【2025年1月・4月施行】
宅地建物取引業法施行規則改正のポイント・
囲い込み防止・業者票の記載事項などを
分かりやすく解説!
- この記事のまとめ
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2025年1月1日と4月1日の2回に分けて、宅地建物取引業法施行規則の改正が施行されました。主な改正事項は以下のとおりです。
<2025年1月1日施行>
・「囲い込み」防止のためのレインズ登録事項の追加<2025年4月1日施行>
・宅地建物取引業免許申請の添付書類の変更
・宅地建物取引業者名簿の登載事項の変更
・宅地建物取引業者の従業者名簿の生年月日・住所・性別を削除
・宅地建物取引業者票の様式変更
などこの記事では、2025年1月と4月に施行された宅地建物取引業法施行規則改正のポイントを解説します。
※この記事は、2025年4月11日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- 規則…宅地建物取引業法施行規則の一部を改正する省令(国土交通省令第70号)による改正後の宅地建物取引業法施行規則
- 旧規則…宅地建物取引業法施行規則の一部を改正する省令(国土交通省令第70号)による改正前の宅地建物取引業法施行規則
- 法…宅地建物取引業法
目次
【2025年1月・4月施行】宅地建物取引業法施行規則改正とは
2025年1月1日と4月1日の2回に分けて、宅地建物取引業法施行規則の改正が施行されました。
今回の宅地建物取引業法施行規則改正には、レインズ登録事項の追加や宅地建物取引業者票の様式変更などの重要な変更が含まれています。
宅地建物取引業者は、改正内容を十分に把握しておきましょう。
公布日・施行日
宅地建物取引業法施行規則改正の公布日および施行日は、以下のとおりです。
- 公布日・施行日
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公布日|2024年6月28日
施行日|2025年1月1日、4月1日
※レインズ登録事項の追加に関する改正の施行日は2025年1月1日、その他の改正の施行日は2025年4月1日
【2025年1月・4月施行】宅地建物取引業法施行規則改正の主な変更点一覧
2025年1月1日および4月1日に施行された宅地建物取引業法施行規則改正による主な変更点は、以下のとおりです。
<2025年1月1日施行>
・「囲い込み」防止のためのレインズ登録事項の追加
<2025年4月1日施行>
・宅地建物取引業免許申請の添付書類の変更
・宅地建物取引業者名簿の登載事項の変更
・宅地建物取引業者の従業者名簿の生年月日・住所・性別を削除
・宅地建物取引業者票の様式変更
など
【2025年1月】「囲い込み」防止のためのレインズ登録事項の追加
宅地建物取引業者が専任媒介契約を締結したときは、契約締結日から7営業日以内(専属専任媒介契約の場合は5営業日以内)に、目的物である宅地または建物に関する一定の事項を指定流通機構(レインズ)に登録しなければなりません(法34条の2第5項、規則15条の10~15条の12)。
レインズへの登録により、他の宅地建物取引業者がデータベースを通じてその物件を探すことができるようになり、買主が見つかりやすくなります。
2025年1月1日に施行された宅地建物取引業法施行規則改正により、レインズへの登録事項として「当該宅地または建物の取引の申込みの受付に関する状況」が追加されました(規則15条の11第2号)。
改正前 | 改正後 |
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① 所在 ② 規模 ③ 形質 ④ 売買すべき価額 ⑤ 当該宅地または建物に係る都市計画法その他の法令に基づく制限で主要なもの ⑥ 当該宅地または建物の評価額(交換に関する専任売買契約の場合のみ) ⑦ 専属専任媒介契約である場合は、その旨 | ①~⑦ 改正前と同じ ⑧ 当該宅地または建物の取引の申込みの受付に関する状況 |
※下線・太字は今回の改正により変更された事項
レインズ登録事項が追加されたのは、宅地建物取引業者による「囲い込み」を規制するためです。
宅地建物取引業者は、売主と買主の双方と媒介契約を締結し、両方から仲介手数料を得る「両手仲介」を好む傾向にあります。
両手仲介を行うために、宅地建物取引業者がレインズ上で事実に反して、物件の紹介を停止している旨や購入申込みを受けている旨を表示するなどの例がよく見られました。

このような宅地建物取引業者の「囲い込み」は、売主から有利な条件による取引機会を奪う不当なものです。
宅地建物取引業者の「囲い込み」を防ぐため、今回の改正により、レインズに「当該宅地または建物の取引の申込みの受付に関する状況」を登録することが法令上義務付けられました。
レインズへの登録義務に違反した宅地建物取引業者は、法令上の根拠に基づく行政処分(指示処分・業務停止処分)の対象になります(法65条・66条)。
そのため、上記のレインズ登録事項の追加は、宅地建物取引業者による「囲い込み」への抑止力になると考えられます。
また、売主も物件の取引状況を確認しやすくなるよう、宅建業者がレインズに登録した際に売主に交付する「登録証明書」に2次元コードが記載されるようになりました。
【2025年4月】宅地建物取引業免許申請の添付書類の変更
宅地建物取引業を営もうとする者は、国土交通大臣または都道府県知事の免許を受けなければなりません(法3条1項)。
- 宅地建物取引業を営む際に必要となる免許
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<2以上の都道府県の区域内に事務所を設置する場合>
国土交通大臣の免許<1の都道府県の区域内にのみ事務所を設置する場合>
事務所の所在地を管轄する都道府県知事の免許
宅地建物取引業の免許を受けようとする者は、国土交通大臣または都道府県知事に対して免許申請書を提出しなければなりません(法4条1項)。免許申請書には、法令所定の書類を添付する必要があります(法4条2項、規則1条の2)。
2025年4月1日に施行された宅地建物取引業法および同法施行規則の改正により、宅地建物取引業免許申請の添付書類が変更されました。
根拠規定が施行規則から法律へ移されただけのものを除き、実質的な変更点は下記の比較表のとおりです。
改正前 | 改正後 |
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① 宅地建物取引業経歴書 ② 欠格事由に該当しないことを誓約する書面 ③ 以下の者の略歴を記載した書類 ・役員、相談役および顧問ならびに事務所代表者である使用人(法人のみ) ・本人および事務所代表者である使用人(個人のみ) ・法定代理人(法定代理人が法人である場合は、その役員)(未成年者である個人のみ) ・事務所ごとに置かれる宅地建物取引士 ④ 事務所に法令所定の人数以上の宅地建物取引士を置いていることを証する書面 ⑤ 直前1年の事業年度の貸借対照表および損益計算書(法人のみ) ⑥ 資産の状況を示す書面(個人のみ) ⑦ 破産者でない旨の市区町村長の証明書(免許申請者と事務所代表者である使用人のもの) ⑧ 相談役と顧問の氏名・住所、5%以上の株式(持分)を有する者の氏名(名称)・住所・保有株式数(出資金額)を記載した書面 ⑨ 事務所を使用する権原に関する書面 ⑩ 事務所付近の地図および事務所の写真 ⑪ 宅地建物取引業に従事する者の名簿 ⑫ 法人の場合は法人税、個人の場合は所得税の直前1年の各年度における納付すべき額および納付済額を証する書面 ⑬ 登記事項証明書(法人のみ) ⑭ 法定代理人の登記事項証明書(未成年者である個人で、その法定代理人が法人の場合のみ) | ①~⑭ 改正前と同じ (③⑤⑥の規定は施行規則から法律へ移動。内容は変更無し) ⑮ 免許を受けようとする者(法人の場合はその役員)と事務所代表者である使用人の氏名・住所・電話番号その他の連絡先を記載した書面 |
※下線・太字は今回の改正により変更された事項
※免許申請者:個人の場合は本人(未成年者である場合は法定代理人、法人の場合は役員・相談役・顧問。
改正後は「免許を受けようとする者(法人の場合はその役員)と事務所代表者である使用人の氏名・住所・電話番号その他の連絡先を記載した書面」が免許申請書の添付書類に追加されています。
免許申請を審査する担当者が、申請者とスムーズに連絡をとることができるように配慮したものです。
【2025年4月】宅地建物取引業者名簿の登載事項の変更
国土交通大臣または都道府県知事は、宅地建物取引業者名簿に、免許を与えた宅地建物取引業者に関する一定の事項を登載しなければなりません(法8条2項、改正前の規則5条)。
2025年4月1日に施行された宅地建物取引業法および同法施行規則の改正により、宅地建物取引業者名簿の登載事項が変更されました。
根拠規定が施行規則から法律へ移されただけのものを除き、実質的な変更点は下記の比較表のとおりです。
改正前 | 改正後 |
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① 免許証番号および免許の年月日 ② 商号または名称 ③ 役員および事務所代表者である使用人の氏名(法人のみ) ④ 本人および事務所代表者である使用人の氏名(個人のみ) ⑤ 事務所の名称および所在地 ⑥ 取引一任代理等の認可を受けているときは、その旨および認可の年月日 ⑦ 指示処分または業務停止処分があったときは、その年月日および内容 ⑧ 宅地建物取引業以外の事業を行っているときは、その事業の種類 ⑨ 事務所ごとに置かれる宅地建物取引士の氏名 | ①~⑧ 改正前と同じ (⑦⑧の規定は施行規則から法律へ移動。内容は変更無し) (⑨は削除) |
※下線・太字は今回の改正により変更された事項
改正後は「事務所ごとに置かれる宅地建物取引士の氏名」が、宅地建物取引業者名簿の登載事項から削除されています。
宅地建物取引業者名簿は一般の人でも閲覧できるところ(法10条)、従業員に過ぎない宅地建物取引士のプライバシーの保護に配慮したものです。
【2025年4月】宅地建物取引業者の従業者名簿の生年月日・住所・性別を削除
宅地建物取引業者は、事務所ごとに従業者名簿を備え、従業者に関する一定の事項を記載しなければなりません(法48条3項、規則17条の2第1項)。
2025年4月1日に施行された宅地建物取引業法施行規則の改正により、宅地建物取引業者の従業者名簿の記載事項が下記の比較表のとおり変更されました。
改正前 | 改正後 |
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① 氏名 ② 従業者であることを証する証明書の番号 ③ 主たる職務内容 ④ 宅地建物取引士であるか否かの別 ⑤ 当該事務所の従業者となった年月日 ⑥ 当該事務所の従業者でなくなったときは、その年月日 ⑦ 生年月日 | ①~⑥ 改正前と同じ (⑦は削除) |
改正後は「生年月日」が従業者名簿の記載事項から削除されています。
さらに、従業者名簿は規則別記様式第8号の2によるものとされているところ(規則17条の2第2項)、同様式から「住所」と「性別」の記載が削除されました。
従業者名簿は取引の関係者の請求に応じて閲覧させる必要があるところ、生年月日・住所・性別の削除は、従業者のプライバシーに配慮したものといえます。
宅地建物取引業者票の様式変更
宅地建物取引業者は、事務所などの業務を行う場所ごとに、公衆の見やすい場所に標識(=宅地建物取引業者票)を掲げなければなりません(法50条1項)。宅地建物取引業者票の様式は、規則で定められています(規則19条2項、別記様式第十一号の二)。

2025年4月1日に施行された宅地建物取引業法施行規則の改正により、宅地建物取引業者票の様式が変更されました。
例えば、事務所に掲げるべきとされる規則別記様式第9号の記載事項は、下記の比較表のとおり変更されています。
改正前 | 改正後 |
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免許証番号 免許有効期間 商号又は名称 代表者氏名 この事務所に置かれている専任の宅地建物取引士の氏名 主たる事務所の所在地 | 免許証番号 免許有効期間 商号又は名称 代表者氏名 この事務所の代表者氏名 この事務所に置かれている専任の宅地建物取引士の数 主たる事務所の所在地 |
今回の改正により、事務所専任の宅地建物取引士の氏名が記載事項から削除され、その人数に置き換えられました。従業員に過ぎない宅地建物取引士のプライバシーに配慮した変更といえます。
その一方で、事務所代表者の氏名が記載事項に追加されました。
事務所代表者の氏名は、一般の人でも閲覧できる宅地建物取引業者名簿の登載事項とされているため、プライバシーに配慮して隠す必要はありません。事務所における責任者を明確化するための変更といえます。
【2025年4月施行】宅地建物取引業法に関するその他の改正点
2025年4月1日からは、宅地建物取引業法施行規則に加えて、宅地建物取引業法や同法施行令の改正も施行されました。
一例として、以下のような変更が行われていますので、宅地建物取引業者はご留意ください。
- 宅地建物取引業免許および更新免許の申請をオンラインで行う場合の手数料が、従来よりも安くなりました。
- 重要事項説明書の「制限の概要」において、「生物多様性増進のための活動の促進等に関する法律」に基づく制限がある場合は、その概要の記入が必要になりました。