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特定商取引法とは? 基本を解説!

秋田康博弁護士

秋田康博弁護士

2021/12/03 (公開:2021/12/02)

この記事を書いた人

秋田 康博

弁護士法人大江橋法律事務所

2010年慶應義塾大学法学部卒業、2012年慶應義塾大学法科大学院修了。2014年裁判官任官。
2021年依願退官し、弁護士登録(第一東京弁護士会)。
訴訟・紛争解決、一般企業法務を中心として、倒産、保険等や、一般民事・家事事件を含め幅広い分野を取り扱う。

この記事のまとめ

特定商取引法を解説!!

特定商取引法の正式名称は「特定商取引に関する法律」です。事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ることを目的とする法律です。

この記事では、特定商取引法の知識がない方にも基本から分かりやすく解説します。

この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • 特商法…特定商取引に関する法律
  • 特商令…特定商取引に関する法律施行令
  • 特商規…特定商取引法に関する法律施行規則

特定商取引法とは

特定商取引法とは、消費者と事業者との間の契約のうち、訪問販売等、特に消費者とトラブルを生じやすい取引類型を対象に、一定の規制を定めることで、消費者を保護することなどを目的とした法律です。そこで、まず規制の対象となる取引類型の内容を見ていき、その後に規制等について解説します。

特商法の規制の対象となる取引

特商法において規制の対象となる取引は、次の7つの取引です。

① 訪問販売
② 通信販売
③ 電話勧誘販売
④ 連鎖販売取引
⑤ 特定継続的役務提供
⑥ 業務提供誘引販売取引
⑦ 訪問購入

① 訪問販売

訪問販売とは、

ⅰ)事業者が、営業所等以外の場所で契約して行う商品等の販売又は役務の提供等
ⅱ)いわゆるキャッチセールスアポイントメントセールスによる商品等の販売又は役務の提供等

のことをいいます(特商法2条1項)。

例えば、営業職員が消費者の住居を訪問して商品を販売する契約を行う場合です。営業所以外の場所で行われることが要件とされていますので、喫茶店や路上での販売も「訪問販売」に該当します。「訪問販売」の表記からはやや想起しづらいかもしれませんので注意が必要です。

また、ホテル等の会場を用いた、ごく短時間の展示販売についても「訪問販売」に該当する場合があります。しかし、ホテルや公民館を一時的に借りるなどして行われる展示販売等であって、2~3日以上、商品が陳列されているような場合は、営業所等での取引と扱われる可能性があります。このような場合は「訪問販売」には該当しません。

営業所等で行われた契約であっても、路上等の営業所以外の場所で消費者を呼び止めて営業所等に同行させて契約した場合(いわゆるキャッチセールス)や、電話、SNS等で販売目的を明示せずに消費者を営業所等に呼び出して契約させる場合(いわゆるアポイントメントセールス)などは、「訪問販売」に該当します(特商法2条1項2号)。

② 通信販売

通信販売とは、事業者が、郵便、電話、インターネット等によって売買契約又は役務提供契約の申込みを受けて行う商品等の販売又は役務の提供(ただし、後記③の電話勧誘販売に該当するものは除きます。)をいいます(特商法2条2項)。

例えば、事業者が雑誌やインターネット上で広告し、郵便や電話、インターネット等を介して注文を受ける取引を指します。

販売者が個人であっても、営利の意思をもって、反復継続して販売等の取引を行っている場合には「事業者」に該当します。そのため、個人がインターネット・オークションやフリマアプリ上で出品する場合であっても、上記の要件を満たす場合には「事業者」に該当し、通信販売として特商法が適用されるので注意が必要です(詳しくは「インターネット・オークションにおける『販売業者』に係るガイドライン 」をご覧ください。)。

③ 電話勧誘販売

電話勧誘販売とは、事業者が、消費者に電話をかけ、又は欺瞞的な方法により電話をかけさせ、その電話において行う勧誘によって、消費者からの売買契約又は役務提供契約の申込みを郵便、電話、インターネット等により受け、又は契約を締結して行う商品等の販売又は役務の提供をいいます(特商法2条3項)。

事業者が電話をかけて勧誘を行い、その電話の中で消費者から契約の申込みを受けるなどした場合だけでなく、勧誘の電話をいったん切った後、郵便等によって消費者が申込みを行った場合でも、電話勧誘によって消費者の購入意思の決定が行われたのであれば「電話勧誘販売」に該当します。

また、事業者から電話をかけていないとしても、欺瞞的な方法により事業者が消費者に「電話をかけさせ」る場合にも電話勧誘販売に該当します。欺瞞的な方法とは、勧誘目的を告げずに電話をかけるよう要請するものや、ほかの者に比して著しく有利な条件で契約を締結できることを告げて、電話をかけるよう要請するものをいいます(特商令2条)

④ 連鎖販売取引

連鎖販売取引とは、個人を販売員として勧誘し、さらにその個人に次の販売員を勧誘させるかたちで、販売組織を連鎖的に拡大して行う商品・役務の取引をいいます(いわゆるマルチ商法、マルチレベルマーケティング)。

例えば、「入会金を支払い、健康食品を購入すると会員になることができる。これを知人に勧めるか、知人を会員にすればマージンがもらえる。」、「あなたが勧誘して会員が加入したら、紹介手数料として○○円を支給します。」、「あなたが勧誘して加入した会員が商品を仕入れた際、その代金のうち10%が得られます。」などと勧誘し、商品等の取引を行う場合が「連鎖販売取引」に該当します。

特商法において「連鎖販売業」は次のように規定されています(特商法33条1項)。

ⅰ)物品の販売(又は有償で行う役務の提供など)の事業であって
ⅱ)再販売、受託販売若しくは販売のあっせん(又は同種役務の提供若しくはそのあっせん)をする者を
ⅲ)特定利益が得られると誘引し
ⅳ)特定負担を伴う取引(取引条件の変更を含む。)をするもの

「連鎖販売取引」とは、上記の連鎖販売業における「取引」(ⅳ参照)をいいます。

特定利益」とは、下位者・子会員が加入した際にもらえる紹介料や、下位者・子会員が商品を買うことによって上位者・親会員が得ることのできるバックマージンなどです(特商法33条1項かっこ書き、特商規24条)。また、「特定負担」とは、連鎖販売組織に加入するために支払った入会金、取引料、商品の購入費をいいます(特商法33条1項かっこ書き)。

⑤ 特定継続的役務提供

特定継続的役務提供とは、役務提供事業者が、法令によって指定される特定の継続的役務を、それぞれの役務ごとに定められる一定期間を超える期間にわたり、一定額を超える対価により提供することをいいます(特商法41条1項)。

特定継続的役務」に該当する役務は特商令により指定されています(特商法41条2項、特商令12条、別表第4)。具体的には、

ⅰ)エステティック
ⅱ)美容医療
ⅲ)語学教室
ⅳ)家庭教師
ⅴ)学習塾
ⅵ)結婚相手紹介サービス
ⅶ)パソコン教室

の7つの役務が特定継続的役務として指定されています。

また、特定継続的役務として特商法の適用を受けるものは、上記のとおり、一定期間及び一定額を超える契約です。
期間については2か月(ただし、エステティック及び美容医療については1か月)を超えるもの、金額については、役務の内容にかかわらず5万円を超えるものとされています(特商令11条1項、11条2項、別表第4)。

なお、特定継続的役務提供においては、事業者が、契約に関連付けて商品の購入を促し、消費者が商品を購入することが間々見受けられます。例えば、エステティックに関して健康食品を販売する場合、語学教室に関して教材の書籍を販売する場合などが挙げられます。

そこで、特商法は、このように販売される商品を「関連商品」として指定し、特定継続的役務提供契約のクーリング・オフや中途解約の際に、関連商品の販売契約も併せてクーリング・オフや中途解約をすることができるとしています(特商法48条、49条、特商令14条、別表第5)。上記の7つの特定継続的役務提供そのものではなくても、それに関連する取引について一定の規制が及ぶ可能性があるので注意が必要です。

⑥ 業務提供誘引販売取引

業務提供誘引販売契約とは、

ⅰ)物品の販売又は役務の提供(それらのあっせんを含みます。)の事業であって、
ⅱ)業務提供利益が得られると相手方を誘引し、
ⅲ)その者と特定負担を伴う取引をするもの

をいいます(特商法51条1項)。

例えば、「事業者が仕事を依頼するので、それにより収入が得られる」という口実で消費者を誘い、その仕事に必要として商品を販売する取引です。業務提供誘引販売取引の例としては、次のようなものがあります。

・販売されるパソコンとコンピューターソフトを使用して行うホームページ作成の在宅ワーク
・販売される着物を着用して展示会で接客を行う仕事
・販売される健康寝具を使用した感想を提供するモニター業務
・購入したチラシを配布する仕事
・ワープロ研修という役務の提供を受けて修得した技能を利用して行うワープロ入力の在宅ワーク

引用元│特定商取引法ガイド「業務提供誘引販売取引」

⑦ 訪問購入

購入業者が、営業所等以外の場所で行う物品の購入をいいます(特商法58条の4)。例えば、事業者が消費者の居宅を訪問して、物品の買取りを行う場合を指します。

訪問購入の要件として、営業所等以外の場所で行われることが必要です。消費者の居宅での取引のほか、喫茶店、路上、一時的な買取会場であって店舗といえないものなどで取引を行う場合に該当します。反対に、ブランド品買取店やリサイクルショップ、古本屋等の店舗で買取りをする場合には訪問購入には該当しません。

特商法の規制の概要

ここからは、前記の取引類型に適用される特商法の規制をみていきます。特商法の規制は、大きく分けて行政規制と民事ルールに分けられます。まず主な行政規制の概要に触れ、次に主な民事ルールについてみていきます。

なお、以下の説明は、特商法において定められる規制の概要です。各取引に適用される個別の規制等の詳細については、別途個別の規定をご確認ください。

行政規制

行政規制として主なものは次の①~⑦です。また、これらに違反した場合の行政処分・罰則の定め(⑧)もあります。

➀ 氏名等の明示義務
② 再勧誘の禁止
③ 不当な勧誘行為の禁止(不実告知、故意の不告知及び威迫・困惑の禁止)
④ 広告規制(広告の表示義務及び誇大広告等の禁止)
⑤ 未承諾者に対する電子メールの送付の禁止
⑥ 前払式販売の承諾等の通知
⑦ 書面交付義務

取引類型ごとの行政規制の整理

上記①~⑦の行政規制と行政処分等(⑧)について、先にみた取引類型ごとにそれぞれ適用されるものを整理すると、次の表のとおりとなります(記載の条文は全て特商法)。

 ※上記の記載はあくまで主だった規制になります。各取引類型に定められる全ての規制内容を網羅したものではございませんのでご注意ください。

① 氏名等の明示義務

事業者は、勧誘開始前に事業者名や勧誘目的であること、勧誘に係る商品等を消費者に告げなければなりません。

対象となる取引類型は、通信販売及び特定継続的役務提供以外の全ての取引です。

告知する内容は、事業者の氏名又は名称、勧誘目的であること、勧誘しようとする商品の内容等とされています(各取引類型における具体的な項目はそれぞれの規定をご確認ください。)。

例えば、事業者が消費者の住居を訪問し、会社名を名乗らず、また名刺も出さずに「排水管の洗浄をしています。」、「値段は3000円です。」などとだけ告げて排水管の洗浄を勧誘するような場合、この氏名等の明示義務に違反することになります。なお、事業者が法人である場合に、正規の名称ではなく「○○センター」等の通称のみを告げても、氏名等を明示したことになりませんので注意が必要です。

② 再勧誘の禁止

事業者は、消費者が契約締結の意思がないことを示したときには、その機会にそのまま勧誘を継続し、またその後改めて勧誘する行為が禁止されています。

対象となる取引類型は、訪問販売、電話勧誘販売及び訪問購入です。

例えば、事業者が、消費者の居宅において、宝飾品の訪問買取を勧誘した際、消費者が「売りません。」などとして売買契約を締結しない意思を表示した後も、「ほかに何かないですか。」、「1個でもいいので譲ってください。」などと告げて、引き続き勧誘をする場合、再勧誘の禁止に違反することになります。

再勧誘の禁止に関し、消費者庁は、「特定商取引に関する法律第3条の2等の運用指針―再勧誘禁止規定に関する指針―」を示しています。消費者から何らかの意思が伝えられた場合にとるべき対応について参考になります。

③ 不当な勧誘行為の禁止(不実告知、故意の不告知及び威迫・困惑の禁止)

事業者は、価格、支払条件等についての不実告知(虚偽の説明)又はこれらを故意に告知しないことが禁止され、また消費者を威迫して困惑させたりする勧誘行為も禁止されています。

対象となる取引類型は、通信販売以外の全ての取引です。

不実告知等の対象となる主な項目は、

ⅰ)商品等の種類、品質、数量等、商品等そのものに関する事項
ⅱ)商品等の価格等、消費者の負担に関する事項
ⅲ)対価の支払時期及び方法
ⅳ)商品等の引渡時期・提供時期
ⅴ)クーリング・オフ等契約解除に関する事項

が挙げられます。

例えば、事業者が、消費者が現に加入している競合他社の料金と比較して一律に安くなる事実はないにもかかわらず、「従来と比べて●●円も安くすることができる。」などと、あたかも事業者と契約を締結することで、競合他社と比較して一律に費用が安くなるように告げる場合や、契約期間中の解約の場合に解約金等が生じることを故意に告げなかった場合、不当な勧誘行為の禁止に違反することになります。

また、訪問販売において、消費者の居宅に長時間にわたり滞在し、消費者が退去を求めたにもかかわらず、契約の締結について執拗に勧誘をし続けて、消費者を「退去してもらうには契約を締結するしかない」という心境に追い込んで契約を締結させた場合などにも、不当な勧誘行為の禁止に違反します。

④ 広告規制(広告の表示義務及び誇大広告等の禁止)

事業者が広告する際に、重要事項を表示することを義務付け、また、虚偽・誇大な広告を禁止しています。

対象となる取引類型は、通信販売、連鎖販売取引、特定継続的役務提供及び業務提供誘引販売取引です。

「広告」には、新聞、雑誌等に掲載される広告だけでなく、カタログ等のダイレクトメール、テレビ放映、折込チラシ、インターネット上のホームページ(インターネット・オークションサイト等を含みます。)、電子メールの送付、SNS上に表示される広告等も含まれます。

重要事項として表示が求められる事項は、主として、

ⅰ)商品名
ⅱ)商品等の種類
ⅲ)代金や特定負担等、消費者の負担に関する事項
ⅳ)事業者の名称、連絡先等

といった事項です。

虚偽・誇大な広告として禁止の対象とされている項目は、商品の性能、権利の内容、契約解除に関する事項、商品の原産地、商標・製造者名などになります。これらの事項について、著しく事実に相違する表示をし、実際のものより著しく優良であり、もしくは有利であると人を誤認させる表示が禁止されています。

例えば、通信販売業者が、商品の販売条件について広告する際、販売業者の住所、電話番号を記載しなかったり、虚偽の住所等を記載したりする場合には、広告の表示義務に違反します。

また、実際には痩身効果がないのに、事業者がホームページ上に「楽にダイエットできる話題のサプリ」などと記載し、あたかもその商品を摂取するだけで容易に痩身効果が得られるかのような表示をする場合には、誇大広告等の禁止に違反します。

⑤ 未承諾者に対する電子メールによる広告の禁止

消費者があらかじめ承諾しない限り、電子メールによる広告送信が原則として禁止されます。また、電子メール広告の請求を受け、又は承諾を受けたときでも、消費者から電子メール広告の提供を受けない旨の意思表示を受けた場合、電子メール広告の送信は禁止されます。

さらに、事業者は、電子メール広告の承諾等があったことの記録を作成し、保存する義務を負います。

対象となる取引類型は、通信販売、連鎖販売取引及び業務提供誘引販売取引です。

⑥ 前払式販売の承諾等の通知

消費者が商品の引渡しを受ける前に代金(対価)の全部又は一部を支払う「前払式」による販売の場合、事業者は、代金を受領し、その後、商品の引渡しに時間がかかるときは、その申込みの諾否、事業者の名称、連絡先、受領した金額、申込みを受けた商品とその数量等の事項を記載した書面を引き渡さなければなりません。

対象となる取引類型は、通信販売及び電話勧誘販売です。

例えば、通信販売による修理業者が、修理の実施に先立って代金を受領した場合に、申込みを承諾する旨の通知する際、修理業者の住所、電話番号や、代金の受領日を記載しなかったときは、通知義務違反になります。

⑦ 書面交付義務

事業者は、契約締結時等に、重要事項を記載した書面を交付することを義務付けられています。

対象となる取引類型は、通信販売以外の全ての取引です。

各取引類型における書面の交付時期や記載内容等の詳細については、それぞれの規定をご確認ください。例えば訪問販売においては、契約の申込みを受け、又は契約を締結した場合、商品等の種類、販売価格、支払時期及び支払方法、商品等の引渡時期、クーリング・オフが可能であることなどを記載した書面を直ちに交付する必要があります。

契約締結の担当者の氏名の記載に関し、苗字のみの記載しかされていなかったことなども記載不備として行政指導の対象となっています。各取引に求められる記載事項を十分ご確認の上、適時に書面を交付するよう注意が必要です。

⑧ 行政処分・罰則

上記の行政規制等に違反した場合、事業者は、業務改善指示、業務停止命令、業務禁止命令といった行政処分の対象となります。

また、禁止行為違反(➂不当な勧誘行為の禁止、⑤未承諾者に対する電子メールによる広告の禁止、及び④広告規制のうち誇大広告等の禁止についての違反)及び書面交付義務違反(⑦)については直接罰則(刑事罰)の対象になります。さらに、その他の行政規制違反の場合も含め、上記の各行政処分を受けた場合に、その指示等に違反したときは罰則の対象となります。法人処罰(両罰規定)も定められています。

例えば禁止行為違反については、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科するとされ(特商法70条1号)、また法人も1億円以下の罰金が科されるとされており(特商法74条1項2号)、決して軽微なものではありません。

民事ルール

続いて民事ルールについての説明です。特商法で規定される民事ルールとして主だったものは次の①~⑥です。

① クーリング・オフ
② 過量販売解除権
③ 中途解約権
④ 不実告知取消権
⑤ 損害賠償額の制限
⑥ 適格消費者団体による差止請求

取引類型ごとの民事ルールの整理

これらのルールについて、取引類型ごとにそれぞれ適用されるものを整理すると、次の表のとおりとなります(記載条文は全て特商法)。

 ※上記の記載はあくまで主だった規制になります。各取引類型に定められる全ての規制内容を網羅したものではございませんのでご注意ください。

① クーリング・オフ

契約の申込みや契約締結から一定期間内であれば、無条件で、書面により、契約の申込みの撤回又は解除ができるのがクーリング・オフです。

対象となる取引類型は、通信販売以外の全ての取引です。

権利行使の期間制限につき、連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引においては法定書面を受け取ってから20日間、それ以外の取引においては法定書面を受け取ってから8日間とされています。

制限期間は、法定書面を受け取った日が起算日となり、書面の受領日を含めて計算します。例えば、訪問販売において、消費者が1月1日に法定書面を受領した場合には、1月8日が終わるまではクーリング・オフができます。

また、クーリング・オフによる契約の申込みの撤回や解除は基本的には書面で行う必要がありますが、クーリング・オフの効力はその書面を発出したときに生じるとされています。そのため、例えば訪問販売において、消費者が1月1日に法定書面を受領し、1月8日までにクーリング・オフの通知書を発出した場合、書面の受領から8日間が経過した後の1月10日に事業者がその通知書を受領したとしても、クーリング・オフは有効となります。

なお、通信販売にはクーリング・オフ制度はありませんが、類似の制度として法定返品権が認められています(特商法15条の3第1項)。通信販売による商品等の販売の場合(役務の提供は含みません。)に、商品等の引渡しを受けた日から8日間以内であれば、契約の申込みの撤回又は契約の解除をすることができるというものです。

クーリング・オフとは異なり書面によることは必要とされていませんが、上記の期間内に通知を発出するのでは足りず、事業者に通知が到達している必要があります。

また、法定返品権は特約により内容の変更や排除をすることができます(特商法15条の3第1項)。ただし、この特約に関しては、解除の可否やその条件(解除可能な期間、返送料の負担等)といった特約の内容を消費者が容易に認識できるように表示しておく必要があり(特商規9条3項、16条の3)、これを満たしていない場合には特約は無効になります(つまり法定返品権が行使できることになります。)。

特約の記載がわかりにくかったなどとして返品の可否に関してトラブルになることがありますが、どのような記載であれば容易に認識できる表示に当たるかについて画一的な基準はなく、個別具体的な判断になります。特約の表示サイズや表示箇所等の在り方について、消費者庁が「通信販売における返品特約の表示についてのガイドライン」を作成しておりますので、返品に関する特約を設ける場合にはこちらを参照し、適切な表示を行うようにしましょう。

② 過量販売解除権

通常必要とする分量を著しく超える商品等の契約の締結をしたときは、購入者はその契約を解除することができます。

対象となる取引類型は、訪問販売及び電話勧誘販売です。

どのような事情があれば通常必要とする分量を「著しく超える」といえるかについては、商品の性質、機能、消費者の個別の事情(世帯構成人数等)にかんがみ、個別の消費者にとって社会通念上必要とされる通常量を著しく超えた販売行為をいうとされています。

公益社団法人日本訪問販売協会は「通常、過量には当たらないと考えられる分量の目安」を作成しており、そこに記載されている分量は一つの目安となります。ただし、これに従っていれば「過量」に当たらないとは必ずしもいえません。個別の事情の下で「過量」か否かが判断されることになるので注意が必要です。

解除権の行使期間は、契約締結時から1年(除斥期間)です。

この解除権により契約が解除された場合に、消費者から事業者が商品の返還を要するとき、その返還費用は事業者の負担となります。

③ 中途解約権

クーリング・オフ期間経過後も、将来に向かって、理由を問わず、契約を中途解約することができます。

対象となる取引類型は、連鎖販売取引、特定継続的役務提供です。

前記のとおり、特定継続的役務提供においては、関連商品の販売契約も併せて中途解約をすることができるとされています。また、連鎖販売取引においては、加入者が購入した商品の返品制度が設けられています(特商法40条の2第2項)。

さらに、後記⑤のとおり、事業者が消費者に対して請求することのできる損害賠償額の制限が設けられています。そのため、中途解約権により契約が解約された場合、その上限額を超える損害賠償額の予定や違約金を定めがあったとしても無効になり、上限額を超える請求はできません。事業者がすでに上限額を超えた金銭を受け取っていたときは、超過分を返金する必要があります。

④ 不実告知取消権

事業者が勧誘の際に不実告知又は故意による事実不告知をしたことにより、消費者が誤認して契約をしたときは、その契約を解除することができることとされています。

対象となる取引類型は、訪問販売、電話勧誘販売、連鎖販売取引、特定継続的役務提供、業務提供誘引販売取引です。

取消権の行使期間は、誤認に気付いたときから1年間(消滅時効)又は契約締結の時から5年間(除斥期間)です。

⑤ 損害賠償額の制限

クーリング・オフ期間経過後に消費者の債務不履行を理由として契約が解除され、また中途解約によって契約が終了したなどの場合に、消費者保護の見地から、事業者が請求できる損害賠償額に上限が設定されています。

対象となる取引類型は、通信販売以外の全ての取引です。

各取引類型における上限額につきましては、個別の規定をご確認ください。

⑥ 適格消費者団体による差止請求

事業者が一定の不当な契約締結等行為を現に行っていたりそのおそれがあったりすると、適格消費者団体が事業者に対し、行為の停止や予防その他の必要な措置をとることを要求できます。

対象となる取引類型は、全ての取引です。

ネガティブ・オプション

特商法には、前記の取引類型に関する行政規制及び民事ルールのほか、ネガティブ・オプション(送り付け商法)についての規定もあります。

従前は、事業者が、消費者に対して一方的に注文していない商品を送り付けた場合には、送付の日から14日以内(消費者が事業者に対して商品の引取りを求めた場合には、その請求の日から7日以内)に、消費者が売買契約を締結せず、かつ事業者が商品を引き取らなかったときは、事業者は商品の返還を求めることができないとされていました。

この規定について、令和3年(2021年)の特商法改正により、14日(又は7日)以内に引き取らないこと等の保管期間の要件がなくなり、消費者が受け取ると事業者は直ちに返還を求めることができなくなりました(特商法59条)。 つまり売買契約を締結していないのに商品が送られてきた場合、消費者はすぐに処分して構いませんし、事業者からの代金支払請求や返還請求に応じる必要もありません。

この記事のまとめ

特商法が規制する取引の類型は幅広く、またその規制等の内容も類型ごとに異なりますが、特商法の適用を見落として取引を行った場合、適格消費者団体かの差止請求のほか、行政処分や罰則の対象を受ける可能性もあります。

こうした事態が生じた場合に事業者が受ける影響は小さくないと考えられますので、事業者が消費者向けの取引を行う際、特商法上の問題がないかどうか都度確認・検討することをお勧めします。その確認・検討に当たり、この記事がその一助になれば幸いです。

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