特許権の存続期間は?
延長手続・期間内に消滅する条件などを解説!

この記事のまとめ

発明を業として独占的に実施することを認める「特許権」には、存続期間(有効期間)が設けられています。特許権による保護のインセンティブを与えて発明を奨励する一方で、一定期間経過後は発明を公に開放し、技術や産業の発展に寄与するためです。

特許権の存続期間は、原則として「特許出願の日から20年」ですが、延長が認められる場合もあります。有効期間の延長には、延長登録の出願が必要です。

また、存続期間の途中であっても、特許権が消滅してしまう場合がある点に注意しましょう。

この記事では特許権の存続期間について、起算日・延長の要件と手続・有効期間の途中で特許権が消滅する場合などを解説します。

特許権は、なんで一定期間で消滅してしまうんですか? もし自分が発明者の立場だったら、永久に保護してほしいです。

特許法は「産業の発達に寄与すること」を目的としています。しかし、過去に他者が生み出した発明が一生利用できないとなると、その後の産業発展が難しくなりますよね。こうした事態を防ぐために、「存続期間」を設け、一定期間発明者の保護をしたうえで、自由に利用できるようにしているんです。

特許の基本については、以下の記事で解説しています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • 薬機法…医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
  • 独占禁止法…私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律

 (※この記事は、2022年4月15日時点の法令等に基づいて作成されています。)

特許権の存続期間について

発明を業として独占的に実施することを認める「特許権」には、存続期間(有効期間)が設けられています。

特許権の存続期間は「出願日から20年」

特許権の存続期間は、原則として「特許出願の日から20年」です(特許法67条1項)。

ただし、医薬品等については、特許期間の延長登録が認められるケースがあります(同条2項~4項)。

特許権に存続期間がある理由

特許権の存続期間は、特許法の目的である「発明を奨励し、もって産業の発達に寄与すること」(特許法1条)にとって有効であるという考え方の下で設定されています。

特許権者に特許発明の独占権が与えられているのは、発明を生み出すことによって利益を得られる仕組みを作り、企業や研究者に対するインセンティブを与えて発明を奨励するためです。
その一方で、過去に生み出された発明を誰でも自由に利用できることが、後に続く発明を促進する観点からは本来望ましいと考えられます。

上記2つの考え方の折衷案として、日本の現行特許法では「特許出願の日から20年」という特許権の存続期間が定められているのです。

存続期間が過ぎた特許発明は誰でも利用できる

特許権の設定登録が行われると、発明の内容や仕組みを記載した明細書などを含めて、発明に関する情報が特許公報に掲載されます(特許法66条3項)。
また、審査が長引いているなどの理由で設定登録・特許掲載公報が行われていない状態でも、特許出願の日から1年6か月が経過すると、特許掲載公報と同等の事項が特許公報に掲載されます(特許法64条)。

特許掲載公報又は出願公開により、特許出願された発明は公開情報となり、誰でもその内容や仕組みを知ることができます。

特許権の存続期間中は、特許発明を業として実施できるのは特許権者・専用実施権者・通常実施権者のみです。しかし、特許権の存続期間が終了すれば、特許掲載公報又は出願公開によって公開された情報を利用して、誰でも自由に特許発明を利用できるようになります。

医薬品等は特許権の存続期間を延長できる場合がある

特許庁による出願審査が不合理に遅れた場合や、特許発明が法令に基づく承認申請を要する医薬品や農薬などに係るものである場合については、例外的に特許権の存続期間の延長が認められます。

存続期間延長が認められるパターンと各要件

特許権の存続期間延長が認められるパターンには、以下の2つがあります。

特許庁の出願審査が遅延した場合

1つ目のパターンは、特許庁の出願審査が遅延した場合です。具体的には、特許権の設定の登録が以下のいずれか遅い日(=基準日)以後にされた場合に、特許権の存続期間延長が認められます(特許法67条2項)。

医薬品・農薬などに係る特許発明の場合

2つ目のパターンは、薬機法に基づく承認を要する医薬品や医療機器、農薬取締法に基づく承認を要する農薬に係る特許発明について、承認等の処分が長引いたために実施できない期間が生じた場合です(特許法67条4項)。

特許発明が医薬品や農薬などの場合、薬機法などの法規制が原因で、特許権の設定登録が完了しても直ちに実施できない場合があります。この場合、特許権の存続期間が事実上侵食されてしまいます。ひどいケースでは、存続期間満了後に製造・販売等が承認されることもあるため、原則どおりルールを適用したのでは不公平な結果を招きかねません。

そこで、上記の場合には特許権の存続期間延長を認め、特許発明を実施できなかった期間を取り戻せるようにしたのです。

なお上記の趣旨から、特許法67条4項に基づく存続期間延長の場合、延長期間中の特許権の効力が及ぶのは、延長登録の理由となった処分の対象物についての実施行為に限るとされています(特許法68条の2)。

延長が認められる存続期間の決定方法

延長が認められる存続期間の長さ(延長可能期間)は、以下の要領で決定されます。

延長登録の出願が認められる期間

特許権の存続期間を延長するには、特許庁に対して延長登録の出願を行い、承認を受けなければなりません。延長登録の出願は、以下の期間内に行う必要があります。

特許権の存続期間を延長するための手続

特許権の存続期間を延長するためには、以下の流れに沿って延長登録の出願手続をします。

延長登録の出願

特許権の延長登録の出願は、特許庁長官に対して以下の書類を提出して行います。

延長登録の出願に必要な書類

✅ 願書
✅ 延長期間の算定根拠を記載した書面(資料)

願書は、延長登録の理由に応じて、特許法施行規則で定める様式に従い作成しなければなりません(特許法施行規則38条の14の3、38条の15、38条の16の2)。

延長期間の算定根拠を記載した書面については、特許法67条2項に基づく延長の場合に限り、特許法施行規則38条の14の4第1項所定の事項を願書に記載することで、提出を省略できます(同条2項)。

これに対して、特許法67条4項に基づく延長の場合は、特許法施行規則38条の16所定の資料を必ず提出しなければなりません。

延長登録の出願の審査

以下のいずれかに該当する場合は、延長登録が認められません(特許法67条の3第1項、67条の7第1項)。

延長登録の出願の拒絶事由

<特許法67条2項に基づく延長の場合>
✅ 特許権の設定登録が基準日以後にされていないとき
✅ 延長を求める期間が、延長可能期間を超えているとき
✅ 出願者が特許権者でないとき
✅ 特許権が共有に係る場合において、全共有者が共同で延長登録の出願をしていないとき

<特許法67条4項に基づく延長の場合>
✅ 特許発明の実施につき、薬機法・農薬取締法に基づく処分を受けることが必要であったとは認められないとき
✅ 特許権者・特許権についての専用実施権か通常実施権を有する者が、薬機法・農薬取締法に基づく処分を受けていないとき
✅ 延長を求める期間が、特許発明の実施をすることができなかった期間を超えているとき
✅ 出願者が特許権者でないとき
✅ 特許権が共有に係る場合において、全共有者が共同で延長登録の出願をしていないとき

上記の拒絶事由が存在しない場合、審査官は延長登録をすべき旨の査定(=特許権の延長を認める旨の行政処分)を行います(特許法67条の3第2項、67条の7第2項)。

延長登録・特許公報への掲載

延長登録をすべき旨の査定が行われた場合、延長登録が行われ、特許権の存続期間が延長されます。

延長登録が行われた後、特許公報に所定の事項が掲載されます。

存続期間内でも特許権が消滅してしまう場合がある

特許権の存続期間内であっても、以下のいずれかに該当する場合には、特許権が消滅してしまうので要注意です。

特許料の不納付

特許権者は、特許権の設定登録日から存続期間満了までの各年につき、所定の期限までに特許料を納付する必要があります(特許法107条1項、108条)。納付期限を過ぎても、6か月以内であれば追納が認められますが(特許法112条1項)、追納の場合は特許料と同額の割増特許料を納付しなければなりません(同条2項)。

追納期間中に、特許料及び割増特許料の納付がない場合には、特許権は消滅します(同条4項)。

相続人の不存在

特許権者が死亡した場合、特許権は相続の対象になります(民法896条)。特許権を相続する者がいない場合、相続財産管理人が選任され、相続債権者・受遺者への弁済や相続人の捜索などが行われます(民法951条以下)。

相続人のいない特許権については、相続人の捜索の公告期間内に相続権を主張する者が現れない場合には消滅します(特許法76条)。したがって、通常の相続財産とは異なり、特別縁故者に対する相続財産の分与の規定(民法958条の3)及び国庫帰属の規定は(民法959条)、特許権については適用されません。

特許権の放棄

特許権者によって特許権が放棄された場合、特許権は消滅します。

ただし、以下のいずれかの者が存在する場合には、その全てから承諾を得なければ、特許権者が特許権を放棄することはできません(特許法97条1項)。

特許無効審決の確定

特許を無効にすべき旨の審決が確定したときは、特許権は初めから存在しなかったものとみなされます(特許法125条)。

特許の取消し

独占禁止法に違反する以下のいずれかの犯罪について、特許権者が犯人である場合、裁判所は刑の言渡しと同時に、違反行為に供せられた特許権は取り消されるべき旨を宣告することがあります(独占禁止法100条1項1号)。

特許権取消しの宣告をした判決が確定した場合、裁判所は判決謄本を特許庁長官へ送付します(独占禁止法100条2項)。特許庁長官は、判決謄本の送付を受けて、当該特許権を取り消します(同条3項)。

この記事のまとめ

特許権の存続期間の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!