和解契約とは?
和解成立の要件・民法上のルール
などを分かりやすく解説!
- この記事のまとめ
-
「和解契約」とは、紛争中の当事者が相互に譲歩をすることによって紛争を止めることを合意する契約です。
和解契約は、すでに起こってしまった紛争を解決するために締結するものであり、これから取引関係に入るために締結する契約とは、目的や機能が著しく異なっています。
この記事では、和解契約の内容や成立の要件、作成時の注意点、具体的な和解条項例などを分かりやすく解説します。
※この記事は、2022年12月9日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
和解契約とは
「和解契約」とは、当事者間になんらかの紛争がある場合に、互いに譲歩をして(「互譲」といいます)、争いをやめることを約束する契約です。(民法695条)
民法で13種類定められている典型契約の一種です。しかし、これから取引関係に入るために締結する他の典型契約と異なり、和解契約では、前提として「既におこってしまった法的紛争」があり、これを解決するために締結する契約という性質をもちます。
【和解契約の性質】
和解の種類|裁判外の和解・裁判上の和解
和解には、大きく以下の2種類があります。
①裁判外の和解
②裁判上の和解
和解契約は、当事者間の紛争を解決するためのものですが、裁判所が関与することなく締結することができます。このような、裁判所の関与しない和解契約を「裁判外の和解」と呼びます。
これに対し、紛争解決の際に、裁判所が関与して行われる和解を「裁判上の和解」と呼びます。
なお、裁判上の和解は、さらに以下の2つに分かれます。
・「訴訟上の和解」(民事訴訟法265条等)
すでに訴訟が行われている事件について、裁判所の関与のもと、その訴訟内で当事者が協議し、和解するもの
・「訴え提起前の和解(即決和解)」(民事訴訟法275条)
実際に訴訟を提起する前に、当事者間であらかじめ和解条件を合意したうえで簡易裁判所に和解を申し立て、1回の期日で和解するもの
【和解の種類まとめ】
和解と示談の違い
「示談」とは、一般的には、当事者間の紛争を、裁判所の関与なく、当事者の話し合いによる合意で解決することをいいます。
「示談」も、当事者間の紛争について、合意により争いをやめるために締結するものなので、条件について「互譲」があれば、「和解契約」にあたります。
もっとも、紛争解決の際、当事者の一方が全く譲歩しない条件で示談することもあり得ます。
そのような示談は、典型契約としての「和解契約」ではありませんが、和解契約に類似した非典型契約(無名契約)として、和解契約と同様に法的な効力をもちます。
和解契約に関する民法のルール
和解契約成立の要件
和解契約は民法上の契約なので、民法上の契約に必要とされる一般的な有効要件として、まず以下の要件が必要です。
① 適法であること
② 公序良俗に反しないこと
さらに、和解契約は、争いをやめるための契約なので、「和解契約」に特有の要件として、
① 紛争が存在していること
② 互譲があること(互いに譲歩すること)
③ 紛争を終了させることの合意があること
が必要です。
もっとも、紛争解決の際、契約当事者の一方が全く譲歩しないで合意をすることもできます。そのような合意は、和解契約類似の非典型契約(無名契約)として、和解契約と同様に法的な効力をもちます。
和解契約の効果
和解契約は、民法上の契約なので、他の契約同様、各当事者は、契約内容に従った権利を有し、義務を負います。
しかし、相手が和解契約上の義務を履行しなかった場合、強制執行をするためには、通常の契約と同様に訴訟等により「債務名義(強制執行によって実現されるべき債権の存在および範囲を公的に証明した文書)」を得る必要があります。
ただし、損害賠償金の支払いなど、金銭の支払いを約束する和解契約の場合、強制執行認諾文言付公正証書(「訴訟→債務名義の取得」という手順を踏まずに、強制執行に着手できる効力が付いている公正証書)で作成しておけば、その公正証書が「債務名義」となるので、スムーズに強制執行することができます。
なお、裁判上の和解では、裁判所が関与していることから、それ自体が「債務名義」となり、相手が和解で定めた義務を履行しない場合には、訴訟をすることなく強制執行することができます。
【強制執行の流れ】
和解契約のメリット・デメリット
和解契約のメリット
和解契約には、以下のようなメリットがあります。
① 迅速な解決が図れる
② 柔軟な解決が図れる
③ 和解条項を自発的に履行してもらえる確率が高い
④ 出費を抑えることができる
⑤ 敗訴リスクをさけることができる
①迅速な解決が図れる
紛争がおこった場合、裁判による判決で解決しようとすると、裁判所が事実や法律関係を確定しなければならないため、判決までに数年単位の時間がかかることも多く、迅速な解決には不向きです。
しかし、和解の場合、事実や法律関係が確定しなくとも、紛争についてお互いが納得できる条件が合意できれば、紛争を終わらすことができるので、迅速な解決が望めます。
②柔軟な解決が図れる
裁判による判決は、訴え出た請求を「(一部または全部を)認めるか」「認めないか」を判断するものなので、いわば、「勝」と「負」の世界であり、紛争を柔軟に解決することはできません。
一方、和解契約は、紛争当事者がそれぞれ自分の望む条件を出し合い、その条件が折り合えば、和解できます。
そのため、もともとの請求とは異なるかたちでの解決ができ、また、交渉が始まってから後の事情の変化にも対応することもできるため、柔軟に紛争を解決することができます。
③和解条項を自発的に履行してもらえる確率が高い
和解契約は、お互いが納得した条件で合意するものなので、裁判所により一方的に「勝・負」が判断される判決に比べ、心情的に受け入れやすく、一般的に、判決に比べ、義務をきちんと履行してもらいやすいといわれています。
④出費を抑えることができる
和解契約は、①で述べたように裁判に比べ、迅速に行われることが多く、また、裁判で事実を立証するための調査や準備が不要となり、その分の費用を抑えることができます。
また、③で述べたように、自発的に履行してもらえる可能性も高く、その場合、強制執行のための費用(執行のために裁判所に納付する費用や弁護士費用)もかかりません。
そのため、全体的に、判決を得るよりも出費を抑えることができます。
⑤敗訴リスクを避けることができる
上で述べたように判決は勝・負の世界であり、負けるリスクがあります。
しかし、和解契約は、勝ち負けではなく、お互いの条件をすり合わせることで納得できる合意をするものなので、一方的に「負ける」リスクを避けることができます。
和解契約のデメリット
和解契約のデメリットには、以下のようなものがあげられます。
① 譲歩しなければならない
② 和解契約だけでは強制執行ができない
①譲歩しなければならない
和解契約は、お互いの条件をすり合わせることで争いを終わらせるものなので、通常は、なんらかの譲歩が必要となります。
どこまで譲歩できるかは、紛争の内容や自社の状況等に鑑み判断することになりますが、上記の和解のメリットと比較のうえ、どこまでの譲歩であれば許容できるのかをよく検討し、納得できる範囲での譲歩とする必要があります。
②和解契約だけでは強制執行ができない
和解契約は民法上の契約なので、原則、それだけでは「債務名義」にはなりません。
そこで、仮に相手方が自発的に義務を履行してくれなかった場合、和解契約だけでは強制執行ができず、裁判手続き等をとる必要があります。
なお、前述したとおり、
・裁判上の和解をした場合
・金銭の支払いを約束する和解契約を強制執行認諾文言付公正証書で作成した場合
などには、それらが債務名義となるので、裁判手続きをとることなく強制執行が可能です。
和解契約の具体的な内容と作成時の注意点
和解契約の条項には、
・法的な効力を有する条項である「効力条項」
・効力条項以外の条項
の2種類の条項があります。
それぞれの条項の具体的な内容と作成時の注意点をみてみましょう。
法的な効力を有する条項(効力条項)
効力条項とは、その条項により当事者間の法的な権利や義務を確認したり、発生させたりする条項をいいます。
具体的には
基本条項として
・法的な関係・権利義務を確認する条項(確認条項)
・特定の給付をすることを合意する条項(給付条項)
・新たな権利を発生・変更・消滅させる条項(形成条項)
その他条項として
・付款
・清算条項 など
があります。
基本条項1|法的な関係・権利義務を確認する条項(確認条項)
「確認条項」とは、紛争の対象や紛争当事者に関連する事項について、法律関係や権利義務の存在・不存在を確認する条項をいいます。
例えば、土地の明け渡し請求に関し、土地の所有権の所在を確認する条項である、
甲と乙は、別紙物件目録記載の土地について、甲が所有権を有することを確認する。
などが「確認条項」となります。
一般的な和解契約では、紛争となった原因について、法律関係がどのような状態であるのかを確定するために、確認条項を定めます。
確認条項は、当事者間で法律関係や権利義務の存否の認識を揃え、確認するためのものなので、例えば
「何が」・・・「別紙物件目録記載の土地について」
「どのような法的状態や権利・義務なのか」・・・「甲が所有権を有する」
など、権利関係が十分に特定できるよう明確に定める必要があります。
基本条項2|特定の給付をすることを合意する条項(給付条項)
給付条項とは、当事者の一方が他方に対し、特定の給付をする旨の合意をする条項をいいます。
例えば、土地明け渡し請求に関し、土地を明け渡すことを合意する条項である
乙は、甲に対し、○年○月○日限り、別紙物件目録記載の土地を現状有姿で明け渡す。
などが「給付条項」となります。
給付条項により、契約当事者は条項の内容に従った権利義務を負います。給付条項で定める義務が自発的に履行されなかった場合には、「債務名義」を得ることで強制執行することが可能となります。
給付条項は、契約当事者に権利や義務を負わせる条項なので、和解契約の核となる条項です。
なお、和解契約でも、他の契約と同じく、強行法規や公序良俗に反しない限り、民法等の法律の規定とは異なる期限や条件(特約)を設けることも可能です。
例えば、借金の返済の期日を1カ月後としたり、返還場所を弁護士事務所としたり、瑕疵修補の完了を条件として請負代金を支払うような場合がこれにあたります。
給付内容が条項から特定できない場合、権利義務があいまいとなってしまい、履行時に新たな紛争が生じる可能性があります。
そのため、適切な給付条項とするためには、例えば
「誰が」・・・「乙が」
「何を」・・・「別紙物件目録記載の土地を」
「いつ」・・・「○年○月○日限り」
「どのような方法・形で」・・・「現状有姿で」
「どうする」・・・「明け渡す」
など、条件等を含めた給付内容が十分に特定できるかたちで定める必要があります。
基本条項3|新たな権利を発生・変更・消滅させる条項(形成条項)
「形成条項」とは、紛争や当事者に関する法律関係や権利義務について、新たな権利の発生、変更、消滅などの効果を生じさせる合意をする条項です。
例えば、土地明け渡し請求に対し、土地を明け渡すかわりに買い取ることで解決する場合、
甲は、乙に対し、別紙物件目録記載の土地を代金○円で売り渡し、乙は、これを買い受ける。
といった条項を定めますが、これは、現在の法律関係(甲が土地の所有権を有すること)をもとに、「甲が乙に土地を売却する」という新たな法律関係を形成する「形成条項」となります。
また、貸金請求において、
乙が前項に規定する返還債務を履行した場合、甲は、本契約にかかるその余の貸金債権を放棄する。
といった規定を設ける場合、その規定は「債権放棄」という新たな法律関係を形成するものなので、「形成条項」となります。
形成条項を作成する際には、例えば
「何を」・・・「別紙物件目録記載の土地を」
「どうする」・・・「代金○円で売り渡す」
など、新たに形成する法律関係が十分に特定できるかたちで定める必要があります。
その他の条項1|付款
「付款(ふかん)」とは、法律行為から発生する一般的効力に制限を付ける合意をいいます。
「特定の給付をすることを合意する条項(給付条項)」の欄で述べた期限や条件(特約)も付款の一種です。
また、
乙が前項に定める分割支払いを怠り、その額が金〇円に達したときは、当然に期限の利益を失う。
といった、債務不履行の場合に期限の利益が喪失することを定める「懈怠約款」や、
乙が賃料の支払いを怠り、その額が○円に達したときは、何らの催告を要することなく第○項の賃貸借契約は当然解除となり、乙は甲に対し、本件不動産を明け渡す。
といった債務不履行の場合に債務者が一定の権利を失うことを定める「失権約款」も「付款」にあたります。
懈怠約款や失権約款は、相手の債務不履行を防止するために有効なので、事案に沿ったかたちで定めておくとよいでしょう。
その他の条項2|清算条項
「清算条項」とは、和解契約の成立を契機に、契約当事者間の法律関係や権利義務を明確にするために規定する条項です。
例えば、
甲及び乙は、本件に関し、本契約に規定するものを除き、甲乙間に何らの債権債務がないことを確認する。
といった条項です。
清算条項では、ほとんどの場合、「債権債務がないことを確認」しますので、「どの範囲で」の取り決めなのかを明確にし、また、その範囲で債権債務がないことを確認してしまってよいかを検討のうえ、定めるとよいでしょう。
効力条項以外の条項
和解契約は、紛争を解決するための契約なので、当事者の納得と今後の紛争防止のため、法的には意味がない条項を設けることもあります。
具体的には
・任意条項
・紳士条項
・事実証明条項
があります。
任意条項
任意条項は、法令の規定と同一内容を定めているため、その条項がなくとも法律上同一の効果が発生するが、契約当事者がその内容で合意していることを明確にするために定める条項です。
例えば、民法の規定では、債務の履行は債権者の住所地で行うこととなっていますので、以下どちらの書き方をしても、法的な効果は同じです。
・乙は、甲に対し、金○円を、甲の住所地にて支払う。
・乙は、甲に対し、金〇円を支払う。
そこで、「甲の住所地で」との部分は、法的には意味のない「任意条項」となります。
しかし、契約当事者双方が法律の細かい規定まで認識しているか分からないため、契約当事者の認識が共通であることを確認し、将来の無用な紛争をさけるという意味で、任意条項にも意味があります。
紳士条項
「紳士条項」とは、将来の紛争再発を防止するために努力しますといった意思表示を示す条項をいいます。
例えば、以下のようなかたちで定めます。
甲と乙は、両社双方の発展のため、良好な関係を維持するよう相互に努力する。
このような規定は、法的には意味がありませんが、双方が再発防止に努めるという意思表示を改めて確認するという意味で定められます。
事実証明条項
事実証明条項とは、和解に関連する「事実」を確認するための条項をいいます。
例えば、過去に金銭の交付があったことを確認するための
甲及び乙は、乙が甲に対し、○年○月○日に、金〇円を交付したことを確認する。
といった規定や、和解を実施する話し合いの際に、借金の返還をする場合等に規定する、
乙は、甲に対し、第○項に定める金員を本和解契約の締結と同時に交付し、甲はこれを受領した。
といった規定が「事実証明条項」にあたります。
これらの規定は、そのような事実があったことを和解契約の中で相互に確認することで、将来、事実の存否についての争いが生じ紛争が再発することを避けられる点で意味があります。
事案別の和解条項記載例
以下では、事案別に和解条項の記載例を掲載しています。
和解契約作成時の参考にしてください。
貸金請求(貸した金を返してもらう際に行う請求)
- 乙は、甲に対し、甲乙間の○年○月○日付金銭消費貸借契約(以下「対象契約」という。)に基づく貸付金返還債務(以下「本件債務」という。)として、金〇円の支払義務があることを認める。
- 乙は、甲に対し、本件債務を、次のとおり分割して、以下に定める口座に振り込む方法により支払う。なお、振込手数料は、乙の負担とする。
(1) 〇年○月○日限り金〇円
(2) ○年○月から○年○月まで毎月末日限り金〇円
(振込口座)
銀行名 :
口座番号:
口座名義: - 乙は、前項の金員の支払いを怠った場合、甲に対し、履行遅滞に陥った日から債務完済の日まで、残額に対する年率〇%の割合による遅延損害金を支払う。
- 乙が前2項の金員の支払いを怠り、その額が金〇円に達したときは、乙は、当然に期限の利益を失う。
- 甲及び乙は、対象契約に関し、本契約に規定するものを除き、甲乙間に何らの債権債務がないことを確認する。
売買代金請求
- 甲及び乙は、別紙に定める物品につき、甲乙間で〇年○月○日付で売買契約(以下「対象契約」という。)が成立していること、及び、乙は、甲に対し、対象契約に基づく代金支払債務(以下「本件債務」という。)として、金〇円の支払義務があることを確認する。
- 乙は、甲に対し、本件債務を、○年○月○日限り、以下に定める口座に全額振り込む方法により支払う。なお、振込手数料は、乙の負担とする。
(振込口座)
銀行名 :
口座番号:
口座名義: - 乙は、前項の金員の支払いを怠った場合、甲に対し、履行遅滞に陥った日から債務完済の日まで、残額に対する年率〇%の割合による遅延損害金を支払う。
- 甲及び乙は、対象契約に関し、本契約に規定するものを除き、甲乙間に何らの債権債務がないことを確認する。
請負代金請求(契約不適合責任に基づく損害賠償と相殺)
- 乙は、甲に対し、甲乙間の〇年○月○日付請負契約(以下「対象契約」という。)に基づく請負代金支払債務(以下「本件代金支払債務」という。)として、金〇円の支払義務があることを認める。
- 甲は、乙に対し、対象契約に基づく工事のうち○○部分に契約不適合があったこと、及び、当該契約不適合に基づき、乙に対し金〇円の損害賠償金支払義務(以下「本件損害賠償債務」という。)があることを認める。
- 甲と乙は、本件代金支払債務と本件損害賠償債務を対等額で相殺する。
- 乙は、甲に対し、本件代金支払債務のうち前項の相殺によって控除された残額金〇円を、○年○月○日限り、以下に定める口座に振り込む方法により支払う。なお、振込手数料は、乙の負担とする。
(振込口座)
銀行名 :
口座番号:
口座名義: - 完済の日まで、残額に対する年率〇%の割合による遅延損害金を支払う。
- 甲及び乙は、対象契約に関し、本契約に規定するものを除き、甲乙間に何らの債権債務がないことを確認する。
債務不履行に基づく損害賠償請求
- 乙は、甲に対し、甲乙間に基づく○○契約(以下「対象契約」という。)にかかる乙の○○債務について別紙に定める内容の債務不履行があったこと、及び、当該債務不履行に基づき、甲に対し金〇円の損害賠償金支払義務(以下「本件損害賠償債務」という。)があることを認める。
- 乙は、甲に対し、本件損害賠償債務を、○年○月○日限り、以下に定める口座に全額振り込む方法により支払う。なお、振込手数料は、乙の負担とする。
(振込口座)
銀行名 :
口座番号:
口座名義: - 乙は、前項の金員の支払いを怠った場合、甲に対し、履行遅滞に陥った日から債務完済の日まで、残額に対する年率〇%の割合による遅延損害金を支払う。
- 甲及び乙は、対象契約に関し、本契約に規定するものを除き、甲乙間に何らの債権債務がないことを確認する。
契約不適合責任に基づく修補請求
- 乙は、甲に対し、甲乙間の〇年○月○日付請負契約(以下「対象契約」という。)に基づく工事のうち○○部分に契約不適合があったこと、及び、当該契約不適合に基づき、甲に対し別紙補修工事仕様書に定める内容の修補義務(以下「本件修補債務」という。)があることを認める。
- 乙は、甲に対し、○年○月○日限り、自己の費用をもって別紙補修工事仕様書のとおり工事を行うことにより、本件修補債務を履行する。
- 甲及び乙は、対象契約に関し、本契約に規定するものを除き、甲乙間に何らの債権債務がないことを確認する。
賃貸借契約解除に基づく不動産明渡請求
- 甲と乙は、別紙記載の不動産(以下「本件不動産」という。)にかかる甲乙間の○年○月○日付不動産賃貸借契約(以下「対象契約」という。)が、乙の賃料未払いを原因として、○年○月○日付で債務不履行による解除により終了したことを確認する。
- 甲は、乙に対し、本件不動産の明け渡しを○年○月○日まで猶予する。
- 乙は、甲に対し、前項の期日限り、本件不動産を原状回復の上明け渡す。
- 乙は、甲に対し、○年○月○日から○年○月○日までの間の本件不動産の未払賃料○円及び〇年○月○日から○年○月○日までの賃料相当損害金〇円、合計〇円の支払い義務があることを認める。
- 乙は、甲に対し、前項の金員を、次のとおり分割して、以下に定める口座に振り込む方法により支払う。なお、振込手数料は、乙の負担とする。
(3) 〇年○月○日限り金〇円
(4) ○年○月から○年○月まで毎月末日限り金〇円
(振込口座)
銀行名 :
口座番号:
口座名義: - 乙は、甲に対し、○年○月○日から第3項に定める明渡しの完了に至るまで、賃料相当損害金として1か月金〇万円の割合による金員を支払う。
- 乙が前2項の金員の支払いを怠り、その額が金〇円に達したときは、乙は、当然に期限の利益を失う。
- 甲及び乙は、対象契約に関し、本契約に規定するものを除き、甲乙間に何らの債権債務がないことを確認する。
特許権に基づく製造販売差止請求
- 乙は、甲に対し、乙が製造し、販売する別紙1物品目録記載の物品(以下「対象物品」という。)が甲が専有する別紙2特許権目録記載の特許権(以下「本件特許権」という。)の特許発明の技術的範囲に属することを認める。
- 乙は、本契約締結日以降、対象物品(本契約締結日より前に製造されたものを含む。)を製造又は販売しない。
- 乙は、乙が所有する対象物品(完成品)及び半製品(対象物件の構造を具備しているが、いまだ製品として完成するに至らないもの)を、○年○月○日までに廃棄処分する。
- 乙は、甲に対し、乙が何ら権原なく〇年○月○日から○年○月○日までの間に対象物件を製造販売し、甲に与えた損害の賠償として、金〇円の支払義務があることを認める。
- 乙は、甲に対し、前項に定める金員を、○年○月○日限り、以下に定める口座に振り込む方法により支払う。なお、振込手数料は、乙の負担とする。
(振込口座)
銀行名 :
口座番号:
口座名義: - 乙は、前項の金員の支払いを怠った場合、甲に対し、履行遅滞に陥った日から債務完済の日まで、残額に対する年率〇%の割合による遅延損害金を支払う。
解雇無効請求
- 乙は、乙が甲に対し通知した〇年○月○日付解雇の意思表示(以下「本件解雇」という。)を撤回し、甲に対し、甲が乙の従業員の地位を有することを確認する。
- 甲は、○年○月○日から、従前どおり甲の○○支店において○○の地位で就労するものとする。
- 乙は、甲に対し、○年○月○日から○年○月○日までの賃金として、金〇円の支払義務があることを認める。
- 乙は、甲に対し、前項に定める金員を、○年○月○日限り、以下に定める口座に振り込む方法により支払う。なお、振込手数料は、乙の負担とする。
(振込口座)
銀行名 :
口座番号:
口座名義: - 乙は、甲に対し、○年○月○日以降の賃金については、乙の給与規定に従い支払うことを確認する。
- 乙は、甲に対し、前項の給与規定の適用及び昇進その他の処遇並びに配置転換等について、本件解雇を利用とする一切の不利益な取扱いをしないことを確約する。
- 甲と乙は、本契約締結日以降、円満な労使関係の維持に努力する。
この記事のまとめ
和解契約は、紛争があることが前提となるため、他の契約に比べ、相手方との交渉や合意形成が困難となる傾向にあります。
しかし、和解契約が成立すれば、訴訟に発展することなく紛争が終結するなどのメリットが大きく、また、お互いが納得できる合意を形成することで、紛争後の相手方との関係を好転させていくことも可能です。
自社として譲れない条件と譲ることができる条件を整理したうえで相手方と交渉するとよいでしょう。
和解条項の作成にあたっては、自社の希望を反映した法的に有効な和解条項となっているか、本記事を参考に確認してみてください。
和解契約の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!