【2025年5月施行】
セキュリティ・クリアランス制度とは?
目的・必要性・概要・
企業の対応のポイントなどを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

セキュリティ・クリアランス制度」とは、政府が保有する安全保障上重要な情報として指定された情報にアクセスする必要がある者に対し、その者の信頼性を調査・確認した上でアクセスを認める制度です。

従来は「特定秘密保護法」によってセキュリティ・クリアランス制度が定められていましたが、2024年の国会において「重要経済安保情報保護法」が成立し、新制度が導入されることが予定されています。この動きは、安全保障の必要性が高まっている国際情勢と、企業からのニーズを背景とするものです。

重要経済安保情報保護法では、政府が指定する「重要経済安保情報」を対象としたセキュリティ・クリアランス制度が定められています。
適合事業者は、その信頼性について政府の調査・確認を受けた後、行政機関と締結する契約に基づいて重要経済安保情報の開示を受けられます。また、適合事業者において重要経済安保情報を取り扱う者(従業者)に対しては、政府が適性評価を実施するものとされています。
重要経済安保情報を流出させた場合には、事業者と従業者に厳しい罰則が科されます。

この記事ではセキュリティ・クリアランス制度について、目的・必要性や期待される効果、企業の対応のポイントなどを解説します。

ヒー

「セキュリティ・クリアランス制度が始まったら、取得を検討したい」という相談がありました。どのような制度になる予定でしょうか?

ムートン

セキュリティ・クリアランス制度は、国家の安全保障上重要な情報にアクセスできる事業者や人を限定するための制度です。現在検討されている新たな制度について解説していきますね。

※この記事は、2024年4月16日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。(2024年5月17日追記)

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • 特定秘密保護法…特定秘密の保護に関する法律
  • 重要経済安保情報保護法…重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律

セキュリティ・クリアランス制度とは

セキュリティ・クリアランス制度」とは、政府が保有する安全保障上重要な情報として指定された情報にアクセスする必要がある者に対し、その者の信頼性を調査・確認した上でアクセスを認める制度です。

日本においては、従来は「特定秘密保護法」によってセキュリティ・クリアランス制度が定められていました。そして、2024年の通常国会において成立した「重要経済安保情報保護法」(令和6年法律第27号、2025年5月16日施行)により、さらにセキュリティ・クリアランス制度の整備が進む見通しとなっています。

セキュリティ・クリアランス制度の必要性・メリット

セキュリティ・クリアランス制度を整備する動きの背景には、安全保障の必要性が高まっている国際情勢と、企業からのニーズがあります。

安全保障に関しては、防衛・外交などの伝統的な領域から経済・技術の分野にも拡大し、軍事技術・非軍事技術の境目も曖昧になっている状況です。
こうした状況において、機密性の高い国家情報を適切に管理・利用する能力を高めることは、非常に重要といえます。

企業においては、同盟国等の政府調達などに関する国際共同開発へ参加する際、セキュリティ・クリアランスを信頼の証として活用したいというニーズが存在します。
確立された制度に基づくセキュリティ・クリアランスを保有していれば、同盟国等における機密情報の開示を受けることができ、国際共同プロジェクトに関する具体的な検討・参加の機会が広がることが期待されます。

ヒー

セキュリティ・クリアランスが付与されれば、自社や従業員の信頼性が保障されるようなイメージがあります。

ムートン

実務上も下の図のように、国家間で相手国のセキュリティ・クリアランスを有する者のみに安全保障や研究開発の情報を開示するようなケースが見られます。

内閣官房「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案」

アメリカのセキュリティ・クリアランス制度

アメリカでも、セキュリティ・クリアランス制度が導入されています。

アメリカにおいて政府の機密情報(CI:Classified Information)を取り扱うことができるのは、身上調査を経て行政機関の長から適性を認定された者(=セキュリティ・クリアランスを保有している者)のみです。
また、機密情報は3段階(Top Secret, Secret, Confidentialに区別されており、セキュリティ・クリアランスの資格段階によってアクセスできる機密情報のレベルが異なります。

特定秘密の保護に関する制度との違い

日本では、すでに特定秘密保護法により、セキュリティ・クリアランス制度に相当する制度が導入されています。

特定秘密とは、行政機関の所掌事務に関する非公知情報のうち、日本の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要であるものとして、行政機関の長が指定したものです(特定秘密保護法3条1項)。
特定秘密については保護措置を講じた上で(同法5条)、その提供や取り扱いに関して厳格なルールが設けられています(同条6条以下)。

特定秘密の保護に関する制度は、諸外国との情報保護協定において、Top SecretおよびSecretに相当する機密情報の保全枠組みと位置づけられ、国際的に通用しています。
そのため、今回のセキュリティ・クリアランス制度の整備においても、従来の特定秘密の保護に関する制度の枠組みをおおむね踏襲する形で新制度が構築される予定です。

その一方で今回のセキュリティ・クリアランス制度では、

Confidential級の機密情報にも対応する
調査機能を一元化して政府全体で統一的な対応を行う
・調査の共通化を通じてセキュリティ・クリアランスを受ける者の利便性を向上させる

などを目的に、既存の制度をアップデートする改正が行われています。

特に、特定秘密としての保護は防衛・外交・特定有害活動の防止・テロリズムの防止の4分野に限定されているのに対して、新制度では経済安全保障に関する情報も保護の対象となる点が注目されます。

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