危険物とは?
種類・法規制・必要な資格・
取り扱いに関する注意点などを
分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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「危険物」とは、何らかの対象に危険を及ぼすおそれのある物をいいます。日本の法律では、消防法において危険物が定義されています。
消防法では、危険物の取り扱いについてさまざまな法規制が定められています。危険物の貯蔵・管理などを行う事業者は、消防法の規制を遵守しなければなりません。
この記事では危険物について、種類・法規制・取り扱いに関する注意点などを解説します。
※この記事は、2024年4月26日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- 法…消防法
- 危険物令…危険物の規制に関する政令
- 危険物規則…危険物の規制に関する規則
目次
危険物とは
「危険物」とは、何らかの対象に危険を及ぼすおそれのある物をいいます。
危険物については、火災などに起因して爆発その他の現象が発生し、周囲の人々に危害が及ぶおそれがあります。そのため、主に消防法によって危険物の取り扱いが規制されています。
危険物の種類・該当物
消防法では、危険物に当たる物品が列挙されています(法2条7項、別表第一、危険物令1条)。
危険物は、第一類から第六類までの6種類に分類されています。各類に該当する物品は、以下のとおりです。
類別 | 性質 | 性質等の概要 | 品名 |
---|---|---|---|
第一類 | 酸化性固体 | 固体であって、そのもの自体は燃焼しないが、他の物質を強く酸化させる性質を有し、可燃物と混合したとき、熱、衝撃、摩擦によって分解し、極めて激しい燃焼をおこさせる危険性を有するもの。 | ① 塩素酸塩類 ② 過塩素酸塩類 ③ 無機過酸化物 ④ 亜塩素酸塩類 ⑤ 臭素酸塩類 ⑥ 硝酸塩類 ⑦ よう素酸塩類 ⑧ 過マンガン酸塩類 ⑨ 重クロム酸塩類 ⑩ 過よう素酸塩類 ⑪ 過よう素酸 ⑫ クロム、鉛またはよう素の酸化物 ⑬ 亜硝酸塩類 ⑭ 次亜塩素酸塩類 ⑮ 塩素化イソシアヌル酸 ⑯ ペルオキソ二硫酸塩類 ⑰ ペルオキソほう酸塩類 ⑱ 炭酸ナトリウム過酸化水素付加物 ⑲ ①~⑱のいずれかを含有するもの |
第二類 | 可燃性固体 | 火炎によって着火しやすい固体または比較的低温(40度未満)で引火しやすい固体であり、出火しやすく、かつ、燃焼が速く、消火することが困難であるもの。 | ① 硫化りん ② 赤りん ③ 硫黄 ④ 鉄粉 ⑤ 金属粉 ⑥ マグネシウム ⑦ ①~⑦のいずれかを含有するもの ⑧ 引火性固体 |
第三類 | 自然発火性物質および禁水性物質 | 空気にさらされることにより自然に発火する危険性を有し、または水と接触して発火し若しくは可燃性ガスを発生するもの。 | ① カリウム ② ナトリウム ③ アルキルアルミニウム ④ アルキルリチウム ⑤ 黄りん ⑥ アルカリ金属(カリウムおよびナトリウムを除く。)およびアルカリ土類金属 ⑦ 有機金属化合物(アルキルアルミニウムおよびアルキルリチウムを除く。) ⑧ 金属の水素化物 ⑨ 金属のりん化物 ⑩ カルシウムまたはアルミニウムの炭化物 ⑪ 塩素化けい素化合物 ⑫ ①~⑪のいずれかを含有するもの |
第四類 | 引火性液体 | 液体であって、引火性を有するもの。引火点250度未満のもの。 | ① 特殊引火物 ② 第一石油類 ③ アルコール類 ④ 第二石油類 ⑤ 第三石油類 ⑥ 第四石油類 ⑦ 動植物油類 |
第五類 | 自己反応性物質 | 固体または液体であって、加熱分解などにより、比較的低い温度で多量の熱を発生し、または爆発的に反応が進行するもの。 | ① 有機過酸化物 ② 硝酸エステル類 ③ ニトロ化合物 ④ ニトロソ化合物 ⑤ アゾ化合物 ⑥ ジアゾ化合物 ⑦ ヒドラジンの誘導体 ⑧ ヒドロキシルアミン ⑨ ヒドロキシルアミン塩類 ⑩ 金属のアジ化物 ⑪ 硝酸グアニジン ⑬ 一―アリルオキシ―二・三―エポキシプロパン ⑭ 四―メチリデンオキセタン―二―オン ⑮ ①~⑮のいずれかを含有するもの |
第六類 | 酸化性液体 | 液体であって、そのもの自体は燃焼しないが、混在する他の可燃物の燃焼を促進する性質を有するもの。 | ① 過塩素酸 ② 過酸化水素 ③ 硝酸 ④ ハロゲン間化合物 ⑤ ①~④のいずれかを含有するもの |
危険物の取り扱いに関する主な法規制
危険物の取り扱いに関するルールは、消防法において定められています。
消防法における危険物の取り扱いに関する主な規制は、以下のとおりです。
① 危険物の貯蔵・取扱場所
② 危険物の製造所・貯蔵所・取扱所の設置許可
③ 危険物の製造所・貯蔵所・取扱所が満たすべき基準
④ 危険物保安監督者・危険物取扱者
⑤ 危険物の運搬に関する基準
危険物の貯蔵・取扱場所
指定数量以上の危険物は、原則として貯蔵所以外の場所で貯蔵してはならず、また製造所・貯蔵所・取扱所以外の所で取り扱ってはなりません(法10条1項本文)。
危険物の品名に応じた指定数量は、危険物の規制に関する施行令別表第三で定められています。
ただし例外的に、所轄消防長または消防署長の承認を受ければ、10日以内の期間に限って指定数量以上の危険物を仮に貯蔵し、または取り扱うことができます(同項但し書き)。
危険物の製造所・貯蔵所・取扱所の設置許可
危険物の製造所・貯蔵所・取扱所を設置しようとする者は、その区分に応じて市町村長、都道府県知事または総務大臣の許可を受けなければなりません(法11条1項)。
危険物の製造所・貯蔵所・取扱所が満たすべき基準
危険物の製造所・貯蔵所・取扱所の設置許可は、その位置・構造・設備が技術上の基準に適合し、かつその場所における危険物の貯蔵または取り扱いが、公共の安全の維持または災害の発生の防止に支障を及ぼすおそれがないものであるときに与えられます(法11条2項)。
位置・構造・設備に関する技術上の基準は、製造所・貯蔵所・取扱所の区分に応じて、危険物の規制に関する施行令10条以下で詳細に定められています。
製造所・貯蔵所・取扱所の所有者、管理者または占有者は、その位置・構造・設備が技術上の基準に適合するように維持しなければなりません(法12条1項)。
危険物保安監督者・危険物取扱者
製造所・貯蔵所・取扱所の所有者、管理者または占有者は、原則として危険物保安監督者を定めて、危険物の取扱作業に関する保安の監督をさせなければなりません(法13条1項)。
ただし例外的に、以下の製造所・貯蔵所・取扱所については、危険物保安監督者の指定が免除されています(危険物令31条の2)。
① 屋内貯蔵所または地下タンク貯蔵所で、指定数量の倍数が30以下のもの(引火点が40度以上の第四類の危険物のみを貯蔵し、または取り扱うものに限る。)
② 引火点が40度以上の第四類の危険物のみを貯蔵し、または取り扱う屋内タンク貯蔵所または簡易タンク貯蔵所
③ 移動タンク貯蔵所
④ 指定数量の倍数が30以下の屋外貯蔵所
⑤ 引火点が40度以上の第四類の危険物のみを取り扱う第一種販売取扱所または第二種販売取扱所
⑥ 指定数量の倍数が30以下の一般取扱所(引火点が40度以上の第四類の危険物のみを取り扱うものに限る。)で次に掲げるもの
・ボイラー、バーナーその他これらに類する装置で危険物を消費するもの
・危険物を容器に詰め替えるもの
危険物保安監督者は、甲種危険物取扱者または乙種危険物取扱者で、6カ月以上危険物取り扱いの実務経験を有する者から選任しなければなりません(法13条1項)。
甲種危険物取扱者は全ての種類の危険物を取り扱うことができますが、乙種危険物取扱者は免状で指定される種類の危険物のみを取り扱うことができます(危険物規則49条)。
乙種第四類危険物取扱者とは
危険物保安監督者となることができる危険物取扱者の資格の中では、取得難易度とニーズのバランスが良い「乙種第四類危険物取扱者」が人気を集めています。
無制限に危険物を取り扱うことができる甲種危険物取扱者は、大学における学科の履修や実務経験などの受験資格が設けられており、取得難易度が高いです。
これに対して、乙種危険物取扱者は誰でも受験できます。その中でも、石油などの引火性液体を取り扱うことのできる「第四類」の資格は、幅広い職種への就職などに繋がります。
乙種第四類危険物取扱者の資格取得が必要な職種の例
乙種第四類危険物取扱者の資格取得が求められる職種としては、以下の例が挙げられます。
・ガソリンスタンドの職員
・石油会社の倉庫職員
・タンクローリーのドライバー
・化学メーカーの職員
など
危険物の運搬に関する基準
危険物の運搬は、その容器・積載方法・運搬方法について、技術上の基準に従って行われなければなりません(法16条)。
危険物の運搬に関する技術上の基準は、危険物令28条以下において定められています。
危険物の取り扱いに関する注意点
事業者が危険物を取り扱う際には、消防法の規定が適用されること、およびその規定内容をよく理解する必要があります。
まずは、危険物に当たる物品の種類を把握した上で、自社がどのような危険物を取り扱っているか確認することが大切です。
そして、危険物の製造・貯蔵・取り扱いを行う際には、位置・構造・設備が技術上の基準に適合する製造所・貯蔵所・取扱所において、危険物保安監督者を定めて保安監督をさせるなど、消防法による規制の遵守を徹底しましょう。
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