株主とは?
株主ができること・会社法上の手続き・
株主総会対応の注意点などを分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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「株主」とは、株式会社の株式を保有する者のことです。
株主は、取締役の選任・解任を含めて、会社に関する重要な事項を決定する権利を持っています。そのため、株主は株式会社の「所有者」と表現されることもあります。さらに株主は、会社の得た利益の分配を受ける権利や、会社清算時に残った財産の分配を受ける権利などを有します。
株主に関しては、会社法においてさまざまな手続きが定められています。例えば株式の新規発行、株主名簿の作成・記録、株式譲渡の承認、自己株式の取得、株式の併合・分割・無償割当て、株主総会の開催などです。
株式会社は、これらの手続きを遵守しつつ、株主との対話を意識した対応を取ることが求められます。
この記事では株主について、株主ができること、株主に関する会社法上の手続き、会社における株主総会対応の注意点などを解説します。
※この記事は、2022年12月23日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
株主とは
「株主」とは、株式会社の株式を保有する者のことです。
株主は会社の実質的な所有者として、会社に関する重要な事項を決定し、会社が得た利益の分配を受ける権利を持っています。会社の経営を担う取締役やその他の役員は、すべて株主の信頼・委任に基づいて選任されます。
株主は会社にとって、最も重要なステークホルダー(利害関係者)といえるでしょう。
株主の種類
株主は、その属性や保有株式の数・種類などに応じて、以下のように分類して呼称されることがあります。
- 株主の種類
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①個人株主・法人株主
株式は、個人のみならず法人も保有することができます。個人である株主は「個人株主」、法人である株主は「法人株主」と呼ばれることがあります。②外国人株主
発行会社の本国とは異なる国籍を有する株主をいいます。③筆頭株主
全株主の中で、最も高い株式保有割合を有する株主をいいます。④支配株主
発行会社の経営を支配している株主をいいます。
自らと子会社や近親者などを併せて、発行済株式総数の過半数を保有している株主を意味するのが一般的です。⑤少数株主
以下に挙げるような意味で用いられます(文脈によって異なります)。
・支配株主ではない株主
・会社の経営方針とは異なる意見を有するが、それを経営に直接反映させることができるだけの株式を保有していない株主
・会社法上の少数株主権を行使できる株主⑥主要株主
発行済株式総数の10%以上を保有する株主をいいます。金融商品取引法により、上場会社の主要株主に異動があった際には、直ちにその内容を開示することが義務付けられています。⑦大株主
比較的高い株式保有割合を有する株主です。「○%以上」というような明確な基準はありません。⑧安定株主・浮動株主
株式を長期保有する意思を有する株主を「安定株主」、短期的に株式を売買する株主を「不動株主」と呼ぶことがあります。
安定株主が多ければ株価は安定し、不動株主が多ければ株価は乱高下する傾向にあります。⑨機関投資家
証券会社・銀行・ファンドなど、顧客から集めた資金を運用する社団や法人をいいます。
株主権とは|株主ができること・主な権利
株主が会社に対して有する権利を「株主権」といいます。株主権の種類や、主な株主権の内容について解説します。
自益権と共益権
株主権は、「自益権」と「共益権」の2つに大別されます。
「自益権」とは、行使の結果が株主個人の利益のみに影響する権利です。剰余金配当請求権や残余財産分配請求権など、経済的利益に関する株主権の多くが自益権に該当します。
「共益権」とは、行使の結果が株主全体の利益に影響する権利です。株主総会における議決権をはじめとして、会社の経営参加に関する権利の多くが共益権に該当します。
単独株主権と少数株主権
株主権の分類には、「単独株主権」と「少数株主権」の2つに分ける方法もあります。
「単独株主権」とは、1株でも保有していれば行使できる権利です。剰余金配当請求権や残余財産分配請求権、株主総会における議決権などが単独株主権に該当します。
「少数株主権」とは、一定割合または一定数以上の株式を保有している場合に限り行使できる権利です。株主総会における株主提案権、役員の解任請求権、会計帳簿閲覧請求権などが少数株主権に該当します。
株主権の具体的な内容
主要な株主権としては、以下の権利が挙げられます。
- 主要な株主権の例
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✅ 株主総会における議決権
✅ 利益の分配(配当金)を受ける権利|剰余金配当請求権
✅ 会社清算時に残った財産の分配を受ける権利|残余財産分配請求権
✅ 株主総会における議題提出権、議案提出権
✅ 会社に対して訴訟を提起する権利
✅ 会計帳簿閲覧請求権
✅ 株主総会招集請求権
株主総会における議決権
株主総会では、株主は1株当たり1票の議決権を行使できます(会社法105条1項3号)。たくさん株式を保有していれば、その分だけ株主総会における議決に大きな影響を与えることが可能です。
株主総会決議は原則として、出席株主の議決権(株式数)の過半数によって行われます(会社法309条1項)。
ただし、会社にとって重要な事項については、出席株主の議決権の3分の2以上による特別決議(同条2項)や、さらに要件が加重された特殊決議(同条3項・4項)が必要とされています。
利益の分配(配当金)を受ける権利|剰余金配当請求権
株主には、事業を通じて会社が得た利益の分配(配当金)を受ける権利があります(会社法105条1項1号)。これを「剰余金配当請求権」といいます。
剰余金の配当については、株主総会決議または取締役会決議で金額などが定められます(会社法454条)。日本の上場会社の場合、年2回の配当が行われることが多いですが、全く配当を行わない場合や、年4回の配当を行う場合などもあります。
会社清算時に残った財産の分配を受ける権利|残余財産分配請求権
会社が解散・清算によって消滅する場合、株主は、債務を弁済した後に残った会社財産の分配を受ける権利を有します(会社法105条1項2号)。これを「残余財産分配請求権」といいます。
残余財産の分配は、会社の解散後に取締役などが就任する清算人が行います(会社法481条3号)。
その他の株主権
そのほか、株主は以下の権利などを有します。
✅ 株主総会における議題提出権、議案提出権(会社法303条・304条)
→株主総会で議論するテーマ(議題)や、テーマに対する具体的な提案(議案)を提出する権利です。いずれも単独株主権ですが、取締役会設置会社では、議題提出権が少数株主権とされています。
✅ 会社に対して訴訟を提起する権利(会社法828条以下)
→会社による組織行為・新株発行の無効確認、株主総会決議の不存在・無効確認・取消し、会社の解散について訴訟を提起する権利です。原則として単独株主権ですが、解散の訴えについては少数株主権(10%以上保有)とされています。
✅ 会計帳簿閲覧請求権(会社法433条)
→会計帳簿や関連資料の閲覧・謄写を請求する権利です。原則として少数株主権(3%以上保有)ですが、計算書類の閲覧請求権については単独株主権とされています。
✅ 株主総会招集請求権(会社法297条)
→取締役に対して、株主総会の招集を請求する権利です。少数株主権(3%以上保有)とされています。
株主が引き受けるリスク・責任
株主は会社に対して様々な権利を有する一方で、会社の経営状況が悪化すれば、株式が無価値になるリスクを負っています。
上場会社の場合、市場において取引されている株式の価格は、日々刻々と変動しています。株価が元本を下回ることもありますし、会社の業績によっては配当が打ち切られることもあります。
非上場会社の場合、株式の市場価格はありませんが、会社の業績に応じて潜在的な株価は変動しています。
元本が保証されている銀行預金などとは異なり、株式を通じた投資にはリスクがつきものです。
ただし株式会社の場合、株主は間接有限責任を負うにとどまります。仮に会社が債権者に対して債務を支払えなくなっても、株主が債務を代わりに支払う必要はありません。株主が負うリスクは、出資額の範囲に限定されているのです。
このように、元本割れのリスクはあるものの、そのリスクは出資額の範囲に限定されているのが株式の特徴です。
株主平等の原則とは
株式会社は、株式の内容・数に応じて、株主を平等に取り扱わなければなりません(会社法109条1項)。これを「株主平等の原則」といいます。
株主平等の原則によって1株の内容・価値を一定にすることで、一般投資家が出資の結果を予測しやすくなります。その結果として、一般投資家が株式を購入しやすくする効果が期待できます。
株主平等の原則の表れとして、株主総会の議決権が1株1票とされているほか、剰余金の配当も株式数に比例して行われます。
株主に関する主な会社法上の手続き
株主に関しては、会社法において様々な手続きが定められています。株主に関する主な手続きとしては、以下の例が挙げられます。
- 株主に関する主な会社法上の手続き
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✅ 株式の新規発行
✅ 株主名簿の作成・記録
✅ 自己株式の取得
✅ 株式の併合・分割・無償割当て
✅ 株主総会の開催
株式の新規発行
株式会社は株主総会決議により、株式を新たに発行することができます(会社法199条1項・2項)。ただし公開会社(上場会社)では、株式の新規発行は取締役会決議によって行います(会社法201条1項)。
新規発行株式の取得を申し込んだ者に対して、会社は株式を割り当てます。申込者は、募集要項で定められた払込日までに、金銭の払い込みなどによって出資を履行することで、新規発行株式を取得します。
株主名簿の作成・記録
株式会社は、以下の事項を記載・記録した株主名簿を作成することが義務付けられています(会社法121条)。
- 株主名簿の記載事項
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・株主の氏名または名称、住所
・保有株式数
・株式の取得日
・株券番号(株券発行会社の場合)
株主名簿への記載・記録は、株主が会社に対して株主権を行使するための対抗要件とされています(会社法130条)。譲渡によって株式を取得した場合は、株主権を行使するため、会社に株主名簿の書き換えを請求しなければなりません(上場株式の場合は、証券会社等を通じて書き換え請求が行われます)。
株式譲渡の承認
株主は、原則として保有する株式を自由に譲渡することができます(株式譲渡自由の原則。会社法127条)。
しかし、非公開会社(非上場会社)の場合、株式には譲渡制限が付されています。
譲渡制限株式を譲渡するには、会社の承認を得なければなりません。会社法では、譲渡制限株式の譲渡承認に関するルールが定められています(会社法136条以下)。
なお、会社が譲渡を承認しない場合、株主は会社に対して譲渡制限株式の買取りを請求できます(会社法140条)。
自己株式の取得
株式会社は、株主総会決議によって条件を定めた場合などに、すでに発行した自社株式を取得することができます(会社法155条)。これを「自己株式の取得」といいます。
なお、特定の株主から自己株式を取得しようとする場合は、他の株主にもその旨を通知しなければなりません(会社法160条1項・2項)。通知を受けた他の株主は、自己の保有株式も取得対象に加えるべき旨の議案を、株主総会に提案することができます(同条3項)。
株式の併合・分割・無償割当て
株式会社は、株式の併合・分割・無償割当てを行うことが認められています。株式の併合・分割・無償割当ては、1株当たりの株価を変更することなどを目的として行われます。
(1) 株式の併合(会社法180条)
複数の株式をまとめて1株にします。株主総会決議によって行います。
(2) 株式の分割(会社法183条)
1株を複数の株式に分割します。原則として株主総会決議により行いますが、取締役会設置会社では取締役会決議によって行います。
(3) 株式の無償割当て(会社法185条)
既存の株主に対して、株式を無償で割り当てます。原則として株主総会決議により行いますが、定款で別段の定めをすれば異なる手続き(取締役会決議など)も認められます。
株主総会の開催
株式会社は、毎年1回定時株主総会を招集しなければなりません(会社法296条1項)。また、必要がある場合にはいつでも臨時株主総会を招集できます(同条2項)。
株主総会では、取締役または株主が提案した議題(テーマ)について議論し、必要に応じて決議を行います。また、取締役から株主への報告が行われることもあります。
株主総会対応について会社が注意すべきポイント
会社が株主総会を開催するに当たっては、以下のポイントに注意する必要があります。
✅ 会社法上の手続きを遵守する
✅ 株主からの質問を想定し、回答を事前に準備する
✅ 株主との対話を意識する
株主総会対応については、以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご参照ください。
会社法上の手続きを遵守する
株主総会に関する手続きについては、会社法で詳細にルールが定められています。会社は、会社法上のルールを正しく把握・理解した上で、それらを遵守して株主総会を開催しなければなりません。
(例)
・招集手続き(会社法298条~302条)
・決議の方法(会社法309条~313条)
・当日の議事進行(会社法314条~317条)
・議事録の作成・保存(会社法318条)
など
株主からの質問を想定し、回答を事前に準備する
株主総会では、株主から様々な質問がなされることが予想されます。取締役などの役員は、株主からの質問に対して、必要な説明をしなければなりません(会社法314条)。
株主に対する説明責任を果たすためにも、想定される株主質問をできる限りリストアップし、その回答を事前に準備しておきましょう。
株主との「対話」を意識する
株主の質問に対しては、事前に準備した回答を読み上げるだけでなく、文脈や株主の意図に沿った回答を臨機応変に行うことが求められます。
会社としては、取締役を中心に、株主総会が株主との「対話」の場であることを意識しつつ、株主の質問意図をよく考え、誠実な回答を行うように努めましょう。
この記事のまとめ
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