株式とは?
株主の権利・株式の発行・種類・譲渡など
に関する制度を分かりやすく解説!

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弁護士法人NEX弁護士
2015年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。経済産業省知的財産政策室や同省新規事業創造推進室での勤務経験を活かし、知的財産関連法務、データ・AI関連法務、スタートアップ・新規事業支援等に従事している。
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この記事のまとめ

株式とは、株式会社の構成員である地位のことをいい、その株式を有する構成員のことを株主といいます。

会社法では、株式や株主について、株主有限責任の原則、株主平等の原則、株式譲渡自由の原則といった各原則やこれの例外等が定められています。

この記事では、株式について、基本から分かりやすく解説します。

ヒー

株式会社は株式を発行しているんですよね、でも、株式や株券を実際に見たことなんてありません、どういうものなのでしょうか?

ムートン

最近は株券不発行の会社がほとんどですね。株式は株主の地位を示すもの、つまり、株式を持っている人が株主といえます。株式にはさまざまなルールや種類があるので、以下で確認していきましょう。

※この記事は、2023年5月11日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • 振替法…社債、株式等の振替に関する法律

株式とは

株式とは、株式会社の構成員である地位のことをいいます。また、その株式を有する構成員を株主といいます。
株式会社は、その構成員の地位を、株式という細分化された割合的単位の形とすることにより、各株主の権利の強さ・大きさを、原則として持株比率に比例させることとし、出資者からの出資を得やすくしています。
この記事では、株式や株主の権利について詳しく見ていきます。

株主の権利と株式に関する原則

まず、株主が有する権利株式に関するいくつかの原則について見ていきます。

株主の権利

自益権と共益権

株主の権利は、自益権共益権に分類することができます。

まず、自益権とは、株主が会社から経済的利益を受ける権利のことをいいます。自益権としては、

剰余金の配当を受ける権利(会社法105条1項1号・453条)
残余財産の分配を受ける権利(会社法105条1項2号・504条)

などを挙げることができます。

一方、共益権とは、株主が会社の経営に参画したり、会社の経営を監督是正する権利のことをいいます。共益権としては、

株主総会における議決権(会社法105条1項3号・308条)
株主総会における質問権(会社法314条)
株主代表訴訟の提訴権(会社法847条)

などが挙げられます。

単独株主権と少数株主権

株主の権利は、単独株主権少数株主権に大別することもできます。

まず、単独株主権とは、1株でも株式を保有していれば行使できる権利をいいます。単独株主権としては、

✅ 自益権である剰余金の配当を受ける権利(会社法105条1項1号・453条)
残余財産の分配を受ける権利(会社法105条1項2号・504条)
✅ 共益権である株主総会における議決権(会社法105条1項3号・308条)
株主代表訴訟の提訴権(会社法847条)

などを挙げることができます。

一方、少数株主権とは、権利行使のために一定数や一定割合の株式を保有していることが必要な権利をいいます。少数株主権としては、

株主総会の招集権(会社法297条)
役員の解任の訴えの提起権(会社法854条)

などを挙げることができます。

株式に関する原則

次に株式に関するいくつかの原則について見ていきます。

株主有限責任の原則

会社法では、株主の責任について、株主有限責任の原則が採用されています。

株主有限責任の原則とは、株主の責任は、その有する株式の引受価額を限度とし、それを超えて会社や会社債権者に対して責任を負わないことをいいます(会社法104条)。
株主になろうとする者は、株主になる際、引受価額の全額を出資する必要がありますので(会社法208条等参照)、株主になったときには、既にその責任を果たしており、株主となった後には、何らの義務や責任を負担しないこととなります。

ムートン

株主有限責任の原則を採用することで、出資者が安心して出資できるようになり、会社としても、多数の投資家から出資金を集めやすくなります。

株主平等の原則

会社法では、会社は、株主をその有する株式の内容および数に応じて平等に取り扱わなければならないという、株主平等の原則が採用されています(会社法109条1項)。

株式の内容およびに応じて平等に取り扱うことが求められますので、例えば、普通株式種類株式とでは異なる取扱いをすることも許されますし、同じ普通株式を保有する株主間であればその保有する株式数が増えれば株主総会における議決権数が増えることになります。

ムートン

株主平等の原則を採用することで、出資者の予測可能性や安心感を高め、出資を促すことができるため、会社は出資金を集めやすくなります。

なお、株主平等の原則が採用されているといっても、合理的な理由に基づく区別までは禁止されていません。

株式の譲渡自由の原則

会社法では、株主は、その有する株式を自由に譲渡できるという、株式の譲渡自由の原則が採用されています(会社法127条)。

株式会社では、原則として出資の払戻しが認められていませんので、株主は株式譲渡することにより投下資本を回収することになります。株式の譲渡自由の原則は、このように、株主に投下資本の回収機会を提供することで、株式投資を促しているといえます。

なお、株式の譲渡制限については、「株式の譲渡制限と承認手続」をご参照ください。

株式の発行

株式会社は、設立後に、新たに株式発行して資金調達をすることができます。発行可能な株式の数は、定款で定める発行可能株式総数(会社法37条1項参照)の上限までです。

新株の発行方法には、

株主割当て(株主に株式の割当てを受ける権利を与えるもの)
第三者割当て(特定の第三者に株式を取得させるもの)
公募(不特定多数の者に株式を取得させるもの)

の3つの方法があります。

会社が新株を発行すると、既存の株主は、

× 持株比率の低下(既存株主の有する株式の割合が低下することにより議決権比率が低下するなど会社に対する影響力が低下してしまうこと)
× 持株価値の希釈化(新株発行の際の払込金額が現在の株式の価値より低い場合、既存株主が有する株式の経済的価値が低下し経済的損失を被ること)

といった不利益を受ける場合があります。このため、会社が新たに株式を発行する場合、会社法上定められた機関で、新株について募集事項の決定をする必要があります。
具体的には、おおむね以下のとおりまとめることができます。

非公開会社原則株主総会の特別決議(会社法199条2項・309条2項5号)
株主割当て取締役の決定or取締役会の決議(会社法202条3項1号・2号)
※定款の定めがある場合
公開会社原則取締役会の決議(会社法201条1項)
有利発行株主総会の特別決議(会社法201条1項・199条3項・309条2項5号)
株主割当ての場合は、有利発行に当たっても、取締役会の決議(会社法202条3項3号)
支配権の異動を伴う場合株主総会の普通決議(会社法206条の2第4項・5項)

有利発行とは、1株の払込金額が、新株を引き受ける者にとって特に有利な金額である場合の新株発行をいいます(会社法199条3項参照)。

募集事項が決定された後は、おおむね、

① 会社による新株の引受けの申込みをしようとする者に対する通知(会社法203条1項)
② 新株の引受けの申込みをする者による申込み(同条2項)
③ 会社による新株の割当て(会社法204条1項)
出資の履行(会社法208条1項)

といった流れで手続きが進みます。

株式の内容についての特別の定め

会社は、その発行する全部の株式の内容として、以下の定めを設けることができます(会社法107条1項各号)。

① 譲渡制限(1号)
譲渡による株式の取得について会社の承認を要するとする定め
② 取得請求権(2号)
株主が会社に対して株式の取得を請求することができるとする定め
③ 取得条項(3号)
会社が一定の事由が生じたことを条件として株式を取得することができるとする定め

種類株式

株式の内容についての特別の定め」では、発行する全部の株式の内容として、特別の定めを設けることができることについて説明しましたが、会社は、一定の事項について内容の異なる2以上の種類の株式を発行することもできます(会社法108条)。このような株式を種類株式といいます。

株主の中には、株主総会の議決権等を通じた会社経営に強い関心をもつ者もいれば、剰余金の配当等を通じた経済的利益の確保に強い関心をもつ者もいますが、種類株式を活用すれば、このような多様な株主のニーズを満たすことができます。会社法上、以下の事項に関する種類株式の発行が認められています(会社法108条1項各号)。

剰余金の配当(1号)
残余財産の分配(2号)
議決権制限(3号)
株主総会で議決権を行使することができる事項
譲渡制限(4号)
取得請求権(5号)
取得条項(6号)
全部取得条項(7号)
会社が株主総会の決議によって株式の全部を取得することができるとする定め
拒否権(8号)
株主総会または取締役会において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、種類株主総会の決議を必要とすること
クラス・ボーディング(9号)
種類株主総会において取締役または監査役を選任すること

株式の譲渡等

株式の譲渡と権利行使の方法

株式の譲渡自由の原則」のとおり、会社法では、株式の譲渡自由の原則が採用されています。
株式の譲渡自由の原則が採用され株式の流通性が確保されているということは、株式が不特定多数の者の間で流通するということですので、特に、会社や第三者から見て、誰を株主として扱う必要があるのかという点が問題となります。

以下に、当事者間における株式譲渡の効力発生要件、株式が譲渡されたときの(会社を除く)第三者への対抗要件、株式会社への対抗要件について整理します。

効力発生要件対第三者対抗要件対会社対抗要件
株券発行会社株券の交付(会社法128条1項)株券の交付(会社法130条2項)株主名簿の名義書換え(会社法130条2項)
※株主名簿の名義書換えは、譲受人単独で可能(会社法133条2項、会社法施行規則22条2項1号)
非株券発行会社(上場会社以外)当事者の意思表示株主名簿の名義書換え(会社法130条1項)
※株主名簿の名義書換えは、譲渡人と共同でする必要あり(会社法133条2項)
株主名簿の名義書換え(会社法130条1項)
※株主名簿の名義書換えは、譲渡人と共同でする必要あり(会社法133条2項)
上場会社(株式振替制度が適用される会社)譲受人の口座の保有欄に譲渡に係る数の増加の記載・記録がされること(振替法140条1項)譲受人の口座の保有欄に譲渡に係る数の増加の記載・記録がされること(振替法161条3項、会社法130条1項)株主名簿の名義書換え(会社法130条1項、振替法152条1項)
※少数株主権等の行使の場合、個別株主通知(振替法154条1項・2項)

株式の譲渡制限と承認手続

株式の譲渡自由の原則」のとおり、会社法では、株式の譲渡自由の原則が採用されていますが、「株式の内容についての特別の定め」や「種類株式」のとおり、株式会社は、その発行する株式の全部または一部の内容として、譲渡による株式の取得について株式会社の承認を要するとする定款の定めを設けることができます
このような種類株式を譲渡制限株式といいます。

譲渡制限株式の譲渡人や譲受人は、譲渡制限株式の譲渡・譲受けをしようとするときは、会社に対して譲渡等承認請求を行い(会社法136条・137条)、これに対し、譲渡の承認機関(原則として取締役会設置会社であれば取締役会、非取締役会設置会社であれば株主総会。会社法139条1項)が、当該譲渡・譲受けの承認をするかを決定します。

承認機関が譲渡を承認した場合は会社との関係でも譲渡の効力が生じますし、譲渡が承認されなかった場合でも、譲渡人や譲受人が買取先指定請求(会社法138条1号ハ・同条2号ハ)をしていれば、会社は自ら当該株式を買い取るか(会社法140条1項)、買受人の指定をしなければいけませんので(同条4項)、譲渡人から見れば、必ず株式を売却することができるといえます。

ヒー

譲渡制限株式といっても、手放せないわけではないんですね。

ムートン

その通りです。株主は、株式を売却することによってのみ投下資本を回収することができるので、譲渡制限株式についても、最終的には、手放すことができるようになっています。例えば、相続などにより譲渡制限株式を取得したときにも、株式を売却できないとなると困りますしね。

株式の担保化

株主は、その有する株式に質権を設定することもできますし(会社法146条1項)、譲渡担保権を設定することもできます。

自己株式

株式会社が有する自己の株式を「自己株式」といいます(会社法113条4項)。以下では、自己株式に関連する会社法上のルールについて見ていきます。

自己株式の取得

自己株式の取得とは、会社が自ら発行した株式を株主から取得することをいいます。いわゆる「自社株買い」のことです。

会社が自己株式を取得する場合、会社の財産を減少させてしまうため、会社債権者に不利益を及ぼす可能性があります。また、どの株主から株式を取得するのかという点や、いくらで株式を取得するのかという点において、株主間に不公平を発生させてしまうかもしれません。このため、会社法では、自己株式の取得についてルールが設けられています。以下、詳しく見ていきます。

財源規制

まず、会社債権者保護の観点から、自己株式の取得にあたり財源規制が設けられています。

すなわち、自己株式の取得の対価として株主に交付する金銭等の帳簿価額の総額は、当該自己株式の取得の効力発生日における分配可能額を超えることができません(会社法461条1項2号・3号)。

手続規制

次に、株主間の不公平の解消の観点から、自己株式の取得に当たって手続規制が設けられています。

すなわち、会社は株主との合意により自己株式を取得することができますが(会社法155条3号)、この際、必要な機関における承認が必要とされています

株主との合意により自己株式を取得する場合としては、

① 全ての株主に株式の売却機会を与える場合
② 特定の株主から自己株式を取得する場合
③ 市場取引等により自己株式を取得する場合

がありますので、以下それぞれについて見ていきます。

① 全ての株主に株式の売却機会を与える場合
会社は、株主総会の普通決議により、取得する株式の数等の取得枠の範囲について定めることが必要です(会社法156条1項)。そして、当該取得枠の範囲内で、(取締役会設置会社の場合、)取締役会が、実際の自己株式の取得を決定します(会社法157条1項・2項)。

② 特定の株主から自己株式を取得する場合
会社は、株主総会の特別決議により、取得枠の範囲特定の株主から自己株式を取得することについて決議しなければなりません(会社法160条1項・309条2項2号)。
なお、当該株主総会では、当該特定の株主は、議決権を行使することができません(会社法160条4項本文)。上記①の場合は、株主総会の普通決議で足りましたが、②の場合、株主間の不公平感がより強くなるため、株主総会の特別決議が必要となります。

③市場取引等により自己株式を取得する場合
会社は、株主総会の普通決議により、取得枠の範囲を定めれば(会社法156条1項)、当該取得枠の範囲内で、取締役会の決議を経ることなく、自己株式の取得を実行できます(会社法165条1項参照)。
また、取締役会設置会社であれば、市場取引等による自己株式の取得の定めを取締役会の決議により行うことを定款で定めることができ(会社法165条2項)、この場合、株主総会の決議ではなく、取締役会の決議で自己株式の取得枠について決議することができます(同条3項)。

自己株式の消却・処分

会社は、自己株式を消却する(消滅させる)ことができますし(会社法178条1項)、また、自己株式を処分する(譲り渡す)ことができます(会社法199条以下参照)。

株式の持合い

自己株式ではありませんが、複数の会社が相互に相手方の会社の株式を所有することを、株式の持合いといいます。日本では、取引関係の維持・強化や、安定株主に自社株を保有してもらうことを狙いに株式の持合いが始まったとされています。しかし、バブルの崩壊とともに株式の持合いの解消も進んでいるといわれています。

なお、コーポレートガバナンス・コードにおいても、上場会社が政策保有株式として上場株式を保有する場合は、政策保有株式の縮減に関する方針・考え方など、政策保有に関する方針を開示すべきなどとされています(原則1-4)。

株式の併合・分割・株式無償割当て・単元株制度

株式の併合

株式の併合(会社法180条1項)とは、例えば、5個の株式を1個の株式にするように、数個の株式をそれよりも少数の株式にすることをいいます。
株式の併合をすると、例えば、5個の株式を1個の株式にする場合、4個の株式しか有しない株主は株主の地位を失ってしまうという不利益を被ります。このため、株式の併合をするためには、株主総会の特別決議を経る必要があります(会社法180条2項・309条2項4号)。

株式の分割

株式の分割(会社法183条1項)とは、株式の併合の逆で、例えば、1個の株式を1.5個の株式にするように、ある株式をそれよりも多い株式にすることをいいます。
株式の分割をすると、例えば、1個の株式を1.5個の株式にする場合、2個の株式を有していた者は、3個の株式を有することになる一方、1個の株式しか有していなかった者は、1個の株式を有するままになりますので、株主の持株比率が変動します。

もっとも、株式の併合とは異なり、株主の地位を失う株主は発生しませんので、相対的に株主に与える影響は小さいといえ、株式の分割をするためには、非取締役会設置会社であれば株主総会の普通決議を、取締役会設置会社であれば取締役会の決議を得れば足ります(会社法183条2項)。

株式無償割当て

株式無償割当てとは、株主に新たに払込みをさせないで、保有株式数に応じて株式の割当てを行うことをいいます(会社法185条)。
例えば、株主に対し保有株式1個につき0.5個の株式を無償で交付することが考えられますが、これは既存の株式1個を1.5個の株式にする株式の分割と経済的効果が同じ行為といえます。

そのため、株式無償割当てをするときは、株式の分割と同様に、非取締役会設置会社であれば株主総会の普通決議を、取締役会設置会社であれば取締役会の決議が必要となります(会社法186条3項)。

単元株制度

単元株制度とは、株式会社が定款により、一定数の株式(例えば100株など)を一単元とし、単元株主には完全な権利を認め、単元に満たない数の株式しか有しない株主(単元未満株主)には限定された権利のみを認める制度をいいます(会社法188条1項・189条1項・2項参照)。単元株制度は上場会社で広く利用されています。

ムートン

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参考文献

田中亘著『会社法[第4版]』東京大学出版会、2023年

橋本副孝他編『会社法実務スケジュール[第3版]』新日本法規、2023年