民事裁判(民事訴訟)とは?
刑事裁判との違い・種類・流れ・
注意点などを分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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「民事裁判(民事訴訟)」とは、法律上の権利・義務に関する紛争を解決するための法的手続きです。訴訟を提起した側が「原告」、その相手方が「被告」となり、裁判所の公開法廷で行われます。
民事裁判では、個人や法人の間で発生するあらゆる種類の紛争が争われます。
事件の種類の一例として挙げられるのは、
・貸金返還請求訴訟
・土地明渡請求訴訟
・不当利得返還請求訴訟
・損害賠償請求訴訟
などです。民事裁判は、原告が裁判所に訴状を提出するところから始まります。その後、口頭弁論というかたちで原告・被告が互いに主張・立証を行い、最終的に裁判所が判決を言い渡します。ただし、裁判上の和解が成立した場合には、判決に至らずその時点で民事裁判が終了します。
民事裁判については三審制が採用されており、一審判決に不服がある場合は控訴、控訴審判決に不服がある場合は上告が可能です。ただし、上告が受理されるためには一定の要件を満たす必要があり、実際に上告が受理されるケースは少数となっています。
この記事では民事裁判について、基本からわかりやすく解説します。
※この記事は、2024年5月24日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
民事裁判(民事訴訟)とは
「民事裁判(民事訴訟)」とは、法律上の権利・義務に関する紛争を解決するための法的手続きです。
民事裁判の目的
民事裁判の目的は、法律上の権利・義務に関する紛争を解決することです。
金銭の請求や物の引き渡し・明け渡しなどを巡るトラブルについて、当事者同士で合意により解決することが難しい場合には、最終的に民事裁判を通じて争います。
民事裁判の当事者|原告と被告
民事裁判の当事者は「原告」と「被告」です。
なお、控訴審における当事者は「控訴人」と「被控訴人」、上告審における当事者は「上告人」と「被上告人」と呼ばれます。
第一審における立場(原告・被告)にかかわらず、控訴・上告を行った側が「控訴人」「上告人」、その相手方が「被控訴人」「被上告人」です。
民事裁判と刑事裁判の違い
民事裁判 | 刑事裁判 | |
---|---|---|
目的 | 法律上の権利・義務に関する紛争を解決すること | 犯罪を疑われる被告人の有罪・無罪および量刑を決定すること |
判決 | 原告の請求を認めるかどうかについての判断が示される | 被告人の有罪・無罪が示され、有罪であれば量刑が示される |
当事者の呼び方 | 原告と被告→控訴人と被控訴人→上告人と被上告人 | 検察官と被告人 |
途中終了の有無 | 当事者の合意(=和解)によって民事裁判が終了するケースあり | 当事者の合意で刑事裁判が終了することはない |
立証責任 | 主張内容に応じて原告・被告の間で立証すべき事項が振り分けられる | 常に検察官がすべての犯罪要件について立証責任を負う |
民事裁判と民事調停の違い
民事裁判のほか、裁判所で行われる紛争解決手続きとして「民事調停」が挙げられます。
民事調停には、有識者などから選任される調停委員が関与します。調停委員は中立的な立場で当事者の主張を聴き取り、双方に歩み寄りを促すなどして合意形成をサポートします。
これに対して、民事裁判の進行は専ら裁判所(裁判官)が行い、調停委員が民事裁判に関与することはありません。
民事調停の手続きは、非公開で行われます。これに対して民事裁判の手続きは、原則として公開法廷において行われます。
民事調停の解決は、当事者の合意によります。合意が得られれば調停成立、まとまらなければ調停不成立となります。これに対して民事裁判の解決は、原則として裁判所の判決によります。判決では、裁判所が紛争解決の結論を示し、判決が確定すれば両当事者を拘束します。
民事裁判の種類
① 通常訴訟
原則的な民事裁判の形態です。主に財産権に関するトラブルの解決が争われます。
② 手形小切手訴訟
手形・小切手金の支払いを求める民事裁判です。早期に判決を言い渡すことができるように、証拠が書証と当事者尋問に限定されます。
③ 少額訴訟
60万円以下の金銭の支払いを求める民事裁判です。簡易裁判所において、原則として1回の期日で審理が行われます。
④ その他の訴訟
上記のほか、家族関係に関するトラブルの解決を争う「人事訴訟」(例:離婚裁判)や、行政庁の行為の取り消しなどを求める「行政訴訟」(例:取消訴訟)があります。
民事裁判で争われる事件の具体例
民事裁判では、さまざまな内容のトラブルが争われます。
・貸金返還請求訴訟
→貸したお金の返済を求める民事裁判です。
・土地明渡請求訴訟
→土地を不法占有している人や、賃貸借契約が終了してもなお土地に居座っている人などに対して、所有者が土地の明渡しを求める民事裁判です。
・不当利得返還請求訴訟
→法律上の原因なく利益を得た人に対して、損失を被った人が利益の返還を求める民事裁判です。
・損害賠償請求訴訟
→債務不履行や不法行為によって損害を被った人が、その損害の賠償を求める民事裁判です。
民事裁判(第一審)の手続きの流れ
民事裁判の第一審の手続きは、大まかに以下の流れで進行します。
① 訴訟の提起|原告が訴状等を提出
② 被告による答弁書等の提出
③ 裁判所における期日
④ 判決
①訴訟の提起|原告が訴状等を提出
訴状には、民事裁判の当事者となる原告・被告の情報に加えて、具体的な請求の内容や根拠となる事実を記載します。また原告には、訴状と併せて、自らが主張する事実に関する証拠資料などを提出することも求められます。
②被告による答弁書等の提出
さらに裁判所は、一定の期限を設けて被告に答弁書などの提出を求めます。答弁書は、原告の請求・主張に対して反論する書面です。
被告は、裁判所に指定された期日までに答弁書を提出し、併せて自らが主張する事実に関する証拠資料等を提出します。
③裁判所における期日
ただし、口頭弁論期日の合間に争点整理期日が設けられることがあるほか、和解期日が設けられることもあります。争点整理期日と和解期日は、非公開で行われます。
第1回口頭弁論期日以降の民事裁判の期日は、以下の流れで進行することが多いです。
(a)争点整理期日|弁論準備手続・書面による準備手続
(b)書証の証拠調べ
(c)人証の尋問・質問|証人尋問・当事者尋問・鑑定人質問
(d)和解期日
争点整理期日|弁論準備手続・書面による準備手続
民事裁判における争点や証拠を整理する必要がある場合には、第1回口頭弁論期日の直後から争点整理期日が設けられることがあります。
争点整理期日は、「弁論準備手続き」または「書面による準備手続き」として行われます。
・弁論準備手続き(民事訴訟法168条以下)
→当事者双方が立ち会うことができる期日において、争点および証拠の整理が行われます。
・書面による準備手続き(同法175条以下)
→当事者が出頭することなく、準備書面の提出などにより争点および証拠の整理が行われます。実務上は、Teamsによるテレビ会議が併用されることも多いです。
書証の証拠調べ
原告・被告が裁判所に提出した書証(=文書による証拠)は、口頭弁論期日または弁論準備手続きにおいて証拠調べが行われます。
証拠調べの中で、裁判所は、提出されたすべての書証を総合的に検討して、事件に関する心証を形成していきます。
人証の尋問・質問|証人尋問・当事者尋問・鑑定人質問
事件の関係者から詳しく事情を訊く必要がある場合や、専門家の意見を訊くべき問題が生じている場合には、人証(=証人・当事者・鑑定人)に対する尋問・質問が行われることがあります。
人証に対する尋問・質問は、以下の3つに分類されます。
・証人尋問(民事訴訟法190条以下)
→当事者を除く事件の関係者などに対して尋問を行います。
・当事者尋問(同法207条以下)
→当事者(原告または被告)に対して尋問を行います。
・鑑定人質問(同法215条の2)
→学識経験を有する鑑定人が口頭で意見を述べた場合に、その鑑定人に対して質問を行います。
人証に対する尋問・質問は、原告・被告および裁判所がそれぞれ行います。
特に証人尋問および当事者尋問においては、
- 申請した側が行うものを「主尋問」
- 相手方が行うものを「反対尋問」
- 裁判所が行うものを「補充尋問」
と呼んでいます。
和解期日
民事裁判の期日において、裁判所は当事者に対して和解を提案することがあります(民事訴訟法89条1項)。この場合、非公開の場において和解期日が行われます。
和解期日では、裁判所が原告・被告をそれぞれ個別に呼び出して話を聞き、和解に向けた調整を行います。原告・被告が和解案に合意した場合には、訴訟上の和解が成立して民事裁判が終了します。
④判決
判決書では、
- 原告の請求を認めるか棄却するか
- 認める場合にはどの範囲で認めるか
が主文において明記されます。また、判決の理由についても判決書に詳しく記載されます。
判決書は、裁判所から原告および被告に対して送達されます(同法255条1項)。
判決に不服がある場合の手続き|控訴・上告
民事裁判の当事者は、第一審判決に不服がある場合には「控訴」、控訴審判決に不服がある場合には「上告」を行うことができます。
控訴とは
「控訴」とは、第一審判決に対する不服申し立てです。
控訴審における審理の対象となるのは、第一審判決のうち、控訴人が変更を求める事項です(民事訴訟法296条1項)。控訴人は、事実誤認や経験則違反などを理由として、第一審判決が不適切であることを主張し、控訴裁判所にその変更を求めます。
上告とは
「上告」とは、控訴審判決に対する不服申し立てです。
民事裁判の上告審では、事実認定の当否は審理の対象になりません。憲法違反・法律違反・判例違反などの法律問題だけが、上告審における審理の対象となります。
そのため、上告が認められるのは厳しい要件を満たす場合に限られており(民事訴訟法312条)、実際に上告が受理されるケースは少ないのが実情です。
控訴・上告の期間
控訴および上告は、原審判決の判決書などの送達を受けた日から2週間以内に行わなければなりません(民事訴訟法285条、313条)。
民事裁判の判決が確定した場合は、強制執行の申立てが可能になる
原告の請求を認める判決が確定すると、原告(=債権者)は確定判決を債務名義(=強制執行によって実現されるべき債権の存在および範囲を公的に証明した文書)として裁判所に提出し、強制執行を申し立てることができます(民事執行法22条1項)。
強制執行を申し立てると、判決の内容が強制的に実現されます。
例えば、金銭請求を認める判決が確定した場合には、債務者の財産が換価され、債権の弁済に充当されます。建物の明け渡しを命ずる判決が確定した場合には、執行官によって強制的に明け渡しが行われます。
民事裁判に臨む際のポイント
民事裁判へ臨む際には、特に以下のポイントに注意しましょう。
① 要件事実に沿って主張を組み立てる
② 主張を裏付ける証拠を提出する
③ 人証については、十分に尋問の準備をする
ポイント1|要件事実に沿って主張を組み立てる
民事裁判における主張は、法律上の要件事実に沿って組み立てる必要があります。
例えば貸金返還請求であれば、貸主である原告は、借主に対して金銭を交付した事実と、その金銭の返還を合意した事実を立証しなければなりません。
これに対して借主である被告は、借入金を返済した事実や、債権の消滅時効が完成した事実などを立証すれば、貸金の返還を免れることができます。
民事裁判において主張すべき要件事実は、請求や反論(抗弁)の内容によって異なります。訴訟代理人である弁護士のアドバイスを受けながら、要件事実に沿った主張を適切に組み立てましょう。
ポイント2|主張を裏付ける証拠を提出する
民事裁判において、当事者が主張する事実が裁判所に認定されるかどうかは、その事実を裏付ける有力な証拠を提出できるかどうかに左右されます。
幅広い観点から利用できる証拠の検討を行い、主張する事実の立証に十分な証拠を確保・提出しましょう。
ポイント3|人証については、十分に尋問の準備をする
証人尋問や当事者尋問が行われる場合には、対象者との間で予行演習(リハーサル)を行うなど、事前の準備が必要不可欠です。
尋問によって裁判所の心証が大きく変わるケースもあるので、尋問期日が指定された場合には、十分な時間をとって準備を整えましょう。
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