ブラックバイトとは?
よくある特徴・見分け方・
辞めたい場合の相談先などを分かりやすく解説!
- この記事のまとめ
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「ブラックバイト」とは、劣悪な労働環境で働くアルバイトの俗称です。
一部の企業では、労働基準法の最低ラインを下回る条件でブラックバイトを募集している例が見られます。残業代が適切に支払われない、ミスをすると賃金から天引きされる(罰金)などはブラックバイトの典型例です。
ブラックバイトかどうかを事前に見極めるためには、求人情報や面接担当者の言動、労働条件通知書などを注意深くチェックしましょう。また、実際にブラックバイトとして働いており、辞めたいものの無理に引き止められて困っている場合は、労働基準監督署・退職代行業者・弁護士などにご相談ください。
この記事ではブラックバイトについて、よくある特徴・見分け方・辞めたい場合の相談先などを解説します。
※この記事は、2025年3月25日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
ブラックバイトとは?
「ブラックバイト」とは、劣悪な労働環境で働くアルバイトの俗称です。
企業で働く労働者の権利は、労働基準法などの法令によって守られています。正社員だけでなく、パートやアルバイトなどについても同様です。
しかし一部の企業では、労働基準法の最低ラインを下回る条件でアルバイトを募集しているケースがあります。また、その他の法令で定められた労働者保護のルールを守らない企業も散見されます。
このような企業でブラックバイトとして働くと、心身ともに疲弊してしまうだけでなく、正当な待遇を得られず時間を無駄にしてしまいます。
ブラックバイトに引っかからないように、求人情報などを注意深く確認しましょう。
ブラックバイトのよくある特徴
ブラックバイトにはさまざまなパターンがありますが、特に以下のようなケースがよく見受けられます。
① タイムカードの不正打刻を指示される
② 準備や片付けの時間に対して、残業代が支払われない
③ 給料日がバラバラである・給料の未払いがある
④ 休憩時間がない・短すぎる・決まっていない
⑤ 最低賃金を下回っている
⑥ パワハラやセクハラなどのハラスメントが行われている
⑦ ミスをすると賃金から天引きされる・罰金がある
⑧ 労災保険に加入していない・加入させてくれない
⑨ 退職しようとすると、無理に引き止められる
タイムカードの不正打刻を指示される
企業は労働者に対し、実際の労働時間に応じた賃金を支払わなければなりません。所定労働時間を超えて労働者を働かせた場合は、残業代を支払う必要があります。
アルバイトについても、正社員などと同様に残業代が発生します。
ブラックバイトでは、上司などがアルバイトに対して、タイムカードの不正打刻を指示するケースがあるようです。具体的には、出勤しているのにタイムカードを打刻させないケースや、まだ退勤していないのに前倒しでタイムカードを打刻させるケースが見られます。
タイムカードの不正打刻指示は、主に企業が支払う残業代の額を減らそうとして行われるものですが、当然ながら労働基準法違反です。上司などからタイムカードの不正打刻を指示されるようであれば、ブラックバイトであると判断しましょう。
準備や片付けの時間に対して、残業代が支払われない
労働者が企業の指揮命令下で働いている時間(=労働時間)には、賃金が発生します。
所定労働時間外の労働時間については、労働者は企業に対して残業代を請求する権利があります。例えば、仕事を始める前の準備の時間や、仕事が終わった後の片付けの時間についても残業代を請求できます。正社員だけでなく、アルバイトも同様です。
しかしブラックバイトでは、本来は労働時間に当たる準備や片付けの時間に対して、残業代を全く支払わないケースが多く見られます。店舗の営業時間だけにしか賃金を支払わず、その前後の準備や片付けには一切賃金を支払わない場合などが典型例です。
労働基準法のルールを誤解している可能性もあるので、準備や片付けの時間に対して残業代が支払われていないときは、まず上司などに相談して是正を求めましょう。
それでも残業代が支払われないなら、ブラックバイトであると判断すべきです。
給料日がバラバラである・給料の未払いがある
企業は労働者に対して、毎月1回以上、一定の期日を定めて賃金を支払わなければなりません(労働基準法24条2項)。
しかし、小規模な企業や個人営業の店舗などでは、給料日が経営者や店主の気まぐれで設定されるケースがしばしば見られます。給料日がバラバラであることは労働基準法違反に当たるため、ブラックバイトであることを疑うべきです。
また、本来の給料日に賃金が全額支払われない場合も労働基準法違反に当たります(同条1項)。企業や店舗の都合によって賃金の支払いを遅らせることは認められません。
賃金の未払いが生じている場合は、企業や店舗の経営状態が悪化している可能性が高いです。将来的に倒産して賃金を回収できなくなるリスクがあるため、転職なども検討すべきでしょう。
休憩時間がない・短すぎる・決まっていない
企業は労働者に対して、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、労働時間が8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければなりません(労働基準法34条1項)。
したがって、6時間を超えてアルバイトのシフトに入っているのに、全く休憩が与えられない場合は労働基準法違反に当たります。
また、勤務時間が6時間を超えているのに、15分や30分などの短すぎる休憩しか与えられていない場合も労働基準法違反です。
なお、休憩を分割して付与することは、トータルの休憩時間が労働基準法の最低ライン以上であれば問題ありません。ただし、各回の休憩時間があまりにも短すぎる場合は、実質的に心身を休める時間がないことや、労働者が休憩時間を自由に利用できないことから問題があると考えられます。
休憩を与えるタイミングは任意ですが、休憩の長さが決まっておらず、上司や店主などの指示によって短縮されるケースがあるようでは問題があります。労働基準法によって付与が義務付けられた休憩の分数を下回り得ることに加えて、労働者が休憩を自由に利用できないようになっている可能性が高いためです。
上記に挙げた例のように、休憩時間が適切に付与されていない場合は、ブラックバイトであると考えましょう。
最低賃金を下回っている
企業は労働者に対して、最低賃金以上の賃金を支払わなければなりません。地域別最低賃金と特定最低賃金のうち、高い方が適用されます。
地域別最低賃金:都道府県内で働く全ての労働者に適用される最低賃金
特定最低賃金:都道府県内において特定の産業に従事する労働者に対して適用される最低賃金
近年では、地域別最低賃金が毎年大幅に引き上げられています。2024年10月から適用されている地域別最低賃金の最高額は東京都の1163円、最低額は秋田県の951円です。
アルバイトに支払われる賃金を時給換算した結果、最低賃金を下回っている場合は労働基準法違反に当たります。厚生労働省のウェブサイトで最低賃金を調べ、自分が受け取っている賃金がそれよりも低い場合は、ブラックバイトであることを疑いましょう。
パワハラやセクハラなどのハラスメントが行われている
パワハラやセクハラなどのハラスメントが横行しているアルバイトも、ブラックバイトの典型例の一つといえます。
- パワハラ・セクハラとは
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パワハラ(パワー・ハラスメント)
→職場における優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超え、労働者の就業環境を害するもの
(例)暴力を振るう、侮辱する、仲間外れにする、無理難題を押し付ける、プライベートを詮索するなどセクハラ(セクシュアル・ハラスメント)
→職場における性的な言動であって、労働者の対応によっては労働条件につき不利益を受け、または労働者の就業環境を害するもの (例)体を触る、異性との交際関係を詮索する、卑猥な言葉を浴びせる、わいせつな写真を職場に貼るなど
特にアルバイトのような弱い立場では、ハラスメントに対して拒否できないケースも多いと思われます。上司や同僚の言動に不快感を覚えたら、労働基準監督署などへの相談を検討しましょう。
ミスをすると賃金から天引きされる・罰金がある
アルバイトは必ずしも仕事に習熟していないため、ミスをすることはよくあるでしょう。
勤務先の企業は、たとえアルバイトがミスをしたとしても、その賃金から弁償金や賠償金(罰金)などを天引きしてはいけません。賃金全額を支払わなければならないという「全額払いの原則」に反するためです(労働基準法24条1項)。
勝手に弁償金や罰金を引かれるようでは、どんなに働いても賃金が目減りし、大きく損をしてしまう可能性が高いです。ブラックバイトであると判断して、何らかの対処を検討しましょう。
労災保険に加入していない・加入させてくれない
アルバイトも含めて、労働者を雇用する企業は労災保険への加入が義務付けられています。しかし、アルバイトを労災保険に加入させない企業や、そもそも労災保険適用事業場として届出をしていない企業もあるようです。
勤務先が労災保険に加入していなくても、業務上の原因によってけがをした場合や病気になった場合には、労災保険給付を請求することができます。
しかし、労災保険に加入しない企業は、アルバイトを含む労働者を守ろうとする意識が薄いと言わざるを得ません。重大な事故が起こる前に、退職などを含めた対応を検討しましょう。
退職しようとすると、無理に引き止められる
企業には、退職を希望する労働者を引き留める権利はありません。
期間の定めなく雇用されている労働者であれば、2週間前に勤務先へ通知すれば退職できます。アルバイトも同様です。
しかし、「繁忙期だから」「引継ぎが済んでいないから」「代わりの人がいないから」などの理由で、退職しようとするアルバイトを無理に引き留めるケースが散見されます。
アルバイトとしては、無理な引き留めに応じる必要はありません。内容証明郵便などで退職届を郵送し、そのままきっぱり退職しましょう。自分で対応するのが難しければ、退職代行業者や弁護士に依頼することも考えられます。
ブラックバイトかどうかを事前に見分ける方法
ブラックバイトとして実際に働き始めると、勤務中はもちろんのこと、退職しようとする際にもさまざまなトラブルに巻き込まれるおそれがあります。できる限り、ブラックバイトかどうかを事前に見極めて避けるべきです。
ブラックバイトかどうかを見極めるためには、アルバイト探しの段階で以下のポイントに注意しましょう。
- 求人情報をよく確認する
- 面接担当者の言動に注意する
- 労働条件通知書をよく確認する
求人情報をよく確認する
ブラックバイトかどうかを見極めるためには、まず求人情報をよく読んで、労働条件が明確になっているかどうかをチェックしましょう。
業務の内容・賃金・休憩・残業・休暇などの条件が明確に記載されていれば、ブラックバイトであるリスクは低いと考えられます。
面接担当者の言動に注意する
アルバイトの採用面接を受ける際には、面接担当者の言動にも気を配りましょう。アルバイト側の都合を無視してたくさんシフトに入るよう要求してきたり、勤務時間外でも何らかの作業があると伝えてきたりする場合は、ブラックバイトのリスクが高いと考えられます。
また、労働条件について気になるところや分からないところがあれば、面接担当者に質問してみましょう。曖昧な答えしか返ってこないようなら、ブラックバイトの側面を誤魔化したいのかもしれません。
労働条件通知書をよく確認する
実際にアルバイトとして雇用されることになった場合は、労働条件通知書が交付されるはずです。労働条件通知書の内容が、求人情報と異なっていないかどうかをよく確認しましょう。
なお、そもそも労働条件通知書が交付されない場合は労働基準法違反に当たり、ブラックバイトであるリスクが高いと思われるのでご注意ください。
ブラックバイトを辞められずに悩んでいる場合の相談先
ブラックバイトを辞められずに困っている人は、以下の窓口などへ相談しましょう。
① 労働基準監督署
労働基準法違反の事実を申告できるほか、署内に設置されている「総合労働相談コーナー」では、アルバイトに関するさまざまな事柄を専門の担当者へ相談できます。
参考:厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
② 退職代行業者
退職する意思を代わりに勤務先へ伝えてもらえます。引き留められるのが面倒な場合や、自分で退職を伝えるのが怖い場合などに役立ちます。
③ 弁護士
退職する意思を勤務先へ伝えてもらえるほか、未払い残業代請求などの対応も依頼できます。勤務先との間で何らかのトラブルが生じそうな場合は、弁護士に相談しましょう。