特許情報とは?
種類・特徴・調査方法などを解説!
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- この記事のまとめ
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「特許情報」とは、過去に出願された特許に関する情報・資料を意味します。発明や特許出願を行う際の参考資料として、特許情報は大いに役立ちます。
特許情報には一次情報・二次情報・三次情報・データベースなどの様々な種類があり、目的に応じて使い分けることが重要です。特許庁のデータベースを活用して自ら調べたり、調査機関に依頼したりして、特許情報を有効に活用しましょう。
今回は特許情報の種類に関連して、特許情報を調査することの重要性、各情報の種類や特徴、調査方法などを解説します。
※この記事は、2022年5月25日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
特許情報とは
「特許情報」とは、過去に出願された特許に関する情報・資料を意味します。
特許庁が発行しているものから、民間事業者が発行しているものまで、様々な種類の特許情報が流通しています。
特許情報を調査することの重要性
事業者が技術開発を行う場合や、発明について特許出願を行う場合には、特許情報を調査することが大いに参考となります。
特許情報を調査することが重要である主な理由は、以下のとおりです。
- 最新の技術動向を把握できる
- 特許権が認められる可能性のある技術を予測できる
- 同一の発明が特許出願されていないか確認できる
- 新規性・進歩性が認められるかどうかの判断材料になる
- 明細書を作成する際の参考になる
それぞれ詳しく解説します。
最新の技術動向を把握できる
特許情報を参照すると、最近どのような発明が生み出されているのかを確認できます。
特許情報によって最新の技術動向を把握することは、新たな発明を生み出すためのベースとなります。既存の発明を土台として、さらに優れた進歩的な発明を生み出すことが、技術開発の本質と言えるでしょう。
特許権が認められる可能性のある技術を予測できる
出願公開制度により、特許権が認められたかどうかにかかわらず、全ての特許出願情報は公開されます(特許法64条1項)。
したがって、特許情報を参照すると、特許権が認められた出願と認められなかった出願の両方を確認できます。両者を比較すると、最新の技術水準に照らして、どのような技術・発明であれば特許権が認められる傾向にあるのかを把握できる可能性があるでしょう。
同一の発明が特許出願されていないか確認できる
同一の発明について複数の特許出願があった場合には、先願主義により、特許を受けることができるのは最先の出願のみです(特許法39条1項)。したがって、自社が開発しようとしている技術・発明につき、既に他社が特許出願をしている場合には、特許権が認められる見込みはありません。
技術開発へ本格的に着手する前の段階で、特許情報を十分に調査すれば、特許権が認められない重複発明への無駄な開発投資を防ぐことができます。
新規性・進歩性が認められるかどうかの判断材料になる
既に特許出願が行われた発明と全く同一ではないとしても、先行する特許出願と類似性が高い発明については、特許要件である「新規性」と「進歩性」が認められない可能性が高いです(特許法29条1項、2項)。
特許情報を通じて先行出願を調査することにより、既存の発明との差別化を意識して技術開発を進めることができます。その結果、新規性・進歩性の特許要件をクリアしやすくなるでしょう。
明細書を作成する際の参考になる
特許情報を参照すると、特許出願の際の添付書類である明細書の全文を確認できます。
これから特許権の取得を目指す会社にとっては、特許出願を行う際、明細書をきちんと作りこむことが重要なポイントです。明細書の作成に当たっては、特許権が認められた出願において、どのような内容・書きぶりの明細書が作成されているかを確認することが、大いに参考となります。
特許情報の種類
特許情報には、以下のとおり様々な種類が存在します。
- 一次情報
- 二次情報
- 三次情報
- データベースなど
一次情報(公報類)
「一次情報」とは、特許庁が刊行する出版物に掲載された特許情報(原文)です。「公報類」とも呼ばれます。
一次情報に当たる特許情報の例は、以下のとおりです。
- 一次情報
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✅ 特許公報、実用新案公報
→特許権・実用新案権の登録があった場合に発行されます。「特許掲載公報」「実用新案掲載公報」とも呼ばれます。✅ 公開特許公報・公開実用新案公報
→特許権・実用新案権の登録が行われていない段階で、出願公開制度に基づき出願内容が公開されます。✅ 公表特許公報・公表実用新案公報
→外国語特許出願・外国語実用新案出願に関して権利の登録があり、かつ特許庁への申請により国内移行された出願内容が、日本語に翻訳して公開されます。✅ その他
→再公表特許・再公表実用新案(いずれも2021年12月分をもって廃止)、審決公報等などがあります。
二次情報(抄録類)
「二次情報」とは、特許庁が発行する一次情報を基にして、特許出願等の内容を要約した出版物を意味します。「抄録類」とも呼ばれ、民間の事業者が発行しています。
二次情報に当たる特許情報の例は、以下のとおりです。
- 二次情報
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✅ 公開特許抄録
✅ SDIシート
✅ 民間発行の抄録
など
三次情報(索引類)
「三次情報」とは、特許情報を検索するための助けとなる情報が記載された出版物を意味します。「索引類」とも呼ばれています。
三次情報に当たる特許情報の例は、以下のとおりです。
- 三次情報
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✅ 出願処分検索表
✅ 公開目次
✅ 分類索引
✅ 出願人索引
など
データベース
「データベース」とは、特許情報を集積したうえで、検索可能にしたデータ管理システムです。
独立行政法人工業所有権情報・研修館がリリースしている「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)がもっとも有名で、無料で利用できます。また、民間事業者によって商用のデータベースも提供されています。
その他
特許出願そのものに関する情報ではないものの、特許権の有効性等が争われた裁判の概要が記載された「審決取消訴訟裁判集」など、特許に関連する出版物等も、特許情報に分類されることがあります。
各特許情報の特徴・利用用途
特許情報には、その種類ごとに異なる特徴があるため、用途に応じて適切な特許情報を使い分けることが大切です。
各特許情報の特徴と、主に想定される利用用途は、以下のとおりです。
- 一次情報|網羅的・信頼性が高い
- 二次情報|発明の内容を分かりやすく把握できる
- 三次情報|一次情報・二次情報の検索に用いる
- データベース|オンライン検索が可能・一次情報と二次情報を網羅
一次情報|網羅的・信頼性が高い
一次情報は、特許審査を担当する特許庁が発行しているため、もっとも信頼性の高い特許情報と言えます。特許出願内容の全体が記載されており、発明の内容や審査理由などを網羅的に把握できる点も大きな特徴です。
その反面、一次情報は分量が多いため、あらゆる一次情報を調べ上げていると、非常に長い時間と多大な労力がかかってしまいます。
基本的には、特許を受けようとする技術・発明の開発や、特許出願の事務に携わる者は、先行技術・発明を把握するため、関連する主要な一次情報を全て確認することが望ましいです。ただし、費用対効果の観点を考慮して、全文を徹底的に読み込むというよりは、要点を踏まえながら適宜重みづけをして確認するのがよいでしょう。
なお、一次情報を網羅的に確認しつつ、確認にかかる時間と労力を削減したい場合には、特許事務所(弁理士)や特許情報提供事業者を活用することも有力な選択肢です。
二次情報|発明の内容を分かりやすく把握できる
二次情報は、膨大な分量の一次情報の要点がまとめられているため、先行する特許出願の内容をスピーディに把握するために役立ちます。注目すべきポイントについての解説が付されているケースもあり、特許実務を専門としていない法務・知財担当者でも、比較的理解しやすいでしょう。
その一方で、要約・解説の過程において、一次情報の内容が歪められてしまうケースもないわけではありません。特に解説部分は、執筆者独自の見解が記載されていて、実務上は全く参考にならない場合もあるので注意が必要です。
例えば、自社の技術・発明の先行特許出願を調査する際に、ひとまず関連しそうな特許出願をピックアップする段階では、二次情報を参照することが役立つでしょう。そのうえで、関連性が深そうな特許出願については、一次情報の原文を参照して、正確な出願内容を把握するように努めましょう。
三次情報|一次情報・二次情報の検索に用いる
三次情報は、紙媒体の特許情報が中心だった時代には、一次情報・二次情報を検索するために活用されていました。
しかし現在では、特許情報に関するデータベースが発達しており、検索機能もデータベースに優れたものが搭載されています。そのため、三次情報を利用して一次情報・二次情報を検索する機会は、最近では極めて少なくなりました。
データベース|オンライン検索が可能・一次情報と二次情報を網羅
特許情報のデータベースは、一次情報と二次情報を幅広く収録している上、検索機能が備わっています。そのため、必要な特許情報へアクセスするための窓口として、データベースは非常に有用です。
特許出願に関する基本的な情報を検索できる「特許情報プラットフォーム」、高度な検索機能やニッチな二次情報にもアクセスできる民間事業者のサービスなど、各データベースにはそれぞれ特徴があります。利用者の業務内容や利用用途などに応じて、データベースを適宜使い分けましょう。
特許情報の種類 | 詳細 | 特徴 |
---|---|---|
一次情報(公報類) | 特許庁が刊行する出版物に掲載された特許情報(原文) | 網羅的・信頼性が高い反面、分量が多く、確認の労力が大きい。 |
二次情報(抄録類) | 特許庁が発行する一次情報を基にして、特許出願等の内容を要約した出版物 | 一次情報の要点がまとめられており読みやすいが、要約・解説の過程において、一次情報の内容が歪められてしまうケースもある。 |
三次情報(索引類) | 特許情報を検索するための助けとなる情報が記載された出版物 | かつては、一次情報・二次情報を検索するために使用されたが、特許情報のデータベースが発達した現代では、あまり使用されていない。 |
データベース | 特許情報を集積した上で、検索可能にしたデータ管理システム | 必要な特許情報へアクセスするための窓口として非常に有効。 |
その他 | 特許に関連する出版物等 | ― |
特許情報の調査方法
特許情報を確認する方法としては、最近ではデータベースを活用する方法が主流となっています。
データベースだけでは確認・調査が難しい場合には、公報を直接調べに足を運ぶ方法や、特許情報提供事業者に調査を依頼する方法も考えられます。
特許情報プラットフォームで検索する
独立行政法人工業所有権情報・研修館の「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」は、誰でも無料で利用できる特許情報のデータベースです。
一次情報主体の特許調査を行う場合には、特許情報プラットフォームを活用すれば事足りるケースも多いでしょう。
民間事業者のデータベースで検索する
特許情報プラットフォームで提供される情報の内容や検索機能は、基本的なものに限定されています。もし高度な検索や高い付加価値のついた情報が必要な場合には、民間事業者が提供するデータベースを活用した方がよいでしょう。
民間事業者のデータベースにはそれぞれ特徴があり、情報の種類や密度、検索機能、費用などは千差万別です。
以下の特許庁のリストには、インターネット上で特許情報のデータベースを提供する事業者が列挙されています。記載されたサービス内容を参考にして、関心を持った事業者に問い合わせてみるとよいでしょう。
公報を直接調べる
特許庁や各地域の発明協会に足を運べば、特許庁が発行する公報を閲覧できます。
公報の中でも、最新のもの・非常に古いもの・マイナーなものなどについては、データベースに掲載されていないこともあります。このような公報を確認する必要がある場合には、特許庁や発明協会で直接公報を調べることも検討しましょう。
調査機関に依頼する
特許情報を網羅的に調査するためには、多大な時間を要するとともに、高度の専門性が必要となります。そのため、自社で特許調査を行うのは荷が重いというケースも多いでしょう。
自社で特許調査を行うのが大変な場合には、調査機関に依頼するのも一つの選択肢です。依頼費用はかかりますが、精度の高い調査結果を、労力をかけずに得られるメリットがあります。
特許調査の依頼先としては、特許事務所(弁理士)のほか、特許調査サービスを専門に提供する民間事業者(特許情報提供事業者)が挙げられます。特許情報提供事業者は、以下の特許庁ウェブサイトにリストが掲載されていますので、ニーズを満たしてくれそうな事業者へ連絡を取ってみるとよいでしょう。
この記事のまとめ
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