コンプライアンス違反が発生
したときの対応方法とは?
再発防止策のポイントも解説!
- この記事のまとめ
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コンプライアンス違反が発生した場合、企業はレピュテーションの悪化や損害賠償などのリスクを負ってしまいます。
違反による損害を最小限に抑えるためには、迅速かつ的確な事後対応が必要不可欠です。事実関係を正しく把握した上で、株主・取引先や監督官庁、被害者、違反者などへの対応を行いましょう。
また、コンプライアンス違反の再発を防ぐため、未然に違反を検出できるような社内体制を整備することも重要になります。監視体制の整備、コンプライアンス研修の実施、通報窓口の設置(または周知)、危機管理マニュアルの整備などが効果的です。
自社に適した再発防止策を検討しましょう。
今回は、コンプライアンス違反が発生したときの対応方法や、再発防止策のポイントを解説します。
※この記事は、2023年2月7日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
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目次
コンプライアンスとは
コンプライアンス(compliance)とは、企業が法令をはじめとする社会規範を順守することをいいます。
社会規範とは、例えば以下のようなものを指します。
・法令
・官公庁や自主規制団体のガイドライン
・社内規程
・契約
・社会通念
・モラル(企業倫理)
など
コンプライアンス違反の例
コンプライアンス違反にはさまざまなパターンがありますが、具体的には以下の例が挙げられます。
・会社の代表者が罪を犯して逮捕され、有罪判決を受けてしまった
・会社が法令上の義務に違反し、行政処分を受けてしまった
・会社が契約上の義務に違反し、相手方から損害賠償を請求されてしまった
・従業員が倫理に反する行為をし、週刊誌に取り上げられてSNS上で炎上してしまった
など
いずれのパターンについても、企業の業績に直接的な悪影響を与える深刻な事態といえます。こうした事態を防ぐため、企業はコンプライアンスを徹底しなければなりません。
コンプライアンス違反によって企業に生じうる損害の例
コンプライアンス違反を犯した企業は、以下の損害を負うリスクに晒されます。
レピュテーションが悪化する
コンプライアンス違反が報道されれば、世間はそれを企業の不祥事として認識します。その結果として企業のレピュテーションやブランドイメージが損なわれ、取引先や顧客が離れて行ってしまう可能性があります。
売り上げが減少する
コンプライアンス違反によって企業のレピュテーションなどが損なわれると、商品・サービスの売り上げ減少は不可避です。
売り上げ減少は企業の業績悪化に直結し、最悪の場合倒産に追い込まれる可能性もあります。
取引先から契約解除される
- コンプライアンス違反によって刑事罰や行政処分を受けたこと
- 企業の業績やレピュテーションに重大な悪影響が生じたこと
は、取引先と締結している契約の解除事由に該当することがあります。
重要な取引に関する契約を解除されると、事業継続が不可能になるといったダメージを負うでしょう。
人材が流出し採用難に陥る
コンプライアンス違反により会社のレピュテーションなどが悪化すると、「この会社にはもう居られない」と考える人が増え、離職率が高くなるケースが多いです。また、「あの企業は、○○違反を起こした企業だ」といった見方が世間に広まり、新規採用もうまく進まない可能性が高いです。
優秀な人材が定着せず、新規で確保もできなくなれば、次第に経営が立ち行かなくなるでしょう。
損害賠償請求をされる
コンプライアンス違反に当たる行為により、契約相手や第三者に損害を与えた場合には、会社が損害賠償請求を受ける可能性もあります。
行為の内容および結果によっては、損害賠償額が極めて多額になり、経営に大きな打撃となるかもしれません。
行政処分を受ける
コンプライアンス違反が法令違反である場合は、監督官庁から行政処分を受ける可能性があります。
特に情状が重い場合には、業務停止や許認可取り消しなどの行政処分が行われ、事業運営が不可能になりかねません。そうなれば顧客や取引先を失い、資金繰りも悪化して、会社が倒産に追い込まれることも十分あり得ます。
刑事罰が科される
コンプライアンス違反が法令違反である場合、行政処分のみならず、刑事罰が科されることもあります。
違反行為をした者が逮捕・起訴されれば、業務が滞るだけでなく、会社のレピュテーションにも重大な悪影響が生じることは必至です。
コンプライアンス違反が発生したときの対応方法
会社やその構成員によるコンプライアンス違反が発覚した場合、速やかに以下の対応を講じましょう。
1|事実関係を調査・把握する
2|ステークホルダー(株主・取引先など)に対応状況を発信する
3|監督官庁に対する報告を行う
4|被害者がいる場合はケアを行う
5|違反者に対する懲戒処分を検討する
6|再発防止策を検討・実施する
1|事実関係を調査・把握する
まずは、コンプライアンス違反に関する事実関係を調査し、正確に把握する必要があります。具体的には、以下の事項などを把握しましょう。
・違反事実の有無、ある場合はその内容
・違反の頻度(一回限りか、常習的か)
・違反に関与した者は誰か
・違反によって会社に生じた損害の内容、金額
・違反による被害者の有無、人数、状況
・行政処分リスクの有無、程度
・訴訟リスクの有無、程度
・SNSなどにおける炎上リスクの有無、程度
など
不祥事の鎮火と再発防止を図るためには、事実関係の迅速かつ正確な把握が必要不可欠です。
必要に応じて、危機管理を取り扱う弁護士などにサポートを依頼し、速やかに調査を行いましょう。
2|ステークホルダー(株主・取引先など)に対応状況を発信する
レピュテーションの毀損を最小限に食い止め、その後の回復へとつなげるためには、株主・取引先などのステークホルダーに対するタイムリーな情報共有が重要になります。
適切なタイミングで十分な情報共有を行えば、
- 株主による批判や株式売却
- 取引先による損害賠償請求や契約解除
などの動きを抑えられる可能性があります。
3|監督官庁に対する報告を行う
法令違反については、法令に基づき、(監督官庁への)報告義務・行政処分の対象となることがあります。
コンプライアンス違反が法令違反となる場合には、関連する法令の規定を踏まえた上で、監督官庁に対して迅速に報告を行いましょう。誠実に違反状態の是正へ取り組めば、厳しい行政処分を受ける可能性は低くなります。
4|被害者がいる場合はケアを行う
会社のコンプライアンス違反による被害者がいる場合には、被害者に対するケアを適切に行うことが、トラブルの深刻化防止につながります。
コンプライアンス違反の被害者は、会社の内部者(従業員など)の場合も、外部者の場合もあります。
内部者が被害者となるコンプライアンス違反の典型例は、パワーハラスメント(パワハラ)です。パワハラの場合、被害者の従業員を十分にケアすることで、離職や損害賠償請求を防げる可能性があります。
外部者が被害者となるコンプライアンス違反の典型例は、知的財産権侵害や製造物責任が発生する場合などです。これらのケースでは、被害者から損害賠償請求を受けることが多いですが、謝罪を尽くして誠実に対応すれば、高額の損害賠償を避けられる可能性があります。
5|違反者に対する懲戒処分を検討する
コンプライアンス違反に関与した者に対しては、懲戒処分を検討すべきです。適切に懲戒処分を行えば、社内向けにコンプライアンス違反のリスクを警告でき、今後の再発防止につながります。
ただし、従業員の行為の性質・態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない懲戒処分は無効となります(労働契約法15条)。
6|再発防止策を検討・実施する
コンプライアンス違反は会社に重大な悪影響を与えかねないため、徹底して再発防止に取り組む必要があります。社内のオペレーションを隅々まで見直し、コンプライアンス違反の芽をできる限り摘んでおきましょう。
次の項目では、コンプライアンス違反の再発を防ぐためのポイントを解説します。
コンプライアンス違反の再発を防ぐためのポイント
コンプライアンス違反の再発を防ぐためには、以下のポイントに留意して多角的な対策を行いましょう。
・社内における確認体制の強化
・取締役相互間の監視強化
・定期的なコンプライアンス研修の実施
・経営陣と現場のホットラインを設置
・内部通報窓口の設置
・危機管理マニュアルの整備
社内における確認体制の強化
人為的ミスによるコンプライアンス違反の発生を防ぐには、社内における確認体制を強化することが効果的です。
例えば金融機関や上場会社などでは、「3つの防衛線(three lines of defense)」が浸透しています。
3つの防衛線とは、
- 第1線|所管部門
- 第2線|バックオフィス部門
- 第3線|内部監査部門
の3段階でチェックを行い、コンプライアンス違反などのリスクを抑制しようとする考え方です。複数部門によるチェックによって慎重を期す点は、企業の規模を問わず参考になります。
また、同一部門内でも複数の担当者がチェックすることで、コンプライアンス違反のリスクを相当程度抑制できます。人件費が増える面はありますが、コンプライアンス違反が発生した場合の損害リスクを考慮すれば、必要な投資と考えることもできます。
取締役相互間の監視強化
企業のコンプライアンス違反は、取締役の主導により発生するケースがよくあります。取締役は自らが有する権限を、私腹を肥やすために悪用してしまうことがあるからです。
取締役主導のコンプライアンス違反を抑止するには、取締役相互間の監視を強化すべきです。取締役会において詳細な業務報告を求める、部門や業務を複数の取締役に担当させるなどして、取締役がコンプライアンス違反をしやすい状況を極力つくらないようにしましょう。
定期的なコンプライアンス研修の実施
コンプライアンス違反は、各従業員の知識不足や意識の低さが原因となって生じることもあります。そのため、定期的にコンプライアンス研修を実施して、全社的にコンプライアンスの意識を浸透させることが、違反防止につながります。
従業員向けのコンプライアンス研修については、法務部門やコンプライアンス部門がプログラムを組んで提供するか、または外部弁護士やセミナー会社に対して、プログラムの提供と講師の派遣を依頼するのが一般的です。
経営陣と現場のホットラインを設置
経営陣が現場の状況を正しく把握していないと、従業員の暴走によるコンプライアンス違反が発生するリスクが高まります。
経営陣としては、現場の情報をタイムリーに吸い上げられるように、現場とのホットラインを設けることも一案です。その場合には、連絡や通報によって不利益な取り扱いを受けることがない旨を、従業員に対して十分に周知しましょう。
内部通報窓口の設置
公益通報者保護法に基づき、内部通報窓口を設置することも、コンプライアンス違反防止の観点から効果を発揮します。
また、既に設置されている場合は、あらためて窓口の存在や利用方法を周知し、「コンプライアンス違反があった場合(または違反と思われる場合)には、内部通報窓口の活用してください」とメッセージを発信することも効果的です。
公益通報者保護法および内部通報窓口の詳細については、以下の記事を参照ください。
危機管理マニュアルの整備
万が一コンプライアンス違反が発生した場合に備えて、危機管理に関する対応マニュアルを整備しておきましょう。
危機管理マニュアルで定めるべき事項としては、以下の例が挙げられます。
・対応の責任者
・対応担当者の役割分担(統括担当、調査担当、被害者のケア担当、広報担当など)
・対応手順
・報告、連絡などの方法
・相談先の外部弁護士
・懲戒処分の検討手順、考慮要素
・再発防止に関する検討手順
など
この記事のまとめ
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