年のデジタル改革関連法案の整備法では48の法律が改正されていました。ただ、どんな法律でも「束ね」られるわけではなく、特に内閣法制局では「束ね」ることについて関連性があるのかについて厳格な審査が行われます。

基準として、政府は「二つ以上の法律の改正を提案しようとする場合においては、一般に、法案に盛られた政策が統一的なものであり、その結果として法案の趣旨・目的が一つであると認められるとき、あるいは内容的に法案の条項が相互に関連して一つの体系を形作っていると認められるときは、一つの改正法案として提案することができると考えている」としています(吉川議員からの質問主意書への2016年2月12日答弁)。

「束ね法」については、国会審議が形骸化し、どの法律がどう改正されるのか国民に分かりづらくなるとの批判もあり、今国会の個人情報関係の改正が、整備法の中で「ひっそりと」行われていることは確かにわかりづらいところです。ただ、提出できる法律案の数に現実的には制約がある以上、「束ね法」ができなくなると、更に法律改正等が難しくなってしまい、それはまた困るところです。

「国会にかかる費用1日3億円」との報道もあり、個別分野のルール変更は大事ですが、効率的に社会が必要とする「ルールメイキング」を可能とする法律改正等の仕組み自体の変更も議論していくことが必要です。

政省令等の改正トピック

(1)政令改正

上述した取引透明化法では、デジタルプラットフォームのうち、具体的な規制対象となるものは、特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律第四条第一項の事業の区分及び規模を定める政令で指定され、現在はオンラインモールとアプリのみが対象として指定されていますが、今後、デジタル広告についても規制対象として追加することが示され、政府での検討が進んでおり(2021年6月18日成長戦略実行計画)、今後の動向が注目されます。

(2)規制のサンドボックス制度、グレーゾーン解消制度等

新規事業にあたり、法令解釈が明らかでない場合や規制の特例がなければ新規事業ができない場合等に備え、規制のサンドボックス制度、グレーゾーン解消制度、新事業特例制度、ノーアクションレターがあり、読者のみなさまも検討をされたことがあるかもしれません。

なお、各制度の詳細は、
・経済産業省「グレーゾーン解消制度・プロジェクト型「規制のサンドボックス」・新事業特例制度」
・『ルールメイキングの戦略と実務』(官澤康平・南知果・徐東輝・松田大輝 編著、株式会社商事法務、2021年)
に説明があります。

2021年でこれまでに公表されている事例では、規制のサンドボックス制度2件、グレーゾーン解消制度23件、新事業特例制度2件(回答ベース)がありました。

規制のサンドボックス制度の利用事例は、ロボットを用いた無人カフェの営業の実証、駅改札内におけるOTC販売機を用いた一般用医薬品販売の実証でした。グレーゾーン解消制度では、キックボードが道路交通法上の「軽車両」に該当しないとされたもの、宿泊サブスクリプション事業が旅館業に該当すると判断されたもの、保険薬局による服薬サポートアプリのインストールサポートが保険医療機関及び保険療養担当規則における特定の保険薬局への誘導の禁止に抵触しないと判断されたもの等がありました。新事業特例制度の事例としては、電動キックボードを利用する場合のヘルメットの着用義務の免除に関するもの等がありました。

これらの新規事業等に関する制度を使い、その後にルールの変更が実現した事例は過去にもあります。上記の中では、電動キックボードのシェアリングについては、これらの各種の制度を使いながら実証実験が各地で行われ、着々と規制緩和に向けた活動がされており、道路交通法を所管する警察庁も規制緩和に向けて動いています。

これらの制度を通じたルールの明確化、ルール変更は、件数・関係する法令等としては決して多くはありません。いずれの制度もメリット・デメリットがあり、どのような対応をとるのがよいかは個別事案ごとに大きく異なりますので、先例も参考にしていただけたら幸いです。

終わりに

2021年の「ルールメイキング」いかがでしたでしょうか。個別の法律の内容には立ち入れませんでしたが、今の時代の課題に必要とされる新型コロナウイルス対応、デジタル化などの法案が審議されました。2022年の通常国会に向けて、各省庁や国会議員は現在、法案提出に向けた準備を進めているところです。

最後に、法律については、国会の審議を経て制定されるため、政省令等のようなパブリックコメントの手続きがありません。しかし、個別の法律について、限られた会期の国会の場での審議だけでは実務上の課題が全て議論されるわけではありません。

業界団体等へのヒアリングは法律案の国会提出前に行われていることが多いものの、法律の条文自体は、パブリックコメントにかかわらず、成立した後に、実務上の課題が出てくることも散見され、条文の射程、解釈、実務上の課題等については、政省令等と同様、パブリックコメントや任意のヒアリング等での実務の意見を踏まえて「ルールメイキング」が行われていくことを期待したいところです。

最後に、本記事では「ルールメイキング」を取り上げましたが、事業を行う上では、「ルールメイキング」に正面から取り組むのが適切かどうか自体の慎重な検討が必要なことをご留意いただけたら幸いです。

参考文献

内閣法制局ウェブサイト「最近の法律・条約」

内閣官房ウェブサイト「第204回 通常国会 」

法務省ウェブサイト「『民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する中間試案」(令和3年2月19日)の取りまとめ』」

法務省ウェブサイト「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案の補足説明」

時事通信社「民事裁判手続き、全面IT化 提訴から判決までオンラインで―法制審部会が中間試案」

総務省ウェブサイト「国会提出法案」

消費者庁ウェブサイト「国会提出法案」

日経ESG「バーチャルオンリー株主総会が解禁 Zホールディングスが2022年実施へ 」

文部科学省「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部を改正する法律」

文部科学省「国立大学法人法の一部を改正する法律」

環境省「地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案の閣議決定について」

環境省「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案の閣議決定について」

出入国在留管理庁「国会提出法案」

衆議院「議案審議経過情報」

日本経済新聞「国会にかかる費用1日3億円 民主主義の必要経費とは」

内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2021」

首相官邸「第24回 デジタル市場競争会議 ワーキンググループ 配布資料」

経済産業省「グレーゾーン解消制度の活用事例」

経済産業省「新事業特例制度の活用事例」

TMI総合法律事務所「【モビリティブログ】電動キックボードの規制緩和の現在地と将来の展望」

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