脱税とは?
申告漏れとの違い・具体例・リスク・時効・
脱税を防ぐための注意点などを分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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「脱税」とは、納める義務がある税金の額を意図的にごまかして、納税額を不当に少なく抑えることをいいます。計算ミス・集計漏れ・税法の解釈の誤りなど、納税者の過失によって生じる「申告漏れ」とは異なり、脱税は故意による悪質な行為です。
脱税は、預貯金口座を介した不自然な取引、内部告発、税務調査などによって発覚します。脱税が発覚すると、延滞税や加算税を含む多額の追徴課税を受ける上に、刑事罰の対象にもなり得るので要注意です。
脱税をしないようにするためには、取引の実態に沿った経理を行うことが大切です。少しでも税務上の疑問点がある場合には、税理士に取り扱いを確認しましょう。
この記事では脱税について、よくあるパターン・発覚するきっかけ・リスク・脱税を防ぐための注意点などを解説します。
※この記事は、2023年12月27日時点の法令等に基づいて作成されています。
目次
脱税とは
「脱税」とは、納める義務がある税金の額を意図的にごまかして、納税額を不当に少なく抑えることをいいます。
脱税と申告漏れの違い
計算ミス・集計漏れ・税法の解釈の誤りなど、納税者の過失によって生じる税金の過少申告は「申告漏れ」と呼ばれます。
これに対して脱税は、意図的に税金の額をごまかし、納税義務を免れようとする行為です。申告漏れと比較すると、脱税は悪質性が高い行為とみなされ、高率の重加算税を課されるケースが多い傾向にあります。
脱税と節税の違い
脱税と同じく、「節税」も納税額を少なく抑える行為です。
しかし、脱税は違法行為であるのに対して、節税は法律のルールに則って行われる適法な行為であるという違いがあります。適切な方法によって節税を行うことは、企業にとって合理的な経営戦略の一つとして重要です。
脱税のよくあるパターン
脱税のよくあるパターンとしては、以下の例が挙げられます。
① 売上の過少申告
② 必要経費の水増し
③ 二重帳簿の作成
売上の過少申告
事業者が税務申告を行う際には、当然ながら売上の全額を計上しなければなりません。しかし、売上の一部を意図的に計上せず、税額を少なく抑えようとする脱税行為がしばしば見られます。
銀行口座への入金については、税務当局が容易に捕捉できるため、売上の過少申告の対象とはされないことが多いです。これに対して、銀行口座を通さず現金等によって授受される売上金については、本来であれば計上すべきなのに計上しない例がよくあります。
必要経費の水増し
所得税・住民税や法人税等の税額の計算に当たっては、課税標準額から必要経費(損金)を控除できます。必要経費が増えれば、その分納付すべき税金は減ることになります。
必要経費として計上できるのは、事業運営に必要な経費のみです。
しかし、事業とは全く関係がない支出を必要経費に算入する例が見られます。また、実際には他人が支出した費用であるのに、領収書などをもらって必要経費に算入する例もよくあります。
さらに悪質なケースでは、実際には行っていない架空の仕入れをでっち上げて、必要経費を水増しする例もあるようです。
これらの必要経費の水増し行為は、売上の過少申告と同じく脱税に当たります。
二重帳簿の作成
いわゆる「二重帳簿」を作成し、実際よりも少ない所得(収益)を申告する脱税行為も見られます。
「二重帳簿」とは、取引の実態を記録した帳簿と、税務申告用に実態とは異なる取引の内容を記録した帳簿を別々に用意することです。
企業会計においては、財務諸表の信頼性を担保するために「単一性の原則」が採用されています。単一性の原則とは、異なる形式の財務諸表を作成する場合に、その内容は信頼し得る会計記録に基づいて作成しなければならず、政策的考慮のために事実の真実な表示を歪めてはならないとする一般原則です。
単一性の原則によれば、財務諸表の根拠となる数値は一つでなければなりません。二重帳簿は、財務諸表の根拠となる数値を複数設けるものであり、単一性の原則に違反します。
二重帳簿の作成は悪質な脱税行為であり、税務調査において厳しく追及される可能性が高いといえます。
脱税が発覚するきっかけの例
脱税は、主に以下のようなきっかけで発覚します。
① 口座を介した不自然な取引
② 内部告発・通報
③ 税務調査(反面調査を含む)
口座を介した不自然な取引
銀行口座を通じた入出金については、税務署は容易に調査することができます。
会社の口座から不自然な入出金が繰り返されていると、税務署は脱税の疑いを抱く可能性が高いです。その後に本格的な税務調査が行われれば、脱税の証拠を税務署に押さえられてしまいます。
内部告発・通報
企業による脱税は、内部の役員や従業員による告発・通報によって発覚することもあります。
脱税行為に関与している内部者は、そのことについて良心の呵責を覚えていることが多いです。悪事に加担していることに耐えられなくなり、内部告発へと動くケースがあります。
また、会社に対する不満をきっかけにして、腹いせに脱税行為を内部告発するケースも想定されます。
内部告発によって情報を得た税務署は、その情報の確度が高い場合には、脱税の疑いがある企業に対して税務調査を行う可能性が高いです。その場合、実際に脱税を行っていれば、その証拠を税務署に押さえられてしまうでしょう。
税務調査(反面調査を含む)
税務署による脱税の認定は、原則として税務調査に基づいて行われます。
税務調査は、脱税の疑いがあるケースだけでなく、無作為に対象企業を選出して行われる場合もあります。内部告発などのきっかけがなかったとしても、税務調査を受けた際に脱税を指摘されるケースが多いです。
また、取引先と共謀して脱税をしていた場合には、取引先に対する税務調査をきっかけとして脱税が発覚することもあります。
取引先の税務調査において脱税の証拠が出てくると、税務署はその証拠を基に、共謀者である企業に対しても税務調査を行うのが一般的です。これを「反面調査」といいます。
税務署が反面調査を行う際には、脱税の確実な証拠をあらかじめ押さえているので、厳しく調査が行われる可能性が高いです。
脱税が発覚した場合のリスク
脱税が発覚した場合、企業は以下のリスクを負うことになってしまいます。
① 延滞税・重加算税が発生する
② 会社の資金繰りが大幅に悪化する
③ 刑事罰の対象になる
延滞税・重加算税が発生する
脱税をした企業は、本来納付すべき時期に税金を納めていないことになるので、遅れたことのペナルティとして「延滞税」が課されます。延滞税の割合は、以下のとおりです。
- 延滞税の割合
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① 納付期限の翌日から2カ月以内の場合
滞納額に対して年率2.4%② 納付期限の翌日から2カ月を超える場合
滞納額に対して年率8.7%※いずれも2022年1月1日から2024年12月31日までの割合
また、脱税は税額に関する仮装・隠蔽に当たるため、ペナルティとして重加算税も課されます。重加算税の割合は、以下のとおりです。
- 重加算税の割合
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① 申告は行ったが、過少申告の場合
増差本税に対して35%② 申告をしていない場合(無申告)
増差本税に対して40%※増差本税:本来納付すべき税額と、申告した税額の差額(無申告の場合は、本来納付すべき税額)
※過去5年以内に無申告加算税(更正・決定予知によるものに限る)または重加算税を課されたことがあるときは、①または②に10%を加算
※前年度および前々年度の国税について、無申告加算税(調査通知前に、かつ更正予知する前に申告が行われたときに課されたものを除く)または無申告重加算税を課される者が更なる無申告行為を行う場合には、①または②に10%を加算
※スキャナ保存が行われた国税関係書類に係る電磁的記録または電子取引の取引情報に係る電磁的記録に記録された事項に関して生じる仮装隠蔽があった場合は、①または②に10%を加算参考:財務省「加算税の概要」
会社の資金繰りが大幅に悪化する
税務調査の対象となるのは、通常であればおおむね3年間程度の税務申告ですが、脱税が疑われる場合には最大7年間遡って調査が行われます。
長期間にわたって脱税を行っていた場合は、最大7年分の追徴課税を一挙に受けることになってしまいます。本来の税額に加えて、延滞税や重加算税も加算されるので、会社の資金繰りにとって大きな痛手となるでしょう。
刑事罰の対象になる
偽りその他不正の行為によって納税義務を免れる脱税行為は犯罪であり、「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金」に処され、またはこれらが併科されます(所得税法238条1項、法人税法159条1項など)。
また、法人の代表者・代理人・使用人その他の従業者が、法人の業務に関して脱税行為をした場合には、法人に対しても「1000万円以下の罰金」が科されます(所得税法243条1項、法人税法163条1項など)。
役員・従業員や会社が刑事罰を受けた場合、株主や取引先などの信頼を失ってしまい、業績の低迷は避けられないでしょう。
脱税に時効はある?
税務当局から脱税を指摘される可能性があるのは、法定申告期限から7年間が経過していない事業年度です。
税務署長が税務調査を経て、申告された不適切な税額を正しいものに改める処分を「更正」といいます。
また、申告書が提出されていないケースにおいて、税務署が税額を決定する処分を「決定」といいます。
国税の更正・決定には除斥期間(期間制限)が設けられています(国税通則法70条)。したがって、税務署によって脱税を指摘される可能性があるのは、更正・決定の除斥期間の範囲内のみです。
更正・決定の除斥期間は、原則として法定申告期限から5年です(同条1項1号)。
ただし、偽りその他の不正の行為によって税額を免れ、または税額の還付を受けた場合には、更正・決定の除斥期間が法定申告期限から7年に延長されます(同条5項)。
なお、脱税に関する罪の法定刑は「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金」であるため、刑事訴追の公訴時効も7年間です(刑事訴訟法250条2項4号)。
ただし、公訴時効は犯罪の時から進行するため、申告書を提出した時が起算点となります(故意による無申告の場合は、法定申告期限が起算点となります)。
脱税をしないようにするための注意点
企業が脱税を犯さないようにするためには、以下の2点に留意した上で適切な経理を行いましょう。
① 取引の実態に沿った経理を行う
② 税務上の疑問点は税理士に確認する
取引の実態に沿った経理を行う
企業の経理においては、取引の実態に沿った記帳処理を行わなければなりません。経理が不適切だと、税務申告の際に提出する財務諸表の内容も不適切となり、脱税をしてしまうリスクが高まります。
適切な経理を行うためには、会計・税務のルールに習熟することが大切です。経理担当者は、特に以下の事項などをよく理解することが求められます。
- 経理担当者が注意すべきポイント
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・取引の仕訳方法(勘定科目、仕訳の時期など)
・仕訳の総勘定元帳等への反映方法
・申告書の作成方法、および申告書において確認すべき項目
・取引に関する証憑の保存方法
など
また、不適切な経理が行われていないかどうかについて、複数の担当者によるチェック体制を整備することも効果的です。反対に、経理がワンマン体制になっている場合は、脱税が発生するリスクが高まってしまう点にご注意ください。
税務上の疑問点は税理士に確認する
税法のルールは複雑であり、経理担当者でも分からないことが頻繁に出てくるものです。取り扱いが不明のまま経理業務や会計業務を行うと、不適切な税務申告を行ってしまうリスクが高まります。
経理業務や会計業務において税務上の疑問点が生じたら、その都度税理士に確認することが大切です。税理士に相談すれば、客観的な視点から適切な経理・会計の方法についてアドバイスを受けられるでしょう。
税務調査に備える観点からも、普段から税理士に相談しておくことが有効な対策です。税理士のアドバイスに従って経理を行っておけば、税務調査の際にも、税理士から税務当局へ合理的な説明をしてもらえます。
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