健康保険料率とは?
2025年度の料率・保険料額の計算方法・
事業主が行うべき手続きなどを解説!
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- この記事のまとめ
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「健康保険料率」とは、企業などに勤務する人の健康保険料の額を計算するために適用する割合です。標準報酬月額(または標準賞与額)に健康保険料率をかけると、健康保険料の額を求めることができます。
健康保険料の額は被保険者資格の取得時に決定されるほか、毎年1回「定時決定」によって改定されます。また、報酬が大幅に増減した場合などには、「随時改定」によって健康保険料の額が変わります。資格取得時の決定・定時決定・随時改定のいずれについても、事業主は年金事務所に届け出なければなりません。
さらに、賞与を支給したときにも健康保険料が課されます。事業主は、賞与を支給するたびに「被保険者賞与支払届」を提出する必要があります。健康保険料に関する届出や計算については、社会保険労務士などが相談を受け付けています。
この記事では健康保険料率について、2025年度の料率や保険料額の計算方法、事業主が行うべき手続きなどを解説します。
※この記事は、2025年9月16日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
健康保険料率とは
「健康保険料率」とは、企業などに勤務する人の健康保険料の額を計算するために適用する割合です。
健康保険とは
「健康保険」とは、企業などで働く人がけがをしたり、病気に罹ったりした場合に、必要な補償を行うための公的保険です。
健康保険の加入者が、けがや病気の治療のために医療費を支払う際には、健康保険の適用によって負担額が3割以下に抑えられます。
また、業務以外の原因によるけがや病気の影響で仕事を休んだときは「傷病手当金」を受け取れるなど、さまざまな給付を受けることができます。
健康保険の加入対象となるのは、企業などでフルタイムで働く人と、一定の条件を満たす短時間労働者(非常勤役員などを含む)です。自営業者などは健康保険ではなく、市区町村などが運営する国民健康保険の加入対象となります。
健康保険料の計算式|健康保険料率が適用される
健康保険料の額は、以下の式によって計算します。
① 月々の給与に課される健康保険料
健康保険料=標準報酬月額×健康保険料率
② 賞与に課される健康保険料
健康保険料=標準賞与額×健康保険料率
月々の給与に課される健康保険料の額は、標準報酬月額に健康保険料率をかけて計算します。
「標準報酬月額」とは、月々支払われる給与などの報酬を区切りのよい数字に直した金額です。例えば報酬月額(月給)が48万5000円以上51万5000円未満の場合、標準報酬月額は50万円です。
健康保険料の標準報酬月額は50等級に区分されています。最低額は5万8000円(報酬月額6万3000円未満の場合)、最高額は139万円(報酬月額135万5000円以上の場合)です。
健康保険料は月々の給与だけでなく、賞与に対しても課されます。賞与に課される健康保険料の額は、標準賞与額に健康保険料率をかけて計算します。
「標準賞与額」とは、税引き前の賞与総額から1000円未満を切り捨てた額で、1カ月単位で決まります。
例えば12月に支給される年末賞与が123万4500円の場合、12月の標準賞与額は123万4000円です。
同じ月に複数回賞与が支給される場合は、その合計額に従って標準賞与額が決まります。
例えば12月に50万1500円と70万1600円の賞与が支給される場合、合計額は120万3100円なので、12月の標準賞与額は120万3000円となります。
健康保険料の標準賞与額は、年度内の累計額の上限が573万円とされています。
健康保険料は労使折半で負担する
健康保険料は、事業主と労働者が折半で負担するものとされています。例えば、月々の健康保険料が4万9550円の場合、事業主と労働者が2万4775円ずつ負担します。
労働者負担分は、事業主が労働者に支払う給与から控除(天引き)するか、または労働者が事業主に対して現金で支払います。多くの企業では、労働者負担分を給与から控除する方式が採用されています。
なお、折半した際に労働者負担分の端数が生じる場合は、以下の方法で端数処理を行います。
① 給与から労働者負担分を差し引く場合
端数が50銭以下→切り捨てる(例:1万2345円50銭→1万2345円)
端数が50銭超→切り上げて1円とする(例:1万2345円51銭→1万2346円)
② 労働者負担分を労働者が現金で支払う場合
端数が50銭未満→切り捨てる(例:1万2345円49銭→1万2345円)
端数が50銭以上→切り上げて1円とする(例:1万2345円50銭→1万2346円)
※上記にかかわらず、事業主と労働者の間で特約がある場合は、特約に基づく端数処理が認められます。
健康保険料率の改定時期|毎年見直される
健康保険料率は、毎年3月分から改定されることになっています。都道府県ごとの年齢構成や所得水準の差などを考慮して、その都道府県の加入者1人当たりの医療費に基づいて健康保険料率が決定されます。
健康保険料率の改定を反映すべきタイミング
健康保険料を給与から控除する場合は、翌月分の給与から控除するのが原則とされています。この場合、健康保険料が改定されるのは3月分からなので、改定が反映されるのは4月分給与からです。
ただし、当月分の給与から健康保険料を控除している企業も一部見られます。この場合、健康保険料の改定は3月分給与から反映します。
令和7年度の健康保険料率|都道府県によって異なる
健康保険料率は、都道府県ごとに定められています。令和7年(2025年)3月から適用されている健康保険料率の全国平均は10.00%で、各都道府県の健康保険料率は以下のとおりです。
| 都道府県 | 健康保険料率 |
|---|---|
| 北海道 | 10.31% |
| 青森 | 9.85% |
| 岩手 | 9.62% |
| 宮城 | 10.11% |
| 秋田 | 10.01% |
| 山形 | 9.75% |
| 福島 | 9.62% |
| 茨城 | 9.67% |
| 栃木 | 9.82% |
| 群馬 | 9.77% |
| 埼玉 | 9.76% |
| 千葉 | 9.79% |
| 東京 | 9.91% |
| 神奈川 | 9.92% |
| 新潟 | 9.55% |
| 富山 | 9.65% |
| 石川 | 9.88% |
| 福井 | 9.94% |
| 山梨 | 9.89% |
| 長野 | 9.69% |
| 岐阜 | 9.93% |
| 静岡 | 9.80% |
| 愛知 | 10.03% |
| 三重 | 9.99% |
| 滋賀 | 9.97% |
| 京都 | 10.03% |
| 大阪 | 10.24% |
| 兵庫 | 10.16% |
| 奈良 | 10.02% |
| 和歌山 | 10.19% |
| 鳥取 | 9.93% |
| 島根 | 9.94% |
| 岡山 | 10.17% |
| 広島 | 9.97% |
| 山口 | 10.36% |
| 徳島 | 10.47% |
| 香川 | 10.21% |
| 愛媛 | 10.18% |
| 高知 | 10.13% |
| 福岡 | 10.31% |
| 佐賀 | 10.78% |
| 長崎 | 10.41% |
| 熊本 | 10.12% |
| 大分 | 10.25% |
| 宮崎 | 10.09% |
| 鹿児島 | 10.31% |
| 沖縄 | 9.44% |
健康保険料率が最も高いのは、佐賀県の10.78%です。最も低いのは、沖縄県の9.44%となっています。
なお、40歳から64歳までの介護保険第2号被保険者については、上記に全国一律の介護保険料率(1.59%)が加算されます。
事業所の所在地の健康保険料率が適用される
健康保険料率は、事業所の所在地のものが適用されます。被保険者である労働者等の住所地や、企業の本店所在地によるわけではない点にご注意ください。
例えば埼玉県在住の人が、東京都に本店のある企業に雇用されており、千葉県内の職場で働いている場合は、千葉県の健康保険料率が適用されます。
健康保険料額の計算例
下記の計算式(再掲)を用いて、実際に健康保険料の額を計算してみましょう。
① 月々の給与に課される健康保険料
健康保険料=標準報酬月額×健康保険料率
② 賞与に課される健康保険料
健康保険料=標準賞与額×健康保険料率
月給に対して課される健康保険料額の計算例
<設例1>
・2025年9月の給与額が46万3000円
・東京都の職場に勤務
・35歳
設例1では、給与額が45万5000円以上48万5000円未満のため、標準報酬月額は47万円です。
また、東京都に勤務していて介護保険第2号保険者(40~64歳)ではないため、健康保険料率は9.91%です。
したがって、2025年9月分の健康保険料額は4万6577円(=47万円×9.91%)となります。
給与から労働者負担分の健康保険料を控除する場合、控除額は2万3288円です。原則として、10月分の給与から控除します。
賞与に対して課される健康保険料額の計算例
<設例2>
・2025年12月の年末賞与額が122万3500円
・東京都の職場に勤務
・45歳
※2025年中の賞与の支給は、上記の1回のみ
設例2では、標準賞与額は122万3000円です(1000円未満切り捨て)。
また、東京都に勤務していて介護保険第2号保険者(40~64歳)であるため、健康保険料率は11.50%です。
したがって、2025年12月の年末賞与に課される健康保険料額は14万0645円(=122万3000円×11.50%)となります。
賞与から労働者負担分の健康保険料を控除する場合、控除額は7万0322円です。
健康保険料の決定・改定に関する手続き
月々の給与に課される健康保険料は、「資格取得時の決定」「定時決定」「随時改定」のいずれかによって決定されます。事業主は、それぞれに対応する手続きを行わなければなりません。
また、賞与を支給した際には「被保険者賞与支払届」を提出する必要があります。
なお、各手続きに関する書類の提出先は、いずれも日本年金機構の事務センターまたは年金事務所です。
資格取得時の決定|契約上の報酬額に基づいて計算する
事業主が労働者を雇用した際には、雇用日から5日以内に「被保険者資格取得届」を提出する必要があります。
被保険者資格取得届には、就業規則や労働契約などの内容に基づき、その労働者の報酬月額を記載します。届け出た報酬月額を基に、厚生労働大臣が標準報酬月額を決定します(=資格取得時の決定)。
資格取得時の決定によって決まった標準報酬月額は、以下の期間にわたって適用されます。
(a)1月1日~5月31日に資格取得した場合
資格取得の月から、その年の8月まで
(b)6月1日~12月31日に資格取得した場合
資格取得の月から、翌年の8月まで
定時決定|4~6月の平均報酬額に基づいて計算する
健康保険料の標準報酬月額は、毎年1回決定し直されます。
事業主は毎年7月10日までに、すべての被保険者の3カ月間(4月・5月・6月)の報酬月額を記載した「算定基礎届」を提出しなければなりません。3カ月間の報酬月額の平均値に基づき、厚生労働大臣が標準報酬月額を決定します(=定時決定)。
定時決定によって決まった標準報酬月額は、9月から翌年8月まで適用されます。
随時改定|大幅に報酬が増減した場合などに行われる
労働者の昇給や降給などにより、標準報酬月額が2等級以上変わったときは、事業主は速やかに「月額変更届」を提出しなければなりません。この場合、届出がなされた報酬月額に基づき、厚生労働大臣が標準報酬月額を改定します(=随時改定)。
随時改定によって決まった標準報酬月額は、再び随時改定が行われない限り、以下の期間にわたって適用されます。
(a)1月~6月に随時改定がなされた場合
その月から当年の8月まで
(b)7月~12月に随時改定がなされた場合
その月から翌年の8月まで
被保険者賞与支払届|賞与を支給するたびに届け出る
健康保険の被保険者である労働者に賞与を支払ったときは、賞与支払日から5日以内に「被保険者賞与支払届」を提出しなければなりません。
被保険者賞与支払届には、賞与の支給額などを記載します。届出がなされた賞与の支給額に基づき、厚生労働大臣が標準賞与額を決定します。
なお、年4回以上支給する賞与は標準報酬月額(算定基礎届)の対象となるため、各回の賞与について被保険者賞与支払届を提出する必要はありません。
また、労働の対償とみなされない結婚祝い金などは、健康保険料に関する届出の対象外です。
健康保険料の決定・改定に関する手続きを怠った場合のペナルティ
事業主が健康保険料に関する届出や納付を怠った場合には、法律の規定に従ってペナルティを受けることになります。
各種届出を怠った場合のペナルティ
事業主が正当な理由なく、健康保険料に関する届出を怠った場合には「6カ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」に処されます(健康保険法208条1号)。
健康保険料の納付を怠った場合のペナルティ
健康保険料の納付を怠ると、保険者(協会けんぽなど)から督促状が送られてきます。
督促状に指定された期限までに健康保険料を納付しないと、以下のペナルティを受けるおそれがあります。
- 延滞金の発生(納付期限から3カ月間は年2.4%、3か月経過後は年8.7%)
- 滞納処分による財産の差押え
- 刑事罰(6カ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)
健康保険料の手続きに関する相談先
健康保険料に関する手続きについて分からないことがある場合は、年金事務所や協会けんぽなどの窓口に相談してみましょう。必要な手続きの案内を受けることができます。
また、健康保険料に関する手続きの代行は、主に社会保険労務士が受け付けています。面倒な手続きを任せたいときは、社会保険労務士に相談してみましょう。
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