取締役会とは?
会社法上のルール・決議事項などの
基本を分かりやすく解説!

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東京八丁堀法律事務所弁護士
2015年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。経済産業省知的財産政策室や同省新規事業創造推進室での勤務経験を活かし、知的財産関連法務、データ・AI関連法務、スタートアップ・新規事業支援等に従事している。
この記事のまとめ

取締役会とは、全ての取締役で構成される合議体(機関)のことです。

取締役会は、主に、
・会社の業務執行の決定
・取締役の職務執行の監督
を行っています。

取締役会の開催・運営にあたっては、会社法で厳格なルールが定められています。一方、機動的な意思決定ができるよう手続きを簡略化できる仕組みも用意されています。

この記事では「取締役会」に関する会社法上のルールや決議事項などを分かりやすく解説します。

取締役会って、偉い人たちがコソコソ秘密を話し合っているっていうイメージしかなくて、怖いです…。

取締役会とはそもそも何か、具体的に何が話し合われているのかなどをきちんと勉強すれば、そのイメージも変わりますよ。この記事で勉強していきましょう。

※この記事は、2022年12月9日時点の法令等に基づいて作成されています。

取締役会とは

取締役会とは、全ての取締役で構成される合議体(機関)のことです(会社法362条1項)。取締役会では、会社の業務執行に関する意思決定などが行われます。

取締役とは

取締役とは、「会社の業務を執行する者」のことです(会社法348条1項)。いわば会社の経営者です。

株式会社は、取締役を1名以上選任しなければなりません(会社法326条1項)。また、取締役会を設置する場合には、3名以上の取締役が必要になります(会社法331条5項)。

取締役が複数名いる場合は、その中から代表者として「代表取締役」を定めることもできます(会社法349条3項)。なお、取締役会を設置している会社では、代表取締役の選定が必須です(会社法362条3項)。

原則として、取締役会を設置するか否かは会社の自由ですが、以下に該当する会社は、取締役会の設置が必須です(会社法326条2項、327条1項)。

  • 公開会社(株式の全部または一部を自由に譲渡できる会社)
  • 監査役会設置会社
  • 監査等委員会設置会社
  • 指名委員会等設置会社

取締役会を設置するメリット・デメリット

取締役会を設置するメリットとしては、以下の2点が挙げられます。

①取締役会を設置していない場合に比べ、機動的に意思決定ができる
②取締役会を設置していることで社会的な信用を獲得できる

特に①は、会社を運営する上で、大きなメリットになります。具体的には、取締役会を設置していない場合は、株主総会の承認を得る必要がある事項について、取締役会で決定できるようになります。

取締役会を設置している場合に、株主総会ではなく取締役会で決定できる事項の例

・譲渡制限が付いている株式の譲渡承認(会社法139条1項)
・競業取引・利益相反取引の承認(会社法356条1項、365条1項)

一方、取締役会を設置する場合、前述のとおり取締役が3名以上必要であることや、監査役か会計参与を設置しなければならないことから(会社法327条2項)、役員報酬の負担が増えてしまうことがデメリットに挙げられます。

また、前述した①のメリットについて、会社の所有者である株主から見れば、自身が決定できる事項が限定されてしまうという意味でデメリットにもなると考えられます。

取締役会の役割(職務・権限)|会社法上のルールを踏まえ解説

では、次に、取締役会が担う役割(職務・権限)について、会社法上のルールを踏まえて、解説します。

業務執行の決定

取締役会は、会社の業務執行の決定を行う役割を担っています(会社法362条2項1号)。

業務執行の決定とは、例えば、事業計画の立案・予算の策定・営業活動の方針・資金調達など、会社のさまざまな事項についての方針を決定することです。

また、取締役会を設置している会社(会社法では「取締役会設置会社」と呼びます)では、取締役会・取締役で以下の役割分担がなされます。

・取締役会|業務執行の決定を行う
・代表取締役や業務執行を任された取締役(業務執行取締役)|業務を執行する

ただし、取締役会が業務執行の決定を行うといっても、全ての業務執行の決定を取締役会が行わなければならないとすると、機動的な意思決定が困難となりますし、現実的でもありません。そこで、取締役会は、重要な業務執行の決定を除き、業務執行の決定を個々の取締役に委任できるとされています(会社法362条4項)。

個々の取締役に委任できない事項(取締役会が決定しなければならない重要な事項)としては、例えば、以下の各事項が挙げられています(会社法362条4項各号)。

①重要な財産を処分することおよび譲り受けること(1号)
②多額のお金を借りること(2号)
③重要な使用人の選任・解任を行うこと(3号)
④重要な組織の設置・変更・廃止を行うこと(4号)
⑤社債の発行に関する事項を決定すること(5号)
⑥内部統制システムを整備すること(6号)
⑦取締役の任務懈怠責任の免除を行うこと(7号)

また、これら以外にも、取締役会の承認が必要であるとされている事項があります。例えば、以下のような事項は取締役会の承認を得る必要があります。

・ 譲渡制限株式の譲渡承認(会社法139条1項)
・ 株主総会の招集の決定(会社法298条4項)
・ 競業取引・利益相反取引の承認(会社法356条1項、365条1項)
・ 計算書類等の承認(会社法436条3項) 等

取締役の職務執行の監督

取締役会は取締役の職務執行の監督を行う役割も担っています(会社法362条2項2号)。

ただし、各取締役の職務執行について、日常的に監督することは難しい場合もあります。そこで、取締役会による監督に実効性をもたせるために、

・代表取締役
・業務執行取締役

は、3カ月に1回以上、自己の職務の執行状況を取締役会に報告する必要があります(会社法363条2項)。

取締役会は、代表取締役・業務執行取締役による報告を受け、その適切性を審議することなどにより、取締役の職務執行を監督することになります。

代表取締役の選定・解職

取締役会は代表取締役の選定・解職をする役割も担っています(会社法362条2項3号)。

取締役の職務執行の監督」に記載のとおり、取締役会は取締役の職務執行の監督をする役割を担っていますが、代表取締役の解職は当該監督権限の最たるものといえます。

取締役会の運営の流れ

次に、取締役会の運営について解説します。

①取締役会を招集する

取締役会を開催するにはまず取締役会を招集する必要があります。
招集にあたり会社法がどのようなルールを定めているか、詳しく解説していきます。

招集権をもつ者

原則として、各取締役はそれぞれ取締役会を招集することができます(会社法366条1項本文)。

つまり、取締役会を招集する権利をもつのは原則、「取締役のみ」です。社員が取締役会の招集を要求することはできません。

なお、定款や取締役会で招集権をもつ取締役を定めたときは、当該取締役が取締役会を招集することになります(会社法366条1項ただし書)。

しかし、招集権をもたない取締役も、招集権をもつ取締役に対し、取締役会の目的事項を示して取締役会の招集を請求することができ、仮に当該請求から一定期間内に取締役会が招集されないときは、当該請求をした取締役は自ら取締役会を招集できます(会社法366条2項、3項)。

つまり、招集権をもつ取締役を定めた場合も、定めなかった場合も、所定の手続きさえ踏めば、全ての取締役が、何らかの方法で取締役会を招集できるといえます。

また、取締役だけでなく、株主(監査役設置会社等の株主を除きます)や監査役も取締役会を招集できる場合があります(株主について会社法367条1項~3項、監査役について同法383条2項・3項)。

招集通知

取締役会の招集にあたっては、原則として、招集権のある者が、取締役会の日の1週間前(定款で1週間よりも短い期間を定めていた場合は当該期間)までに各取締役や各監査役に対して、招集通知を発する必要があります(会社法368条1項)。

もっとも、取締役・監査役全員の同意があるときは、招集手続きを経ることなく取締役会を開催することも可能です(会社法368条2項)。

機動的な意思決定を行うために、全取締役等の同意を得て取締役会を招集することも実務上多いです。

なお、株主総会とは異なり、取締役会の招集通知に議題を記載する必要はなく、取締役会の開催日時と場所を通知するのみで問題ありません。

また、招集の方法についても、ルールがなく、口頭・電話・メールなど、いずれの方法でも可能となっています。

取締役会の開催頻度・場所

取締役の職務執行の監督」に記載のとおり、代表取締役や業務執行取締役は、3カ月に1回以上、職務の執行の状況を取締役会に報告しなければなりません(会社法363条2項)。

このため、取締役会も3カ月に1回以上は開催しなければならないことになります。なお、上記条件を満たしていれば、開催頻度やタイミングは自由に設定できます。

取締役会の開催場所については、即時性と双方向性が確保されていればよい(=やり取りをリアルタイムで行えればよい)と考えられており、特に制限はありません。最近ではオンラインで行う会社も増えています。

②取締役会を開催し議事進行・決議を行う

それでは、次に、取締役会の議事決議方法について解説します。

議事

取締役会の議事の進め方については特段の決まりはなく、一般的な会議と同様、議題について議論・質疑等をして決議を行えば足ります。

誰が議長となるかについても、会社法では特に決まりはなく、定款や取締役会で適宜定めれば問題ありません。

決議事項と報告事項

取締役会の議題には、以下の2種類があります。

決議事項|取締役会において決議が必要な事項(会社法369条)
報告事項|取締役会に報告するのみで足りる事項(会社法372条)

決議事項としては、例えば、

・譲渡制限株式の譲渡承認(会社法139条1項)
・株主総会の招集の決定(会社法298条4項)、
・競業取引・利益相反取引の承認(会社法356条1項、365条1項)、
・計算書類等の承認(会社法436条3項)

等があります。

報告事項としては、例えば、

・代表取締役や業務執行取締役による自己の職務の執行状況の報告(会社法363条2項)
・監査役による取締役の不正行為等を認知したときの報告(会社法382条)

等があります。

なお、上記は、あくまでも会社法で明示的に取締役の決議事項・報告事項と定められている内容です。

上記以外でも、例えば、営業方針や今後の製品開発予定・採用計画など、会社を運営する上で重要な事項があれば、「その他の重要な業務執行の決定」(会社法362条4項柱書)にあたり、取締役会で決議・報告が行われることとなります。

決議要件

取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、出席した取締役の過半数をもって行います(会社法369条1項)。

会社法369条1項には、「議決に加わることができる」とありますが、決議に特別の利害関係を有する取締役は議決に加わることができません(会社法369条2項)。

例えば、代表取締役を解職する決議における当該代表取締役や、取締役の責任を一部免除する場合における当該取締役(会社法426条)が、「特別の利害関係を有する取締役」にあたると考えられています。

書面決議・報告の省略

書面決議とは、取締役会の決議事項について、取締役の全員が書面等で同意の意思表示をしたときは、(取締役会を開かずとも)可決する旨の取締役会決議があったものとみなすことができる制度です(会社法370条)。

実務上、機動的な意思決定を行うために、書面決議を行いたい場合も多いかと思います。しかし、書面決議を行うためには、定款で書面決議が可能であることを定めておく必要があるので、注意が必要です。

また、取締役会の報告事項も、一定の手続きを踏むことで、取締役会での報告が不要になります。

具体的には、取締役や監査役等が、取締役や監査役の全員に対して取締役会に報告すべき事項を通知したときは、当該事項を取締役会に報告する必要がなくなります(会社法372条1項)。

もっとも、代表取締役や業務執行取締役による職務執行の状況の報告については、このような報告の省略を行うことはできないので(会社法372条2項)、「取締役会の開催頻度・場所」に記載のとおり、3カ月に1回は取締役会を開催し、職務執行の状況について報告する必要があります。

特別取締役による決議

決議要件」に記載のとおり、取締役会の決議が成立するためには、取締役の過半数の出席と出席した取締役の過半数の賛成が必要です(会社法369条1項)。

しかし、取締役の人数が増えてきたり、社外取締役(会社法2条15号)も参画したりするようになると、取締役会の日程調整をするだけで大きな負担が生じ、機動的な意思決定が困難になる可能性があります。

そこで、取締役の人数が6人以上であり、かつ社外取締役がいる会社では、

①重要な財産を処分することおよび譲り受けること(会社法362条4項1号)
②多額のお金を借りること(同項2号)

については、あらかじめ選定した3人以上の取締役(特別取締役)の判断に委ねることができます(特別取締役の過半数の出席と出席した特別取締役の過半数の賛成で決議することができます。会社法373条1項)。

取締役の人数が増えてきて機動的な意思決定が困難になってきた場合には、この特別取締役に関する制度を利用することも検討に値します。

③取締役会議事録を作成し、保存する

取締役会の議事については、議事録を作成し、出席した取締役や監査役は署名か記名押印をする必要があります(会社法369条3項・4項)。

その上で、取締役会の日から10年間、取締役会議事録を会社の本店で保存しておかねばなりません(会社法371条)。

保存された取締役会議事録は、株主や債権者等による閲覧や謄写(コピー等)請求の対象となります(会社法371条2項~6項)。

なお、取締役会議事録に記載すべき事項は、会社法施行規則101条3項・4項に定められています。議事録の作成担当者は、同項に定められた事項について、記載モレがないよう注意深く作成しましょう。

取締役会における法務などの役割|取締役会事務局

①取締役会を「招集」する」に記載のとおり、取締役会を招集できるのは、原則、取締役であり、取締役会で実際に議論するのも取締役がメインです。

しかし、実務上は、多忙な取締役に代わり、法務や総務などが「取締役会事務局」となり、運営をサポートすることになります(事務局を務めるにあたり、会社法の知識が求められるため、法務が担当している会社もあるかと思います)。

いずれの部署が担当するにしても、取締役会が円滑に行われるよう、取締役会事務局が主体となり、以下の業務などを行う会社が多いと思います。

・取締役会の年間スケジュールの策定
・取締役会の日程調整
・取締役会の招集通知の作成・送付
・取締役会で必要な資料の作成支援・送付
・取締役会議事録の作成・保存

取締役会対応業務は、法務などの重要な仕事の一つなのです。

瑕疵のある取締役会決議

①取締役会を「招集」する」に記載のとおり、取締役会を招集するには会社法が定めた手続きを経る必要があります。

では、会社法上必要とされる手続きを経ないで、取締役会が招集・開催された場合、取締役会の効力はどうなるでしょうか。

判例は、取締役会の開催にあたり、取締役の一部に対する招集通知を欠いた事案について、以下のとおり判示しています。

最判昭44・12・2民集23巻12号2396頁
「取締役会の開催にあたり、取締役の一部の者に対する招集通知を欠くことにより、その招集手続に瑕疵があるときは、特段の事情のないかぎり、右瑕疵のある招集手続に基づいて開かれた取締役会の決議は無効になると解すべきであるが、この場合においても、その取締役が出席してもなお決議の結果に影響がないと認めるべき特段の事情があるときは、右の瑕疵は決議の効力に影響がないものとして、決議は有効になる」

この判例のとおり、取締役の一部に対する招集通知を欠く場合は、原則として取締役会決議が無効となりますので、十分注意して取締役会の招集手続きを行うことが必要です。

この記事のまとめ

取締役会の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!

参考文献

田中亘著『会社法[第3版]』東京大学出版会、2021年