株主総会・取締役会対応業務とは?
業務フローなどを分かりやすく解説!

この記事のまとめ

株主総会とは、会社に関する重要な事項についての意思決定を行う機関です。会社における最高意思決定機関でもあります。

一方、取締役会とは、業務執行についての意思決定を行う機関です。

会社が株主総会や取締役会を開催するには、法務担当者を中心とするバックオフィスのサポートが必要不可欠です。

特に法務担当者は、会社法のルールなどを十分に踏まえた上で、滞りなく株主総会・取締役会が開催されるようにサポートすることが求められます。

株主総会・取締役会のいずれも、開催当日に向けて計画的に準備を進めなければなりません。株主総会であれば株主の目線に配慮した対応を、取締役会であれば各取締役がストレスなく参加できるようにするための対応を心がけましょう。

今回は株主総会・取締役会対応業務について、株主総会・取締役会に関する基礎知識、業務フロー、法務担当者が注意すべきポイントなどを解説します。

株主総会・取締役会対応業務をきちんと行うために、学んでおくべき法令はなんでしょうか。

会社法ですね。

※この記事は、2022年9月28日時点の法令等に基づいて作成されています。

株主総会とは

「株主総会」とは、株式会社における最高意思決定機関です。

前提として、会社法は、株式会社の運営が適切に行われるよう、会社の規模などに応じて、「機関(意思決定などをする組織・人)」を置かなければならないと定めています。

会社法によって定められた株式会社の機関は、以下のとおりです。

  •  取締役・取締役会
  • 代表取締役
  • 会計参与
  • 監査役・監査役会
  • 会計監査人
  • 監査等委員会・指名委員会等・執行役

株主総会は、これらの機関の中でも、最高の意思決定機関であり、会社に関する重要な事項は、基本的に株主総会で決められます。

株主総会の役割

株主総会の役割は、会社にとって重要な事項を決定することです。

そもそも「株主」とは何でしょうか。

株主は、株式を買うことで、会社に出資する人のことです。株主は会社の所有者であり、会社の方向性を決める権利をもっています。

「会社の所有者は社長」だと思っていました…。

社長であると同時に株主である(株式をもっている)場合も多いので、一概にその認識が間違っているとはいえませんが、会社は基本、株主のものなんです。

普段の経営は取締役(取締役会)が行いますが、会社にとって重要な場面が訪れた際には、株主総会を通じて株主が意思決定を行います。

株主総会に関する会社法上の規定

株主総会に関するルールは、会社法295条から325条において定められています。

株主総会に関する会社法上の規定

✅ 株主総会の権限に関する事項
→295条

✅ 株主総会の招集に関する事項
→296条~302条、306条、307条

✅ 株主の権利に関する事項
→303条~305条

✅ 株主総会の議決に関する事項
→308条~313条、319条

✅ 株主総会当日の議事に関する事項
→314条~317条、320条

✅ 株主総会議事録に関する事項
→318条

✅ 種類株主総会(※)に関する事項
→321条~325条

※会社が種類株式を発行しているときに、ある種類の株主が集まって行う株式総会

株主総会の権限・決議事項

株主総会が決議すべき事項は、主に以下の4つに分類されます。

✅ 会社の組織・事業に関する重要事項
・定款の変更(会社法466条)
・事業譲渡(会社法467条)
・合併その他の組織再編行為の承認(会社法783条1項など)

✅ 株主の権利に直接関係する事項
・資本金の減少(会社法447条1項)
・剰余金の配当(会社法454条1項)

✅ 役員等の選任・解任(会社法329条1項、339条1項)
・取締役
・会計参与
・監査役
・会計監査人

✅ 役員報酬(会社法361条1項、379条1項、387条1項)

株主総会の種類|定時株主総会と臨時株主総会

株主総会には、「定時株主総会」と「臨時株主総会」の2種類があります。

定時株主総会と臨時株主総会

✅ 定時株主総会
→毎事業年度の終了後、一定の時期に招集しなければならない株主総会です(会社法296条1項)。

✅ 臨時株主総会
→定時株主総会以外の株主総会です。必要がある場合にいつでも招集できます(会社法296条2項)。

株主総会の開催頻度・場所

定時株主総会については、年1回の開催が必須とされています。開催時期について会社法が定めたルールはありませんが、決算期(=事業年度の最終日)から3か月以内を目安に開催されるケースが多いです。

臨時株主総会については、重要な事項を決定する緊急の必要性が生じた場合などに、開催されます。

株主総会の開催場所は、取締役会が毎回個別に決定します(会社法298条1項1号、4項)。

ただし、前年の開催場所からあまりにも離れた場所で開催する場合は、以下の場合を除き、開催場所の決定理由を株主に明示しなければなりません(会社法施行規則63条2号)。

  •  開催場所が定款で定められたものである場合
  • その場所で開催することについて、株主総会に出席しない株主全員の同意がある場合

また、株主の参加に著しい支障が生じる場所で開催した場合、株主総会決議の取消事由となり得る(=株式総会で決定されたことが、取り消しとなる可能性がある)ので注意しましょう(会社法831条1項1号)。

取締役会とは

「取締役会」とは、業務執行についての意思決定を行う機関です。

そもそも「取締役」とは何でしょうか。

取締役とは、会社の業務を執行する人のことです。いわば会社の「経営者」ですね。株式会社では、取締役を最低1人は置かなければなりません。小さな会社では1人のみという場合もありますが、会社が大きくなってくると複数人となるケースがほとんどです。

取締役会の役割

取締役会の主な役割は、会社の業務執行に関する決定を行うことです(会社法362条2項1号)。取締役会は、株主のために業務執行を決定し、会社としての利益を追求する責務を負います。

また、実際に業務を執行する(代表)取締役の監督を行うことも、取締役会の重要な役割です(同項2号、3号)。

取締役会に関する会社法上の規定

取締役会に関するルールは、会社法327条、362~373条において定められています。

取締役会に関する会社法上の規定

✅ 取締役会の設置義務に関する事項
→327条

✅ 取締役会の権限等に関する事項
→362条~365条

✅ 取締役会の招集に関する事項
→366条~368条

✅ 取締役会の決議に関する事項
→369、370条、373条

✅ 取締役会議事録に関する事項
→371条

✅ 取締役への報告に関する事項
→372条

取締役会の権限・決議事項

取締役会が決議すべき事項は、株式会社の業務執行全般です。

日常的な業務執行については、個々の取締役に決定を委任することもできます。

しかし、以下の事項については必ず取締役会が決定しなければなりません(会社法362条4項)。

  •  重要な財産を処分すること・譲り受けること
  • 多額のお金を借りること
  • 重要な使用人の選任・解任を行うこと
  • 重要な組織の設置・変更・廃止を行うこと
  • 社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項を決定すること
  • 会社・グループ会社の業務を適正化するための体制を整備すること
  • 取締役の任務懈怠責任の免除を行うこと

取締役会の開催頻度・場所

取締役会は、3か月に1回以上開催しなければなりません(会社法363条2項)。

しかし、上記条件を満たしていれば、開催頻度やタイミングは自由に設定できます。

取締役会は、年1回で良い株主総会とくらべると、開催頻度がかなり多いですね。

そうですね。前述のとおり、取締役会は、各取締役の監督を行う役割を負っています。この役割を適切に果たすには、年1回だと不十分であるといった考えから、開催頻度が多めに設定されているのです。

取締役会の開催場所については特に制限はなく、招集の際に個別に定めることになります。やり取りをリアルタイムで行うことができれば、テレビ会議などを通じたリモートでの開催も可能です。

株主総会対応業務の流れ

株主総会対応業務は、以下の流れで行います。

  1. スケジュールの策定・会場の選定を行う
  2. 招集通知・株主総会参考書類の作成・発送を行う
  3. 議事進行予定・想定問答集の作成を行う
  4. リハーサルをする
  5. 株主総会当日の対応を行う
  6. 株主総会議事録を作成し、保存する

①スケジュールの策定・会場の選定を行う

株主総会の開催に当たっては、数か月間にわたってさまざまな準備が必要となります。

数か月にもわたって準備する必要があるのはなぜなんでしょうか。通常の会議であれば、数か月も準備にかかるなんてことはほとんどないと思いますが…。

会社法が株主総会についてのルールを細かく定めていることが挙げられます。会社法のルールを順守して、書類の作成・発送→開催→議事録の作成・保存といった一連の手続きを行うには、どうしても時間がかかってしまうのです。

株主総会を滞りなく開催するため、まずは必要な準備や手続きの内容を整理し、株主総会当日までのスケジュールを策定しましょう。

また、会場の選定も早い段階で行っておくべきです。来場する株主の人数を想定しつつ、株主が足を運びやすい会場を選びましょう。

②招集通知・株主総会参考書類の作成・発送を行う

株主総会の招集通知は、

  •  公開会社では開催日の2週間前まで
  • 非公開会社では開催日の1週間前まで

に株主へ発送しなければなりません(会社法299条1項)。

招集通知に記載すべき事項は、以下のとおりです(同条4項、298条1項)。

招集通知の記載事項

✅ 株主総会の日時・場所
✅ 株主総会の目的事項
✅ 株主総会に出席しない株主の書面による議決権行使(※)を認める場合は、その旨
✅ 株主総会に出席しない株主の電磁的方法による議決権行使を認める場合は、その旨
✅ その他会社法施行規則63条で定める事項

※ある議題についての賛否を投票すること

また、書面または電磁的方法による議決権行使を認める場合は、議決権の行使について参考となるべき事項を記載した書類(=株主総会参考書類を株主に交付しなければなりません(会社法301条、302条)。

株主総会参考書類は作成に手間がかかるケースもあるため、計画的に作成を進めましょう。

③議事進行予定・想定問答集の作成を行う

株主総会当日の議事進行を円滑に行うため、以下の2つを作成しておきましょう。

  •  議事進行予定|報告事項・決議事項ごとの所要時間などをまとめた資料
  • 想定問答集|株主から当日質問されそうなことへの回答をまとめた資料

④リハーサルをする

株主総会当日を戸惑うことなく迎えられるように、事前のリハーサルを行うことも大切です。

  •  人員配置
  • 設備の位置
  • 当日の動き

などをマニュアルに沿って確認しましょう。

なお、リハーサルは、株主総会当日とは別の日に行うことが望ましいです。

どうしても別日の開催が難しい場合には、午前中にリハーサル・午後の遅い時間から株主総会として、リハーサルで発覚した問題を修正する時間を確保しておくのがよいでしょう。

⑤株主総会当日の対応を行う

株主総会当日は、臨機応変な対応が求められます。

  •  株主から想定していない質問がくる
  • 議事妨害をされる
  • (オンライン参加を認める場合)回線障害が起こる

など、イレギュラーな事態の発生が想定されます。

できる限り事前にシミュレーションを行い、万全の態勢で当日を迎えましょう。

⑥株主総会議事録を作成し、保存する

株主総会の終了後は、取締役が議事録を作成しなければなりません(会社法318条1項)。

また、作成した株主総会議事録は、株主総会の日から10年間、本店で保存する必要があります(会社法318条2項)。

なお、株主総会議事録に記載すべき事項は、会社法施行規則72条に定められています。議事録の作成担当者は、72条に定められた事項について、記載モレがないよう注意深く作成しましょう。

株主総会対応業務を行う際に注意すべきポイント

株主総会対応業務を行う際には、以下の2つのポイントを意識すべきです。

  •  会社法上の手続きを順守する
  • 株主目線を意識する

会社法上の手続きを順守する

  •  招集通知の発送時期
  • 招集通知に記載する事項
  • 当日の議事進行
  • 議事録に記載すべき事項や保存期間

など、会社法は、株主総会に関して、詳細にルールを定めています。

株主総会対応業務の担当者は、会社法のルールを正しく理解して、そのルールを順守した上で、株主総会を開催することが大切です。

株主目線を意識する

株主総会は、会社が直接株主と接する貴重な機会です。

株主総会において不快感を与えてしまうと、株主の信頼を失ってしまうことになりかねません。株主の質問には誠実に回答する、戸惑う部分がないように分かりやすい案内をするなど、株主目線を意識した対応を心がけましょう。

取締役会対応業務の流れ

取締役会対応業務は、以下の流れで行います。

  1. 取締役のスケジュール調整を行い、開催日を決定する
  2. 取締役会資料の作成・提供を行う
  3. 社外取締役へのブリーフィングを行う
  4. 取締役会議事録を作成し、保存する

①取締役のスケジュール調整を行い、開催日を決定する

一般的に取締役は多忙なため、取締役会のスケジュール調整は早めに行っておくべきです。

できる限り取締役が全員参加できる開催日程を、早い段階で確定させましょう。

②取締役会資料の作成・提供を行う

取締役会で予定される議題に応じた資料を作成することも、取締役会対応業務の一環です。

資料の作成に当たっては、議題の提案者である取締役の指示を受けることに加えて、関連部署から寄せられる情報を集約するなどの対応も求められます。取締役が見て分かりやすい資料の作成を心がけましょう。

③社外取締役へのブリーフィングを行う

常勤ではない社外取締役は、必ずしも社内事情に精通していないケースがあります。

その場合は、担当者が社外取締役へブリーフィング(簡単な事前説明)を行うのがよいでしょう。社外取締役が社内事情などを事前に把握することで議論がしやすくなり、取締役会がより充実したものとなります。

④取締役会議事録を作成し、保存する

取締役会の終了後は、議事録を作成した上で、出席した取締役・監査役全員が署名または記名押印をしなければなりません(会社法369条3項)。作成した取締役会議事録は、取締役会の日から10年間、本店で保存する必要があります(会社法371条1項)。

取締役会議事録に記載すべき事項は、会社法施行規則101条に定められています。こちらも株主総会議事録と同様に、所定の事項が網羅されているかどうかよく確認しましょう。

取締役会対応業務を行う際に注意すべきポイント

取締役会対応業務には、以下の2つのポイントを意識して取り組みましょう。

  •  各取締役の立場の違いを意識する
  • ストレスなく議論が行われるようにサポートする

各取締役の立場の違いを意識する

会社の取締役は、もっている知識・経験の内容、担っている職責、スケジュールなどがそれぞれ異なります。

スケジュール調整から情報の共有(ブリーフィングなど)に至るまで、個々の取締役の立場に応じてコミュニケーションを工夫することが、円滑に取締役会を開催するための重要なポイントです。

ストレスなく議論が行われるようにサポートする

さまざまなバックグラウンドをもつ取締役が建設的に議論を行うためには、バックオフィスのサポートが必要不可欠です。

  • 分かりやすい資料を作成する
  • 議題に詳しくないと思われる取締役には補足説明を行う

など、各取締役がストレスなく取締役会へ参加できるような配慮を行いましょう。

この記事のまとめ

株主総会・取締役会対応業務の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!

参考文献

東京証券取引所ウェブサイト「株主とは?」

田中亘著『会社法 第3版』東京大学出版会、2021年

会社法実務研究会編 深山徹著『会社法実務マニュアル 第2版 第2巻 株主総会・取締役・監査役』ぎょうせい、2017年