不動産売買契約書とは?
ひな形・定めるべき事項・
締結時の注意点などを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

不動産売買契約書」とは、不動産を売買する売主と買主が締結する契約書です。

不動産売買契約書には、売買する不動産の情報や、決済(売買代金の支払いと不動産の所有権移転)に関する合意事項が記載されます。
特に物件状況に関する告知事項や、手付解除融資特約解除の期限については、締結前によく確認しておくべきです。また、不動産に抵当権などの負担が設定されているときは、確実に抹消してから決済を行う必要があります。

この記事では不動産売買契約書について、定めるべき事項や締結時の注意点などを解説します。

ヒー

「不動産売買契約書」のチェック依頼がありました。買主側として、チェックすべきポイントを教えてください。

ムートン

決済や解除に関する契約書の内容も重要ですが、重要事項説明書も見逃せません。「売契(ばいけい)」とも呼ばれる「不動産売買契約書」を解説します!

※この記事は、2024年5月21日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • 品確法…住宅の品質確保の促進等に関する法律

不動産売買契約書とは

不動産売買契約書」とは、不動産を売買する売主と買主が締結する契約書です。不動産を特定する情報や、売買代金をはじめとする売買の諸条件を定めます。

売主および買主の間のトラブルを防止するため、不動産売買契約書には、必要な事項を漏れなく明確に定めることが大切です。

不動産売買契約書のひな形

全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)は、不動産売買契約書の書式を公表しています。

戸建住宅などの土地・建物を売買する際には「不動産売買契約書(一般仲介)」、マンションなどの区分所有建物を売買する際には「区分所有建物売買契約書(敷地権型)」を利用できます。

参考:全国宅地建物取引業協会連合会ウェブサイト「全宅連策定書式のチェックポイント」

不動産売買契約書に定めるべき主な事項

不動産売買契約書には、主に以下の事項を定めます。

① 不動産の表示
② 売買代金の額・支払期日・支払方法
③ 手付金の有無・額・手付解除の期限
④ 融資特約(ローン特約)
⑤ 物件状況の告知
⑥ 所有権の移転・引渡し・登記手続き
⑦ 負担の消除|抵当権・賃借権など
⑧ 公租公課等の分担・収益の帰属
⑨ 契約不適合責任
⑩ 危険負担
⑪ その他

不動産の表示

不動産を特定する情報を記載します。

土地については所在・地番・地目・地積を、建物については所在・家屋番号・修理・構造・床面積を記載します。
区分所有建物については、建物に関する事項と敷地権に関する事項を分けて記載します。

登記簿を参照しながら、齟齬がないように不動産に関する情報を記載しましょう。

売買代金の額・支払期日・支払方法

不動産譲渡の対価となる売買代金の額と、その支払期日および支払方法を定めます。

売買代金については、土地代金・建物代金・消費税および地方消費税の額を分けて記載するのが一般的です。手付金・中間金・残代金などと分けて支払いを行う場合は、各回の支払額と支払期日を明記しましょう。
最終の支払期日は、所有権の移転および物件の引渡し同日とします。

支払方法としては現金や振込送金のほか、預金小切手で支払う方法も考えられます。

手付金の有無・額・手付解除の期限

不動産売買の実行に先立って、買主から売主に対して交付される手付金は、別段の合意がない限り解約手付として取り扱われます。
買主は解約手付を放棄すること、売主は解約手付の倍額を買主に償還することにより、それぞれ売買契約を解除することが可能です。ただし、相手方が履行に着手した場合には、手付解除は認められません(民法557条1項)。

手付金の授受を行う場合には、その旨およびその金額を不動産売買契約書に明記しましょう。また、手付解除の期間を制限する場合は、期限も不動産売買契約書に記載します。

融資特約(ローン特約)

買主が融資を利用して不動産を購入する場合は、不動産売買契約書において「融資特約ローン特約)」が定められるのが一般的です。
融資特約が定められた場合において、予定されている融資が不承認となったときは、ペナルティなしで自動的に不動産売買契約が解除されます。

融資特約を定める場合には、融資申込先・融資承認予定日・融資金額・契約解除の期限などを定めます。

物件状況の告知

売買する不動産の状態や、通常の不動産とは異なる留意事項などについては、売主が買主に対して物件状況確認書(告知書)を交付して告知します。
不動産売買契約書では、上記の方法で物件状況の告知を行う旨を定めます。

告知事項については、買主は容認した上で不動産を購入したものとみなされます。告知事項に関するリスクが顕在化したとしても、買主は原則として、売主に対して契約不適合責任を追及することができません。

所有権の移転・引渡し・登記手続き

不動産の所有権の移転・引渡し、および登記手続きに関する事項を定めます。

不動産の所有権の移転・引渡しについては、売買代金全額の支払いと同時履行とする旨を明記します。売買代金全額が支払われないときは、売主は買主に対する不動産の所有権の移転・引渡しを拒否することが可能です。

不動産に関する所有権移転登記の手続きは、売買代金の支払いおよび不動産の所有権移転・引渡しと同日付で行う旨を明記します。

また、登記費用の負担者についても定めましょう。
所有権移転登記の費用は買主負担とし、抵当権の抹消など負担の消除に関して行う登記手続きの費用は売主負担とするのが一般的です。

負担の消除|抵当権・賃借権など

抵当権の負担が残ったまま不動産を売買すると、買主は担保実行によって不動産の所有権を失うリスクを負います。また、不動産に賃借権が設定されていると、買主は購入した不動産を自由に利用できません
そのため、不動産売買を実行する際には、抵当権などの負担を消除することが必須となります。

不動産売買契約書では、抵当権等の担保権や賃借権等の用益権など、買主の完全な所有権の行使を阻害する一切の負担を、売主の責任および費用において消除する旨を明記しましょう。

なお、売主が売買代金をもって不動産ローンを完済する予定の場合は、売買の実行後直ちに抵当権登記を抹消する旨を定めます。
また、賃貸物件として不動産を売買する場合は、賃借権の負担については消除義務の対象外とすることがあります(賃借人が引き続き住むこととなります)。

公租公課等の分担・収益の帰属

公租公課(固定資産税など)については、不動産の引渡し日の前日までの分を売主が、引渡し日以降の分を買主が負担するのが一般的です。

また、不動産から生じる収益(賃料など)についても、引渡し日の前日までの分は売主が、引渡し日以降の分は買主が得るのが一般的です。収益に対応する負担金も、同様の要領で売主・買主の間で分担します。

上記の公租公課の負担、収益の帰属および負担金の分担方法を、不動産売買契約書において明記しておきましょう。

契約不適合責任

契約不適合責任」とは、不動産が売買契約に適合していなかった場合に、売主が買主に対して負う責任です。

契約不適合が存在する場合には、買主は売主に対して、不動産の修補・代金の減額・損害賠償を請求し、または売買契約を解除できます(民法562条~564条)。
契約不適合責任を追及するためには、原則として、買主が不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知する必要があります(民法566条)。

上記のルールは民法の原則であり、契約によって特約を定めれば別のルールを適用することも可能です。契約不適合責任の追及方法や期間などにつき、どのようなルールを適用するのかを不動産売買契約書に明記しましょう。

なお、新築住宅の売買契約においては、住宅の構造耐力上主要な部分等の瑕疵につき、品確法上の瑕疵担保責任が適用されます(品確法95条)。

品確法上の瑕疵担保責任の追及方法は、民法上の契約不適合責任と同じです。
ただし、品確法上の瑕疵担保責任の期間は引渡しの時から10年間とされており、短縮は認められません。また、品確法上の瑕疵担保責任の追及方法を狭く限定する特約も無効となります。

契約不適合責任については、以下の記事を併せてご参照ください。

危険負担

不動産売買契約を締結した後、天災地変などによって不動産が滅失し、売買契約が履行不能となってしまうケースも稀に存在します。このようなケースを想定して、不動産売買契約書には危険負担の規定を設けるのが一般的です。

危険負担とは、債務者の責めに帰すべき事由によらずに債務が履行不能となった場合に、その損失をどちらの当事者が被るかという問題です。
民法上は、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は反対給付の履行を拒むことができるとされています(=債務者主義。民法536条1項)。すなわち、売買契約の実行前に不動産が滅失した場合には、買主は代金の支払いを拒めます

不動産売買契約においても債務者主義を採用するのが一般的ですが、個別の事情に応じて異なる定めをすることもできます。危険負担についてどのようなルールを採用するか、不動産売買契約書に明記しておきましょう。

危険負担については、以下の記事を併せてご参照ください。

その他

不動産売買契約書には上記のほか、以下の事項などを定めます。

  • 反社会的勢力の排除
  • 管理規約などにおける権利、義務の承継(マンションなどの場合)
  • 合意管轄
  • その他の特約事項

不動産売買契約における重要事項説明とは

宅地建物取引業者(いわゆる不動産会社)が自ら不動産を売却する場合、または不動産の売買を媒介する場合には、買主に対して重要事項説明を行うことが義務付けられています(宅地建物取引業法35条)。

重要事項説明」とは、不動産に関する重要な情報に関する説明です。重要事項説明の対象事項は、宅地建物取引業法および関連法令によって定められています。
現在では、オンラインで行う重要事項説明(=IT重説)の本格運用が行われています。

重要事項説明およびIT重説については、以下の記事をご参照ください。

不動産売買契約書を締結する際の注意点

不動産売買契約書を締結する際には、買主売主それぞれの立場で注意すべきポイントがあります。

買主側・売主側それぞれにおける主な注意点は、以下のとおりです。

買主側①|物件状況に関する告知事項をよく確認する
買主側②|手付解除・融資特約解除の期限をよく確認する

売主側①|必要書類を揃える
売主側②|抵当権の抹消などを確実に行う

買主側①|物件状況に関する告知事項をよく確認する

売主から交付される物件状況確認書(告知書)に記載された事項については、そのリスクが顕在化したとしても、原則として契約不適合責任を追及できません

買主側としては、告知事項をよく確認した上で、懸念が大きいものについては売主側に説明を求めるべきです。その上で、懸念が解消されない場合は購入を取りやめるか、または売買代金の減額を求めるなどの対応を検討すべきでしょう。

買主側②|手付解除・融資特約解除の期限をよく確認する

手付解除融資特約に基づく解除については、不動産売買契約書において期限が設けられるのが一般的です。
期限を過ぎると、手付解除や融資特約に基づく解除はできません。どうしても契約を解除したい場合は債務不履行解除の扱いとなり、多額の損害賠償や違約金の支払いを請求されます。

手付解除を想定したケースや、ローン特約を設定するケースでは、手付解除と融資特約に基づく解除の期限をよく確認しておきましょう

売主側①|必要書類を揃える

売主が買主に対して不動産を引き渡す際には、以下のような書類を事前に準備する必要があります。

・登記済証または登記識別情報通知
・印鑑登録証明書
・固定資産税評価証明書
・抵当権の抹消に必要な書類(金融機関から交付を受ける)
・住民票(売主の現住所が登記上の住所と異なる場合)
など

媒介を依頼している仲介業者などに確認して、必要書類をあらかじめ漏れなく揃えましょう。

売主側②|抵当権の抹消などを確実に行う

不動産の売却に伴い、抵当権賃借権などの負担は確実に解消する必要があります。負担が残ったまま売買を実行すると、後に買主から契約不適合責任を追及されかねません。

登記されている負担(抵当権など)は把握しやすいですが、契約等によって設定した未登記の担保権や用益権などがないかについても確認しましょう。

ムートン

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