意匠とは?
デザインとの関係・登録の要件・
2020年施行の新たな意匠の例などを
分かりやすく解説!

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インハウスハブ東京法律事務所弁理士
大阪大学大学院基礎工学研究科博士後期課程修了 2007~17年 特許庁審査第四部にて、情報処理(情報セキュリティ)、インターフェース分野の特許審査に従事。2017年弁理士登録。特許事務所勤務を経て2020年4月より現職。2019~22年 特許庁審判部における法律相談などの業務を弁護士とともに携わる。専門分野は、ソフトウェア、ビジネスモデル、セキュリティ、AI、UIなど。
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この記事のまとめ

意匠(いしょう)」とは、物品などの形状等に関するデザインのことです。「意匠」が保護されるためには、意匠法で定義された「意匠」の要件を満たす必要があります。しかし、全ての「意匠」が意匠登録されるわけではなく、登録要件についての審査を通過しなければなりません。

また、従来は、意匠法の保護対象は、「物品」に限られていましたが、2020年施行の意匠法改正により、新たに「画像」、「建築物」、「内装」のデザインについても意匠登録できるようになり、非常に関心が高まっています。

この記事では、「意匠」について、デザインとの関係、登録の要件、2020年施行の新たな意匠の例などについて分かりやすく解説します。

ヒー

意匠って物の形やデザインのことですよね?でもどんなものが意匠として認められるのかよく分かりません。

ムートン

意匠法の保護対象は物品だけでなく、画像・建築物・内装などに広がっています。意匠登録の要件についても、簡単に解説していきましょう。

※この記事は、2023年9月22日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

意匠とは

意匠(いしょう)」とは、意匠法において、以下のように定義されています(意匠法2条1項)。

意匠法 第2条
1この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(以下「形状等」という。)、建築物(建築物の部分を含む。以下同じ。)の形状等又は画像……であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。

「意匠法」e-gov法令検索 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

「意匠」の定義は、一般的に、次の4つの要件に分節して理解することができます。

① 物品、建築物又は画像(物品等)と認められるものであること
② 物品等自体の形状等であること
③ 視覚に訴えるものであること
④ 視覚を通じて美感を起こさせるものであること

この「意匠」の要件を満たすものが、意匠法の保護対象になります。以下、各要件について詳しく説明します。

①物品、建築物又は画像(物品等)と認められるものであること

 「意匠」は、物品建築物画像についての創作でなければなりません。

特許庁ウェブサイト「令和元年意匠法改正特設サイト」

物品

意匠法上の物品とは、有体物のうち、市場で流通する動産をいいます。

<物品と認められないものの例>
✅ 動産でないもの(例:土地などの不動産)
✅ 固体以外のもの(例:定型性のない気体・液体や、電気・光・熱などの無体物)
✅ 特定の形状等を有しない粉状物および粉状物の集合したもの(角砂糖は、固定した形状等を有するので、物品と認められる)
✅ 物品の一部であるもの(例:靴下のかかと ※靴下のかかとのみでは独立の製品として取引されることはない)

建築物

意匠法の保護対象となる建築物は、次の2つの要件を満たす必要があります。

✅ 土地の定着物であること
   土地:平面、斜面等を問わず、海底、湖底等の水底を含む。
   定着物:継続的に土地に固定して使用されるものをいう。
✅ 人工構造物であること(土木構造物を含む)
   構造物:通常の使用状態において、内部の形状等が視認されるものについては、内部の形状等を含む。

意匠法における建築物に該当しないものとしては以下のものがあります。ただし、これらに該当するものであっても、意匠法における物品に該当するものは、意匠法上の「意匠」として、意匠登録の対象になり得ます

<土地の定着物であることの要件を満たさないものの例>
✅ 土地に定着させ得るが、動産として取引されるもの(例:庭園灯)
✅ 一時的に設営される仮設のもの(例:仮設テント)
✅ 不動産等の登記の対象となり得るが、動産として取引されるもの(例:船舶、航空機、キャンピングカー)

<人工構造物であることの要件を満たさないものの例>
✅ 人工的なものでないもの(例:自然の山、自然の岩、自然の樹木など)
✅ 人の手が加えられているものの、自然物や地形等を意匠の主たる要素としているもの(例:スキーゲレンデ、ゴルフコース)
✅土地そのもの又は土地を造成したにすぎないもの

意匠登録の対象とされる建築物は、建築基準法の定義等よりも広く、建設される物体を指します。例えば、オフィスビルや住宅、ホテル、競技場、各種商業施設、駅舎、空港、橋りょう、電波塔などがあります。

特許庁「意匠登録出願の基礎(建築物・内装)」

画像

意匠法の保護対象となる画像は、操作画像表示画像です。いずれにも該当しない、映画やゲーム等のコンテンツは、意匠法では保護されません(著作権法で保護されることとなります)

操作画像:機器の操作の用に供される画像(機器を操作するときに用いられる画像)

<操作画像に該当する画像の例>

表示画像:機器がその機能を発揮した結果として表示される画像(機器の機能を用いる際に表示される画像)

<表示画像に該当する画像の例>

特許庁「意匠審査基準」第Ⅳ部 第1章 画像を含む意匠

②物品等自体の形状等であること

「意匠」の形状等は、物品等自体のものでなければなりません。物品等そのものが有する特徴または性質から生じる形状等で、その形状を維持することが可能なものをいいます。

<物品等自体の形状等でないものの例>
カップに入ったカフェラテで、泡立てたミルクとコーヒーにより表面に犬の模様が描かれたもの
(※そのままの形状を保ったまま流通等がされない)

特許庁「意匠審査基準」第Ⅲ部 第1章 工業上利用することができる意匠

③視覚に訴えるものであること

「意匠」は人の肉眼によって認識することができるものでなければなりません。

<視覚に訴えるものと認められない例>
✅ 微細な粉状物(肉眼によってその形状等が認識できない)
✅ 物品の一部について意匠登録を受けようとする意匠において、「意匠登録を受けようとする部分」の全体の形状等が、意匠に係る物品の通常の取引状態において、外部から視認できないもの

④視覚を通じて美感を起こさせるものであること

意匠法2条1項に規定する美感は、何らかの美感を起こすものであればよく、美術品のような高尚な美は要求されません

<視覚を通じて美感を起こさせるものと認められないものの例>
✅ 機能、作用効果を主目的としたもので、美感をほとんど起こさせないもの
✅ 意匠としてまとまりがなく、煩雑な感じを与えるだけで美感をほとんど起こさせないもの

意匠とデザインの関係

意匠法で保護されるのは、オシャレで美しいデザインだけというイメージはありませんか?

上記でご説明したように、「意匠」は、意匠法において、「物品若しくは建築物の形状等又は画像であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの」(意匠法2条1項)と定義されています。「意匠」と「デザイン」は、同じような文脈で使用されますが、意匠は「物品などの外観(見た目)」であって、美しさを追求したデザインだけを指すものではありません

意匠法では、外観に特徴が表れた、機能と密接に結びついた形態も保護されます。簡単に言えば、「意匠」は、法的に保護される形態に焦点を当てたデザインであるといえるでしょう。

特許庁「特許・商標専門家のための意匠制度説明会」テキスト

意匠登録の要件と効果

意匠権を取得するためには、特許庁に意匠登録の出願(申請)をし、審査官による審査にパスしなければなりません。意匠法上、定められた要件を満たしたものだけが、意匠登録を受けることができます。

意匠登録の主な要件

意匠権を取得するためには、以下の要件を全て満たす必要があります。審査官がこれらの要件について審査し、合格したものだけが意匠登録されます。

意匠登録の主な要件

工業上の利用可能性(意匠法3条1項柱書)
新規性|今までにない新しいデザインであること(意匠法3条1項各号)
創作非容易性|当業者が容易に創作できるデザインでないこと(意匠法3条2項)
先に出願された意匠の一部と同一または類似でないこと(意匠法3条の2)
不登録事由に該当しないこと(意匠法5条)
一意匠一出願|デザインごとに出願していること(意匠法7条)
先願|他人よりも早く出願したこと(意匠法9条)

意匠登録の効果

意匠権を取得すると、意匠権者は、業として登録意匠、およびこれに類似する意匠を独占的に実施できるようになります(意匠法23条)。他人が無断で登録意匠を使用した場合、意匠権者は、裁判所に、使用差し止め(意匠法37条)や、損害賠償(民法709条、意匠法39条)を請求することができます。

なお、ここでいう「業として」とは、広く「事業として」の意味です。営利目的に限らず、公共事業・公益事業も含まれます。

また、「実施」については、以下のように定義されています(意匠法2条2項各号)。

意匠の種類「実施」の内容
物品(1号)製造、使用、譲渡、貸渡し、輸出、輸入、譲渡・貸渡しの申出をする行為
※「輸入」には、例えば、インターネットショッピングにより、外国の事業者が日本国内の個人に対し、意匠権を侵害する商品を直接送付して販売するような場合も含みます。
建築物(2号)建築物の建築、使用、譲渡、貸渡し、譲渡・貸渡しの申出をする行為
画像(3号)・画像の作成、使用、電気通信回線(インターネットなど)を通じた提供、その申出をする行為
・画像を記録した記録媒体または内蔵する機器の譲渡、貸渡し、輸出、輸入、譲渡・貸渡しの申出をする行為

意匠登録の出願

意匠登録の出願を行うには、願書」と「図面」を作成し、特許庁へ提出する必要があります。審査官は、「願書」と「図面」から、意匠登録を受けようとする「意匠」を特定し、登録要件を満たすか審査します。

願書には、出願人と創作者の氏名などのほか、「意匠に係る物品」や、必要な場合には、「意匠に係る物品の説明」、「意匠の説明」を記載します。
図面には、意匠を特定するために必要な数の図を記載しなければなりませんが、文章での説明は必要ありません。

改正意匠法に基づく新たな保護対象(画像・建築物・内装)の意匠登録事例

2020年施行の意匠法改正以前では、意匠法の保護対象は「物品」に限られ、不動産や固体以外のものなど、「物品」でないものは保護されませんでした。改正により保護対象が拡充され、新たに「画像」、「建築物」、「内装」のデザインについても、意匠登録できるようになり、非常に高い関心が示されています。

ここでは、新たに保護対象となった「画像」、「建築物」、「内装」について、意匠登録された事例を紹介します。

画像の意匠


意匠登録第1677889号 アイコン用画像(PDF:3,234KB)

意匠登録第1684742号 経路誘導用画像(PDF:3,234KB)

意匠登録第1687842号 宿泊施設予約画面のクーポン取得用画像(PDF:3,234KB)

意匠登録第1687282号 音量調整用画像(PDF:3,234KB)
特許庁ウェブサイト「改正意匠法に基づく新たな保護対象(画像・建築物・内装)の意匠登録事例について」 画像の意匠登録事例

建築物の意匠


意匠登録第1671773号 商業用建築物(PDF:4,641KB)

意匠登録第1673701号 マンション(PDF:4,641KB)

意匠登録第1679948号 住宅(PDF:4,641KB)

意匠登録第1680025号  集合住宅(PDF:4,641KB)
特許庁ウェブサイト「改正意匠法に基づく新たな保護対象(画像・建築物・内装)の意匠登録事例について」 建築物の意匠登録事例

内装の意匠


意匠登録第1671153号 回転寿司店の内装(PDF:11,225KB)

意匠登録第1673700号 オフィスの執務室の内装(PDF:11,225KB)

意匠登録第1671961号 マンション共用部の内装(PDF:11,225KB)

意匠登録第1690192号 化粧品売り場の内装(PDF:11,225KB)
特許庁ウェブサイト「改正意匠法に基づく新たな保護対象(画像・建築物・内装)の意匠登録事例について」 内装の意匠登録事例
ムートン

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参考文献

特許庁ウェブサイト「意匠審査基準」

特許庁ウェブサイト「改正意匠法に基づく新たな保護対象(画像・建築物・内装)の意匠登録事例について」

特許庁ウェブサイト「令和元年意匠法改正特設サイト」

特許庁「意匠登録出願の基礎(建築物・内装)」

特許庁「特許・商標専門家のための意匠制度説明会」テキスト

小谷悦司=小松陽一郎=伊原友己編「意匠・デザインの法律相談Ⅰ」青林書院、2021年

茶園成樹=上野達弘 編著「デザイン保護法」勁草書房、2022年