OJTとは?
導入メリット・デメリットや
具体例を分かりやすく解説!

無料で資料をダウンロード
 人事・労務部門ですぐに使えるChatGPTプロンプト集 >
✅ 副業解禁のために企業が知っておくべき就業規則の見直しポイント >
この記事のまとめ

OJTとは、職場の実務を通じて必要な知識・技術・技能・態度を計画的かつ継続的に習得させる教育手法を指します。

・OJTは、業務効率の向上と従業員間の交流の増加、定着率の向上を目的に実施されます。
・OJTは、「やってみせる(Show)」「説明・解説する(Tell)」「やらせてみる(Do)」「評価と改善支援をする(Check)」の4ステップが基本です。

本記事では、OJTについて、基本から詳しく解説します。

ヒー

OJTという言葉は聞いたことがあるけれど、具体的に何をどう進めればよいのでしょうか?

ムートン

OJTは、実際の業務を通じて新人や部下を育成する教育手法です。OJTの基本的な考え方や進め方を確認していきましょう。

※この記事は、2025年7月20日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

OJTとは

OJTの基本的な仕組みを知るために、以下ではOJTの定義と、OJTとOFF-JTの違いについて解説します。

OJTの定義

OJT(On-the-Job Training)は、実務を通じて従業員を即戦力に育てる教育手法です。

新人や異動者が職場で必要な知識やスキルを学びながら、組織への理解も深められます。座学では得られない実践的スキルを習得できる点が特徴で、計画的かつ個別に指導することで成長を最大化できます。

営業同行や機械操作など、現場に即した具体的な指導方法も有効です。

OJTとOFF-JTの違い

OJTとOFF-JTの最大の違いは、「どこで何を学ぶか」です。OJTは実務を通じて業務スキルを身につける現場型の学習、OFF-JTは座学中心で基礎知識を習得する方法です。

OFF-JTでは、ビジネスマナーや法令知識、業界の全体像など、全従業員に共通する知識を効率よく教えられます。一方のOJTは、実際の業務を通してしか学べない実践力や判断力を磨くのに適しています。

OJTを活用する目的

OJTを単なる現場での経験から戦略的な人材育成手法に昇華させるためには、明確な目的設定が重要です。OJTを活用する主な目的は、以下のとおりです。

  • 業務効率を向上させるため
  • 従業員間のコミュニケーションを増やすため
  • 職場への定着率を向上させるため

以下では、OJTを活用する具体的な目的を紹介します。

業務効率を向上させるため

OJTの最大の目的は、新人を早期に戦力化することです。実務を通じて現場ならではのスキルを習得できるため、座学では身につけにくい実践力を効率よく高められます。

指導者の経験を基にした指導により、新人は業務全体の流れを理解しながら必要な知識と技術を段階的に学べます。

例えば、営業では、先輩労働者との同行訪問を通じてヒアリングや提案書作成のコツを習得し、製造現場では機械操作や品質チェックのポイントを現物で学ぶことが可能です。

OJTを成功させるには、教えるべきスキルの明確化、段階的な指導計画、定期的な進捗確認が重要です。

従業員間のコミュニケーションを増やすため

OJTは、単なる教育手法ではなく、職場のコミュニケーション活性化にも効果的です。

新人と複数の先輩従業員が関わることで、自然と人間関係が構築され、相互理解が深まります。業務中の質問や相談が対話のきっかけとなり、知識の共有やチームの一体感を生み出すことも可能です。

コミュニケーション促進を目的としたOJTでは、複数の先輩従業員との関わりや定期的な情報共有の場を意識的に設計することが重要です。

職場への定着率を向上させるため

OJTは新人の職場定着を支える有効な手段です。

スキルの習得だけでなく、職場の文化や価値観への理解、同僚との信頼関係が自然に育まれるため、早期離職の防止にもつながります。OJTにより「自分は必要とされている」「成長している」と実感できれば、仕事への意欲や帰属意識も高まります。

定着率向上を目指すには、成長の可視化や段階的な責任付与、メンタル面のサポート体制が重要なポイントです。

OJTを導入するメリット

OJTを導入することで企業が得られる具体的なメリットは、以下のとおりです。

  • 即戦力を育成できる
  • 研修コストを抑えて効率的に教育できる
  • 指導者としてのスキルアップを目指せる
  • 従業員の個性や強みを把握しやすい

以下では、OJTの各メリットについて解説します。

即戦力を育成できる

OJTは実際の業務を通じて、現場で使えるスキルを段階的に習得できるため、短期間で現場に貢献できる人材へと成長します。指導者の実務経験に基づく指導により、新人は業務の全体像を把握しながら、必要な知識やスキルを段階的に身につけられます。

即戦力を育てるOJTでは、段階的なスキル習得計画、実践課題の設定、定期的な成果確認を含む体系的なプログラム設計が重要です。

研修コストを抑えて効率的に教育できる

OJTは外部研修や専用施設を必要とせず、通常業務の中で教育を行うため、大幅なコスト削減と効率的な人材育成を同時に実現できます。

外部研修や専用施設が不要なため、新人1人あたりの育成費用を削減することも可能です。さらに、通常業務中に指導できるため、業務を止める必要もありません。

コストを抑えながら教育効果を高めるには、社内リソースを活かし、業務と教育を一体化させる設計が重要です。

具体的な研修準備については、以下の記事をご覧ください。

指導者としてのスキルアップを目指せる

OJTは新人の育成だけでなく、指導者の成長につなげることも可能です。

指導者は、新人への指導を通じ、説明力・柔軟性・対人スキルを高め、将来の管理職候補としての資質を養えます。人に教えることで、自分の知識を整理し、伝える力や業務理解も深める機会にもなります。

将来的な管理職候補の育成にもつながるため、企業にとっては人材の多層的な育成手段として効果的です。さらに効果を高めるには、指導者向け研修の実施や評価制度への反映、サポート体制の整備が重要です。

従業員の個性や強みを把握しやすい

OJTは個々の適性や強みを見極め、最適な人材配置につなげられる手段のひとつです。

実務を通じて新人と日常的に関わることで、座学では見えにくい性格や能力を把握できます。業務中の行動や反応を観察すれば、得意・不得意を正確に見極め、適切な支援や育成方針の設計も可能です。

新人自身が複数の業務を経験する中で、自分の適性に気づける点もOJTのメリットです。個性把握を重視するOJTを効果的に進めるには、多様な業務機会の提供や定期的なフィードバック、柔軟な配置転換制度の整備が欠かせません。

OJTを導入する際の留意点

OJTは効果的な人材育成手法である一方で、適切な対策を講じなければ、組織に負の影響を与える可能性もあります。OJT導入時に留意すべきことは、以下の3点です。

  • 指導者による教育の質のばらつき
  • 指導者の負担の増加
  • 一時的な業務効率の低下

以下で詳しく解説します。

指導者による教育の質のばらつき

OJTの最大の課題は、指導者の指導スキルや経験の差により、教育の質や新人の成長度合いにばらつきが生じることです。

OJTは人を介した教育手法であるため、指導者の経験・知識・伝え方次第で、新人の成長スピードや理解度に大きな差が生まれます。指導の進め方や評価基準も属人的になりやすく、教育効果が安定しない原因になります。

指導の質にばらつきがある状況は、新人個人の成長機会を不平等にするだけでなく、組織全体の生産性向上を妨げる要因のひとつにもなるため、注意が必要です。

指導者の負担の増加

OJTは指導者が通常業務に加えて新人指導を行うため、業務負担が大幅に増加し、ストレスや疲労の原因となります。

通常業務だけでなく、新人への指導・進捗管理・評価など多岐にわたる対応が求められ、時間的・精神的な負担が増加します。とくに繁忙期には両立が難しく、自身の業務効率やチーム全体の生産性に悪影響を及ぼすことも少なくありません

したがって、指導者個人の負担を軽減し、組織として新人を育てる仕組みを構築することが、持続可能な人材育成を実現することにつながります。

一時的な業務効率の低下

OJT期間中は新人の作業効率が低く、指導に時間を要するため、部署全体の業務効率が一時的に低下するリスクがあります。

業務に不慣れな新人はミスや確認作業が多く、ベテランと比べて対応スピードが遅いため、チーム全体の進捗が遅れることも少なくありません。さらに、新人のフォローや質問対応で、周囲の従業員が通常業務を中断せざるを得ない場面も増えます

そのため、業務効率が一時的に落ち込む事態を想定し、影響を最小限に食い止めるための事前計画やサポートの構築が必要です。

OJTを導入するための基本4ステップ

OJTを導入するには、以下の基本4ステップを確認しておくことが重要です。

  1. やってみせる(Show)
  2. 説明し解説する(Tell)
  3. やらせてみる(Do)
  4. 評価と改善支援をする(Check)

上記のOJTの基本ステップは、OJTにおける流れとして広く知られており、現場での指導方法を考える際の参考になります。以下では、各ステップを詳しく解説します。

1. やってみせる(Show)

OJTの第一ステップは「やってみせる」ことです。新人はまず業務を観察することで、作業の全体像や具体的な手順を把握します

理論では伝わりにくいスキルや知識も、実演により理解を促すことができるのが利点です。例えば、営業現場では、顧客対応の様子を実際に見せると、話し方や提案の進め方を具体的に学ばせられます。

新人に的確に伝えるためにも、実演の際はゆっくりと丁寧に作業を進め、重要なポイントや注意点を口頭で説明しながら進めることが重要です。

2. 説明し解説する(Tell)

実演の次は、業務の背景や理由を「説明し解説する」段階です。

手順の意味や背景を伝えることで、新人はただ真似をするだけでなく、自ら考えて応用できる力を身につけられます。例えば、手順の目的や効果を説明すれば、仕事への納得感が高まり、主体的な姿勢も育ちます。

説明の際は、相手の理解度を確認しながら進め、必要に応じて具体的な例や言い換えを使うと効果的です。また、新人が気軽に質問できる雰囲気を作り、対話を重ねることで、理解と定着をさらに深められます。

3. やらせてみる(Do)

次は、実演と説明を受けた新人が、実際に業務を実践するために「やらせてみる」段階です。

新人自らが手を動かすことで、知識がスキルとして定着し、失敗を含む体験を通じて深い学びが得られます。また、自分で考えて行動すると、判断力や問題解決力も養われます。

「やらせてみる」の段階では、指導者はサポート役に回り、新人の自立を促します。例えば、事務部門では、最初はデータ入力からはじめ、徐々に帳簿作成や報告書作成へとステップアップします。

トラブルを避けるためにも、まずは簡単な作業からはじめ、徐々に複雑で責任の重い業務に移行していくことが重要です。

4. 評価と改善支援をする(Check)

最後は、新人が実践した業務について、客観的な評価を行い、改善に向けた具体的な支援を提供する段階です。

定期的な評価とフィードバックを通じて、新人は自身の成長を実感でき、モチベーションの維持にもつながります。よかった点は明確に伝え、改善点は具体的に指摘することで、効率的なスキルアップが図れます。

また、評価により新人の強みや課題を把握し、個別に合った指導内容へと調整可能です。

フィードバックは一方通行ではなく、新人と対話しながら次のアクションを一緒に考える姿勢が基本です。定期的に評価し、継続的な成長を支援します。

OJT計画の立て方

OJT計画の立て方は、主に以下のとおりです。

  • トレーニングの目的と目標を明確にする
  • 指導者研修を実施する
  • フィードバックと継続的なサポートを徹底する

上記に基づいてOJTを導入する前に計画を立てれば、属人化を防ぎ、新人の成長速度と定着率を大幅に向上させられます。以下では、計画の立て方を具体的に解説します。

トレーニングの目的と目標を明確にする

OJTの計画を立てる際は、まずトレーニングの目的と目標を明確に設定します。

目標が曖昧では、指導内容に一貫性がなくなり、新人の成長も正しく把握できません。営業職なら「3カ月以内に既存顧客10社への提案をひとりで実施する」、事務職であれば「1カ月以内に基本的な伝票処理を正確に行う」などのように、職種に応じて具体的な数値目標が必要です。

目標を立てる際は、SMARTというフレームワークを活用できます

  • 具体的(Specific)
  • 測定可能(Measurable)
  • 達成可能(Achievable)
  • 関連性(Relevant)
  • 期限付き(Time-bound)

上記を活用することで、目標の達成状況を客観的に評価でき、計画的かつ着実なスキルアップにつなげられます。また、新人のスキルや経験に応じて、段階的にハードルを上げる構成にすれば、成長を促しつつモチベーションの維持も図れます。

指導者研修を実施する

OJTの質を安定させるには、指導者の指導スキルの統一が重要です。

指導者研修では、教え方の基本や適切なフィードバック、新人のやる気を引き出す方法などを習得します。具体的には、コミュニケーション技術や評価基準の共有、問題解決の支援方法などを盛り込みます

具体的な実践方法としては、指導デモやロールプレイング、事例共有会などが効果的です。さらに、定期的な情報交換会を通じてノウハウを蓄積・共有すれば、属人化を防ぎ、継続的な指導力向上につながります。

フィードバックと継続的なサポートを徹底する

新人の定着率を高めるためには、定期的なフィードバック体制の整備を徹底します。

指導や声かけが少ない環境では、新人が不安や孤立感からモチベーションが下がり、早期離職につながりやすくなります。そのため、週1回の面談や日報での進捗確認、月ごとの成長評価などを通じた継続的にフォローすることが重要です。

フィードバックでは、よい点を具体的に評価し、改善点は前向きな言葉で伝えるようにします。忙しい現場では、チェックリストによる簡易評価やメンター制度を導入することで、無理なく運用できます。

さらに、新人が悩みを相談しやすい環境づくりも欠かせません。定期的な雑談タイムや懇親会の場を設けることで、コミュニケーションを促し、離職リスクの早期発見・対処が可能になります。

OJTを成功させるためのポイント

効果的なOJT教育を実現させるためには、以下のポイントを確認する必要があります。

  • 進捗や悩みを共有できる場を作る
  • 失敗を責めない
  • 自分で考えて行動する機会を与える

以下では、OJTを成功させるための具体的なポイントを紹介します。

進捗や悩みを共有できる場を作る

OJT教育では、新人と指導者双方の情報共有を定期的に行います。

新人が悩みや疑問を抱えたまま業務を進めると、不安や孤立感からモチベーションが低下しやすくなります。一方で、指導者も新人の進捗が見えなければ、的確なサポートを行えません。

トラブルを防ぐには、週1回の面談や日報での報告、月1回の振り返りミーティングなどでの情報共有できる仕組みが効果的です。また、先輩従業員による日常的な声かけも、新人の心理的な安心感につながります。

指導者と新人の継続的なコミュニケーションができていれば、問題の早期発見と定着率の向上にも直結します。

失敗を責めない

新人の成長を促すには、失敗を学びと捉える職場環境を整えます。

失敗を恐れる職場では、新人が挑戦を避けるようになり、成長の機会が失われます。しかし、失敗から学ぶことこそが、実践的なスキルや応用力の習得につながります。そのため、「なぜ失敗したか」を新人と一緒に振り返り、改善策を一緒に考えることが指導者の重要な役割です。

また、失敗に対する前向きなメッセージを組織全体で発信することで、心理的安全性が高まります。例えば、先輩が自らの失敗談を共有すれば、新人の不安をやわらげ、挑戦への意欲を引き出せすことが可能です。

失敗を悪としない環境を整えることで、新人は安心して経験を積み、主体的に成長していけます。

自分で考えて行動する機会を与える

新人を成長させるには、自分で考えて行動する機会を意識的に与えることが重要です。

受け身のままでは応用力や判断力が育たず、将来的な戦力化も難しくなります。自ら考える習慣を育てるには、段階的に判断や行動の裁量を与えていくことが効果的です。

まずは簡単な業務の優先順位決めから任せ、徐々に複雑な業務へと広げていくと、自信と実践力が養われます。

また、「どう思う?」「なぜそう考える?」などの問いかけを通じて思考を促し、提案や改善案を歓迎する姿勢を見せることが、新人の自発的な行動を促すきっかけになります。

ムートン

最新の記事に関する情報は 、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!

無料で資料をダウンロード
 人事・労務部門ですぐに使えるChatGPTプロンプト集 >
✅ 副業解禁のために企業が知っておくべき就業規則の見直しポイント >

参考文献

厚生労働省「介護分野における「生産性向上」とは?業務改善に向けた取組」

東京都教育委員会「OJTガイドライン」

監修者

アバター画像
遠藤良介 社会保険労務士(愛知社労士会所属)
Reメンバー労務オフィス
労務相談、社会保険・労働保険手続き、社内規定類作成、ライフプランニング相談ほか