デューデリジェンスとは?
意味・種類・手順などを分かりやすく解説!

この記事のまとめ

「デューデリジェンス(DD:Due Diligence)」とは、M&Aの最終契約を締結する前段階で行われる、買収対象会社の調査を意味します。

デューデリジェンスには様々な種類があり、長い期間と多額の費用を要する大変な作業です。しかし、デューデリジェンスを徹底的に行い、その結果を契約書に反映することが、M&A取引を円滑・公正に実行するためのポイントになります。

この記事では、デューデリジェンスの目的・種類・タイミング・契約書への反映方法などを解説します。

ヒー

デューデリジェンス…。発音しづらい言葉ですが、重要な意味を持つのでしょうか?

ムートン

デューデリジェンスは、M&Aを行う際にとても重要な調査ですよ。法務担当者として、きちんと意味や目的を理解しておきましょう!

(※この記事は、2022年2月10日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。)

M&Aのデューデリジェンスとは?意味を解説

「デューデリジェンス(DD:Due Diligence)」とは、M&A時に実施される、買収対象企業に関する調査を意味します。

M&Aは金額の大きな取引であるため、買収の可否を決断するには、対象会社の状態を十分に把握する必要があります。しかし、外部からでは対象会社の深部に迫った情報を取得することができず、買収後に致命傷となりかねない財務・法務・労務等に関するリスクを見逃す可能性があります。

また、致命的なリスクとまではいかなくとも事前にリスクを把握できていれば、リスクの影響を軽減(是正)する措置を講じるなどして、M&A後の事業統合をスムーズに行うことが可能になります。

そのため、M&Aの最終契約を締結する前に、買主は、弁護士や会計士などの専門家に依頼してデューデリジェンスを行い、買収にふさわしい(問題ない)企業かどうかを調査するのが一般的です。

デューデリジェンスの目的

デューデリジェンスの主要な目的としては、以下の3点が挙げられます。

買収のメリットとリスクを、実態に即して把握する

デューデリジェンスの最重要目的は、買主が対象会社の実態を把握し、買収のメリットとリスクを理解する点にあります。

自社の想定しているシナジーを本当に得られるのか、潜在的なトラブルのリスクを抱えていないかといった点が、買主にとっては重要な懸念事項となります。こうしたポイントについて、デューデリジェンスを通じて適切に把握することが、買主にとっては非常に大切です。

売主・買主間でリスクを配分する|M&A契約書に反映

デューデリジェンスにおいてリスクが判明した場合でも、買主が直ちにM&Aを取りやめるとは限りません。リスクが顕在化する可能性は承知の上で、M&Aを実行するケースもあります。

その場合、リスクを買主が負担するか、それとも売主が補償責任を負うかについては、M&A契約における交渉事項です。契約交渉の前提として、デューデリジェンスを通じて対象会社に関するリスクを洗い出しておくことが重要となります。

買収実行後、スムーズに経営の引継ぎを行う

デューデリジェンスを通じて、買主が早い段階で対象会社を詳細に理解することは、M&A実行後の経営承継を円滑に行うためにも有益です。

デューデリジェンスによって情報を得た買主は、M&A実行前から、対象会社の細かい特性を踏まえた経営承継のプランを策定できるようになります。

デューデリジェンスの種類

M&Aのデューデリジェンスは、対象会社のことを余すところなく知るため、非常に多角的な角度から行われます。主なデューデリジェンスの種類としては、以下のものが挙げられます。

デューデリジェンスの種類

✅ 法務デューデリジェンス
→ 契約・法令遵守・紛争・労務管理等に関して、法的な観点から問題がないか、大きなリスクが潜んでいないかを精査します。外部弁護士に依頼して実施するケースが大半です。

✅ 財務デューデリジェンス
→ 対象会社の企業価値等を把握するため、資産・負債・キャッシュフローの状況などを調査します。会計事務所や監査法人が担当するケースが多いです。

✅ ビジネスデューデリジェンス
→ 対象会社の将来性やシナジー効果などを分析するため、製造ライン・営業・ビジネスモデルなどを調査します。買主自ら行うのが一般的ですが、外部の経営コンサルタントに依頼する場合もあります。

✅ 人事デューデリジェンス
→ M&A実行後の会社運営に関して、人材面からのリスクを分析するため、対象会社の人事体制や労使関係の状態などを調査します。人事コンサルティング会社や社会保険労務士に委託することが多いです。

✅ 不動産デューデリジェンス
→対象会社の所有する不動産についての調査です。主に契約トラブルや近隣トラブルのリスクを分析する目的で行います。実地調査等は不動産鑑定士やコンサルティング会社に委託する一方で、権利関係等については外部弁護士に委託するのが一般的です。

✅ ITデューデリジェンス
→ 対象会社が導入しているITシステムについて、脆弱性や将来的なメンテナンスコストなどを調査します。M&A実行後、システム統合を行う上でのプラン策定にも役立ちます。ITコンサルティング会社に委託するのが一般的です。

✅ 税務デューデリジェンス
→ 対象会社について、過去の税務申告漏れ等がないかを精査します。また、M&A実行によりどのような課税が発生するかについても検討・調査します。税理士に委託するのが一般的です。

✅ 環境デューデリジェンス
→対象会社が環境汚染を引き起こしていないか、将来的に環境汚染を発生させるリスクがないかを確認します。外部の調査会社に委託するのが一般的です。

デューデリジェンスを行うタイミング

デューデリジェンスが実施されるタイミングは、M&Aの買主候補が1社に絞られ、基本合意書が締結された後となるのが一般的です。

ヒー

「基本合意書」とは何ですか?

ムートン

基本合意書とは、M&Aの最終契約を締結する前に、買収の基本的な条件について、買主・売主側双方が合意する書面です。

基本合意書を締結した時点で買収が成立するわけではありませんが、双方の取引への前向きな意思を確認しあうことで、買収成立に向けスムーズに交渉を進めやすくなるというメリットがあります。

M&A取引の基本的な流れ

① 売主・買主のマッチング
② 複数の買主候補との契約交渉
③ 買主1社との基本合意書締結
④ デューデリジェンス
⑤ 買主1社との契約交渉
⑥ 買主1社との最終契約締結
⑦ M&A実行

デューデリジェンスには、買主側に多大な時間とコストがかかるため、複数の買主候補がいる段階で行うのは、費用対効果の観点から現実的ではありません。そのため、買主候補が1社に絞られた段階で、売主との間で独占交渉権を含む基本合意書を締結した後、デューデリジェンスに着手することになります。

ヒー

「独占交渉権」とは何でしょうか?

ムートン

買主が対象企業とのM&A交渉を独占できる権利です。 買主がデューデリジェンスを始めた後に、売主(対象企業)が別の買主とM&A契約を勝手に締結してしまうといった事態になると、デューデリジェンスにかかる多額のコストが無駄になってしまいます。こうしたリスクを排除するために、基本合意書には独占交渉権を含めておくのが一般的です。

デューデリジェンスの結果に問題がなければ、契約交渉を経て売主・買主間で最終契約を締結し、M&Aの実行へと進んでいきます。

法務デューデリジェンスの内容・手順

デューデリジェンスのやり方は種類によって様々ですが、一例として、法務デューデリジェンスの内容と手順の概略を見てみましょう。

売主から受領したDD資料を精査する

基本合意書の締結後、買主は売主(または対象会社)から、対象会社に関する資料の提供を受けます。法務デューデリジェンスの対象となる資料は、契約・登記簿謄本・裁判資料など、対象会社の権利義務に関する書類すべてです。

買主側は、DD資料のすべてに目を通し、法的な問題がないかを精査する必要があります。資料の分量は膨大になり、かつ専門的な内容も多分に含まれているため、外部の大規模法律事務所に委託するのが一般的です。

対象会社の経営陣や担当者にインタビューを行う

DD資料だけではわからない部分については、対象会社の経営陣や担当者に対して、直接インタビューを行って確認します。これを「マネジメント・インタビュー」などと呼ぶこともあります。

インタビュー事項については、あらかじめ取りまとめたうえで、対象会社に対して事前通告を行います。質問すべき事項に漏れがないように、外部弁護士と協力しながらインタビュー事項を詰めていきます。

なおマネジメント・インタビューでは、法務デューデリジェンスに限らず、他の種類のデューデリジェンスとの関係でも併せて質問が行われるのが一般的です。そのため買主側では、デューデリジェンス担当者間の連携も重要になります。

必要に応じて現地調査を行う

対象会社の状況を、買主側が自らの目で見て確認したい場合には、オフィスや工場などの現地調査が行われることもあります。

現地調査は、対象会社の業務に支障がない範囲内で、基本合意書に定められたルールに則って実施されます。

デューデリジェンス・レポートを作成する

法務デューデリジェンスの締めくくりは、デューデリジェンス・レポートの作成です。

買主側の経営陣がM&Aの実行可否を判断するための資料として、デューデリジェンス・レポートが作成されます。取りまとめるのは、法務デューデリジェンスを担当した弁護士事務所です。

デューデリジェンスにかかる期間

デューデリジェンスにかかる期間は、対象会社の規模によっても異なりますが、1~2か月程度となるのが標準的です。

デューデリジェンスの項目は非常に多岐にわたるため、調査すべき事項は山ほどあります。その一方で、ビジネスの市場環境は変化が速いため、長い時間をかけるわけにはいきません。そこで落としどころとして、1~2か月程度の期間が設定されるケースが多いです。

当然ながら、スムーズにデューデリジェンスを完了するには、買主側の取りまとめ役を中心としたスケジュール管理が重要になります。

デューデリジェンスにかかる費用

買主がデューデリジェンスに当たって支出する費用は、以下の要素などによって大きく変動するため、一概に相場を論ずることはできません。

デューデリジェンスの費用を左右する要素

✅ 対象会社の規模や事業内容
✅ デューデリジェンスを実施する範囲
✅ デューデリジェンスを外部委託する範囲
✅ 外部委託先の費用体系(大規模な業者ほど高額の傾向)
など

十分なデューデリジェンスを行うには、ある程度外部委託先を活用せざるを得ないのが実情です。そのため、中小企業のM&Aでは数百万円程度、大企業のM&Aでは数千万円程度を、外部委託先への支払に要すると見込んでおきましょう。

さらに、買主内部の従業員の稼働コストなどを考慮すると、中小企業のM&Aでも1,000万円程度、大企業のM&Aでは1億円近いデューデリジェンスの費用を覚悟しなければなりません。どの程度の予算をデューデリジェンスに確保するかは、M&Aによって得られるリターンとの兼ね合いで決定することになります。

デューデリジェンスの結果をM&A契約に反映する方法

デューデリジェンスによって、対象会社に関する何らかのリスクが判明した場合、そのリスクは売主・買主のどちらかが負わなければなりません。

売主・買主間のリスク分担は、M&Aの最終契約において規定しておきます。具体的には、売主がリスクを負担する場合には、「取引実行前提条件」「表明保証」「遵守事項」、買主がリスクを負担する場合には「容認事項」を規定するのが一般的です。

取引実行前提条件

「取引実行前提条件」とは、M&Aの実行に先立って充足しなければならない条件のことです。

デューデリジェンスで判明した対象会社のリスクを、M&Aの実行までに治癒することにつき、売主・買主間で合意したとします。その場合、「治癒が確認できたこと」を取引実行前提条件として規定しておいて、売主による是正を促すのがよいでしょう。

表明保証

「表明保証」とは、当事者の一方が相手方に対して、一定の事項を表明・保証し、違反が発覚した場合には損害を補償する内容の規定です。

デューデリジェンスを行ってもクリアにならなかった事項や、売主が提供する情報からしか確認できない事項については、その真実性を売主に表明保証させて違反のリスクを負担させることがあります。

遵守事項

「遵守事項」とは、契約締結後に当事者が遵守すべき事項を意味します。

M&Aの実行後にも、売主によるアフターフォローが必要となる事項については、売主の遵守事項として規定しておき、買主が必要なサポートを受けられるようにしておくことが多いです。

容認事項

「容認事項」とは、買主側が対象会社を買収するに当たり、了解済みのリスク内容を列挙した規定です。

容認事項に記載された内容については、その結果として買主が損害を被ったとしても、売主に対して補償等を請求することはできません。

デューデリジェンスを行う際の注意点

M&Aのデューデリジェンスを行う際には、売り手側・買い手側それぞれの立場で注意すべきポイントがあります。

売り手側が注意すべきポイント

売り手側として重要になるのは、買い手側に対して、対象会社に関する資料・情報を包み隠さず開示することです。DD資料の開示について売り手側の隠ぺいが発覚した場合、契約解除や損害賠償のリスクを負ってしまいます。

買い手側からデューデリジェンスへの協力を求められた場合には、実務上合理的な範囲で最大限協力するよう努めましょう。デューデリジェンスに関して、売り手側が協力的な姿勢を見せることは、M&Aをスムーズに成功へ導くための重要なポイントです。

買い手側からデューデリジェンス・レポートが上がってきた際には、その内容をきちんと確認した上で契約交渉に臨みましょう。

レポートにおいて何らかの問題が指摘されている場合には、それを材料にして買い手側から値下げなどの交渉がなされるかもしれません。売り手側としては、意向証明書などによって示された価格に拘るばかりでなく、指摘された問題点の実態や是正見込みなどを客観的に分析した上で、合理的な範囲で値下げに応じることも検討すべきです。

買い手側が注意すべきポイント

買い手側としては、徹底的にデューデリジェンスを行い、対象会社に関する疑義を解消することが大切です。曖昧な部分を残したまま対象会社を買い受けてしまうと、後で予想以上に深刻な問題が顕在化し、大きな損失を被ってしまうおそれがあります。

ただし、合理的な範囲で調査を尽くしても、解消しきれないリスクが残ってしまうことはよくあります。その場合は、リスクが残った状態でも対象会社を買い受けるのか、それとも取引を中止するのかを慎重に判断すべきです。
「せっかくここまで交渉を続けたのだから」「コストをかけてデューデリジェンスをしたのだから」などという考え方に囚われず、経営的な視点から合理的な判断を行いましょう。

買い手側が行うべきデューデリジェンスにはさまざまな種類がありますが、各種類に対応するスキルを備えた専門家に対応を依頼するのが賢明です。弁護士・公認会計士・税理士などを中心に、各専門家と連携しながら適切にデューデリジェンスを実施しましょう。

この記事のまとめ

「デューデリジェンス」の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!