内定取り消しが認められる理由とは?
適法/違法な内定取り消し・手続き・
トラブルの解決方法などを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

内定取り消しは、会社が内定者との間で締結した労働契約を解約することをいい、法的には解雇に当たります。客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない内定取り消しは無効となる点に注意が必要です。

内定取り消しが認められる理由としては、重大な経歴詐称、内定後の犯罪行為や重大な病気・障害、留年、業務に必要な資格を取得していないこと、深刻な経営状況の悪化などが挙げられます。
これに対して、内定者の性格が当初の印象と違った、従業員や他の内定者と馴染めていない、あるいは経営危機に至らない程度の業績悪化などの理由では、内定取り消しは認められない可能性が高いです。

やむを得ず内定を取り消す際には、その理由が合理的であるかどうかを慎重に検討しましょう。また、ハローワークに対して内定を取り消す旨を通知し、その指導を尊重することが求められます。さらに、内定取り消しに当たっては解雇予告解雇予告手当の支払義務が生じる点にも注意すべきです。

内定取り消しについて、内定者との間でトラブルになった場合には、協議・労働審判・訴訟などを通じて解決を図りましょう。

この記事では内定取り消しについて、認められる理由・手続き・トラブルの解決方法などを解説します。

ヒー

内定者から「留年しました…内定は取り消しになりますか?」という連絡がありました。どう対応しましょう?

ムートン

それはやむなく内定取り消しを伝えることになるかもしれません。内定取り消しが認められるかどうかは「理由」が重要です。以下で確認していきましょう。

※この記事は、2024年2月8日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

内定とは

内定」とは、内定者が将来入社することについて、会社と内定者の間で合意することです。内定の法的性質は、「始期付解約権留保付労働契約」であると解されています(最高裁昭和54年7月20日判決)。

労働契約」とあるとおり、内定の時点で労働契約が成立します。
「始期付」とは契約成立日とは別に契約開始の時期が定められていること、「解約権留保付」とは使用者が内定を取り消す権限を留保していることを意味します。

内定取り消しとは

内定の時点で労働契約が成立しているため、使用者による内定取り消しは労働契約の解約であり、法的には「解雇」に当たります。

内定者に対して、使用者は労働契約の解約権を留保していますが、実際には内定取り消しが認められるケースは厳しく限定されています

内定者は内定によって就職活動を終了し、他社への入社機会を放棄して入社に備えるのが通常です。したがって、企業が一方的に内定を取り消すことは、内定者にとって大きな不利益となります。
このような不利益を内定者に甘受させてよいのは、合理的な理由がある場合のみです。そのため、使用者による解約権の行使は無制限には認められず、後述する要件を満たす場合に限られています。

内定取り消しの要件

内定取り消しは、以下の要件をいずれも満たす場合に限って認められます(最高裁昭和54年7月20日判決)。

内定取り消しの要件

① 内定取り消しの理由が、使用者にとって、採用内定当時において知ることができず、また知ることが期待できないような事実であること
② 採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨・目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認することができること

内定取り消しが認められる(適法な)理由の具体例・ケース

内定取り消しが認められる理由としては、以下の例が挙げられます。

① 重大な経歴詐称
② 内定後の犯罪行為
③ 内定後の重大な病気・障害
④ 留年
⑤ 業務に必要な資格を取得していないこと
⑥ 深刻な経営状況の悪化

重大な経歴詐称

採用選考において、候補者が証明書類を提示した上で伝えてきた経歴は、証明書類の偽造などを疑うことなく信用することが多いです。そのため、内定者が証明書類を偽造するなどして、使用者に対して虚偽の経歴を伝えていた場合には、内定取り消しの原因として認められる可能性があります。

なお内定取り消しの可否については、経歴詐称の重大性の程度によっても結論が左右されます。業務や採用選考に直接関係がない経歴に関する詐称であれば、内定取り消しまでは認められない可能性が高いです。
反対に、業務上必要不可欠な経歴に関する詐称や、学歴詐称などについては、内定取り消しの合理的な理由に当たる可能性が高いでしょう。

内定後の犯罪行為

内定者が内定後に犯罪行為をした場合には、内定取り消しが認められる可能性があります。

犯罪行為をした者を雇用している事実が広まれば、企業のイメージダウンにつながります。
内定を出す前の犯罪行為については、事前に伝えられていれば採用選考の際に考慮できますが、内定後の犯罪行為については考慮できないので、内定取り消しの原因になり得ます。

内定後の重大な病気・障害

内定者が内定後に就労が困難となるような重大な病気障害を負ったことは、内定取り消しの原因として認められる可能性があります。従業員としてきちんと働けるという前提で内定を出すのですから、その前提が崩れてしまった場合には内定取り消しもやむを得ないといえるでしょう。

なお、内定後に生じた病気や障害が軽微であり、就労に特段の支障がない場合には、内定取り消しは認められません。

留年

新規学校卒業者(いわゆる「新卒」)については、学校を予定どおりに卒業(修了)できず留年したことを理由に、内定が取り消されることがあります。

実際に入社した後には、労働者として職務への専念義務を負うことになります。学校に在籍している状態では、原則として会社における職務専念義務を果たすことは困難なので、内定取り消しもやむを得ません。

ただし、勤務終了後の夜間に少しだけ通えば卒業できる場合や、卒業に必要な単位が少なくほとんど通学しなくてよい場合などには、例外的に留年を理由とする内定取り消しが認められないこともあります。

業務に必要な資格を取得していないこと

業務上必要な資格を入社前に取得していることが内定の条件であるケースにおいて、入社までに必要な資格を取得できなかった場合には、内定取り消しが認められる可能性があります。

会社としては、入社後すぐに資格を活用して働いてもらうことを期待して内定を出しています。その期待を裏切った場合には、内定取り消しもやむを得ないでしょう。

深刻な経営状況の悪化

内定後に会社の経営状況が大幅に悪化した場合には、整理解雇に相当する内定取り消しが認められる可能性があります。

なお、経営状況の悪化による内定取り消しの有効性は、整理解雇に準じて、以下の4要件を総合的に考慮して判断されます。

整理解雇の4要件

① 整理解雇の必要性
→整理解雇が真にやむを得ないほど、高度の経営危機に陥っていること

② 解雇回避努力義務の履行
→役員報酬の削減や希望退職者の募集など、解雇を回避するための努力を尽くしてもなお、整理解雇がやむを得ないこと

③ 被解雇者選定の合理性
→合理的な基準を策定し、それを合理的に運用して整理解雇の対象者を選定したこと

④ 手続きの妥当性
→労働者側に対して、整理解雇の必要性等について説明を尽くし、納得を得るよう努めたこと

内定取り消しが認められない(違法な)理由の具体例・ケース

これに対して、以下のような理由によっては、内定取り消しは認められないと考えられます。

① 内定者の性格が当初の印象と違った
② 従業員や他の内定者と馴染めていない
③ 経営危機に至らない程度の業績悪化

内定者の性格が当初の印象と違った

内定者の性格が採用選考当時の印象と違ったとしても、使用者が内定を取り消すことはできません。採用選考の段階で内定者とよくコミュニケーションをとれば、その性格を推し量ることは十分可能と考えられるためです。

すなわち、内定者の性格は「使用者にとって、採用内定当時において知ることができず、また知ることが期待できないような事実」に当たらないため、性格に関する印象の違いを理由とする内定取り消しは認められません。

従業員や他の内定者と馴染めていない

内定者が結果的に、従業員や他の内定者と馴染めなかったとしても、原則として使用者が内定を取り消すことはできません。

たしかに、内定者が従業員や他の内定者と馴染めるかどうかは、採用選考の時点では判断しにくい部分があります。また、従業員間のコミュニケーションが業務に関して重要なケースが多いことも否定できません。

しかし、内定者自身が酷い問題行動をしたなどの事情がない限り、職場における人付き合いが上手くいかなかったとしても、それが内定者の責任であるとは言い切れません。したがって、内定取り消しを認めるべき合理的な事情とは言えず、内定取り消しは認められないと考えられます。

経営危機に至らない程度の業績悪化

会社の業績が悪化したものの、経営危機に至らない程度である場合には、内定を取り消すことはできません。

業績悪化を理由とする内定取り消しは「整理解雇」に当たるため、前述の4要件(整理解雇の必要性・解雇回避努力義務の履行・被解雇者選定の合理性・手続きの妥当性)を総合的に考慮して適法性が判断されます。
経営危機に至らない程度の業績悪化を理由とする内定取り消しは、「整理解雇の必要性」の要件を満たさないため認められません。

内定取り消しの手続き

企業が内定取り消しを行う際には、以下の手順に従って手続きを行いましょう。

① 内定を取り消す理由についての検討
② ハローワークへの通知
③ 内定取り消し(解雇)の予告・解雇予告手当の支払い

内定を取り消す理由についての検討

まずは、内定取り消しの理由が客観的に合理的であり、社会通念上相当であるかどうかを検討する必要があります。
安易な理由で内定取り消しを行うと、内定者との間でトラブルに発展する可能性が高いので要注意です。必要に応じて顧問弁護士などのアドバイスを受けながら、内定取り消しの可否を慎重に検討しましょう。

ハローワークへの通知

厚生労働省の指針により、事業主が内定を取り消す際には、あらかじめ公共職業安定所ハローワーク)に通知をして、その指導を尊重すべきものとされています。
内定を取り消す方針を決定した段階で、事業所を管轄するハローワークに対して速やかに通知しましょう。

参考:厚生労働省「新規学校卒業者の採用に関する指針

内定取り消し(解雇)の予告・解雇予告手当の支払い

内定取り消しも法的には解雇に当たるため、使用者には解雇予告または解雇予告手当の支払いを行う義務が生じます。内定を取り消す際には、30日以上前に予告するか、または解雇予告手当を支払わなければなりません(労働基準法20条)。

入社まで30日以上の時間的余裕がある場合には、内定取り消しを予告する通知を発すれば足ります。
問題は、入社までの期間が30日を切っている場合です。この場合は、速やかに内定取り消しの予告通知を発した上で、30日に足りない日数分の平均賃金を解雇予告手当として支払いましょう。

内定者とのトラブルの解決方法

内定者との間でトラブルが発生した場合には、以下の方法によって解決を図りましょう。

① 内定者との協議・和解
② 労働審判
③ 訴訟

内定者との協議・和解

内定者とのトラブルは、まず協議および和解によって解決を図るのが一般的です。和解が成立すれば、早期かつ円満にトラブルを解決できます。

和解成立時には、内定者との間で和解合意書を締結しましょう。和解合意書においては、解決金の支払いなどの合意内容の記載に加えて、内定取り消しに関する紛争を蒸し返さない旨を内定者に誓約してもらいましょう。

労働審判

協議・和解による解決が難しい場合は、地方裁判所に対する労働審判の申立てを検討しましょう。

労働審判は、労使紛争を迅速に解決することを目的とした法的手続きです。審理が原則として3回以内で終結するため、早期の紛争解決が期待できます。

ただし、労働審判に対しては異議申立てが認められており、異議申立てがあった場合は訴訟へ移行する点に注意が必要です。

訴訟

協議・和解や労働審判による解決が困難な場合は、最終的に訴訟によって解決を図ります。

訴訟は、裁判所の公開法廷で行われる紛争解決手続きです。内定取り消しの無効等を主張する内定者が原告、会社が被告として訴訟を戦います。

会社としては、内定取り消しが判例上の要件を満たし適法であることを、証拠に基づいて主張することが求められます。十分な準備を整えた上で訴訟に臨みましょう。

ムートン

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